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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 永 田 敏 夫

     学位論文題名

    Impurity effects on superconducting     and pseudogap states in La2 ーxSrxCu04

(La2̲xSrxCu04 における超伝導と擬ギャップ状態に対する不純物効果)

学位論文内容の要旨

1.序論

  銅酸化物高温超伝導体が発見されて約15年が経過した。銅酸化物における高温超伝導は、

従来型の超伝導体と同様に2個の電子がクーパー対を形成し、それらがボーズ凝縮することに よって生じる。このため、銅酸化物高温超伝導体の発見当初からその高い臨界温度疋をもたら すクーパ対の引力機構に興味が集中してきた。銅酸化物高温超伝導体では引力機構と密接に関 連する超伝導オータシくラメタの対称性がd波であることから、反強磁性スピン相関がクーパ対 の形成に深く関与していると考えられている。ところで、銅酸化物高温超伝導体では、非磁性 の不純物が磁性不純物よりも強い対破壊をもたらすとぃう特異な不純物効果が知られている。

超伝導における不純物効果はクーパ対の引力機構と密接に関係することから、銅酸化物高温超 伝導体における特異な不純物効果は、高温超伝導をもたらす引力機構を特徴づけるものとして 活発な研究が行われている。

  また、最近、銅酸 化物高温超伝導体に対するNMRの緩和率(五乃Ilや角度分解光電子分光 (ARPES)の実験から、d波超伝導体に対する平均場の臨界温度TcMF (>Tc)付近で電子励起スベク トルに擬ギャップが現れることが見っかった。この擬ギャップはTeで超伝導ギャップに連続的 に移行することから、高温超伝導の発現機構を考える上で大きな注目を集めている。しかし、

代表的な銅酸化物高温超伝導体の1っであるLa2̲エSrxCu04 (LSCO)系では、TcMF付近に小さな比 熱 異常 が現 れる がNMRやARPES等のミクロな実験からは擬ギャップの存在が報告されて い ない。このため、TcMF付近で現れる擬ギャップが銅酸化物高温超伝導体に共通する現象かどう かを明らかにする上で、LSCO系のTcMF付近に現れる比熱異常の起源が大きな問題となってい る。

  本研究では、電子系の性質を支配するホール濃度を系統的に変えることができるLSCO系に ついて、i)超伝導状態に対する特異な不純物効果を電子比熱および磁化率から調べた。また、

めLSCO系のずF(〜P)付近で現れる小さな比熱異常に対する不純物効果から、異常の起源が超 伝導と密接に関連する擬ギャップによるものかどうかを調べた。

2.実験

  比熱は2 ‑120Kの温度範囲で断熱ヒートパルス法によって測定した。電子比熱を求める際に 格子比熱の求め方が問題となるが、本研究では、少量のNiを添加して超伝導を抑制した試料

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(2)

を用 いて格子比熱を決めた。磁化率の測定はQuantum Design社製のMPMS磁化測定装置を用 いて 行った。

3.実験結果と考察

i) La2̲xSrxCu04の超伝導に対する不純物効果

  銅酸化物高温超伝導体のようなd波超伝導体では、従来型のs波超伝導体と違って非磁性不 純物を添加してもノード付近で対破壊が進み、超伝導が抑制される。実際、高ホール濃度の La2̲xSrxM冫4(X二.22)の試料では、非磁性不純物のZn添加による疋の低下やフェルミ準位屏で の状態密度Akの回復(残留電子比熱係数Y0)が、少量の不純物を添加したラインノードのd 波超伝導体に対するユニタリテイー極限で計算された理論結果と定量的に良く一致すること が分かった。また、非磁性不純物であるZnのほうが磁性不純物であるNiよりも強い超伝導抑 制効果を示すことを再確認した。一方、ホール濃度p(ニx)が0.2より低い試料では、Zn添加に よる超伝導抑制効果はユニタリテイー極限の理論結果よりも強いことが分かった。そこで、ユ ニタリテイー極限の理論を少し拡張し、Znの回りの有限な領域で超伝導がほぽ完全に抑制され ると仮定することで、残留電子比熱係数Y0のZn濃度依存性が定量的に説明できることを示し た。さらに、Znの回りの超伝導がほぼ完全に抑制される領域の大きさは、予想に反して超伝導 の相関長亀でなく、スピン系の反強磁性相関長ムFであることを指摘した。この結果は、dス ピンを持たないZnの添加によって周りのChサイト間との磁気チャンネルが断ち切られるため に、周りのdスピン間の反強磁性スピン相関が乱され、その領域では超伝導が著しく抑制され るか、あるいは超伝導が起こらなくなることを意味する。一方、dスピンを持つNiは、周りの Chサイト間の反強磁性スピン相関に組み込まれるために磁性不純物としての働きを失い、超伝 導抑制効果が弱くなることを指摘した。このような不純物効果は、銅酸化物高温超伝導体の引 力 機 構 に 磁 気 的 相 互 作 用 が 深 く 関 与 し て い る こ と を 意 味 す る もの と 考 えら れ る 。

