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日本内科学会雑誌第105巻第8号

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てんかんは,人口の 0.4~0.9%に起こる最も 多い慢性の神経疾患の 1 つであり,様々な原因 で発症するが,原因が特定できるものは通常, 半数以下であり,病態や診断,治療の進歩が喫 緊の課題である(表 1).近年の超高齢社会で は,60歳以上で新たに発症する高齢者てんかん も増加している(図 1).本稿では,てんかんの 概念と定義,診断のためのポイント,現在使用 されている発作分類とてんかん分類に関して紹 介する.なお,何かの特定の条件に結びついて 出現した「てんかん発作」は機会発作とみなさ れ(断眠,アルコール離脱時,過度の光刺激な ど),通常「てんかん」とはみなされない.ま た,「てんかん発作」自体は,急性の中枢神経疾 患(例えば急性脳炎や脳血管障害の急性期)や 全身病態(例えば電解質異常や急性腎不全,低 血糖発作など)に伴っても出現する一症状(急 性症候性発作)である.そのため,「てんかん発 作」に遭遇したときはこのような「急性症候性 発作」と,後述する「てんかん」の一症状の両 者の可能性を考える必要があることを最初に明 記する.

1.概念と定義

 「てんかん」(epilepsy)は,ギリシア語の動詞 (epilembaneum)(=to be seized, to be taken hold

of, to be attacked:捕らえられる)に由来する. 神や悪霊によって罰として捕らえられた状態で ある,あるいは魔性的な憑依の鮮明な例とみな され,神聖な病とみなされた.紀元前 400 年に ヒポクラテスが「てんかんは脳の病気であり, 食事と薬で治療するもので,宗教的儀式で思量 できない」と正しく評している.しかしながら,

てんかんの診断と病型分類

要 旨 池田 昭夫  「てんかん」(epilepsy)とは,慢性の脳の疾患で,大脳の神経細胞が過 剰に興奮するために,てんかん発作が反復性に起こる.発作は突然に起こ り,普通とは異なる身体症状や意識,運動および感覚の変化が生じる.反 復性の発作(てんかん発作)を唯一の症状あるいは主徴とし,これに種々 の臨床症状および検査所見を伴う状態である.病歴上,発作,例えば全身 けいれん発作,意識減損発作,意識はあるが身体部位の突発的な症状(= 視覚,触覚,聴覚,嗅覚,情動,失語,自律神経症状など),脱力転倒が, 1~2 分間(短いと数秒間)出現し,いつも同じ症状である.意識減損時 は数分間程度のもうろう状態などから回復し,ほぼ元に戻る. 〔日内会誌 105:1348~1357,2016〕

Key words 部分てんかん,全般てんかん,急性症候性発作,déjà vu,jamais vu

京都大学大学院医学研究科てんかん・運動異常生理学講座

Recent Advances in the Medical Care and Treatment of Epilepsy. Topics:I. How to make a diagnosis of epilepsy and its classification. Akio Ikeda:Department of Epilepsy, Movement Disorders and Physiology Kyoto University Graduate School of Medicine, Japan.

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その後,長い歴史の中では「偏見と受容」,「無 視と理解」,「神話と科学」,「はったりと合理的 治療」などの葛藤を繰り返し,現在でも決して 理想的な状況には至っていないのが現実である.  日本てんかん学会の用語集では,「癲癇」は 「てんかん」とひらがなで表記することが推奨 されているが,歴史的に,癲=精神に異常を来 たす,癇=引きつけ,怒りやすい,という意味 を抱合している.2008 年,香港では中国語の 「癲癇」の偏見をなくすために,脳癇症(=brain epilepsy)と病名が変更された.また,2012 年 6月7日,韓国では国をあげて「癎疾:a convul-sive disease」 か ら「 脳 電 症:cerebroelectric disorder」と病名変更がなされた1)

