博 士 ( 医 学 ) 森 本 佳 子
学 位 論 文 題 名
Extracellular acidosis decreases cell death against glucose‑oxygen deprivation in neuroblastoma x glioma hybrid cells
(細胞外アシドーシスが,ニューロブラストーマとグリオーマとの融合細胞において,
プドウ糖・酸素除去侵襲による細胞死を抑制する)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
背 景 : 脳 虚 血 に ア シ ド ー シ ス を 合 併 す る と 、 神 経 学 的 予 後 が よ り 不 良 とな るこ とが 、 臨 床的 およ びIn viレ 。に おけ る実 験で 報告 され て いる 。一 方、Inレitroでは アシドーシス が 虚 血 に よ る 神 経 系 細 胞 お よ び 組 織 の 障 害 を 軽 減 す る こ と が 報 告 さ れ て いる 。そ の機 序 と し て 、 虚 血 時 の 細 胞 内 へ の カ ル シ ウ ム イ オ ン 流 入 を 細 胞 外 ア シ ド ー シ ス環 境が 抑制 す る こと が最 も有 カと さ れて きた 。
目 的 : 細 胞 外 ア シ ド ー シ ス が 、In vitroでの 虚血 性侵 襲で ある ブド ウ糖 およ び酸 素除 去 に よ る 細 胞 死 を 抑 制 す る か ど う か 、 ま た 抑 制 効 果 が あ っ た 場 合 に は 、 こ れ が 、 カ ル シ ウ ム イ オ ン 細 胞 内 流 入 阻 止 と 、 細 胞 エ ネ ル ギ ー 状 態 の 保 持 の ど ち ら を 主 た る 機 序 と し て い る か を 、 マ ウ ス 由 来 ニ ュ ー ロ ブ ラ ス ト ー マ と ラ ッ ト 由 来 グ リ オ ー マ の 融 合 細 胞 で あ る NG10 8‑15を 用 い て 、 研 究 し た 。 実 験 に 使 用 し たNG108・15に は 、PGEiと テ オ フ イ リ ン 添 加 に よ り 分 化 誘 導 処 置 を 施 し た 。
方法 :
実験1:pH7.4、6.8、6.5、6.2、5.6、5.0に調 整した、ブドウ糖を等モルのマンニト ー ル に 置 換 し たHEPES緩 衝 液 に 培 地 を 置 き 換 え 、100% 窒 素 で 充 填 し た チ ャ ン バ ー の 中 で8時 間37゜Cに て イ ン キ ュ ベ ー ト し 、 細 胞 の 生 存 率 を 測 定 し た 。 対 照 と し て 、 同 じpH に 調 整 し た ブ ド ウ 糖 含 有HEPES緩 衝 液 に 、 大 気 下 で8時 間37°Cに て イ ン キ ュ ベ ー ト し て 生存 率を 測定 した 。
実 験2:pHを7.4と6.2に 調 整 し た 、 非 ブ ド ウ 糖 含 有HEPES緩 衝 液 か ら さ ら に カ ル シ ウ ム イ オ ン を 除 去 し た も の を 用 意 し 、 実 験1と 同 様 に8時 間 の ブ ド ウ 糖 お よ ぴ 酸 素 除 去 侵 襲 を加 え、 細胞 生存 率を 測定 した 。
実 験3:pH7.4と6.2の そ れ ぞ れ で 、 ブ ド ウ 糖 お よ び 酸 素 除 去 侵 襲 を 加 え て2時 間後 、 4時 間 後 、6時 間 後 お よ ぴ8時 間 後 の 細 胞 の 生 存 率 と 高 工 ネ ル ギ ー リ ン 酸 結 合 (ATP、 ADPお よびAMP)を測 定 した 。
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細胞生存率は、fluorescelndiacetateとpropidiumiodideによる二重染色後にフローサ イトメトリーを用いて測定した。高工ネ´レギーリン酸結合は、高速液体クロマトグラフイ ーにより定量した。
結果:
実験
1
:ブドウ 糖および 酸素除去 侵襲8
時間 後の細胞生 存率は、pH6.2
においてpH7
.4 より有意に高かった。対照群では、細胞生存率はpH6.2の方がpH7.4よりむしろ低値を示 すの で、アシ ドーシス 自体に生 存率を上 げる効果が あるのではなく、pH6.2とぃったア シド ーシス下 ではpH7.4の 時と比較 してブド ウ糖および酸素除去侵襲による細胞障害が 軽減されていると考えられた。実験
2
:細胞外 カ少シウムイオンを除去しても、pH6
.2下ではpH7
.4と比較して生存率 は有意に高か.った。実験
3
:pH7.4とpH6.2
の間に有意な生存率の差の発生より早い時間に、pH6
.2で有意 に高 いエネル ギーチャ ージ([ATP十1/2 ADP
]/[ATP+ADP十AMP] )とATP値を認 めた。結語: 細胞外pH6.
