• 検索結果がありません。

博士(工学)安達成司 学位論文題名

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博士(工学)安達成司 学位論文題名"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

     博士(工学)安達成司 学位論文題名

銅系酸化物超伝導物質の設計に関する実験的研究

学位論文内容の要旨

  陶器 や磁器 など窯 業の 分野に おける 新材料 として ファ インセ ラミッ クスが 注目を集めている。

従来 の窯業 製品の 原料が 吟味・ 選択 された 自然物 であっ たの に対し ,ファ インセラミックスの原 料は 化学精 製され た高純 度なも ので 微細組 織や組 成が高 度に 制御さ れてい る。こうしたファイン セラ ミック スは従 来では とうて い得 られな かった 特性を 有し ている 。近年 ,ファイン化からさら に一 歩進ん で材料 自体が ある機 能を 有する インテ リジェ ント 化も叫 ばれて おり,それを現実する ためには『材料設計』手法の確立が必要不可欠な鍵とされている。

  1986年 にBednorzとMullerに よ っ て セラ ミ ッ ク ス の銅 系 酸 化 物 超 伝導 体 ( 高 温 超伝 導 体 ) が発 見され た。以 来,基 礎デ一 夕の 蓄積お よびそ の応用 に関 する研 究が同 時に世界中で精力的に 行わ れてい る。し かし, 発見か ら間 もない ことも あって 基礎 データ の蓄積 は不十分であり,『材 料設計』手法も未確立である。

  超伝導研究の3本の大きな柱は,(1)新しい超伝導物質の探索,(2)超伝導発現機構の解明,(3)実 用化である。このうち川の新物質探索は(2)(3)にとっても大変重要である。本研究では,鋼系酸化 物超 伝導体 の物性 ・構造 ・合成 方法 に関す るデー タをも とに ,主と して結 晶構造の特徴から新し い分 類法を 提案す る。さ らに, その 分類法 をもと に独自 な『 物質( 材料) 設計』手法を策定し,

新 規な 酸化 物超 伝導体 を合成 するこ とを試 みる 。なお 本研究 では, 比較 的高いTオ が報告 されて お り, 超伝 導発 現機構 のみな らず実 用化の 観点 からも 興味深 いp型の銅 系酸化 物超 伝導体 を研究 の対象とした。

  本 論 文 は 四 っの 章 で 構 成 される 。第1章( 緒言) で本 研究の 意義を 明確に し,第2章 (銅系 酸 化 物超 伝導 体の 作製) では,Tオ を左右 するパ うメー タに っいて 整理し ,数種 の酸 化物超 伝導体 に っい てT。 の 最適 化 条 件 を探 った 。第3章( 結晶構 造によ る分類 および 物質 設計) では, 独自 の 分類 法を 提案 し,そ の分類 をもと に新規 物質 の設計 および 合成を 試み た。第4章 (結言 )で本 研究を総括した。

  酸 化 物 超 伝 導体 は 結 晶 構 造中に 二次元 的に 広がっ たCu・02平面を 有して おり, そこ に適当 な

(2)

キ ャ リ ア を 導入 する ことで 超伝 導性が 現れる ことが 知ら れてい る。し かし, それだ けがTオの 決 定 因 子 で は ない 。 第2章 ではT。 を 左 右する パラメ ータと して 酸化物 超伝導 物質を 構成 するカ チ オ ンの原 子価 とサイ ズ,酸 素の不 定比 性およ び原子 の規則 配列( ordering )注 目し,四っの 物 質(YBaユCuヨO,―y,YBaユCu。0。 ,(Pb7Cu)Srユ(CaZY)Cu:Oッ Tl:Ba2Ca:Cuヨ0,)

に っ い てTよの 最 適化を 試みた 。その 結果 ,注目 したパ ラメ一 夕は 互いに 複雑に 錯綜し ており , 単 純ナょ 操作 ではT。の 最適化 は困難 てある こと が浮き 彫りに なった 。Tオの最 適化方 法は酸化物 超 伝導物 質ご とに異 なって いるこ とを 再認識 した。 また, ここで 得ら れた成 果とし て特筆すべき は ,TlユBaエCaユCuヨOッの高T。 化(T。 (Meissner)二ニ127K)に 成功し たこと であ る。原 子の 規則配列が高T。化に重要であることを実験的に指摘することができた。

