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博 士 ( 農 学 ) 中 屋 耕

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 中 屋    耕

学 位 論 文 題 名

森 林 に お け る 物 質 ・ エ ネ ル ギ ー 交 換過 程 の 評 価 手 法 の 高 度 化 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の要 旨

  進 行する 地球温 暖化に 伴う急 速な気象 環境の 変化は 、陸域 生態系 に深刻 な影響を及ぼすと考えられ て い る 。2007年 刊 行 予 定 のIPCC第4次 報 告 書 のWorkinggroupIIで は、C1imateChangeImpacts, AdaptationandVmnerabiliりと題打ち、生態系への直接的・間接的影響を大きく取り上げて執筆が進めら れている。大気乱流によって上下方向に輸送される物質・エネルギー量を表す乱流フラックスの測定は、

植 物を主 体とす る陸域生 態系と 大気環 境の相 互影響 を解明 するた めの強 カな評価手段である。近年、

乱流変動量を直接評価する渦相関(EC)法を採用した乱流フラックス観測が広く実施されるようになり、陸 域 生態系 の炭素 循環の解 明を目 的とし て、C02フ ラック スの長 期連続 観測が 広範囲 に行わ れてい る。

  し かし、 直接的 に乱流 フラックスを評価するEC法においても精度的な問題が存在することが、主に森 林に設立されたフラックスサイトにおいて多く報告されている。それを端的に表しているのが、熱フラックス と 地表面 が正味 吸収する 放射エネルギーが整合しない状態、すなわちエネルギーインバランス問題であ る。エネルギー収支の整合は、フラックス測定における妥当性の指標のーつであり、インバランスが生じて いる場合は、乱流フラックスの測定値に何らかのバイアスが生じていると考えられる。近年、数値シミュレ ーションによって、林冠上に組織的乱流構造(110S)が発達し、単一のタワーで測定された乱流変動量の みからはフラックスを全て捉えきれず、このことがインバランスの原因となることが示唆された。この説明が 正しいなら、空間的に平均されたフラックスを評価するためには、複数点でのフラックス観測から空間平均 値を求めるか、より空間的な平均値が得られる乱流計測装置を適用する必要がある。しかし、前者の実施 にはコストや立地の制限など困難な問題も多い。

  本 研究で は、従 来の観 測システムに比べ、より広い空間平均値の取得が期待できるシンチロメータを 林 冠上に 適用し 、エネル ギーインバランスの主要な原因と考えられる林冠上の組織的な乱流輸送機構を 実証的に明らかにした。また、シンチロメータの適用によって空間代表性の高い乱流フラックスを得ること ができ、インバランスが大幅に緩和されることを示した。さらに、EC法によって観測されたC02フラックスを シンチロメータ法を活用して補正する方法を開発した。

1.シンチロメータは、大気の屈折率変動によってもたらされる光強度のゆらぎ(シンチレーション)を測定 し 、 乱流 運 動 エ ネル ギ ー(TKE)お よ び温度 変動の 消散率 を出カ する計 測装置 である 。出カさ れた消 散率から、それぞれ運動量フラックス(摩擦速度H.)および伝熱によるフラックス(顕熱フラックス間を計 算す ること ができる。シンチロメータでは、測定光路を長く(50〜250m)設定することができるため、EC 法に 比べて 広い空間の平均的な乱流信号が取得できることが期待されている。しかし、ニの手法を森林

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に適用した例はこれまで 報告されておらず、林冠上でのシンチレーションの特性が明らかになっていな かっ た。 そこ で 、長 野県 北佐 久 郡の ダケ カン バを主体と する落葉広葉樹林(平均樹高18m)内に86m 間隔で設置した2つのタ ワ一(高さ28m)の上端におい て、2002年から2005年の間 、小開口シンチロメ ータ(DBSAS)と渦 相関(EC)シ ステ ムを 併用 し た乱 流観 測を 実 施し 、DBSASの適用性に ついて検討し た。

2,エ ネルギーインバランスの主 な原因と考えられる組織的乱 流構造(TOS)の存在を確かめるために、EC   法による2つのタワーのフラックス観測値を比較したところ、両者に明確な偏差が認められた。また、タワ   ー間の熱フラックスの偏差が大きいほど、両タワーで平均したエネルギーインバランスが大きくなった。

