博士(理学)饗場 学位論文題名
二次元分子集合体の分子設計に関する研究 学位論文内容の要旨
聡
二分子膜は、疎水性アルキル鎖長と親水基を合わせ持った両親媒性化合物が水中で自己会合 して形成した二次元の分子集合体である。二分子膜水溶液は、固体基板上に塗布乾燥すること でフイルムとして固定することができる。固定化フイルムは、多様な官能基を有する二分子膜 から作製でき、近年新たな機能性材料として注目されていろ。固定化フイルムを機能性材料に 用 い る に は 、 フ イ ル ム 中 の 分 子 配 向 や 分 子 配 列 の 制 御 が 必 要 不 可 欠 で あ る 。 フイルムの会合構造と化学構造の相関性が明らかとなれば、化学構造を分子設計することで 目的の分子配向を持った固定化フイルムを作製できる。これは、二次元の擬結晶系における¨
クリスタルエンジニアリング の初めての例となる。加えて固定化フイルムでの相関性は、固 定化フイルム以外に単結晶構造の予測や、二分子膜水溶液の会合構造やLangmuir.Blo dgect(L B) 膜 の フ イ ル ム 構 造 の デ ザ イ ン に も 使 え ろ と 考 え ら れ 非 常 に 意 義 深 い 。
CH,(CH |n 一1 −ON =N‑‑O‑<CH む『馨輩¨
アゾベンゼン発色団を有する一本鎖の両親媒性分子(CnAz oCmN゛)は、水中で自己会合し 二分子膜を形成する。アゾベンゼン二分子膜はこれまでに、会合体中のアゾベンゼン発色団の 配向状態が吸収スベクトルに反映され、アルキル鎖長(n,m)をかえろと吸収スベクトルは 変化することが見いだされている。アゾベンゼン二分子膜の会合構造は、分子のアルキル鎖長
(n,m)と相関性があると予想されろ。アゾベンゼン二分子膜固定化フイルムは、分光学特 性から発色団の配向状態を知ることができるっ加えて固定化フイルムのX線回折測定とあわせ ると、固定化フイルムの会合構造を明らかにすることができる。幾っかのCnAzoCmN゛の単結 晶は、X線構造解析により結晶構造が明らかにされている。単結晶構造からフイルム構造を裏 付けることができる。
そこで本研究は、アゾベンゼン二分子膜固定化フイルムを用いて、二分子膜の会合構造と化 学構造、特にアルキル鎖長(n,m)の栩|瑚性を明らかにすることを目(、Jとした。また電子供 与体と電子受容体の分子配列が形成に重要な屯餅移動錯fおに注目し、会合構造と化学構造の相 関性に基に電荷移動錯f仁を有すろ二分子膜を作製したu本論文は以下の内容によって俳成され ているー
第二章 では、系続的に疎水部のアルキル鎖長(n.m)を変えた43種の一本鎖型二分子膜 形成化合物(CnAz oCmN+)を合成し、その二分子膜固定化フイルムの分光学特性とX線回11 測定の結果からフイルムの会合溝造を検討したュフイルムの会合構造は、特徴のある六つの会 合構造を与えた(図1:モデルI ‑、1)。フイルムの基本構造は、入れ子構造(モデルI.I ,
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n) と傾いた二分子膜キ譯造( モデルV、ヽ1)であった。ま た会合構造とァルキル鎖長 (n,m) の 間 に相 関性 が認 めら れ た. 〕
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Wavelength (nm)
図1固 定 化 二 分 子 膜 の フ イ ル ム 構 造 の 模 式 的 モ デ ル
傾い た二 分 子膜 (モ デルu) は、 アゾ ベ ンゼ ンの 親水基が非常に接近 した構造であろ。アゾ ペ ンゼ ンを 電 子供 与体 のピ フニニルに親水基 を電子受容性のピオロゲン にかえた膜形成化合物 (CnBphCmVz. )の 場合 、傾 いた 二 分子 膜構 造で は 電荷 移動 相互 作用 す ろこ とができると考え ら れる 。傾 い た二 分子 膜構 造を形成するよう に分子設計し二分子膜を作 製すると、構造予測ど お りに 電荷 移 動錯 体を 形成 する こ とが でき た。