1)てんかんの定義の変遷

 WHO(World Health Organization)による定 義によると,てんかんとは「種々の病因によっ てもたらされる慢性の脳疾患であり,大脳神経 細胞の過剰な放電から由来する反復性の発作 (てんかん発作)を唯一の症状あるいは主徴と し,これに種々の臨床症状および検査所見を伴 う状態」とされている.より平易に表現された ものの 1 つとして,日本神経学会による「てん かん治療ガイドライン」では,「てんかんとは慢 性の脳の病気で,大脳の神経細胞が過剰に興奮 するために,脳の症状(発作)が反復性(2 回 以上)に起こるものである.発作は突然に起こ り,普通とは異なる身体症状や意識,運動およ び感覚の変化が生じる.明らかなけいれんがあ ればてんかんの可能性は高い」とされている2) 両者に共通する重要な点は,1)慢性の病態で あること,2)発作は反復性であること,3)通 常は発作がほぼ唯一の主症状であること,4)そ の発生機構が大脳ニューロン由来の過剰な活動 (てんかん性活動)であること,と換言できる.  その後,臨床てんかん学のめざましい進歩に より,後述するように,様々な遺伝子異常,MRI 異常,機能イメージでの異常の診断方法が発展 してきて,2005年,国際抗てんかん連盟(Inter-national League Against Epilepsy:ILAE)と国際 て ん か ん 協 会(International Bureau for Epi-lepsy:IBE)から,次のように新たな定義が提 図1 てんかん月間のポスター 2013年より,日本てんかん学会と日本てん かん協会が合同で「てんかんを正しく知る月 間(てんかん月間)」を10月に実施している (http://www.jea-net.jp/jea/tenkangekkan.html). 表1 てんかんの病因 1)1990年以前   周産期障害(出生から3歳頃までに発症)   先天性代謝異常(同上)   先天性奇形(同上)   感染症(3,4歳頃~10歳頃までに発症)   素因性てんかん(思春期前後に発症)   後天性頭部外傷(思春期前後から若年成人期に発症)   脳腫瘍(中高年期)   脳血管障害(同上) 2)1990年以降に加わったもの   海馬萎縮(思春期前後に発症)   皮質異形成(同上)   認知症(中高年期) 3)2010年以降に加わったもの   自己免疫性てんかん(中高年期)

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言された.  てんかん発作=大脳の神経細胞が過剰あるい は過同期した状態(てんかん性活動)による症 状と徴候が一過性に出現したもの.てんかん= てんかん発作を引き起こす持続する病態と,そ の神経生物学的,認知的,心理的,社会的影響 によって形成される病態からなる脳疾患.その 定義上は少なくとも 1 回のてんかん発作の出現 が必須である3)  従来の考えと異なる点は,発作はunprovoked =非誘発性である必要はなく,むしろ,その代 わりに,1)少なくとも1回の発作に加えて,2) 発作を引き起こす持続する脳病態が存在するこ とが求められた.これは今後発作が出現する可 能性が高いことを示唆する状態であり,従来の ように 2 回の発作の出現を必要としないことが 提唱された.  さらに,2014年にはILAEから,新しいてんか んの臨床的定義が提唱された4).1)24時間以上 空けて少なくとも 2 回の発作が起こる状態,2) 1 回の非誘発性発作があり,かつ発作が再発す る危険性を慢性に有する状態,3)明瞭な「て んかん症候群」と診断される場合,が提示され た.この新しい定義では,少なくとも 1 回の発 作があり,かつ再発の危険性を慢性に有する状 態を積極的にてんかんと診断し,早期からの治 療介入を進める意図がある.一方で,日本の道 路交通法では従前の「反復する 2 回の発作」が 一般に広く認知されており,現在,新しい定義 への移行が慎重に模索されつつある. 2)てんかんは「炭・石炭の火種」5)  患者にてんかんを説明する際には,前述の内 容では理解が大変困難であるため,筆者は以下 のような例え話を引用している(図 2,3).て んかんは,「炭・石炭の火種」に例えることがで きる.なんらかの原因で炭・石炭に火がつくと, その部分は赤く盛んに火力を増して(=てんか ん焦点),さらに強くなると炎を出して燃えるこ とになる(=大発作).大きな炎は,水(=抗て んかん薬)をかけるといったん炎は消えるが(= 発作時・急性期の抗てんかん薬での治療),芯の 火種はまだ消えておらず,そのまま放置する と,再度火種が強くなり,早晩繰り返して炎を 出してくる.そのため,適切な量と適切な種類 の水(=適切な抗てんかん薬)を丹念にかけな がら,火種を消していくことになる(=慢性期 の治療).少量の水をかけ続ける期間は最低の一 定期間(=2 年間)に及ぶが,途中で水をかけ るのをやめる(=怠薬),風が吹いたり湿度が低 何らかの原因で炭・石炭に火がつくと,その部分は赤く盛んに火力を増 して(=てんかん焦点),さらに強くなると,炎を出して燃えることと なる(=大発作). 大きな炎には,水(=抗てんかん薬)をかけると,一旦は炎は消えるが (=発作時・急性期の抗てんかん薬での治療),芯の火種はまだ消えてい なく,そのまま放置すると,再度火種が強くなって,早晩繰り返して炎を 出してくる. そのために,適切な量と種類の水(=適切な抗てんかん薬)を丹念にかけ ながら,火種を消していくことになる(=慢性期の治療). 図2 てんかんは「炭・石炭の火種」(文献5より)

