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博士(工学)大参達也 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)大参達也 学位論文題名

複合鋳込み法による過共晶Al −Si 合金の      凝 固 組 織 制 御 に 関 す る 研 究

学位論文内容の要旨

  JIS規 格AC 9A合 金 お よ びAC 9B合 金 に 代 表 さ れ る 過 共 晶AlーSi合 金は ,Al ‑ Si共 晶中 に 硬 質 の 初 晶Si粒 子 の分 散した 組織を 有し ,軽量 で耐熱 ・耐摩 耗性 に優れ ること から, 工ンジ ン 部材や 各種 の機械 の擢動 部品等を主な用途とする鋳造用合金であるが,機械的強度,耐摩耗性,

お よ び 加 工 性等 の 材 質 を確保 する上 で初晶Si粒径 を制御 するこ とが 不可欠 である 。一般 に本系 合 金 の 凝 固 過程 で は 初 晶Siが 粗 大 に 成長 し 易 いため ,現 在,工 業的に は合金 溶湯へ のPの添加 に よる初 晶改 良(微 細化) 処理が 用い られて いるが ,鋳造 の際に 高い 鋳造温度と比較的大きな冷 却 速 度 を 必 要と し , ま た,Na等 の添加 によ る共晶 改良処 理を併 用す ること が困難 である など,

鋳 造プロ セス 上種々 の制約 がある 。し かし, 現行法 に代わ り得る 有効 な手法は未だ確立されてい な い。

  本 研 究 は, 異 種 合 金溶 湯を時 間差鋳 造す る「複 合鋳込 み法」 の適 用を過 共晶AlーSi合金 に対 し て試み た結 果,顕 著な初 晶微細 化効 果を見 いだし たこと を契機 とし て,その初晶微細化機構を 解 明 し , さ らに , そ の 過程で 得られ た知見 をも とに, 新たな 過共晶Al−Si合 金の凝 固組 織制御 法 を 考 案 し て , そ の 適 用 性 を 検討 し た も の で あり , 本 論 文 は全10章 か ら構 成 さ れ て いる 。   第1章で は , 過 共 晶Al ‑ Si合 金の 材質と 凝固組 織との 関係, およ び凝固 組織制 御法に 関す る 既 往 の 研 究 を 概 括 し て , 問 題 点 を 明 ら か に し , 本 研 究 の 位 置 と 目 的 を 示 し た 。   第2章 で は ,JIS規 格AC 9A合 金 相 当 のSi量 を 含 有 す るAl―22 mass%Si合金 を 対 象 と し て 複 合 鋳 込 み法 の 適 用 を試み ,初晶Siの顕 著な微 細化が 生じる こと を見い だすと ともに ,初晶 微 細 化 に 必 要な 鋳 造 条 件を明 らかに した。 その 第一の 条件は ,最初 に鋳込 む溶 湯(1次溶 湯)の 液 相線温 度よ り,後 に鋳込 む溶湯(2次溶 湯)の 液相線 温度 の方が 高くナ ょるような溶湯組成の組 み 合わせ を選 択する ことで ある。 第二 の条件 として ,溶湯 混合直 前の1次溶 湯の 温度が 低くな る よ うに,1次 溶湯の 鋳込 み温度 と二段 階の鋳 込み 操作間 の時間 間隔と を設定 する ことが 必要で あ る 。 第 三 に ,2次 溶 湯 の 鋳 込 み 過 熱 度 が 低 い ほど , 初 晶Si粒 径 が 小 さ くな る 傾 向 が ある 。

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  第3章 か ら第7章 ま で は, 複合 鋳込み 法にお ける初 晶微細 化機 構の解 明を目 的とし た一 連の研 究過程 を述べ てい る。

  第3章 で は, 複 合 鋳 込 み鋳 塊 に お け る 微細 な 初 晶Siの 生 成 起 源 を検 討 した。 第2章にお いて 初 晶 の 微 細 化 が 可 能 で あ っ たAl亠12mass%Si合 金 (1次 溶 湯 ) とAl‑ 32mass%Si合 金(2 次 溶湯) の組 み合わ せを用 いた複 合鋳 込み過 程の考 察から ,初晶 核の 起源と して, @1次凝固 殻 (2次 溶 湯 の 鋳込 み 以 前 に1次 溶 湯 中 で 生 成し た 凝 固殻) の非平 衡的 再溶解 過程で 生成す る遊離 共 晶Si, ◎1次 溶湯 と2次 溶 湯と が 完 全 混 合す る 以 前 の 混合 段 階 に お いて2次 溶 湯 内で 生 成 す る初晶 核,お よび ◎完全 混合後 の溶湯 内で 生成す る初晶 核,の 三種類 が考 えられ,各々に対する 検 証実験 の結 果に基 づいて ,◎の 起源 ,すな わち,2次 溶湯内 で生成 した初 晶が 微細初 晶の主 体 となる ことを 明ら かにし た。