CH3(CH n‑1−Oイ く 冫‑N‐N− く ニ ン 叫cH 2)rn− く二 冫 一く )゛ .らh CnAzoCmV2十 2Br'
CH4CH出 『 。 ‐ く つ ド ・ く つ トIIHcH 2)rn− く 二 冫 一 く ) ら 嶋CnBphCFTlV2十 2Br'
第三 章で は 、二 章で 明ら か にさ れた 特異 な空 間 を有 する二分子 膜構造(モデルI.)を確認 す るた めに 、 アゾ ベン ゼン 二 分子膜/ アルキルスルホン酸ナトリ ウム固定化フイルムの分光学 特 性とX線 回折 測定 を 行っ たっ 特異 な空 間 を持 たな い二 分子膜で は、アルキルスルホン酸ナト リ ウム は二 分 子膜 内に 取り 込 ミれ ない 。一 方、 モ デルI の二分 子膜では、特異な空間にアル キ ルス ルホ ン 酸ナ トリ ウム が 取り込ま れて固定化され、特異な空 間の存在を間接的に確認する ことがで きた。
第四 章で は 、電 子受 容性 の ビオ ロゲ ン基 を有 す ろア ゾベ ンゼ ン二 分 子膜 (CnAzoCmVZ+)と 種 々の アニ オ ン性 電子 供与 体 との 電荷 移動 錯体 の 形成 を検 討し た。CnAzoCmV゛ 二分子膜は、
会 合構 造と 化 学構 造の 相関 性 から ニつ の異 なっ た 会合 構造 をす るこ と がで きる 。CnAzoCmV+ の 会合 特性 の 述い は、 錯体 の 形成に影 響を与えると予想される。 実際に異なる会合構造では、
電 子供 与体 と の電 荷移 動相 互 作用に述 いが見られた。傾いた二分 子膜構造では、二分子膜表面 に 電子 供与 体 が吸 着し て電 荷 移鋤棚互 作用が起きた。入れ子構造 では、電子供与体が二分子膜 表 而の ビオ ロゲン配列にぁF入されて屯 荷移勁棚互作用が行われた ,それ故、屯子供与体の形状 が 、錯 体形 成 に大 きな 影響 を 与えた。 ビオ口ゲンと同じサイズの 屯子供与体の場合は、会合榊 造 を維 持し た まま 錯体 形成 が 行われた 、一方、屯子供与体が少し でも大きくなると、会合構造 を乱して 錯体を形成した.・
本研究 におぃて明らかにされた二 分子膜の会合桝造と化学構造の相f瑚性は、二分子膜以ウ←の Langiriiiir・BIo clgett(LB)膜など膜形成化合物が作ろ全ての分子集合体にも応用することがで き ろと 思わ れ 非常 に重 要な 知 見であろ ュまた分子備造を決めるこ とで会合構造を予測できるこ と は、 従来 の 大量 の化 合物 を 合成し二 分子膜を作製して目的の会 合俳造の二分子膜を得る方法 か ら、 より 短 時間 で簡 単に 目 的のもの を見つけだすことができ、 二分子膜を用いた機能性材料 への応用 に新たな展開方法を示し非 常に意義深いものであろ。
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学位論文審査の要旨 主 査 教 授 下 村 政 嗣 副 査 教 授 魚 崎 浩 平 副査 教授 喜多村 昇
学 位 論 文 題 名
二 次元分子 集合体 の分子設計に関する研究
二 分 子 膜 は 、 生 体 膜 に 見 ら れ る よ う に 両 親 媒 性 化 合 物 が 自 発 的 に 会 合 し た 二 次 元 分 子 集 合 体 で あ り 、LB膜 や 単 分 子 膜 と な ら ん で 分 子 素 子 の 実 現 化 を 担 う 材 料 と し て 注 目 さ れ て い る 。
