博士(工学)栄藤良則 学位論文題名
ジルカ ロイの耐ノジュラ一腐食性に及ぽす 照 射効果 に関する 研究
学位論文内容の要旨
沸鵬水型軽水炉で使用されるジルカロイ製の燃料被覆管の表面は稼働中に高温 かつ高圧の水あるいは水蒸気により酸化され、ノジュラ―腐食により球状やレン ズ状の局部的に厚い酸化物が形成される。これまでノジュラー腐食に起因する燃 料の健全性におよぼす重大な影響は認められていないが、軽水炉の経済性向上を 目的とした、燃料の高燃焼度化と燃料の使用期間の長期化に伴いノジュラ―腐食 は一層進行することが予想され、高燃焼度に伴うノジュラ一腐食の抑制が炉の健 全性と経済性の観点から注目されている。
このような背景から本研究では、ノジュラ一腐食の発生・成長メカニズムの解 明とその腐食抑制方法の開発を目的とレて、ジルカロイの耐ノジュラ―腐食性に 及ぼす高速中性子の照射の効果について調ベ、軽水炉稼働条件での高速中性子照 射によってジルカロイの耐ノジュラ―腐食性が改善されることを始めて明らかに したものである。
本 論 文 は 全 部 で8章 か ら な っ て い る 。 以 下 に 各 章 の 要 約 を 述 べ る 。 第1章は本研究の背景とノジュラー腐食に関する従来の知見をまとめたもので ある。ジルカロイ被覆管の炉内腐食挙動、耐ノジュラ一腐食性の評価及びノジュ ラー腐食の発生・成長メカニズムに関する炉外腐食試験結果についてまとめ、さ らに従来まで提案されているノジュラ一腐食機構並びにジルカ口イの耐ノジュラ ー腐食性に最も強く影響するジルカロイ中に析出している析出粒子の分布状態に 及ぼす中性子照射効果を検討した。
第2章では、商用の軽水炉で使用された、Ni添加のジルカロイー2製被覆管の 外表面に発生したノジュラ一腐食組織を光学顕微鏡観察し、ノジュラ一腐食の大 きさと形状に及ぽす照射条件の影響を多重回帰分析法により評価し、照射時間の 増加にともないノジュラー腐食速度が低下することを確認した。このノジュラ一 腐食速度の低下の原因として、高速中性子照射のジルカロイの耐食性に及ぼす効 果が示唆された。
第3章では、炉外における水蒸気中腐食試験に基づき中性子照射によるジルカ ロイの耐食性の変化を調ベ、ジルカロイー2及びNi無添加のジルカ口イー4ともに 照射量の増加に伴い耐ノジュラ一腐食性が顕著に改善されることを見いだし、中 性子照射によるジルカロイの耐食性改善効果をはじめて明らかにした。また、耐 食性に対するジルカロイー2の照射効果はジルカロイ―4よりも低照射量でその効 果が顕著であることを確認レた。
第4章 で は 、 中 性 子 照 射 に よ る ジ ルカ口 イの 耐食 性改 善機 構を 、中 性子 照射 に よる ジル カロ イの 微細 組織 変化 、特 に析 出粒子 の変 化か ら調べた。ジルカロイー2 にZr‑Fe−Cr系およびZr−FeーNi系の析出粒子、また、ジルカロイー4ではZr−FeーCr系 の析 出粒 子が 照射 以前 から 存在しており、照射によりZr−Fe−Cr系の析出粒子はマ ト リ ック スと の界 面領 域部 から 非晶 質化し 、さ らに その 析出 粒子 の成 分で あるFe が、 またZr−Fe−Ni系 の析 出粒子からFe及びNiがマトリックス中へ溶出し固溶化す るこ とを 認め 、さ らにZr−FeーNi系析出粒子からの固溶速度が速いことを明らかに レた。
第5章 で は 、 ジ ル カ ロ イ の マ ト リ ックス 中に 固溶 するFe、Cr、Ni濃 度を 分析 し 微 量 のFe、Cr、Ni濃度 につ いて 、標 準試料 を用 いた 校正 曲線 によ り、 燃料 被覆 管 に 使 用し たジ ルカ ロイ の組 成を 定量 的に評 価し た。 未照 射状 態の ジル カロ イ中 で はマ トリ ック ス中 の固 溶Fe、Crおよ びNiari度 は検 出限 界以下であったが、照射後 の ジ ルカ ロイ の濃 度分 析か ら各 元素 の明瞭 な濃 度増 加が 確認 され 、マ トリ ック ス 中 に 固溶 したFe、Cr、Ni濃 度と 耐食 性との 間に は相 関性 があ るこ とを 見い だし 、 照 射 によ るジ ルカ ロイ の耐 食性 改善 はマ卜 リッ クス 中に おけ るFe、Crおよ びNiの 固溶 濃度 増加 によ るこ とを 明ら かに した 。また 、ジ ルカ ロイー2で耐食性は低照射 量で改善され、これはZr−FeーNi系の析出粒子からのFe、Niの速い固溶化に起因する ことを見いだした。