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くなったりして燃えやすくなる(=過労や睡眠 不足)といったことがあると,途中で火種が再 燃してくることがある.一定の期間,煙も出ず, 火種が消えたと経験的にいえる期間にわたって 水をかけ続け,火種が消えたのを確認して(= 脳波検査),水をかけるのを徐々に減らしていっ て(=減量),最後には中止する(=断薬).

2.発作分類とてんかん分類

 「てんかん」という用語で一括されてはいるも のの,有病率が 1%弱に及ぶてんかんは,実に 様々な疾患あるいは症候群から成り立ってい る.てんかん診療では,発作分類と症候群分類 の両者が重要である.前者は「てんかん」とい う疾患の症状である発作の把握,後者は疾患と しての「てんかん」の分類であり,両者の正確 な診断は,病態の把握と治療方針の決定には欠 かせない. 1)発作分類  1981 年に「てんかん発作の臨床・脳波分類」 が,脳波所見をほぼ唯一の基軸として,症状と 脳波所見の関連を中心に分類された(表 2)6) 今でも発作分類として基軸を示す. 2)てんかん症候群分類  1989 年に「てんかん,てんかん症候群分類」 が発表された7).「特発性」と「症候性・潜因性」 および「全般」と「部分」の組み合わせによる 4 分分類は,てんかんの大きな枠組みを理解す るには重要である(表 3).  現在,遺伝子診断,詳細な画像診断などが可 能な病態が明らかとなり,2010年に最新の国際 分類が提案された(表 4)8)が,一般臨床レベル 図3 てんかんの治療は「炭・石炭の火種を消す」こと(文献5より) 少量の水をかけ続ける期間は,最低の一定期間(=2年間)に及ぶが,中途で 水をかけるのをやめる(=怠薬),風が吹いたり湿度が低くなったりして燃え やすくなると(=過労や睡眠不足),途中で火種が再燃してくることがある. 一定の期間煙もでず,火種が消えたと経験的に言える期間にわたって水をか け続けて,火種が消えたのを確認して(=脳波検査),水をかけるのを徐々に 減らして(=減量)いって,最後には中止する(=断薬).      怠薬 表2 てんかん発作の臨床・脳波分類(ILAEによ る国際分類,1981)(文献6) I.部分発作 A. 単純部分発作(意識障害はない) 1.運動兆候 2.体性感覚・特殊感覚症状 3.自律神経症状・兆候 4.精神症状(高次大脳機能障害) B. 複雑部分発作(意識障害を伴う) 1.単純部分発作から始まる 2.意識障害から始まる C. 部分発作からの二次性全般化 II.全般発作 A. 欠神発作 1.欠神発作 2.非定型欠神発作 B. ミオクロニー発作 C. 間代発作 D. 強直発作 E. 強直間代発作 F. 脱力発作 III.上記の分類に含まれないてんかん発作 (てんかん研究 5:62, 1987での日本語訳を参考)

