博 士 ( 農 学 ) 渋 谷 正 人
学 位 論 文 題 名
同 齢 単 純 林 の 林 分 密 度 管 理 方 法 と サ イ ズ 分 布 を 含 む 林 分 成 長 予 測 モ デ ル
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
本研 究は、 多くの 場合 同齢単 純林を 形成す る天 然生のシラカンバ 林とダ ケカン バ林を 対象 として 、植物 成長の ロジ スティック理論に 基づき 成長段 階毎の 平均 サイズ 一密度 関係を 明ら かにし、次いで各 成長段 階にお いてあ る込 み合い 方の林 分のサ イズ (材積、樹高、胸 高直径 )分布 を予測 する モデル を検討 し、定 量的 な林分保育指針の 確 立 を め ざ し た も の で あ る 。 結 果 等 は 、 以 下 の 通 り で あ る 。 1. 林 分 の 平 均サ イ ズ ― 密 度 関係 お よ び サ イズ 分 布 の デ ―夕 をえ るため の毎木 調査と 、個 体の地 上部器 官量を 求め るためのサンプリ ング調査を、北海道大学天塩地方演習林と雨龍地方演習林で行った。
個体の 器官量 は相対 成長 関係を 用いて 推定す るこ ととし、幹材積と 樹皮重 は胸高 直径と 樹高 を、枝 重と葉 重は胸 高直 径と樹高と樹冠長 を独立 変数と して推 定で きるこ とが明 かとな った 。林分現存量ある いは蓄積は個体量の合計値として求めた。
2. 樹 幹 部 器 官量 が 除 か れ る こと に よ る バ イア ス を さ け るた め、
まず個 体重( 現存量 )ペ ―スで の解析 を行っ た。 調査林分の地上部 現存量は、 シラカンバ林は 16.0 〜161. 7t / ha 、ダケカンバ林は9. 5‑
165. It / ha であった。現存量ー密度関係から最多密度線が求められ、
その切 片と傾 きは、 陽性 の落葉 広葉樹 として は穏 当な値であった。
また過去発表されたデ―夕も含めて検討し、両林分でみられた現存量
の最大 値は、 それぞ れの 種の最 大収量 と考え るこ とができた。 エ
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13 . 林 分 密 度 管 理 の 基 礎 と な る 成 長 段 階 毎の 平均 個 体重 一密 度 関 係 を 、競 争一 密 度効 果の 逆 数式のパ ラメー夕値の成長に ともなう推 移 と して 検討 し た。 競争 密 度効 果の 逆 数式 は 2 っ のパ ラメ ー タを も ち、 こ れらは従来林分密 度管理理論において、成長段階のべき乗関 数 と して 求め ら れて きた が 、本 研究 の 結果 では 、 その うち の 1 つ で 成長 が進むにっれて一 定となる傾向がみられた。 この結果はシラカ ン バ 林と ダケ カ ンバ 林に 共 通にみら れ、一方のバラメー タの一定の 傾 向 は、 植物 成 長の ロジ ス ティック 理論上平均個体重― 密度関係の 推 移 をよ り正 し く反 映す る ものと考 えられた。この一定 の傾向を示 す パ ラメ ータ は 漸近 値を も つ関数で 、他方のパラメ―夕 はべき乗関 数 で 近似 でき た 。こ れら の ことから 、パラメ―夕の一定 値の逆数は 最 大 収量 にほ ぱ 一致 する こ と、理論 的には最終収量一定 の法則が保 証 さ れる こ・ と 、平 均個 体 重一 密度 関 係を 表す C‑D 曲 線は 曲線 的 な 移 動 経路 をと る こと 、競 争 ー密度効 果の逆数式のバラメ ―夕間の関 係 も 曲線 的で あ るこ と、 お よび成長 段階毎の理論的な最 大収量と実 際の 最大収量の成長経 過がロジスティック曲線に.よく適合すること が明らかにされた。
4. 次 い で 、 林 学 分 野 で 重 要 な 因 子 で ある 材 積( 蓄積 ) ベ― スで の 検 討を 行っ た 。材 積ベ ー スでの検 討には、文献からえ られたデー タも加えた。蓄積の分布範囲は、 シラカンバが23.5 〜 288. 8fl13 /ha 、 ダケカンバが10.9 〜235. 6rr13 /ha であり、 これらの最大値は、それぞ れ の 種の 最大 蓄 積と 考え ら れた。ま た蓄積ー密度関係か ら最多密度 線 を 求め たが 、 切片 と傾 き は穏当な 値であった。両林分 の平均材積
― 密 度関 係に 競 争― 密度 効 果の逆数 式をあてはめ、林分 成長にとも な う パラ メー タ の推 移を 検 討した。 結果は、平均個体重 一密度関係 でえ られた結果と同様 で、一方のパラメータは漸近値をもっ関数で、
他 方 のパ ラメ ー タは べき 乗 関数で近 似された。この結果 はシラカン