m TcMF (I>T。)の電子比熱異常に対する不純物効果

  LSCO系の電子比熱係数Wよ、d波超伝導体に対する平均場の臨界温度TcMF (>Tc)付近でブロ ード なピーク 状の異 常を示す 。ピー クの低温側では仞淞下することから、LSCOでもBSCCO やYBCO系等と同様にTcMFで擬ギャップが形成されると主張されている。その場合、TcMFで現 れる比熱異常は不純物の添加により、超伝導と同様に容易に抑制されると考えられる。そこで 本研 究では、LSCO系のTcMF付近の小さな比熱異常がZn添加によってどのように変化するか を、超伝導との関連性に注意しながら系統的に調べた。その結果、TcMFでの比熱異常は、少量 のZn添 加により超伝導と強い相関を持ちながら抑制されことが明らかとなり、LSCO系でも TcMF付 近 か ら 擬 ギ ャ ッ プ が 形 成 さ れ る と ぃ う 主 張 を 支 持 す る 結 論 が 得 ら れ た 。

  以上、本研究ではi) La2̲ーSrxCu04の超伝導に対する特異な不純物効果は、周りの反強磁陸ス ピン相関に与える影響を通して現れること、めLSCO系でもTcMF(> Tc.)で擬ギャップが形成され ることを結論した。

(3)

学位 論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

伊土 大川 小野寺 小田

政幸 房義     彰   研

    学 位 論 文 題 名

    Impurity effeCtSOnSuperCOnduCting     andpSeudogapStateSinLa2‐xSrxCu04

(La2. エSrエCu04に お け る超 伝 導 と擬 ギ ャ ップ 状 態 に対 す る 不純 物 効 果 )

  銅酸化 物高温 超伝導体 では、 非磁性不 純物のほ うが磁性不純物よりも超伝導を強く抑制す るとぃ う特異 な不純物 効果が知 られて おり、引 力機構との関連で大変興味がもたれている。

また、 平均場 の臨界温 度疋ぼ付 近から 現れる 小さな 擬ギャップが、高温超伝導の発現機 構を特 徴づけ る現象と して世界 的レベ ルで精力 的な研究が行われている。しかし、代表的な 銅酸化 物高温 超伝導体 の1つであるLa2.xSrxCu04 (LSCO)系では、これまで 小さな 擬ギャ ップの存在が報告されていなかった。

  以上の研究冫伏況を踏まえ、申請者は電子系の性質を支配するホール濃度を系統的に変える こ とが で き るLSCO系に ついて、 超伝導 状態に対 する特異 な不純 物効果を 主に電 子比熱お よ び磁化 率から 調ぺた。 また、LSCO系のTcMF付近 で現れる小さな比熱異常に対する不純物効果 から、異常の起源が擬ギャップによるものかどうかを調べた。その結果、以下の結論を得た。

  i)LSCO系の超伝導に対する不純物効果

,Zn不 純 物を 添加し た際の残 留電子比 熱係数Yoの不純物 濃度依 存性が、 ユニタ リテイー 極 限の理 論を拡 張したモ デルで説明で.きることを示した。さらにその角慚結果からdスピンを 持 たな いZnの 添加に よって周 りのCuサ イト間の 反強磁性 スピン 相関が乱 され、 その領域 で は 超伝 導 が 著し く 抑 制さ れ る こと を 結 諭した 。また、Znに対し てdス ビンを 持つNiは、Ni の スピ ン が 周りのCuサイト問 の反強磁 性スピ ン相関に 組み込 まれるた めに磁 性不純物 とし ての働 きを失 い、超伝 導抑制効果が弱くなることを示した。これらの結果fま、銅酸化物高温 超 伝導 体 の 引力機構 に反強 磁性スピ ン相関 が深く関 与して いること を示す大 変興味 深いも ので、大きな注目を集めている。

II)LSCO系のTcMF付近で現れる電子比熱異常

  LSCO系 の 電 子比 熱 係 数Yは 、d波超 伝 導体に 対する!F均 場の臨界 温度で 灯付近で プ口ー ドなピーク状の異常を示し、ピークの低温側で Yが低下することが知られている。申請者は、

まず疋MF付近に 現れる Yの 小さな 異常の再 現I生 を確認 した。そ して、 少量のZn添加によっ て卩) 異常が 超伝導と 強い相関を持ちながら抑制されことを示し、異常の原因がT.w付近で形 成される擬ギャップであるとの結論を得た。

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  以上の申請者の研究は、高 温超伝導の引力機構や発現機構に関する新たな実験的知 見をも た らす もの とし て高 く評 価できるものである。また、本 研究に関連する申請者の5編 の論文 は、いずれも権威ある国際学 術誌に発表されている。よって審査貝・一同は、著者が博士(理 学)の学位を受けるに十分な 資格を有すると認めた。

参照

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