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で汎用されるに資するかは検討の余地があり, 臨床では1989年のてんかん分類の4分分類はて んかん症候群分類の大枠を理解するには今でも 有用である.しかしながら,特にてんかんの遺 伝子異常が解明されるにつれて,4 分分類に矛 盾する状態が徐々に増加してきた(例えば,遺 伝子異常が部分てんかんを引き起こす場合があ ること,同じNaチャンネル異常が全般てんかん だけでなく,部分てんかんを引き起こすことが あることなど).そのため,てんかん分類の基軸 の 1 つに遺伝子異常の基軸を部分的に導入した ものの,1989年の4分分類と必ずしも上手く整 合できていない状態である.以上の理由によ り,一般臨床では,発作分類では 1981 年分類, てんかん症候群分類では 1989 年分類が基本的 に使用され,必要に応じて 2010 年の分類が一 部使用されているのが現状である.

3.診断

 診断は,1)詳細な病歴からの上記の発作分 類と症候群分類,2)脳波検査,3)画像診断の 3 基軸が肝要である(図 4).鑑別には,失神発 作,けいれん性失神,精神原性非てんかん発作 (psychogenic non-epileptic seizure:PNES)(心 因性非てんかん発作,偽発作,疑似発作),一過 表3 てんかん,てんかん症候群の国際分類(ILAEによる分類,1989)(文献7) 1.局在関連(焦点,局所,部分)てんかんおよび症候群 1.1 特発性(年齢に関連して発病する) 0.4% ・良性小児てんかん(中心・側頭部に棘波を有する) ・小児てんかん(後頭部に突発波を有する) ・原発性読書てんかん 1.2 症候性 49.5% ・小児の慢性進行性持続性部分てんかん(Kojewnikow症候群) ・特異な発作誘発様態をもつてんかん(反射てんかん) ・側頭葉てんかん ・前頭葉てんかん ・頭頂葉てんかん ・後頭葉てんかん 1.3 潜因性 0.4% 2.全般てんかんおよび症候群 2.1 特発性(年齢に関連して発病.年齢順に記載) 25.2% ・良性家族性新生児けいれん ・良性新生児けいれん ・乳児良性ミオクロニーてんかん ・小児欠神てんかん ・若年欠神てんかん ・若年ミオクロニーてんかん ・覚醒時大発作てんかん ・上記以外の特発性全般てんかん ・特異な発作誘発様態をもつてんかん(反射てんかん) 2.2 潜因性あるいは症候性(年齢順) 6.2% ・West症候群 ・Lennox-Gastaut症候群 ・ミオクロニー失立てんかん ・ミオクロニー欠神てんかん 2.3 症候性 10.3% 3.焦点性か全般性か決定できないてんかんおよび症候群 7.6% (てんかん研究 9:84, 1991での日本語訳を参考) (各項目の右の数値は患者数の割合:厚生省精神・神経疾患委託研究,難治てんかんの病態と治療に 関する研究,平成3年度研究報告書より)

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性脳虚血発作,前兆を伴う片頭痛,睡眠異常行 動症(parasomnia),RBD(REM sleep behavior

disorder:REM睡眠行動異常症)などが挙げら れる.鑑別診断の詳細は本特集の他稿を参照さ れたい.

