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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 鈴 木 昌 裕

学 位 論 文 題 名

Study on Rgulatory lI¥/Iechanisms of the Expression    of Genes Coding for Isocitrate Detydrogenase Isozymes of a Psychrophilic Bacterium, Vibrio sp. Strain ABE‑1

(好冷菌ビブリオABE ―1 株のイソクエン酸脱水素酵素

    

.アイソザイムの遺伝子発現調節に関する研究)

学 位論文内容の要旨

  あらゆる生物|ま様々な環境に適応して生息している。細菌の世界では真核生物と比べて、

さ らに 厳しい 環境でも 適応し て生育す る種類カjか っている 。温度 環境への 適応もそ の ひとつ である 。好熱菌や高度好熱菌の発見とともに、細菌の高温適応に関する研究は細胞 から分子レベルまで数多く報告されているが、―亠方の低温適応についての報告はまだ少な い。本 研究で は好冷菌の低温適応戦略を解明するためのアプローチのーっとして、好冷菌 ピブル オABE1株 のイソ クェン酸 脱水素酵素アイソザイム・IaDH‑I)と‑II (IDH‑II)の遺 伝子発 現調節 機構につ いて調 べた。IDH‑Iは二 量体の酵 素で、 大腸菌IDHとアミノ酸配列 の相同 性が高 く、広く生物界に分布している。他方のIDH‑IIは単量体であり、その酵素を 持 つ種 の 報 告例 は 少 な い。 本 菌のIDH‑IIは20℃で 最大活陸 を示し 、25℃以上 で失活 す る低温 適応酵 素である 。一般 に細菌は どちらか一方のIDHのみを持っが、本菌はその両方 を 有し て い る点 で 他 に 報告 の 例 がな い 。IDH‑I‑IIを コ ード してい る遺伝子 (´Z泌 ん 卿) の ク ロー こ ン グ とシ ー クエ ンスが当 研究室 でなされ た時、 単量体Imの 全塩基 及 びアミ ノ酸配 列の初めての報告であった。本研究はこれまでの研究を引き継ぎ発展させた ものであり、第一章は両遺伝子の発現調節機構の違いについての研究報告、第二章はIDH・ IIの遺伝子発現と低温適応との関係についての研究報告である。

  まず 、これらの遺伝子の転写開始点をプライマー伸長法で同定してプロモーター領域を 推定し た。こ れによっ て、両 遺伝子が 染色体上ではm艀|庇ガの順番で同方向に連続して 位置し ている が、別々に転写されていることを示した。そしてこれらの遺伝子を別々に人 腸菌に 導入し て発現さ せた結 果、グル タミン酸要求陸をもつIDH欠損株の大腸菌はいずれ の 場合 で も 野性 型 に 復 帰し た 。( 丘ガでは37℃培養 、励カソ では15℃ 培養)。 これは 大腸菌 で発現 した両遺伝子産物、即ちIDH―Iと―IIが共に同じ生理機能を発揮しているこ とを示 してい る。ところが、ん泌ゾを導入した大腸菌を37℃で培養した場合には野陸型に 戻らな かった 。ウェス タンプ ロットに よって37℃でもIDやII蛋白質が検出されたので、

37℃で 遺伝子発 現はする ものの 、その温 度不安 定さゆえ に酵素 活陸を失ったと結諭され た。っ ぎに両 遺伝子の転写調節について、ノーザンプロット法で調べた。その結果、酢酸 を生育 培地に 加えると 、大腸 菌および ピプリ オABE1株細 胞内でともにんガの転写量は