  第4章 で は, 異 種 合 金 溶湯 の乱流 混合過 程の移 動速 度論的 検討に 基づい て,2次溶 湯の 流体塊 内に熱 と溶質 の分 子拡散 速度の 差に起因する過冷却(二重拡散過冷却)が生じる可能性を指摘し,

この過 冷却に よっ て初晶 の多発 的核生 成が もたら される とする 初晶微 細化 機構の仮説モデルを提 出した 。

  第5章 で は, 各 種 の 冷 却法 に よ る 凝 固 実験 と 古 典的核 生成理 論と に基づ いて, 過共晶Al・Si 合 金(Al‑22mass%Si合 金 とAl−32mass%Si合 金 ) に お け る 初 晶Si粒 径 , 過冷 度 お よ び 冷 却 速 度 の 三 者 間 の 定 量 的 関 係 を 調 査 し , 初 晶 微 細 化 に 要 す る 冷 却 条 件 を 求 め た 。   第6章 で は, 複 合 鋳 込 み法 におけ る初期 溶湯混 合過 程,す なわち ,2次溶湯 がタン ディ シュノ ズ ルから 流出 ・落下 し,鋳 型内の1次 溶湯に 混入 し始め る初期 の段階 を対象 とし て,水 モデル に よ る流動 パタ ーンの 観察と 複合鋳 込み 実験に おける 温度変 化測定 デー タの解 析とか ら2次溶湯 の 冷却速 度を見 積り ,二重 拡散過 冷却に よる 多発的 核生成 をもた らす冷 却条 件が存在することを確 認した 。

  第7章 で は, 複 合 鋳 込 み鋳 塊 の 初 晶Si粒 径 に 及ば す溶湯 組成 と鋳型 性状の 影響を 調査 すると と もに,1次 凝固殻 と鋳 型によ る抜熱 効果の 寄与 を明ら かにし ,前章 までの 結果 を総合 して複 合 鋳 込み法 の初 晶微細 化機構 を解明 した 。すな わち, 低温の1次 溶湯と 高液相 線温 度(高Si濃度)

の2次 溶 湯 と の 乱流 混 合 過 程 で,2次 溶 湯 が高Si濃 度 を保 っ た ま ま 急冷 され ,その 内部 に大き な 二重 拡 散 過 冷 却を 生 じ る こ とに よ っ て 初 晶Siの多 発的 核生成 が起こ るが、 このと き,1次凝 固殻は 溶湯混 合に 伴う温 度上昇 により 溶解 する際 に潜熱 を奪い ,また 溶解 により生成した低温の

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み温度,二段階の鋳込み操作間の時間間隔)の初晶Si粒径に及ぼす影響を説明することが可能 となった。

  第8章では,NaとPの添加を併用した複合鋳込み法を試み,初晶・共晶同時改良処理の可能 性を明らかにした。また,複合鋳込み法の初晶微細化効果とP添加による初晶改良効果との相乗 作用による著しい初晶の微細化を見いだした。複合鋳込み法の初晶微細化機構に立脚すると,

Na添加した1次溶湯とP添加した2次溶湯を用いて複合鋳込み を行うことにより,2次溶湯内 で の初晶Siの晶出過程では,Naの影響を受けることなくPと急冷の相乗効果により初晶Siを 多発的に核生成させることができると考えられる。さらに,その後の溶湯混合の進行により1次 溶 湯中のNaが溶湯全体に行き渡り,共晶凝固段階でNaの改良効果が発揮されるならば,初晶 と共晶の同時改良が可能となる。

  第9章では,第7章と第8章で得られた知見に基づいて,攪拌凝固により生成した亜共晶合金 スラリ―に高Si濃度のP添加過共晶合金溶湯を攪拌混合することにより,微細初晶Siを含有す る過共晶合金スラリ―を製造する「スラリ一・溶湯混合法」を新たに考案し,その適用性を検討 した。本法によれば,初晶Siを実用レベルまで微細化することができ,また,得られた過共晶 Al・Si合金スラリーにNaを添加することにより,初晶・共晶同時改良が可能となった。さら に,本法によるスラリ一製造過程における見掛け粘度の測定と型鍛造成形材の試作とに基づく成 形特性評価を行い,スラリー成形加工時の変形抵抗が極めて小さいこと,また,スラリーの含有 する初晶が微細であるため均一な組織を有する成形体が得られること,等の良好な特性を確認し た。スラリー・溶湯混合法は,成形加工温度をAl・Si共晶温度近傍の比較的低い温度に設定す ることができる,また,スラリー製造階段で初晶Si粒径が决まるため成形加工時における冷却 条 件 の 制 約 も ほ と ん ど な く , 現 行 法 の 問 題 点 を 基 本 的 に 解 決 し 得 る 方 法 で あ る 。   第10章は総括であり,本研究で得られた結果をまとめている。

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    石 川 達 雄 副 査    教 授    永 井 忠 雄 副 査    教 授    石 井 邦 宜 副 査    教 授    野 口    徹 副査    助教授・工藤昌行