4.病歴の重要性

9)  まず詳細な病歴と診察所見に基づき,1)患 者はてんかん発作を有しているのか,2)そう ならば発作分類は何か,3)原因は「急性症候 性発作」か,あるいはてんかん症候群ならばそ の分類は何か,を考察する.この時点で臨床的 に疑われた診断を,次に選択した諸検査により さらに検証する.特に「急性症候性発作」が疑 表4 2010年改定の国際てんかん分類(文献8) 脳波・臨床症候群(発症年齢別)a 新生児期  良性家族性新生児てんかん(BFNE)  早期ミオクロニー脳症(EME)  大田原症候群 乳児期  遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん  West症候群  乳児ミオクロニーてんかん(MEI)  良性乳児てんかん  良性家族性乳児てんかん  Dravet症候群  非進行性疾患のミオクロニー脳症 小児期  熱性けいれんプラス(FS+)(乳児期から発症することがある)  早発良性小児後頭葉てんかん症候群  ミオクロニー脱力(旧用語:失立)発作を伴うてんかん  中心側頭部棘波を示す良性てんかん(BECTS)  常染色体優性夜間前頭葉てんかん(ADNFLE)  遅発性小児後頭葉てんかん(Gastaut型)  ミオクロニー欠神てんかん  Lennox-Gastaut症候群  睡眠時持続性棘徐波(CSWS)を示すてんかん性脳症b  Landau-Kleffner症候群(LKS)  小児欠神てんかん(CAE) 青年期―成人期  若年欠神てんかん(JAE)  若年ミオクロニーてんかん(JME)  全般強直間代発作のみを示すてんかん  進行性ミオクローヌスてんかん(PME)  聴覚症状を伴う常染色体優性てんかん(ADEAF)  その他の家族性側頭葉てんかん 年齢との関連性が低いもの  多様な焦点を示す家族性焦点性てんかん(小児期から成人期)  反射てんかん 明確な特定症状群 海馬硬化症を伴う内側側頭葉てんかん(MTLE with HS) Rasmussen症候群 視床下部過誤腫による笑い発作 片側けいれん・片麻痺・てんかん こ れらの診断カテゴリーのいずれにも該当しないてんか んは,最初に既知の構造的/代謝性疾患(推定される原 因)の有無,次に主な発作の発現様式(全般または焦 点性)に基づいて識別することができる. 構造的/代謝性の原因に帰するてんかん(原因別に整理) 皮膚形成異常(片側巨脳症,異所性灰白質など) 神 経皮膚症候群(結節性硬化症複合体,Sturge-Weber症 候群など) 腫瘍 感染 外傷 血管腫 周産期脳障害 脳卒中 その他 原因不明のてんかん てんかん発作を伴う疾患であるがそれ自体は従来の分類 ではてんかん型として診断されないもの  良性新生児発作(BNS)  熱性けいれん(FS) aこの脳波・臨床症候群の配置は病因を反映したものでは ない. b徐波睡眠時てんかん放電重積状態(ESES)とも呼ぶこと もある. 図4 てんかん診断の手順 詳細な病歴聴取 発作および症候群 分類 脳波検査 確定診断 神経画像検査 ビデオ脳波同時記録 病変診断 局在関連か全般か (日本てんかん学会:てんかんの診断ガイドライン(2008))