  こ のことはTOSの存在の状況的 な証拠といえる。DBSASは、乱流運動エネルギー(Tlく亅三)および温度   変 動の消散率からM*およびHを 算出する際に様々な仮定を 要する。そこで、直接的な検討を行うため   に、 ECシス テ ムに よる 観測 値か らTKEお よび温度変動の消散率を算出 し、DBSASの出力値と比較し   た。 そ の結 果、DBSASとECシ ステ ム で得ら れた消散率の比は、大気の 相対乱流強度に対して漸近的   に変 化 し、 相対 乱流 強 度が 小さ な状 況でDBSASによる消散率はECによ る値を大きく上回ることがわ   か っ た 。 ま た 、温 度変 動の 消 散率 およ び算 出し たHの双 方 にお いて 、DBSAS法の 結果 はEC法 の結   果を上回る傾向があり、シンチロメータ法を適用することでエネルギーインバランスを緩和できることが   明らかとなった。この結果は、観測される乱流フラックスの起源領域(ソースエリア)が広いほど温度変動   の 消 散 率 が 空 間 平 均 さ れ て 値 が 大 き く な り 、Hの 過 小 評 価 が 修 正 さ れ る こ と が 示 し て い る 。

3, DBSAS法とEC法による乱流フラックス(u*および〃)の比が、両者に よる乱流運動エネルギー(TKE)   およ び温 度変 動消 散 率の 比に 比例 すること を利用して、EC法によるH* およびHをDBSAS法による広 い ソー スエ リアの 空間平均値に補正する手法を 開発した。補正係数に相当 する消散率比は、相対乱流   強 度 お よ びDBSAS法 とEC法 のソ ース エリ ア 比を 変数 とす る経 験 関数 で表 現し た 。DBSAS法 とEC法   による観測値 の差異が、主にソースエリ アの違いと組織的乱流構造(TOS)によってもたらされると考え   られるため、同様のアナロジーを潜熱フラックス(旭)にも適用し、?;に対する補正法を開発した。こうし   て補正したHおよび?,Eによって、工ネルギーインバランスが大幅に緩和され、より広域に空間平均され   た熱フラックスを評価することが可能になった。

4. 潜熱 フラ ック ス旭 と 同様 の手 順を用いて、C02フラックスについてもDBSASに相当する広域空間平均 値 へ の 補 正 を 施 し 、 森 林 の 炭 素 収 支 の 面 か らDBSAS補 正 の 効 果 お よ び 妥 当 性 を 検 討し た 。EC法の   結 果か ら 推定 した 最大 光合 成 量が 、個 葉の 光一 光 合成 特性と葉面積の 鉛直分布から計算した値を大   きく下回るのに対し 、補正値は計算値に近づくこ とがわかった。また、EC法の結果から推定した群落呼   吸量が、チャンノく ー法による土壌呼吸量を下回 ることが多く、植物地上部の呼吸量を考慮すると矛盾   が 生じ た 。一 方、DBSAS補 正に よっ て 夜間 のC02フ ラッ クス(C02放出量 )が上方修正され、補正を施   し た群 落 呼吸 量は 、生 態学 的 手法 によ って 求め た 群落 呼吸量と整合し た。DBSAS補正によって、C02   の 吸収 と 放出 がと もに 変化 す るこ とで 炭素 収支 が 変化 し、 正味 のC02吸 収量 を 表す生態系純生産量   (NEP)か増加する結果 となった。  ゛

    本論文で開発した フラックスの補正法は、簡易なタワーを臨時に増設し、シンチロメータを併用して補   正 のた め の経 験関 数を 求め る こと で、 既存 の単 一 タワ ーのフラックス サイトにも適用可能である。

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(3)

学位論文審査の要旨

主 査

  

教 授

  

平 野 高 司 副 査

  

教 授

  

浦 野 慎 一 副 査

  

教 授

  

小 池 孝 良

副 査

  

主 任 研 究 官

  

渡 辺

  

力 ( 森 林 総 合 研 究 所 )

学 位 論 文 題 名

森林における物質・エネルギー交換過程の 評価手法の高度化に関する研究

  

本 論 文 は

5

章 か ら な り , 図

54

, 表

2

, 引 用 文献

98

を 含む

114

ペ ージ の和 文論 文で ,参 考論 文9 編が添えられている。

  