バ と ダケ カン バ に共 通で あ り、密度 管理理論の再検討が 必要である
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と考えら れた。またこれら の推定式で求められるパラメータにより 導かれる 平均材積―密度関 係に関する諸特性は、平均個体重一密度 関係の場合と同様であった。
5. 上述の検討に より確立された平均材積ー密度関係に基づぃて、
林分のサ イズ分布について 検討した。サイズ分布として、最初に材 積分布の モデリングを行う こととし、材積分布の近似関数として適 当 で あ る と 考え られ た MNY 法に より 、 各林 分の 材 積分 布の 近 似を 行った。 その結果、シラカ ンバ林では82 %が、ダケカンバ林では 72
%の林分 が、部分個体群の 平均材積と最小材積の関係が線形である 分 布 密 度 関 数で 近似 さ れた ので 、 この 関数 か ら導 かれ る MNY 関係 を用いて 材積分布を近似す ることとした。この関数はパラメータを 3 っもっが、分布の形 を決定するパラメ ータは成長段階と 込み合い 方の関数 として求めること ができ、他のパラメータは最小材積が近 似的に0 であると仮定して求め、平均材積一密度曲線上に位置する任 意の林分 について材積分布 を予測できることがわかった。しかしこ のモデル では、両樹種の調 査林分の実際の材積分布に対する適合性 があまりよくなかった。この結果には最小材積がっねに0 と仮定され ているこ とが大きな影響を 及ぼしていると考えられたので、最小材 積 ≠ 0 と す る 修 正 を 行 い 、 モ デ ル の 適 合 性 を 改 善 し た 。 6 .平均サイズ―密度トラジェク卜リーの新たなモデルを提唱し、
様々なデ ータを用いて、こ のモデルが同齢単純林の平均サイズ一密
度トラジ ェクトリーとして 適当であることを示した。またこの卜ラ
ジェクト リーモデルを用い て、ある初期密度で成長を開始した林分
の材積分布の推移について予測レ、材積分布の歪度やサイズヒ、工ラ
ルキーについて検討した。この場合も、最小材積≠ 0 としたモデルの
と き 、 植 物 個 体 群 で 一 般 的 に み ら れ る 傾 向 が 再 現 さ れ た 。
7 . 最小材積*0 と修正した材 積分布予測モデル を用いて、樹高分
布と胸高 直径分布の推定を 行った。まず調査林分の樹高一胸高直径
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アロメ卜リーを拡張相対成長式で近似し、パラメータを成長段階や 込み合い方によって標準化し、材積―(樹高,胸高直径)ア口メト リーを利用して、材積分布からこれらの分布を推定した。その結果、
林分の成長初期には背揃い的な傾向があること、胸高直径分布は正 に歪む傾向があること、樹高分布は負に歪む傾向があることなどが 示された。
8. リチャ―ズ関数を用いて、シラカンバ林とダケカンバ林の地 位指数曲線を確立した。地位指数曲線を利用して、両樹種のポピュ レ―ションダイナミクスについて検討し、生残曲線が回転させたシ グモイド型であること、および林分成長にともなう死亡率の推移を 明らかにした。
9. 平均材積一密度関係と材積分布予測モデルに基づぃて、間伐 シミュレ ションを行った。間伐方法としては上層間伐を仮定し、
間伐率を変化させたシリ―ズと間伐回数を変,えたシリーズでシミュ
レ―ションを行った。結果としては、総収穫量や主伐時のサイズ分
布 に は 間 伐 率 の 影 響 が 大 き い こ と が 予 測 さ れ た 。
10 .最後に、本研究における問題点と今後の検討課題について言
及した。
学 位 論 文審 査 の 要 旨 主査 教授 五十嵐恒夫 副査 教授 滝川貞夫
副査 教授 只木良也(名古屋大学)
副査 助教授 矢島 崇
学 位 論 文 題 名
同 齢 単 純林 の 林 分 密度 管 理 方 法と サ イ ズ 分 布 を 含 む 林分 成 長 予 測モ デ ル
本 論文 は、7章で 構成 され 、図88、 衷29、引用文献230、総頁致286頁の和文論 文である.別に参考諭文g紹か添えられている。
同 齢単 純林を形成する天然生のシラカンバ林とダケカンバ林を対象とし、植物 成長 のロ ジスティック理論に基づき成長段階毎の平均サイズ一密度関係を明らか にし、各成長段階における林分のサイズ(材積、樹萵、胸高直径)分布を予謝する モ デ ル を 検 討 し 、 定 量 的 な 林 分 保 育 指 針 の 確 立 を め ざ し た も の で あ る 。 1. 林分 の平 均サ イズ ―密 度関 係、 サイ ズ分布 のデ ータ をえ るた め148林分に つい て毎 木翻査と、佃体の地上部器官盤を求めるためのサンプリング鬪査を、北 海道 大学 天塩地方演習林と雨飽地方演習林で行った。伺体の器官量は相対成長関 係を 用い て推定し、幹材稜と樹皮量は胸高直径と樹高を、枝璽と葉重は胸高直径 と樹 高と 樹冠長を独立変数として推定できることが明らかとなった。林分現存量 あるぃは蓄積は個体量の合計値として求めた。