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われた場合は原因を検索するために種々の検査 を積極的に行う. 1)病歴聴取のポイント  患者本人のみならず,目撃者からも病歴を聴 取し,まず具体的に発作の性状,発作型を明ら かにする.以下,病歴などの情報から 1981 年 の発作分類に至る過程を解説する(表 2). (1)発作時症状  患者が初発発作を起こした場合は,いわゆる 全身けいれん発作(大発作)の場合が多い.そ の際,まず前兆があったか否か,あるいは大発作 と関係なしに,過去に後述するような本人が自覚 できる単純部分発作がなかったかを確認する.  前兆(運動症状以外の単純部分発作)は発作 開始時点の症状で,発作起始焦点を推測するの に有用である.例えば,既視感(déjà vu),未 視 感(jamais vu), 上 腹 部 不 快 感(epigastric rising sensation)などは内側側頭葉由来,各種 感覚症状(聴覚,視覚,体性感覚)はそれぞれ の一次感覚野由来である.既視感とは,現在の 状況が過去にもあったように懐かしい気分に なってくることであり,意識減損を伴わない. これは記憶の中枢である海馬にてんかん性活動 が出現して機能が変容して刺激状態であること を反映する.海馬の前方には扁桃核があり,て んかん発作が及べば情動的変化を伴う.既視感 と未視感は,親しみ(familiarity)という情動の 変化ととらえることができる.既視感はfamil-iarityが増した状態(以前にもあった懐かしい気 分がしてくる),未視感はfamiliarityが低下した 状態(初めての状況にいるような真新しい感じ がする)とみなされる.既視感は正常であって も日常で自覚することは稀にあるが,未視感は 診断上特異度が高い症状である.また,各種感 覚症状はむしろ患者が自ら訴える場合が多い が,内側側頭葉由来の前兆は,患者は自覚して いても自ら訴えることは稀で,また,病歴を聴 取するときも,前述したように「以前にもあっ たような懐かしい気分が急にしてこないか」「初 めての状況にいるような真新しい感じが急にし ないか」など,familiarityの変化に関することを 聞くことで初めてわかることも少なくない.そ の他に,「匂い発作」(内側側頭葉の鉤回)も診 断的価値が高い.  部分運動発作の症状から運動野内の発作出現 箇所を推定できる.症状は,一次運動野(中心 前回)表面で周囲に伝搬する場合は,「マーチを 示す運動発作」を呈する.注意点は,顔面領域 は一次運動野由来でも両側支配であり,眼輪筋 などは両側性にけいれんする.また,運動発作 の中でも,前頭葉内側面に位置する「補足運動 野」からの発作は,非対称性に四肢に強直発作 を起こし,意識減損を来たさない.一般には, 四肢にけいれん発作が及ぶ場合は,両側大脳半 球にてんかん性活動が波及したことを意味して 意識は減損する.そのために「補足運動野発作」 は非てんかん発作(偽発作)と誤診される場合 がある.PNESとの鑑別には,発作型に常同性が あるか否かは重要であり,また,症状が「補足 運動野発作」に当てはまるかを疑うことが最も 重要である.  意識が減損する部分発作であれば「複雑部分 発作」と呼ぶ.脳内のある部分から出現して意 識が減損すれば「複雑部分発作」と呼ばれる. 意識が減損する機序は,大脳皮質から出現した てんかん性活動が皮質下構造に伝播して,意識 水準を調節する脳幹網様態賦活系に影響したた めと理解される.意識が減損する部分発作は側 頭葉内側由来の場合が多いこと,また,成人の てんかんでは「側頭葉てんかん」が最も多いた めに,側頭葉由来の部分発作(旧用語では精神 運動発作:psychomotor seizure)を複雑部分発 作と同義語に使用される傾向がある.「精神運動 発作」とは,1981 年の発作分類以前の旧分類 で,側頭葉由来の部分発作をこのように称して いた.「精神運動発作」は精神症状と運動症状が 組み合わされて起こる発作を示し,精神症状は