本 論 文 は 、 ア ゾ ベ ン ゼ ン 発 色 団 を 有 す る 二 分 子 膜 を 作 製 し 分 子 構 造 と 二 分 子 膜 構 造 の 相 関 性 を 明 ら か に し た 研 究 で 、 新 た な 分 子機 能 材 料の 分 子 設 計指 針 を 明か に し たも の で ある 。 疎 水 部 分 に ア ゾ ベ ン ゼ ン 発 色 団 を 含 む 長 鎖 ア ル キ ル ア ン モ ニ ウ ム 塩 は 、 水 中 で 自 発 的 に 会 合 し 二 分 子 膜 を 形 成 す る こ と が 知 ら れ て い る 。 二 分 子 膜 中 に お け る ア ゾ ベ ン ゼ ン 発 色 団 の 吸 収 ス ペ ク ト ル は ア ル キ ル 鎖 長 に 依 存 し て 様 々 に 変 化 し 、 い く っ か の 化 合 物 に 関 し て は 単 結 晶 構 造 解 析 が な さ 、 れ 、 発 色 団 の 配 向と 吸 収 スペ ク 卜 ル の間 に は 何ら か の 相関 性 が ある も の と 考 え ら れ て い た 。 し か し 、 水 溶 液 中に お け る二 分 子 膜 の構 造 解 析は 極 め て困 雑 で あり 、 ま た 単 結 晶 の 作 製 も 必 ず し も 容 易 で は な く 、 化 学 構 造 と 分 子 配 向 お よ び 分 光 学 的 特 性 と の 相 関 性 を 明 ら か に す る 研 究 は ほ と ん ど 手 っ か づ で あ っ た 。 申 請 者 は 、 二 分 子 膜 水 溶 液 か ら 作 製 し た キ ャ ス ト フ ア ル ム 中 に お い て も 二 分 子 膜 構 造 が 維 持 さ れ る こ と に 着 目 し て 、 固 定 化 フ ィ ル ム を 作 製 し そ の 紫 外 可 視 吸 収 ス ベ ク 卜 ル な ら び にX線 回 折 を 測 定 し た 。43種 の ア ゾ ベ ン ゼ ン 化 合 物 を 新 た に 合 成 し て そ れ ら の デ ー タ を 系 統 的 に 検 討 し た 結 果 、 固 定 化 二 分 子 膜 の 化 学 構 造 、 と り わ け ア ル キ ル 鎖 長 と 会 合 構 造 の 相 関 性 を 明 か に し た 。 固 定 化 二 分 子 膜 中 に お け る 分 子 会 合 状 態 が 両 親 媒 性 化 合 物 の ア ル キ ル 鎖 の 長 さ と 組 み 合 せ に よ っ て6 つ の 分 子 配 向 状 態 に 整 理 で き る こ と を 明 か に し 、 さ ら に 二 分 子 膜 中 に お け る 分 子 配 向 が 、 両 親 媒 性 化 合 物 の 親 水 基 と 疎 水 基 の 断 面 積 の バ ラ ン ス に 支 配 さ れ る こ と を 見 い だ し た 。 本 論 文 で 得 ら れ た 結 果 は 、 二 次 元 分 子 集 合 体 の 構 造 特 性 を 利 用 す る こ と で 化 学 構 造 か ら 会 合 構 造 を 予 測 す る 、 ま さ に 二 次 元 系 の ク リス タ ル エン ジ ニ ア リン グ で ある 。 そ こで 申 請 者は 、 ア ゾ ベ ン ゼ ン 二 分 子 膜 で 得 ら れ た 化 学 構 造 ー 会 合 構 造 相 関 の 一 般 化 を は か る た め に 二 分 子 膜 中 に お け る 電 荷 移 動 錯 体 の 設 計 を 行 っ た 。 特 定 の ア ル キ ル 鎖 長 を 選 択 す る と 、 分 子 軸 が 膜 面 に 対 し て 大 き く 傾 き 親 水 基 と 隣 接 す る 分 子 の 疎 水 基 が 著 し く 接 近 す る 。 そ こ で 、 親 水 基 に 電 子 受 容 性 の ビ オ ロ ゲ ン 基 を 疎 水 部 に 電 子 供 与 性 の ビ フ ェ ニ ル 基 を 導 入 す る こ と で 、 予 想 ど う り に 隣 接 分 子 間 で 電 荷 移 動 錯 体 が 形 成 さ れ る こ と を 実 証 し た 。