  本 論 文は , 耐熱 ・耐 摩耗性 軽合金 である 過共 晶Al ‑ Si合金 の新し い凝固 組織制 御技術 の開 発 を 目的と して, 異種 合金溶 湯を時 間差鋳 造す る「複 合鋳込 み法」 を本系 合金 に適用 することによ り ,゛顕 著な初 晶微 細化効 果を見 いだす とと もに,その初晶微細化機構の解明により得られた知見 を も と に , 新 た な 凝 固 組 織 制 御 法 を 考 案 し , そ の 有 用 性 を 検 証 し た も の で あ る 。   第1章で は , 過 共 晶Al−Si合 金 の 材 質 と 凝固 組 織 と の 関係 ,およ び凝 固組織 制御法 に関す る 既 往の研 究を概 括し て,凝 固組織 制御の 到達 目標を 明確に すると ともに ,現 行法で ある初晶改良 剤 の添加 による 初晶 微細化 処理の 問題点 にっ いて整 理して いる。

  第2章で は , 過 共 晶Al―Si合 金 の 初 晶 粒 子が 複 合 鋳 込 み法 により 顕著 に微細 化され る効果 を 見 いだす ととも に, 初晶微 細化に 必要な 鋳造 条件を 調べて いる。 その結 果, 初晶微 細化のために は , 最 初 に 鋳込 む 溶 湯 (1次 溶 湯 ) の液相 線温 度より ,後に 鋳込む 溶湯(2次 溶湯) の液 相線温 度 の方が 高くな るよ うな溶 湯組成 を選択 し, 且つ, 溶湯混 合時の 両溶湯 の温 度を低 くすべきこと を 明らか にして いる 。

  第3章か ら 第7章 まで は , 複 合 鋳込 み法 におけ る初 晶微細 化機構 の解明 を目 的とし た一連 の研 究 過程を 述べて いる 。

  第3章で は , 複 合 鋳込 み 鋳 塊 に おけ る微 細な初 晶粒子 の生成 起源 を実験 的に検 討し,1次 溶湯 と2次 溶 湯と が 完 全 混 合 する 以 前 の 混合段 階に おいて2次 溶湯内 で生成 する初 晶が微 細初 晶の主 体 となる ことを 解明 してい る。

  第4章で は , 異 種 合金 溶 湯 の 乱 流混 合過 程の移 動速度 論的検 討に 基づぃ て,2次溶 湯の流 体塊 内 に熱と 溶質の 分子 拡散速 度の差 に起因 する 過冷却 が生じ る可能 性を指 摘し ,この 過冷却によっ て 初 晶 の 多 発 的 核 生 成 が も た ら さ れ る と す る 初 晶 微 細 化 機 構 の モ デ ル を 議 論 し て いる 。

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する冷却条件を求めている。

  第6章では,複合鋳込み法における溶湯混合過程を対象として,水モデルによる流動パターン の観察と複合鋳込み実験における温度変化測定デ一夕の解析とから2次溶湯の冷却速度を見積も り,2次溶湯内に初晶の多発的核生成をもたらすのに十分な大きさの過冷度が生じ得ることを確 認している。

  第7章では,複合鋳込み鋳塊の初晶粒径に及ばす鋳造条件の影響を調査するとともに,一部凝 固した1次溶湯が2次溶湯の混合により再溶解する際の溶解潜熱の吸収が初晶微細化を促進する 事実を見いだし,前章までの結果を総合して複合鋳込み法の初晶微細化機構を確立している。

  第8章では,初晶微細化機構の応用として,共晶改良剤を添加した1次溶湯と初晶改良剤を添 加した2次溶湯を用いて複合鋳込みを行う手法を試み,従来困難であった初晶・共晶同時改良処 理を実現している。また,複合鋳込み法の初晶微細化効果と初晶改良剤の効果との相乗作用によ り初晶が著しく微細化することを見いだしている。

  第9章では,前章までに得られた知見に基づき,攪拌凝固により生成した亜共晶合金スラリー に初晶改良処理を施した高Si濃度の過共晶合金溶湯を攪拌混合することにより,微細初晶を含 有する過共晶合金スラリーを製造する「スラリー・溶湯混合法」を新たに考案して,その適用性 を検討している。その結果,本法により実用レベルまで初晶を微細化することができ,また,得 られた過共晶合金スラリーへの共晶改良剤の添加により,初晶・共晶同時改良が可能となること を明らかにしている。さらに,スラリーの見掛け粘度測定と型鍛造成形材の試作とに基づく成形 性評価から,スラリ一成形加工時の変形抵抗が極めて小さいこと,また,スラリーの含有する初 晶が微細であるため均一な組織を有する成形体が得られること,等の良好な加工性を確認してい る。スラリ―・溶湯混合法では,成形加工温度を低く設定でき,また,成形加工時における冷却 条件の制約もほとんどないことから,現行法の問題点を基本的に解決し得ると結諭している。

  第10章は総括であり,本研究で得られた結果をまとめている。

  これを要するに,著者は,実用合金を対象とした凝固組織制御技術の新しい概念を確立すると ともに,その具体的手法を開発したもので,金属材料工学に対して貢献するところ大なるものが ある。

  よ っ て 著 者 は , 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

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