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前述したような既視感・未視感・他の感情症状 など,運動発作は口部や手の自動症・ジストニ ア症状を指す.運動野からの運動症状はけいれ ん症状(強直けいれん,間代けいれん)である が,自動症・ジストニアはそれぞれ側頭葉の脱 抑制症状と基底核の刺激症状である.すなわ ち,「精神運動発作」は側頭葉特に内側由来の部 分発作が同側の基底核に進展した症状と解釈さ れる.複雑部分発作では,自動症・一側ジスト ニー姿勢以外に,凝視,運動停止,自律神経症 状を示す.以上より,病歴聴取時には「返事が なく,前方を凝視して,口がモグモクしていな いか,手が硬くなっていないか,モゾモゾ動い ていないか」ということを目撃者に確認する.  複雑部分発作は,側頭葉由来に次いで前頭葉 由来が多い.後者は,前者と比較して自動症の 症状が激しい(ペダリング様の自動症),持続時 間が短い,発作後のもうろう状態が短い,夜間 に出現しやすい,二次性全般化しやすい,群発 化しやすいなどの特徴がある.その他に,一側 への持続する頭部回転(head version)は対側の 外側前頭葉の前頭眼野に発作が及んだことを示 唆する.  全般発作のうち,最も多いのは全般強直間代 発作であるが,二次性全般化か一次性の全般発 作かは,先行する部分発作が認められるか否か が大きな鑑別点となる.全般強直間代発作で は,発作中のチアノーゼ,口腔からの泡沫や流 涎,咬舌・尿失禁・発作後の筋肉痛や頭痛の有 無,発作のもうろう状態や発作後睡眠の有無を 確認する.これらは診断上特異度が高く,PNES との鑑別に有用である.また,全般発作は年齢 に応じて出現するタイプが異なるが,脱力発作 は突然に抗重力筋群の脱力が起こり,一気に地 面に転倒し,外傷の原因となり,失神発作との 鑑別が必要となる. (2)発作の出現状況や既往  てんかん発作が,①急性病態によって出現し たものか(急性症候性発作),②機会発作(ある 特定の誘因に伴って出現したもの)か,③てん かん症候群のうち,特定の誘因がなく発作が出 現したものか,の 3 タイプを明らかにするため に必要な情報を確認する.特に初回発作におい てはこのアプローチが大切である.非特異的な 誘因としては,過労,睡眠不足などが稀発発作 の発現のきっかけになることがある.  ①「急性症候性発作」においては,合併症(神 経・筋疾患,心疾患)や既往歴(先行感染,数 日前の創傷など)より基礎疾患の有無を明らか にする.発作後に回復したときにも,なんらか の神経学的異常所見を示す場合は,発作後一過 性麻痺や失語が否定されれば「急性症候性発 作」を積極的に疑う.てんかん発作の閾値を低 下させる薬剤が投与されていないか注意して病 歴を確認する.その他に,「急性症候性発作」は 表 510)に示すように様々な原因が挙げられる.  ②直接的な誘因としては,光刺激による光過 敏てんかんや特発性全般てんかん,テレビゲー ムや読書中の発作は機会関連てんかんを疑う. 特発性全般てんかんのうち,若年ミオクロニー てんかんは起床後30分~1時間以内の手足のミ オクロニー発作(=電撃的な短時間の筋肉の収 縮)が特徴的であり,また,睡眠不足時にミオ クロニー発作も大発作も出現しやすい.欠神発 作は過呼吸により容易に誘発されやすい.  ③前頭葉てんかんによる発作は睡眠中に多 く,覚醒直後に出現する大発作は覚醒時大発作 てんかんを示唆する.熱性けいれんの既往があ る場合,思春期以降に内側側頭葉てんかんが出 現してくる場合がある.また,「熱性けいれん」 の既往は体質的にてんかん発作出現の閾値が低 いことを示唆するために,明らかな誘因があっ て機会発作が出現した場合でも,その後の方針 を決定する際の重要な情報となる. 2)診察所見 (1)「急性症候性発作」を示唆する所見  発熱・呼吸・不整脈・頻脈・血圧の異常,皮

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膚所見(出血傾向・黄疸など)・脱水・呼気のケ トン臭などをチェックする.神経学的には,意 識障害の程度,瞳孔不同・対光反射の異常・四 肢の運動感覚障害等の局所兆候の有無,うっ血 乳頭,項部硬直を診察する.全身性疾患に伴う 発作は全身けいれん発作であることが多いが, 非ケトン性高血糖および尿毒症に伴う発作はむ しろ部分発作を示すことが多い.若年女性で精 神症状,呼吸不全,全身けいれん発作と顔面の 著明なジスキネジアを呈した場合には,積極的 に抗NMDA受容体抗体などによる自己免疫性機 序による急性の辺縁系脳炎を疑う. (2) 慢性の「てんかん症候群」に関連した身体 所見  皮膚所見で,白子症はフェニルケトン尿症, 顔面の血管腫はSturge-Weber症候群,顔面皮脂 腺腫様の血管線維腫・鮫皮斑は結節性硬化症. 外眼筋麻痺はミトコンドリア脳筋症,顔貌異常 (ガルゴイリズム)はリピドーシス,眼窩離開は Down症候群を疑う.また,小脳失調・動作時ミ オクローヌス・進行性の認知機能低下は進行性 ミオクローヌスてんかん症候群,眼底のサクラ ンボ赤色斑(cherry-red spot)はシアリドーシ ス,心機能異常はLafora病・ミトコンドリア脳 筋症・結節性硬化症,肝障害はLafora病,腎腫 瘍は結節性硬化症,低身長・難聴はミトコンド リア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作 症候群(mitochondrial myopathy, encephalopa-thy, lactic acidosis & stroke-like episodes: MELAS)を疑う.

