• 検索結果がありません。

学位論文内容の要旨

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "学位論文内容の要旨"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 理 学 ) 桃 野 直 樹

学 位 論 文 題 名

Electronic Specific Heat in the Superconducting State of La2.XSrXCu04 (La2̲XSrXCu04 の超伝導状態における電子比熱)

学位論文内容の要旨

1.序諭

  従来型の超伝導は、2個の電子がフエノンを媒介とする引カによって対(クーバー対)を 形成し、ポーズ凝縮することによって生じる。銅酸化物高温超伝導も、従来型の超伝導体と 同様、クーパー対のポーズ凝縮によって起こることが多くの実験によって確認されている。

しかし、クーパー対を持たらす引力機構については、まだ明らかになっていない。クーパー 対を作る引力機構は超伝導ギャップの対称性と密接に関係しているため、銅酸化物高温超伝 導 の 発見 当 初 から 、 そ の ギャ ッ プ の対 称 性 を調 べ る 研究 が数多 くなさ れてきた 。   銅酸化物高温超伝導体では、超伝導相が反強磁性絶縁体相に隣接して存在し、しかも、超 伝導相においても大きな反強磁性のスピン揺らぎが残っている。大きな反強磁性スピン揺ら ぎが存在し、電子間のクーロン斥カが強い場合、逆向きスピンの電子が少し離れて対を形成 するd波超伝導が実現しやすいと考えられる。しかし、長い間、高温超伝導のギャップの対 称性が、従来型と同様な ぷ 波か、あるいは、強い電子相関系で期待される d 波かを巡 って大きな論争が続いてきた。これは、主に試料作成の難しさに起因すると思われ、如何に 良 質 な 試 料 を 作 成 す る か が 論 争 を 解 決 す る た め の 鍵 と 考 え ら れ る 。   本研究では、代表的な銅酸化物高温超伝導体の1つであるLa2̲xSrxCu04 (LSCO)の極めて 良質な試料の作成を行い、この系の超伝導ギャップの対称性を低温電子比熱、及び、超伝導 に対する不純物効果から調べた。

2.実験

  比熱は1.5〜  10Kの温度範囲において断熱ヒートパルス法によって測定した。磁化率の測定 はQuantum Design社製のMPMS磁化測定装置を用いて行った。

3.実験結果と考察

(i) La2̲xSrxCu04の低温(T 紅)における電子比熱

  La2̲xSrxCu04 (0.16<x<0.22)では、比熱のcrr vs.fプロットが8K以下で上に凸の曲線 となる。このような比熱の温度依存性はT2項とア頂の和で良く再現できる。f項はなを添 加して超伝導を完全に抑制した試料の格子比熱のア項に一致することから、T2項は超伝導状 態の電子比熱Celと考えられる。電子比熱のT2依存性は、超伝導の準粒子状態密度Ns(E)が エネルギーの1次に比例(Nヨ(E)KE)することを意味し、この系の超伝導がd波超伝導のよ うなラインノード超伝導体であることを強く示唆している。

  ところで、ラインノード超伝導体に少量の不純物を添加し、超伝導がギャップレス状態に 移行すると、フウルミ準位の状態密度Nヨ(EF)が回復し、Nヨ(E)のエネルギー依存性も2次的 となる。このため、電子比熱Celには、T2項に代わって、T‑linear項とf項が現われるもの と思われる。実際、0.5%のZnを添加した試料において、比熱のC/T vs. T2プロットは直線と

‑ 39

(2)

なり 、電 子 比熱のT2項が消 失し、代わってT‑linear項 とア項が現れることを確認し た。この よう な電 子 比熱 の振 る舞 いか ら 、La2̲xSrxCu04で 見 られ る比 熱のT2項がラインノ ード超伝 導体に固有な電子比熱 であることが確認された。