大気 乱流 によ って 鉛直 輸送 され る物 質・ 工 ネル ギー量を表す乱流フラックスの測定は, 陸 域 生態 系と 大気 環境 の相 互作 用を 明ら かに す るた めの有効な評価手段である。近年,陸域 生 態系の炭素収支の解明 を目的として,渦相関法によるCO :フラックスの長期連 続観測が様々な 陸 域生 態系 にお いて 行わ れる よう にな った 。 しか し,直接的に乱流フラックスを評価する 渦 相 関法 にお いて も, 乱流 熱フ ラッ クス と地 表 面が 吸収する放射エネルギーが釣り合わない 状 態 ,す なわ ちエ ネル ギー イン バラ ンス など の 問題 が存在することが,主に森林のタワーサ イ ト で多 く報 告さ れて いる 。エ ネル ギー 収支 の 整合 は,フラックス測定における妥当性の指 標 の ーつ であ り, イン バラ ンス が生 じて いる 場 合は ,乱流フラックスの測定値に何らかのパ イ アスが生じていると考 えられる。 数値シミュレーションの結果から,林冠上 に組織的乱流構 造 が発 達し ,単 一の タワ ーで の測 定の みで は 空間 平均のフラックスを正しく捉えきれず, こ の こと がイ ンバ ラン スの 原因 とな るこ とが 示 唆さ れた。したがって,フラックスの空間代 表 値 を得 るに は, 複数 点で のフ ラッ クス 観測 か ら平 均値を求めるか,より空間的な平均値が 得 られる計測装置を用い る必要がある。本研究は,広しゝ空間平均値が測定でき るシンチ口メ一 夕 を初 めて 森林 に適 用し ,エ ネル ギー イン バ ラン スの主因と考えられる林冠上の組織的な 乱 流 輸送 機構 を実 証的 に明 らか にす ると とも に ,シ ンチロメータの適用により,インバラン ス の解消,および渦相関 法によって観測されたC02 フ ラックスの補正法の開発を目的としている。

    

シンチ口メータは ,大気の屈折率変動によって生じる光強度のゆらぎ(シ冫チレーション)

を 測定 し, 乱流 運動 工ネ ルギ ーと 温度 変動 の 消散 率を出カする計測装置である。これらの 消

散 率か ら, それ ぞれ 運動 量フ ラッ クス およ び 顕熱 フラックスを計算することができる。シ ン

チ口メータは,測定光 路が長い(50 〜250m) ため, 渦相関法に比べて広い空f ! ‖の平均的な乱

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流フラックスを測定することができるが,森林に適用された例はなく,林冠上でのシンチレ ーションの特性は不明であった。そこで,長野県の落葉広葉樹林(平均樹高 18m )に86m 間隔で設置した 2 基のタワー(高さ 28m )上端で,2002 〜2005 年に小開口シンチロメータと 渦相関システムを併用した乱流観測を実施した。その結果,シンチロヌー夕法による顕熱フ ラックスは渦相関法の結果を上回る傾向が認められた。この傾向は乱流強度が弱いときに特 に顕著であり,シンチ口メー夕法を適用することでエネルギーインバランスを緩和できるこ とが明らかとなった。このことは,観測される乱流フラックスの起源領域(ソースエリア)

が広いほど温度変動の消散率が空間平均されて値が大きくなり,顕熱フラックスの過小評価 が修正されることを示している。

   シンチロメー夕法と渦相関法による乱流フラックスの比が,両者による乱流運動エネルギ ーと温度変動消散率の比にそれぞれ比例することを利用して,渦相関法による運動量フラッ クスと顕熱フラックスを広い空間の平均値に補正する手法を開発した。補正係数に相当する 消散率比は,相対乱流強度とソースエリア比を変数とする経験関数で表現した。また,同様 の手法を適用して,潜熱フラックスに対する補正法を開発した。こうした補正により,エネ ルギーインバランスが大幅に緩和され,より広域に空間平均された熱フラックスを評価する ことが可能になった。潜熱フラックスと同様の手順により,C02 フラックスを補正する方法を 開発した。チャンバー法によって測定した光合成速度と土壌呼吸速度から計算した正味生態 系生産量 (NEP) と,補正したC02 フラックスから求めた NEP を比較すると,両者は良く一致 し,C02 フラックスの過小評価を解消することができた。

   以上のように,本論文は広い空間平均値を取得できるシンチ口ヌータを森林に適用し,そ の実用性を世界で初めて明らかにするとともに,林冠上の組織的な乱流輸送機構を実証的に 明らかにした。また,シンチ口ヌ一夕を利用した補正により,渦相関法で生じるエネルギー インバランスが大幅に緩和されることを示した。さらに,渦相関法によって観測されたC02 フラックスをシンチ口メ一夕法によって補正する方法を開発し,その有効性を検証した。本 論文で開発したフラックス補正法は,簡易なタワーを臨時に増設し,シンチ口ヌータを併用 して経験関数を求めることで,既存の単一夕ワーのフラックスサイトにも適用可能であり,

汎用性の高いものであると考えられる。よって,審査員一同は中屋耕が博士(農学)の学位を 受けるに十分な資格を有するものと認めた。

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参照

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