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10倍 に まで 増加 した 。し かしicdlの転 写量 には 何の 変化 も認 められなかった 。また この とき大腸菌細胞内ではIDやI蛋白質が燐酸化を受けて失活する一方で、ピブリオABEI 1株細胞内では燐酸化されずに失活もしないことカ嗣!認された。このような酢酸で誘導さ れ る´Zガの 調節機構は、大腸菌の酢酸で誘導されるa粥オペロンのプロモーター 領曦と 励 ケの プ ロモ一夕ー領域 に高い相同性が見っかったことで、鯔オベロンと同様な 調節が 行わ れていると説明できる。一方励カr/の転写は両細胞内で温度の影響を受けていること が わ か っ た 。 大 腸 菌 を15℃ で 培 養 す ると37℃培 養と 比較 して 、そ の転 写産 物量 が10 倍 以 上 に 増加 し てい た。 同様 な結 果が0℃ と15℃ 培養 のピ プリ オABp1株 の比 較で も得 ら れた 。 また りフ ァン ピン を用 いた 嚠岨安定陸の測 定実験では、両IDHの齦NAの 安定陸 は 大腸 菌 内で殆ど同じで あった。従って低温培養による応ガの転写産物量の増加 は、転 写 の誘 導 によ る増 加で ある と結 論で きた。血船のプ ロモーター領域にはCcAATと いう塩 基配 列があり、この配列は大腸菌で低温誘導陸プロモーター領域の共通モティーフと考え ら れて い る。この塩基配 列がん桝の転写でも機能している可能性があるので、こ の配列 を 取り 除 いたプラスミッ ドをPcR法で作成した。そし て、CcAAT配列を除いた遺伝 子では 低 温誘 導 が全 く観 察さ れな くな る結 果を得た。この ことはCCAAT配列カ憾誘導に 不可欠 であ ることを示している。さらに上流域に調節領域がないかを調べるために、デリーショ ン プラ ス ミッ ドに よる 発現 実験 を行 った結果、転写 開始点からおよそ530塩基対 上流に 35塩基 対 の範囲で低温発 現を抑制する塩基配列があることがわかった。この観曦 を欠失 させ た遺伝子は′勿_′/の転写量が約20倍に増加した。この塩基配列は既知のシス―エ レメ ントの配列とは全く相同性がなく、新規な配列であった。また、この配列に特異的に 結合 する蛋白質がゲルシフト検定により大腸菌で検出されたが、ピブリオABE・1株では検 出 され な かった。これら のことより、んむりは大腸菌内でニつの異なるむ調節領 域の発 現 制御 を 受け てい るこ とが わか った 。即ち、530塩基対上流の特異的蛋白質が結 合する 部 位と 、 プロモーターの ・35領域より僅か2塩基対上 流にあるcCAATという配列で ある。

大腸 菌の低温誘導遺伝子では、そのプ口モーター領曦にあるCCAAT配列に特異的に作用す るCS74という蛋白質が 知られている。このCS7.4が血ガの低温誘導に関与して いる可 能 性が 高 い。この励カr/遺伝子を大腸菌に導入して 栄養培地で生育させると、低温(l 5℃)での生長速度が促進されることがわかった。ん泌ゾを持たない株は生育の倍加時間が ll3時間であったが、´Zばrを 持つ株は6.8時間にまで短縮された。この時の発現ベク タ ーに は 上述 の35塩基 対の 領域 を除 いて ある もの を用 いた 。こ れを35塩基対の 領域を も っも の で調べてみると 、中間の9.1時間を示した。このことはIDやII蛋白質の 発現量 が大 腸菌の生長速度に直接影響していることを示している。また上述の全ての大腸菌株は 最 少合 成 培地上で培養し ても10℃という低温条件下ではコロニーを全く形成しな いが、

しか し0.05%の酵母抽出液を培 地に加えると、ん励項駢云子を持っている大腸菌だけが コロニーを形成し,た。アゾレクチンやカザミノ酸を培地に加えても効果はなかった。っま り、IDいIIが大腸菌の最低生育可能温度を低下させる働きを持ち、また酵母抽出液に含ま れる 、ビタミンや塩基などの生合成過程がその現象に直接関係していると考えられる。以 上 のよ う に好冷菌ビブリ オABE―1株のIDいII遺伝子とそのプ口モーターとの組み 合わせ は 、 細 菌 の 低 温 適 応 に 重 要 な 役 割 を 負 っ て い る こ と を 強 く 示 唆 し て い る 。