  ラ イ ン ノ ー ド を 持 つ2次 元d波超 伝導 体で は、 電 子比 熱CelのT2項 の係 数aは弱 結合 極 限 においてr1(3.288弧/ &)で与えられる。ここで、&と弧はそれぞれd波超伝導体の超伝導ギャ ップ の大 き さと 常伝 導状 態の 電 子比 熱係数で、nはフ ェルミ準位の状態密度のkx‑k面内の異 方性 に関 係 する バラ ヌー タで あ る。n 1を仮定して、aと弧から求めた2ふは、x印 ,16では 2△d281Kと なり 、Qlenら によ る ラマ ン散乱の結果(x印.17、2&二二284K冫やYarnadaらに よる中性子散乱の結果(x印.15、2&二ニ23い260K)とほぼ一致する。本研究で得られた超伝導 ギャ ップ2& を用い、2△/kBTcを見積もると、TCの最も 高いx印.16の試料では7.5、TCが急 速に低下するx冫O.2の 試料では4となる。後者の値 は、、弱結合極限のd波超伝 導体における 値(4.26)に近く、x冫0.2の超伝導は弱結合領域にあるものと考えられる。また、超伝導ギャ ップ に関 し て大 変興 味深 いこ と は、 比熱から求めた2&の大きさが、スピン系に特 徴的なェ ネルギー.と相関して いることである。いC0では、 常伝導状態のスピン磁化率はある温度Tnッ でプ口ードなピークを 示した後、低温側で大きく減 少する。T ー以下でのスピ ン磁化率の大 きな 減少 は 、のスピン間の 反強磁性相互作用により何 等かのスピン一重項状態が発 達するた めで 、kBTnーは反強磁性相 互作用の大きさに相当する ものと思われる。そして、こ のkBTIー が、 様々 な ホー ル濃 度に おけ る2ムに 比 例す るの であ る。 こ のこ とは 、超 伝導 の 発現 にの ス ピ ン 間 の 反 強 磁 性 相 関 が 深 く 関 与 し て い る こ と を 示 唆 す る も の で あ る 。

(めLa2̲xSrxCu04の超 伝導に対する不純物効果

  上 記のT2に比 例す る電 子比 熱 は、d波 超伝導以外にも、フ ェルミ面の線上でギャップが 消 失す る 異 方的 なJ波 超伝 導で も観 測 され 得る 。超 伝導 ギ ャッ プが d波 か 異方的 ぷ 波 かを 区 別す る方 法の1っ とし て、 超 伝導に対する非磁性 不純物効果が知られている。 こ れは、 d波 超伝導 体では微量の非磁性不純物で ギャップレス状態が実現し 、Ns(EF)が大き く回 復す る のに 対し、 異方的ぷ 波 超伝導体ではノード付 近のギャップが逆に増大され 、 Nヨ(EF)は零のまま変 化しないからである。

  と こ ろ で 、LSCOのCuサ イ 卜の 一部 を 異元 素で 置換 する と 、周 りのCuサ イ トに 局在 磁気 モー メン ト が誘 起される。しかし 、Niは例外的に、その濃度 がある臨界値Yo以下の場合、 局 在磁 気モ ー メン トを誘起せず、単 なる非磁性不純物として振 る舞うことが報告されている 。 そこ で、 本 研究 では 、非 磁性 不 純物 とし てYo以 下の 微量 なNiを添 加した場合、超伝導状 態 にお ける フ ェル ミ準位での状態密 度Ns(EF)がどう変化するか を電子比熱のT‑linear項から 調 べた 。そ の 結果 、Niの添 加に よ ってNs(EF)が零から回復して くること、即ち、d波超伝導 体 に 特 徴 的 な 微 量 な 非 磁 性 不 純 物 に よ る ギ ャ ッ プ レ ス 状 態 へ の 移 行 が 確 認 で き た 。   一 方、 周 りのCuサ イト に局 在 磁気 モー メン ト を誘 起す るZnを添 加すると、系の超伝導 は 非常 に大 き く抑 制され、これに伴 って電子比熱烏に大きなT‑linear項が現われてくる。そ の 係 数YとTeを そ れ ぞ れ 常 伝 導 状 態 の 電 子 比 熱 係 数 弧 とZnを 添加 しな い試 料 のTe、即 ち、

Tc0で規 格化 し、 様 々なZn濃 度に つい て プロ ット する と、 ラ イン ノードを持つd波超伝導 体 でユニタリー極限の不 純物散乱によって対破壊が 起こる場合の理論曲線と一致する。従って、

Znに よる 強 い対 破壊 効果 も、 こ の系 がd波超伝導体であると して良く説明できることが分 か った。

  以 上、 本 研究 では 、La2̲xSrCu04(LSCO) のT〈くTcに おけ る電 子 比熱 のf依存 性お よび 超 伝 導 に 対 す る 不 純 物 効 果 か ら 、 こ の 系 の 超 伝 導 が d波 で ある こと が 結論 でき た。

‑ 40−

(3)

学位論文審査の要旨 主 査    教授    伊 土政 幸 副 査    教授    熊 谷健 一 副 査    教授    大 川房 義 副 査    教授    榊 原俊 郎 副査   助教授   小田   研

学 位 論 文 題 名

Electronic Specific Heat in the Superconducting State of La2̲XSrXCu04 (La2̲XSrXCu04 の超伝導状態における電子比熱)