まとめ

 てんかんの診断においては,要点をおさえた 詳細な病歴の把握が最も重要である.診断(発 作型診断とてんかん症候群診断)には脳波検査 なども重要であるが,脳波検査のみで診断した り否定したりはできない.多くの場合,詳細な 病歴を聴取することにより,症状としての「発 作」において,脳内でのてんかん性活動が起始 してから伝搬していく機構(これは皮質間伝 搬:水平性伝搬だけではなく,皮質下構造への 伝搬:垂直性伝搬)をよく把握できる(発作型 診断:症状診断).そのうえで,さらに各種検査 の意義(鋭敏度と特異度)を総合的に判断し, 最終的にてんかん症候群診断(疾患診断)に至 るプロセスは他の内科疾患と共通する診断過程 である. 著者のCOI(conflicts of interest)開示:池田昭夫;講演 料(大塚製薬,ユーシービージャパン),寄附講座(大 塚製薬,グラクソ・スミスクライン,日本光電,ユー シービージャパン) 表5 急性症候性発作を来たす基礎疾患・病態(文献10) 1)内科的疾患 電解質異常(低Na血症,高Na血症,低Ca血症,高Ca 血症,低Mg血症) 内分泌疾患(甲状腺機能亢進・低下症,副甲状腺機 能低下症) 代謝異常(腎不全,肝不全,低血糖,糖尿病性昏睡, 子癇,急性間欠性ポルフィリア) 2)中枢神経疾患 外傷(脳挫傷,脳内血腫,硬膜下血腫,硬膜外血腫) 脳血管障害(テント上脳内出血・脳梗塞,くも膜下 出血,動静脈奇形,もやもや病) 無酸素脳症(急性期) 感染症(脳炎,脳膿瘍,神経梅毒など) 脱髄炎症疾患(急性散在性脳脊髄炎,膠原病) プリオン病,スローウイルス感染(亜急性硬化性全 脳炎など) 3)薬剤起因性・中毒性 アルコール・バルビタール酸・ベンゾジアゼピン系 薬物の離脱症状 抗うつ薬(イミプラミン,アミトリプチリン,SSRI) 抗精神病薬(クロルプロマジン,チオリダジン) 気管支拡張剤(アミノフィリン,テオフィリン) 抗生物質(カルバペネム系),抗菌薬消炎鎮痛薬の組 み合わせ投与 鎮痛薬(フェンタニル,コカイン) 抗腫瘍薬(ビンクリスチン,メトトレキサート) 筋弛緩薬(バクロフェン) 抗ヒスタミン薬の一部 注:2)の慢性の病態の一部は,てんかん症候群に属する.

(10)

文 献

1) 池田昭夫:てんかんの概念と定義.新しい診断と治療のABC 74 てんかん 神経5.最新医学(別冊), 21―31, 2012. 2) 「てんかん治療ガイドライン」作成委員会編:てんかん治療ガイドライン 2010.医学書院,東京,2010.

3) Engel J Jr : Report of the ILAE classification core group. Epilepsia 47 : 1558―1568, 2006. 4) Fisher RS, et al : A practical clinical definition of epilepsy. Epilepsia 55 : 475―482, 2014.

5) 池田昭夫:概念と定義,症例から学ぶ戦略的てんかん診断・治療.池田昭夫編.南山堂,東京,2―9, 2014. 6) Commission on Classification and Terminology of the International League Against Epilepsy : Proposal for

revised clinical and electroencephalographic classification of epileptic seizures. Epilepsia 22 : 489―501, 1981. 7) Commission on Classification and Terminology of the International League Against Epilepsy : Proposal for

revised classification of epilepsies and epileptic syndrome. Epilepsia 30 : 389―399, 1989.

8) Berg AT, et al : Revised terminology and concepts for organization of seizures and epilepsies : report of the ILAE Commission on Classification and Terminology, 2005―2009. Epilepsia 51 : 676―685, 2010.

9) 池田昭夫:てんかん発作とてんかん・てんかん症候群―その診断と分類.日医師会誌 136 : 1078―1084, 2007. 10) 池田昭夫,柴崎 浩:けいれん,失神とてんかんの鑑別,内科鑑別診断学.杉本恒明,小俣政男総編集.第 2 版,

朝倉書店,東京,2003, 87―96.  

参照

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10) Takaya Y, et al : Impact of cardiac rehabilitation on renal function in patients with and without chronic kidney disease after acute myocardial infarction. Circ J 78 :

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