2
程度のア シドーシ スは、ブ ドウ糖および酸素除去侵襲による細胞 死を抑 制した。 この、細 胞保護効 果は、NG108・15
細胞では細 胞のエネ ルギー状態の保 持がそ の機序に かかわっていると考えられる。以上より、この研究は、NG108・15とぃっ たある 種の細胞 系では、 エネルギ ー保持が 細胞外アシドーシスによる虚血侵襲時の細胞 保護効 果の機序 である事 を示唆し た。― 320―
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
Extracellular acidosis decreases cell death against glucose‑oxygen deprivation in neuroblastoma x glioma hybrid cells
(細胞外アシドーシスが,ニューロブラストーマとグリオ了マとの融合細胞において,
ブドウ糖・酸素除去侵襲による細胞死を抑制する)
脳 虚 血 に ア シ ド ー シ ス を 合 併 す る と 、 神 経 学 的 予 後 が よ り 不 良 と な る こ と が 、 臨 床 的 お よ ぴ | ロVIVOに お け る 実 験 で 報 告 さ れ て い る。 一方 、in vitroで はア シド ーシ スが 虚 血 に よ る 神 経 系 細 胞 お よ ぴ 組 織 の 障 害 を 軽 減 す るこ とが 報告 され てい る。 その 機序 とし て 、 虚 血 時 の 細 胞 内 へ の カ ´ レ シ ウ ム イ オ ン 流 入 をNMDAレ セ プ タ を 介 し て 細 胞 外 ア シ ド ー シ ス が 抑 制 す る こ と が 最 も 有 カ と さ れ て き た 。 こ の 様 な 状 況 を 背 景 に 学 位 申 請 者 は 本 研 究 に お い て 、 細 胞 外acidosisが 、in vitroで の 虚血 性侵 襲の モデ ルで ある ブド ウ糖 ・酸 素 除 去 に よ る 細 胞 死 を 抑 制 す る か ど う か 、 ま た 抑 制 効 果 が あ っ た 場 合 に は 、 こ れ が 、 カ ル シ ウ ム イ オ ン 細 胞 内 流 入 阻 止 と 、 細 胞 エ ネ ル ギ ー 状 態 の 保 持 の ど ち ら を 主 た る 機 序 と し て い る か を 、 マ ウ ス 由 来neuroblastomaと ラ ッ ト 由 来gliomaの 融 合 細 胞 で あ るNG108 ‑15を 用 い て 検 討 し た 。 細 胞 生 存 率 は フ ロ ー サ イ ト メ ト り を 用 い て 測 定 し 、 高 工 ネ ル ギ ー リ ン 酸 結 合 は 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ イ に よ り 定 量 し た 。 そ の 結 果 、 学 位 申 請 者 は 、pH6.2 程 度 の 細 胞 外 ア シ ド ー シ ス は 、 ブ ド ウ 糖 ・ 酸 素 除 去 侵 襲 に よ る 細 胞 死 を 抑 制 し 、 こ の 細 胞 保 護 効 果 は 、NG108‑1s細 胞 で は 細 胞 の エ ネ ´ レ ギ ー 状 態 の 保 持 が そ の 機 序 に 関 与 し て い る 可 能 性 を 示 し た 。 以 上 よ り 、 ア シ ド ー シ ス の 虚 血 に 対 す る 保 護 効 果 が 、NMDAレ セ ブ タ を 有 す る 特 別 な 細 胞 に お い て の み 見 ら れ る 現 象 で は な く 、 エ ネ ル ギ ー 保 存 と ぃ う 一 般 的 機 序 を 介 し て 様 々 な 細 胞 に 見 ら れ る 可 能 性 を 示 唆 し た 。
公 開 発 表 は 、 平 成9年1月31目 午 前10時50分 より 、医 学部 臨床 大講 堂に おい て約20名 の 聴 衆 の 前 で 行 わ た 。 申 請 者 は ス ラ イ ド を 使 用 し なが ら約20分 間に わた って 論文 発表 を行 い 、 そ の 後 質 疑 応 答 に 入 っ た 。 副 査 の 斎 藤 教 授 よ り 、 ア シ ド ー シ ス で のAT酢 拵 の 機 序 、 NG108 ‑15細 胞 の 機能 的特 質、in vitroと1n vi voでア シド ーシ スの 影響 が異 なる 理由 に つ い て 、 劔 物 教 授 か ら 、 脳 虚 血 の 組 織 が 臨 床 的 に 示 す ァ シ ド ー シ ス の 程 度 とpH6.2と の 関 係 、 継 代 培 養 細 胞 を 用 い る こ と の 利 点 、in vitroで の 保 護 効 果 を 臨 床 応 用 す る に 向 け て の 将 来 的 研 究 の 展 望 な ど に つ い て 質 問 が あ っ た。 学位 申請 者は 概ね 妥当 な回 答を 行っ た 。