  銅 酸化 物高 温超 伝導 の 発見 から10年 経っ が 、そ の発 現機 構 はま だ明らかになって いなぃ。

銅 酸 化物 高温 超伝 導体では超 伝導相が反強磁性絶縁相に隣 接し、超伝導相でも大きな 反強磁性 ス ピ ン揺 らぎ が残 るため、高 温超伝導の発現に反強磁性相 互作用が深く関与している と予想さ れて いる。一般に、反強磁性相 互作用が超伝導をもたらす場 合、超伝導ギャップの対称 性は、d 波 タ イプ にな ると 考えられる 。このため、高温超伝導体の 発見当初から、超伝導ギャ ップの対 称 性 を明 らか にす る努カが続 けられてきた。しかし、試料 作成の難さや測定技術上の 問題によ り 、 高 温 超 伝 導 の ギ ャ ッ プ の 対 称 性 は 最 近 ま で 確 定 さ れ て い な か っ た 。   以 上の 研究 状況 を踏 ま え、 申請 者は 、代 表 的な 高温 超伝 導 体の1っであるIA2エSr薑Cu04の 良 質 な試 料を 作成 し、この系 の超伝導ギャップの対称性を 電子比熱の温度依存性、お よぴ超伝 導 に 対す るCuサイ ト不 純 物効 果か ら調 べた 。 さら に、 超伝 導 状態 の電子比熱の温度 依存性か ら 、 超 伝 導 ギ ャ ッ プ の 大 き さ を 見 積 も り 、 そ の ホ ー ル 濃 度 依 存 性 を 系 統 的 に 調 べ た 。   得 られた研究成果を以下に列 挙する。

(1) La2̲xSrCu04(0.16くx≦0.22)の電子比熱が、超伝導転移温度Tcより十分低温(R灯。)で 温 度 の2乗 卩2)に 比例するこ とを初めて明らかにした。さ らに、微量の不純物によっ て、電子 比 熱 のf項 がTとf項 の 和 へ と 変 化 す る こ と を 示 し 、La21薑SrxCu04の 超 伝 導 が2.次 元d波 超伝 導のようなラインノード型 であることを明確にした。

(2)LahSrxCu04でのNi不 純物 は 、Ni濃度 があ る臨 界 値に 達す るま では 、 非磁 性不 純物 と し て 振 る舞 うが 、こ の場合、系 の超伝導はギャップレス状態 へ移行することを明らかに した。微 量 の 非磁 性不 純物 によるギャ ップレス状態への移行は、超 伝導ギャップの符号がノー ド毎に変 わ る こ と を 意 味 す る こ と か ら 、La2・xSrxCu04がd波 超 伝 導 体 で あ る と 結 論 づ け た 。

(3) 一方 、Zn、Ga等 の不 純物 は 、周 りの のサイト上に局 在磁気モーメントを誘起し 、Tcを著 し く 抑制 する 。こ の時 、TくくTcでの 電子 比熱係数Yが大 きく回復するが、申請者はこ のY値の 回 復 とTc低 下 と の 関 係 が 、2次元d波 超伝 導体 にお け るユ ニタ リー 極限 の 不純 物散 乱の 結 果 とし て良く説明出来ることを明 らかにした。

く4) さら に、 申 請者 は、 電子 比 熱のf項か ら 超伝 導ギ ャッ プ の大 きさ2ふを見積もり 、2ムの ホ ー ル 濃 度 依 存 性 を 調 べ た 。 そ の 結 果 、La2.xSXCu04の2ム はCuスピ ン 問の 反強 磁性 相 互 作 用 の大 きさ と相 関し て いる こと を初 めて 見 い出 した 。こ の 結果 は、超伝導の発現 にCuスピ

41― ・

(4)

ン間の反強磁性相関が深く関わっていることを強く示唆するものであり、高温超伝導の発現機 構に関する新たな知見の1っとして大きな注目を集めている。

  以上の申請者の研究は、比熱という熱力学量の精密測定からLa2.xSrCu04がd波超伝導体 であることを明確に示しただけでなく、高温超伝導の発現機構に関する新たな実験的知見をも たらしたもので、高い評価を受けている。また、本研究に関連する申請者の10編の論文は、

いずれも権威ある国際学術誌に発表されている。よって審査員一同は、著者が博士(理学)の 学位を受けるに十分な資格を有すると認めた。

42 ‑

参照

関連したドキュメント

氏名 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目

氏名 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目

図2に実験装置の概略を,表1に主な実験条件を示す.実

認定研修修了者には、認定社会福祉士認定申請者と同等以上の実践力があることを担保することを目的と

事象発生から 7 時間後の崩壊熱,ポロシティ及び格納容器圧力への依存性を考慮し た上面熱流束を用いた評価を行う。上面熱流束は,図 4-4 の

事象発生から 7 時間後の崩壊熱,ポロシティ及び格納容器圧力への依存性を考慮し た上面熱流束を用いた評価を行う。上面熱流束は,図 4-4 の

核分裂あるいは崩壊熱により燃料棒内で発生した熱は、燃料棒内の熱

核分裂あるいは崩壊熱により燃料棒内で発生した熱は、燃料棒内の熱