第6章 で は 、 耐 食 性 の 改 善 に 対 す る添加 元素 の効 果を 調べ た。 表面 に種 々の 金 属を 蒸着 し、 イオ ン照 射に より 拡散 固溶 させた 後の 酸化 処理1こより生成した酸化 膜をXPSによ り分析 し、 ジル カロ イの 耐食 性の 改善 には 、Zrよりも原子価が小さく Zrよ りも 耐酸 化性 に優 れ、 さら に酸 化状態 で酸 化膜 中に 存在 する こと が重 要で あ ることを明かにした。
第7章 で は 、 前 章 ま で の 成 果 を 基 に、ノ ジュ ラ一 腐食 の発 生・ 成長 機構 を検 討 し 、 ノジ ュラ 一腐 食の 起点 は酸 化膜 のマ卜 リッ クス 中に 取り 込ま れるFe、Cr、Ni 濃 度 の低 い領 域で あり 、こ の酸 化膜 は多孔 質の ため 早い 時期 に保 護性 の悪 い酸 化 膜 に 変質 する 結果 、こ の領 域の 酸化 速度は 周辺 より 速く 、そ れに 伴い 丿ジ ュラ 一 腐 食 が発 生す るこ とを 解明 した 。し かし、 照射 中に 固溶 したFe、Cr、Ni濃 度の 増 加 に 伴い 、酸 化膜 中で のこ れら 濃度 が増加 し、 その 結果 、照 射中 に、 保護 性の 良 好な 酸化 膜が 形成 、成 長す る結果、照射量と共にノジュラー腐食速度は徐々に低下 ることを明らかにした。
第8章 は 本 諭 文 の ま と め で あ り 、 各章で 述べ た成 果お よび ノジ ュラ 一腐 食の 発 生 ・ 成長 機構 につ いて 総括 する と共 に、ジ ルカ ロイ の耐 食性 の改 善法 を提 案し た
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
ジ ル カ ロ イ の 耐 ノ ジ ュ ラ― 腐 食 性 に 及 ば す 照 射効 果に 関す る研 究 本 論 文 は 、 軽 水 炉 の中 性 子 照 射 環 境 下 で 使 用 さ れ る ジ ル カ ロ イ 製 燃 料 被 覆 管 の 表 面 に おい て 高 温 ・ 高 圧 水 あ る い は 水 蒸 気 に よ る 酸 化 で 発 生 す るノ ジュ ラー 腐食 の生 成・成 長メ カニ ズム の解 明と その 腐食 抑 制 方 法 の開 発を 目的 とし 、耐 ノジュ ラー 腐食 性に 及ぼ す高 速中 性子 照 射 の 効 果 と 照 射 に よる 耐 ノ ジ ュ ラ ― 腐 食 性 改 善 の た め の 機 構 を 明 ら か に し た も の で あ る。
先 ず 、軽 水炉 でジ ルカ 口イ ー被覆 管の 外表 面に 発生 した ノジ ュラ ー 腐 食 の 大き さや 形状 に及 ばす 照射条 件の 影響 を評 価し 、ノ ジュ ラー 腐 食 の 成 長 速 度 は 中 性子 照 射 に よ り 低 下 す る こ と を 認 め 、 炉 外 水 蒸 気 中 腐 食 試 験 と の 比 較実 験 か ら 、 耐 ノ ジ ュ ラ ― 腐 食 性 が 中 性 子 照 射 に よ り 顕 著 に 改 善 さ れ る こ と を 始 め て 見 い 出 し た 。 次 に 、 中 性 子 照 射 に よ る 耐 食 性改 善 機 構 に つ い て 、 第2相 粒子 の 微 細 組 織 変 化 か ら 検 討 し 、 第2相 粒 子 が 外 周 部 か ら 非 晶 質 化 する と 同 時 に 、 マ ト リ ッ ク ス 中 ヘFeが 、 ま たZrーFeー Ni系 粒 子 か ら Feお よ びNiが 拡 散 固 溶 し そ の 濃 度 が 増 加 す る こ と : さ ら に 、 こ れ ら 各 固 溶 元 素 の 濃度 と 耐 食 性 と の 間 に 良 い 相 関 が あ る こ と を 確 認 す る と 共に 、イ オン 照射 によ るシミ レー ショ ン実 験か らも マ卜 リッ ク ス 中 のFe、Cr、Niの 固 溶 濃 度 の 増 加 が 耐 食 性 改 善 に 大 き く 寄 与 す る こ と を 実 証 し た。
最 後 に 、 ノ ジ ュ ラ一 腐 食 に つ い て 、 酸 化 膜 の 保 護 性 に 及 ぼ す 固 溶 Fe、Cr、Ni濃 度 の 影 響 あ よ び 照 射 効 果 を 調 ベ 、 各 元 素 の 固 溶 濃 度 の 増 加 に 伴 う 酸 化膜 成 長 が ジ ル カ ロ イ の 耐 食 性 の 改 善 と 深 く 関 わ
よ っ て 、 著 者 は、 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 され る資 格あ るも の と 認 め る 。
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