2.調査林分の地上部現存量は、シラカンパ林は16.O〜161.7t/ha、ダケカン パ林 は9.5〜165.lt/haであった。両林分でみられた現存量の最大値は、それぞ れの種の最大収量と考えることができた。
3. 林分 密度 管理 の基 礎と なる 成長 段階毎の平均個体重―密度関係を、競争ー 密度 効果 の逆敷式のパラメータ値の成長にともなう推移として検附した。競争密
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, 度効 果の 逆数 式は2っの パラ メー タを もち 、こ れら は従来林分密度管理理綸にお いて 、成 長段 階の べ巻 乗関 数と して 求め られて 竃た 。本研究では、そのうちの1 っが 成長 が違 むに っれ て一定となる傾向がみられ、植物成長のロジスティック理 論 上 平均 個体 璽― 密度 関係 の推 移を より正 しく 反映 する もの と考 えら れた . 4.蓄 積は 、シラ カン パが23.5〜288.8ボ/ha、ダケカンバが10.9〜235.6d /haであ り、 これ らの 最大値は、それぞれの種の最大蓄積と考えられた。両林分 の平 均材 稜― 密度 関係 に競争ー密度効果の逆数式をあてはめ、林分成長にともな うパ ラメ ータ の推 移を 検討したが、一方のパラメータは漸近憤をもっ関数で、他 方のパラメ―タはべ巻乗関数で近似された。この結果はシラカンバとダケカンノヾ に 共 通 で あ り 、 密 度 管 理 理 論 の 再 検 討 が 必 要 で あ る と 考 え ら れ た 。 5. 材 積 分 布 の 近 似関 数 と し て 適 当 で あ る と 考 え ら れ たMNY法 によ り、 各林 分の 材積 分布 の近 似を 行った。シラカンバ林では82%が、ダケカンバ林では72% の林 分が 、部 分個 体群 の平均材積と最小材積の関係が線形である分布密度関数で 近似 され たの で、 この 関数 から 導か れるMNY関 係を 用いて材積分布を近似した。
この 関数 はパ ラメ ータ を3っ もっ が、 分布 の形 を決 定するパラメータは成長段階 と込み合い方の関数として求めることができ、他のパラメ―タはJ覆小材積;が近似 的 に0で あると 仮定 して 求め 、平 均材 積一 密度 曲線 上に 位Iす る任 意の 林分 につ いて材積分布を予測できることを明らかにした。
6.平 均サ イズ一 密度 トラ ジェ ク卜 リ― の新 たな モデルを提唱し、様々なデー タを用いて、このモデルが同齢単純林の平均サイズ一密度トラジェク卜リ・―とし て適当であることを示した。
7.最 小材積 ≠Oと修 正し た材 積分 布予測 モデ ルを 用い て、 樹高 分布 と胸 高直 径の 推定 を行 った 。ま ず調査林分の樹高一胸高直径アロメトリーを拡散相対成長 式で 近似 し、 パラ メー タを成長段暗や込み合い方によって標準化し、材積ー(樹 高、胸高直径)アロメトリ―を利用して、材積分布からこれらの分布を推定した.
8.リ チャ ーズ関 数を 用い て、 シラ カン バ林 とダ ケカンバ林の地位指数曲線を 確立 した 。地 位指 致曲 線を利用して、両樹種のポピュレーションダイナミクスに つい て検 討し 、生 残曲 線が回転させたシグモイド型であること、および林分成長 にともなう死亡率の推移を明らかにした.
9.平 均材積 一密 度関 係と 材積分布予弼モデルに基づぃて、間伐シュミレーシ ヨンを行った,問伐方法としては上層間伐を仮定し、闇伐卒を変化させたシリー ズと間伐回数を変えたシリーズでシュミレ―ションを行った。結果としては、総 収 穫 盈 や 主 伐 時 の サイ ズ 分 布 に は 間 伐 卒 の影 響が 大巷 いこ とが 予測 され た。
以上のように本研究は、天然更新補助作業の実施により大面積を占めっっある カンバ頬の同齢単純林について、生態学的理論に基づき定擾的な保育指針を確立 し た も の で 、 造 林 学 上 貢 献 す る と こ ろ が 巻 わ め て 大 き ぃ も の が あ る , よって審査員一同は、別に行った学カ確認試験の結果と合わせて、本笛文の 提出者渋谷正人は、博士(農学)の学位を受けるに十分な資格があると認定した。
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