博 士 ( 理 学 ) 中 西 卓 也
学位論文題名
Structure and Photoelectrochemical Properties of Semiconductor‑Nanoparticle ComposlteLayered FilmSFabriCatedonMetalSurfaCe
(金属表面上に構築した半導体超微粒子複合膜の構造および光電気化学特出
学位論文内容の要旨
ナ ノ構 造、すなわち数〜数十nm領 域の構造を有する集合体は、 自然科学における種々 の現 象を 理解する上で興味深い対象 である。また、ナノ構造を任 意に設計・合成する手 法の 確立 は、デバイスやセンサーを 指向した新たな物質の創製や 物質の機能発現機構の 解明 な′ どの点で注目される。粒径 が数nm程度の半導体超微粒子 は、量子サイズ効果に よっ てバ ルクとは異なる離散的な電 子状態をとり、粒径の減少と ともにバンドギャップ ェネ ルギ ーが増大することが知られ ている。半導体超微粒子の物 性に関する研究は媒質 中に 分散 した系におけるものが多い が、超微粒子を固体基板上へ 固定・配列させること によ り、 分散系にはない新たな機能 の発現や超微粒子の特性を利 用した機能性表面の創 製が 期待 できる。固定系において超 微粒子としての機能を活用す るためには、超微粒子 同士 を接 触させずに適度な距離を保 ったままで基板に固定するこ とが必要であり、有機 分子 によ る基板―超微粒子間および 超微粒子―超微粒子間の架橋 が試みられている。本 研究 では 、逆ミセルを用いて調製し た半導体超微粒子を、安定で 配向性の高い自己組織 化 分 子 層(SAM)を 介 し て 固 体 基 板 上 に 固 定 す る こと によ って 「 単粒 子層 」と して 配 列・ 固定 するとともに、構築した超 微粒子複合膜の構造とその光 電気化学特性について 検討を行った。
本論文は五章から構成さ れている。
第1章 では 、ナ ノ構 造を 構 成する 成分として着目される半導体 超微粒子の調製法と物 性に つい て概説し、有機薄膜を用い た超微粒子の基板上への固定 法について総括した。
第2章 で は 、 本 研 究 で 用 い た 試 料 の 調 製 法 と 実 験 方 法 の 詳 細 を 示 し た 。 第3章では、CdS超微粒子 /a りーアルカンジチオー ル複合膜(交互累積膜)の構築と その 構造 評価に関して述べた。CdS超 微粒子は、Cd(Cl04)2とNa2S水溶液をそれぞれ含む Aerosol OT (AOT) /n‑ヘ プタ ン逆 ミ セル 溶液 を混 合す ることに より粒径を制御して調 製した。これをアルカンジチオール(1,6‑ヘキサンジチオールおよび1,10―デカンジチオ ール )で 修飾 した 金 基板 上に 単粒 子 層と して 固定 する と とも に、 チオ ール 基(‑SH)と CdSと の 結合を利用してCdS超微粒子 /ジチオール交互累積膜の構 築を試みた。調製過程
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の 各 段 階 に お け る 構 造 は 、 赤 外 反 射 吸 収 分 光 法 (FT‑IRRAS) 、X線 光 電 子 分 光 法 (XPS)、 誘 導 結 合 プ ラ ズ マ 質 量 分 析(ICP‑MS)、 走 査 型 ト ン ネ ル 顕 微 鏡 (STM)、 お よ び表 面プ ラズ モ ン共 鳴(SPR)を用 いて 多角 的 に検 討し た。 そ の結果、(1)ジチオ ー ルSAM修 飾 金 基 板 をCdSコ 口 イド 溶 液へ 浸漬 する こと に より 、AOT分 子に 覆わ れたCdS 超 微 粒 子 が ジ チ オ ー ルSAM上 に 固定 され 、(2) これ を ジチ オー ル溶 液に 浸 漬す ると AOT分 子が ジチ オー ル分 子 と置 換さ れ、 さら に(3) CdSコ口 イド 溶液に浸漬すると第 二 のCdS超微 粒子 層が形成される 、という累積膜の構築機構 が明らかとなった。また、CdS 超 微粒 子は 三次 元的な凝集を 起こさず、ジチオールで被覆 された金基板上に二次元的 に
「単粒子層」を形成していることを確認した。
第4章で は、 超微 粒子 複 合膜 の光 電気 化学特性について 議論した。光誘起電子移動 に 関 与す る種 々の 要 因を 検討 する た め、 第3章で確立した複 合膜調製法を応用して特性 の 異 なる 種々 の複 合膜を構築し 、それぞれの光電気化学特性 の比較を行った。得られた 複 合 膜の 基本 的な 特性として、 電子供与体を含む電解質溶液 に浸漬した場合アノード光 電 流 が観 測さ れ、 光電流の照射 波長依存性(作用スベクトル )が固定前のコロイド溶液 の 吸 収ス ペク 卜ル と ほぼ 一致 する こ とか ら、SAMを介した固 定過程において半導体超微 粒 子 の特 性が 変化 しないこと、 また、光電流がバンドギャッ プ励起にもとづくことが明 ら かとなった 。超微粒子と金電極の間に位 置するジチオールSAMを脂肪 族(1,6―ヘキサン ジチオールおよび1,10‑デカンジチオール)および芳香族ゆ‐キシレン―Q,a|―ジチオール)