  第3章で は , 結晶 構造上 の特 徴をも とに酸 化物超 伝導体 の新 しい分 類法を 提案し た。 さらに , そ の分類 法を もとに 独自の 『物質 設計 』設計 方法を 策定し ,その 実験 的検証 を行っ た。酸化物超 伝 導 体 (p型) は 結 晶 格 子中 にCu・O。 ピラミ ッド 構造を 有して いる。 このピ ラミ ッド構 造の並 び 方にあ る種 の規則 性があ り,こ れを もとに 酸化物 超伝導 体の基 本構 造を次 に示す 四点で特徴付 け ること がで きる。 (1)底面 のCu,0:が 二次元 的に 広かっ たCu・0ヨピラミッド構造を有する。

(2) 同‑ Cu・O: 面で頂 点酸素 のある 方向 がそろっている。(上下両方,上のみ,下のみのいずれ か ),(3)頂点酸素が上にあるCu一0ヨピラミッド二次元平面と下にある平面とが交互に積み重なっ ている。(4)向き合ったCu 0ヨピラミッドの頂点・頂点間(10種類)および底面―底面間(5種類)

の 結晶構 造パ ターン で整理 できる 。こ の結晶 構造パ ターン の組合 せで 既存の 酸化物 超伝導体は全 て 表すこ とが できる 。提案 した分 類法 の最大 の特徴 は 単 純さ と 認識の 容易さ である。ま た ,この 分類 をもと に提案 した表 記法 は結晶 構造と 対応し ており 議論 を進め る上て 便利である。

  この分 類法を もとに 次にあげるニっの物質設計指針をたてた。(1)頂点間および底面間の構造パ タ ーンの 新し い組合 せと,(2)結 晶構造 パタ ーンの 複合化 である 。前 者はCu−Oヨ ピラミ ッド上下 の 結晶構 造パ ターン の組合 せが新 しい 物質を 仮想的 に描き ,構成 する 元素を イオン 半径や原子価 の データ から 選び出 し,実 際に合 成を 試みる 。後者 は,頂 点間お よび 底面間 の構造 パターンを三 つ以上規則配列することで新超伝導体を得よう、とするものである。

  これら 策定し た新規 物質の 設計 指針に 沿った 五っの 新規 物質を 想定( 設計) し,実 験的検証を 行 った。 (l)Bi系 超伝 導体のCu・O:多層 化,(2)Pb系 超伝導 体のCu・Oユ多層化,(3)(Pb/Cu)   (Pr/Sr) 2PrよCu:O, の 合成 ,(4) (Pb7Cu)SrLaCu0, の合 成,(5)T1系超 伝導体 にお けるブ ロック層複合化である。(1),(2)および(5)の試みでは,目的とした結晶構造を有する単一相試料は 得 られな かっ たが, 積層欠陥で部分的に設計した物質が実現されていることが確かめられた。(3)

(3)

およ び(4)の実験では,設計した新規物質の単一相試料合成に成功した。また,設計・合成に成功 した 新規 物質が 両者と も超伝 導を 示すこ とが確 かめら れた。

  第4章 は 結 言 で あり , 本研究 を総括 した。 第1章では ,セ ラミッ クス材 料,特 に酸 化物超 伝導 体の 分野 に『材 料(物 質)設 計』 思想を 導入す ること の意義 を述 べた。 第2章では ,酸化 物超伝 導体 のTよの最 適化 条件検 討をと おして 合成 方向や 結晶化 学にか かわる 基礎 デ―夕 を蓄積 した。

第3章で は,結 晶構 造をも とにし た酸化 物超 伝導体 の分類 法を提 案し, その 分類法 をもと に物質 設計 の方 針をた て,実 験的検 証を行った。その結果として 新規超伝導体 を発見できたことは,

本 研 究 の方 法 論 が 新 し い物 質 の 設 計 手法 と し て 極 めて 有 効 に 機 能し たこ とを実 証して いる。

  最 後に, 今後の 酸化物 超伝 導体の 物質設 計の方 向と して注 目され る方向 にっいて議論し,さら に ,Cuー02二 次 元平 面 を基 礎とし ながら もピラ ミッド 構造 を持た ない銅 系酸化 物超 伝導体 (本 研究 では 除外し た系) にっい ても コメン トする 。

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    阿 部    寛 副 査    教 授    山 科 俊 郎 副 査    教 授    小 平 紘 平 副査    助教授    山谷和彦

  1986年 にBednorzとMullerに よ っ て 新 しい 高 温 超 伝 導体 が 発 見 さ れて 以 来 , 精 力 的な 研 究 がこの 分野で 行わ れてき たが, 現在, その本 質的 な発現 機構の 解明の 基礎 的なデ一夕がようやく 確立さ れっっ ある 段階で ある。 本研究 は,こ の超 伝導体 に関す る初期 段階 において著者が行った 新しい 高温超 伝導 体の探 索に関 する独 自の研 究を まとめ たもの で,全 体の 四章から構成されてい る。