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    米 田 好 文 副 査    教 授    落 合    廣

副査   助教授   福永典之

副査   教授   吉田静夫(大学院地球環境科学研究科)

学位論文題名

Study on Rgulatory IVIechanisms of the Expression     of Genes Coding for IsocitrateDetydrogenase Isozymes of a Psychrophilic Bacterium, Vibrio sp. Strain ABE‑1

(好冷菌ビブリオABE ー1 株のイソクエン酸脱水素酵素

    

アイソザイムの遺伝子発現調節に関する研究)

  生物の環境への 適応、とりわけ温度適応現象についての生理、生化学的 研究は、多く の研究者の関心を 集め、様々な生物を材料とした研究が行われている。し かし、この分 野に分子生物学的 研究法が導入されたのは、最近になってからであり、主 として、常温 生物が急激な温度 ストレスを受けたときに対応する遺伝子発現調節に関するものである。

恒常的に低温、あ るいは高温に適応した生物の遺伝子発現温度制御に関す る研究は、未 開拓な分野であり 、生物の温度適応、進化を考察する際に、今後の発展が 待たれている 状況にある。

  本研 究は 、こ のよ うな 現況 にあ る 生物 の低温適応について、0 0Cで活発に生育 する 好 冷菌 ビブ リオABE‑1株を 用い て、 遺伝 子発 現の 温度 調節 機構 を 分子生物学的に 研究 し、好冷菌の低温 適応戦略を分子レベルで明らかにすることを目的として 行われたもの で ある 。申 請者 は、 この 目的 のた め 、先 ず、 既に 好冷 菌ビ ブリ オABE‑1株からク ロー ニングされている イソクエン酸脱水素酵素アイソザイム遺伝子、iccU、icdU、の大腸菌 内での発現系を作 製し、遺伝子発現におよばす形質転換体の培養条件を検 討した。その 結果、ictU遺伝子 の発現は、培地中に酢酸が存在するときに、また、icdU遺伝子の発現 は、培養温度を低 下させたときに、それぞれ特異的に誘導されることを見 出した。icdl プ ロモ ータ ー領 域に は、 酢酸 誘導 に 関わ る塩基配列が存在していた。icdUにコー ドさ れ るア イソ ザイ ムIDH‑IIは、 低温 で 高い 酵素活性を保持する。このため、icdU発 現の 低 温誘 導性 に関 する研究を集中的に進めた。icロWプロモーターの低温誘導性に関 わる シス塩基配列を特 定するため、プロモーター上流の非翻訳領域(1,700塩 基対)塩基配 列を決定し、コン ピューターによる検索を行ったが、遺伝子発現を制御す ると報告され ているシス塩基配 列は見いだせなかった。このため、プロモーター上流域 を段階的に削 除 し、 遺伝 子発 現の 低温 誘導 性を 調 べた とこ ろ、 転写 開始 点の522塩基対上流に ある 35塩基 対か らな る配 列が 、低 温誘 導 を抑 制する因子として作用すること、また、 転写

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開 始 点 の37塩 基 対 上 流 のCCAAT配 列は 、低 温誘 導に 必須 の因 子と して 作用 して いる ことが分かった。さらに申請者は、形質転換された大腸 菌の低温での生長速度が、低温 で発 現さ れたIDH‑Hの レベ ル に依 存す るこ とを 発見 し、 低温 に適応した酵 素(IDH‑II) と低温誘導性プロモーターがセットになっていることが 、低温適応上、重要な戦略とな っていることを証明した。

  これを要するに、著者は、好冷菌の低温適応について 分子生物学的な新知見を得たも の で あ り 、 生 物 の 温 度 適 応 の 分 子 論 的 解 明 に 貢 献 す る と こ ろ大 なる もの があ る。

  よって、著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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参照

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