と 変化 させ た測 定から、脂肪 族においては超微粒子一金電 極問距離が長くなると光電 流 が 減少 する こと (デカンジチ オールくへキサンジチオール )、また、超微粒子一金電 極 間 距離 がほ ぼ等 しい場合には 芳香族のほうが大きさな光電 流を与えること(キシレン ジ チ オー ル> ヘキ サンジチオー ル)を明らかにした。三次元 的な幾何構造および電子構 造 の 制御 が期 待さ れ るZnS超 徴粒 子7CdS超 微粒子累積層にお いては、超微粒子の累積順 に 依 存し た光 電流 応答が観測さ れた。金電極側の超微粒子の 応答は溶液側に位置する超 微 粒 子の 応答 に比 ベ抑制される 傾向を、光生成した正孔への 金電極からの電子注入(逆 電 子 移動 )の 影響 と複合膜の電 子構造から検討した。さらに 半導体超微粒子ー金電極間 の 電 子移 動の 制御 を目的として 電子授受基であるフ工□セン 基を有する分子を複合膜中 へ 導 入し た系 にお いては、アノ ード光電流がフェ口セン基の 酸化還元電位よりも正電位 側 で 増大 し、 負電 位側で減少し た。この結果はフ工口セン基 を介した電子移動により、 超 微粒子―金電極間の電子移動制御が可能であることを示している。
第5章では、以上の結果をまとめた。
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学 位 論 文 審査 の 要 旨 主 査
教 授
魚 崎 浩 平 副 査
教 授
中 村 義 男 副 査
教 授
市 川
勝 副 査
教 授
喜 多村
昇 副 査
教 授
大 谷 文 章
学位論文題名
Structure and Photoelectrochemical Properties of Semiconductor
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Nanoparticle ComposlteLayered FilmSFabriCatedonMetalSurf・
aCe( 金 属 表 面上 に 構築 した 半導 体超 微粒 子複 合膜 の構 造お よび 光電 気化 学 特幽
ナノ構造、すなわち数〜数十nm 領域の構造を有する集合体は、自然科学における種々 の現象を理解する上で興味深い対象である。また、ナノ構造を任意に設計・合成する手 法の確立は、デバイスやセンサーを指向した新たな物質の創製や物質の機能発現機構の 解明などの点で注目される。申請者は本研究において、逆ミセル法を用いて調製した半 導体超微粒子を、安定で配向性の高い自己組織化分子層(SAM) を介して固体基板上に
「単粒子層」として配列・固定できることを実証するとともに、構築した超徴粒子複合 膜 の 構 造 と そ の 光 電 気 化 学 特 性 に つ い て 詳 細 な 検 討 を 行 っ て い る 。
具体的にはまず、逆ミセル法によって調整したCdS 超微粒子をアルカンジチオールで 修飾した金基板上に単粒子層として固定するとともに、チオール基(―SH) とCdS との結 合を利用してCdS 超微粒子/ジチオール交互累積膜の構築を試みている。調製の各段階 における構造を、赤外反射吸収分光(FT‑IRRAS).X 線光電子分光(XPS )、誘導結合プラ ズマ質量分析(ICP‑MS) 、走査型卜ンネル顕微鏡(STM) 、および表面プラズモン共鳴
(SPR)を用いて多角的に検討し、CdS 超微粒子は三次元的な凝集を起こさず、ジチオールで被 覆された金基板上 に二次元的に「単粒子層」を形成していることを確認している。
次いで、超微粒子複合膜の光電気化学特性について検討し、バンドギャップ励起にも とづくアノード光電流が幅広い電位範囲で発生すること、SAM を介した固定過程におい て半導体超微粒子の特性が変化しないこと、またSAM の種類(分子長、芳香環の存在)
によって光電流の大きさが異なることを明らかにした。さらに、ZnS 超徴粒子7CdS 超微 粒子累積層や、電子授受基であるフェロセン基を有する分子を複合膜中へ導入した系に ついても検討を行い、電子移動方向の制御にこれらの修飾が有効であることを示した。
本研究は量子サイズ効果を示す半導体超微粒子を固体基板上へ固定・配列させること により、分散系にはない新たな機能の発現や超微粒子の特性を利用した機能性表面の創 製の可能性を示したものとして大きな価値を有する。関連原著論文は5 編あり、いずれ
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も英文で国際誌に掲載または掲載予定である。
以上,審査員一同は申請者が博士(理学)の学位を受けるに十分な資格を有するもの と判定した。
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