  第1章 は,序 論で, 著者が 新しい セラ ミック 系超伝 導体を 探索 するた めの基 本とな る考え 方と 新材料 合成の 意義 とその 効果に っいて 述べて いる 。

  第2章 は ,酸 化 物 超 伝 導体の 超伝導 転移温 度Tオに対 する カチオ ンの原 子価と サイ ズ,酸 素の 不定 比 , 原 子 の 規則 的 な 配列の 効果に 注目 し,こ れらの パラメ 一夕を 制御 するこ とによ るTcの 向上を 実験的 に試 行した 結果を 述べて いる。 実際 には, これら のパラ メー ターは複雑な相関を示

368

(4)

しており,物理的な予測と化学的な安定性の二面の考察が重要であることを具体的に明らかにし ている。この研究の過程でTlユBa:Ca:Cuヨ0アにおいてT。として当時の最高値127Kを得るこ とに成功している。

  第3章は,本論文の中心となる著者独自の超伝導体探索の指針を明らかにしたもので,酸化物 超伝導体の結晶構造を新たな視点から巨視的な構造パターンによる分類法を提案し,それによる 新らしい超伝導体の探索を実際に試行した結果をまとめて述べたものである。著者は,酸化物超 伝導体中のCu・0ヨピラミット構造に着目し,このピラミッド構造の並び方に注目するとある規 則的な配列パター ンが得られることを初めて提案している。具体的には,次の四点である;

  1) 底 面 の Cu・02が 二 次 元 的 に 広 が っ たCu― 05ピ ラ ミ ッ ド 構 造 を も つ 。   2)同一Cu・02面で頂点酸素のある方向が揃っている。

  3)頂点酸素が上 にあるCu ‑Osピラミッド二 次元面と下の面は交互に積み重なっている。

  4)向き合ったCu―0ヨピラミッドの頂点・頂点間,および底面・底面間の構造パターンをもと に15種類のパタ―ンに分類可能である。

  この分類法によって従来の酸化物超伝導体を整理することより,新しい超伝導体を生み出すた めの指針が得られるという重要な結果をここで示している。著者の提案した分類法は,直感的に 結晶構造を頭に描くことを可能にするもので,その単純さが一方で非常に有効な探索の指針と なっている。

  著者は次に,Cu ‑O。ピラミッド構造の上下に新しい構造パ夕一ンを組み合わせることによっ て新超伝導体の合成を考案し,この構造パターンを構成する元素をイオン半径,原子価のデータ を も と に 選 択 し , そ の 指 針 に よ り 実 際 に 合 成 を 実 行 し て い る 。 具 体 的 に は   1)Bi系超伝導体におけるCu・02の多層化

  2) Pb系超伝導体におけるCu−02の多層化   3)(Pb/Cu)(Pr/Sr) 2Pr2Cu20,の合成   4)(Pb/Cu)SrLaCu0,の合成

  5) Tl系超伝導体における複合化

の5っのプロジェクトを実行している。5)は,頂点間および底面間に三っ以上の規則的な構造 パターンを配列す ることにより,新しい超伝導 体を得ようとするユニークな試みである。

  1),2)および5)では,試料全体にわたる単一 層を実現することには成功していないが,

部分的な合成が行われていることを実験的に確認している。ここでも現象論的な物理的予測と実 際の結晶化学的な安定性の問題との間にもうーっの解決すべき問題点が存在することを明らかに

(5)

している。3),4)では単一相が合成され,新物質探索の指針の正当性が検証されている。合 成 さ れ た 物 質 は い ず れ 超 伝 導 性 を も っ こ と が 実 験 的 に 明 ら か に さ れ て い る 。   第4章は,著者によって得られた以上の成果の総括と,今後の発展の展望にっいてまとめたも のである。

  これに要するに,本論文は,ペロブスカイト酸化物超伝導体を,著者独自の提案による新しい 結晶構成要素による分類法を駆使して新酸化物超伝導体の合成を試行し,その有効性を実験的に 明らかにしたもので,超伝導材料工学,新物質開発ヘ貢献するところ大である。よって,著者は 博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

370

参照

関連したドキュメント

[r]

[r]

   本論文は全8 章で構成されている。第1 章は序論であり、研究の歴史的背景と本研究の 意義を述ぺている。第 2

   物 体と 流体 がと もに加 速運 動をするときの球形粒子に働く流体抗カを解析的に推定 する こと は層 流域 では可 能で あるが、乱流域では極めて難しく、適当な仮定に基づい

[r]

[r]

すべり系間の相互作用を新たに考慮することにより、多重すぺりが生じる変形条件を表現した。こ

[r]