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博士(工学)森谷 司 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)森谷   司 学位論文題名

Syntheses and Reactions of Organoboron Reagents      via Transition‑Metal Catalyzed Reactions

( 遷移金属 触媒による 有機ホウ 素反応剤 の合成と反応)

学位論文内容の要旨

  有機金属化合物は有機合成上極めて有用な中間体であり、最近の有機化学工業におけ るスペシヤリテイーケミカルズ指向の中で精密合成のための新しい方法論を種々提供し てきた.このような中で遷移金属触媒による典型金属化合物の反応は、典型金属化合物 単独では成し得なかった新たな反応の開発が可能であり、とくに興味ある研究分野となっ ている.たとえぱ、バラジウム触媒による有機ホウ素化合物と有機ハロゲン化物のクロ スカップリング反応は医薬品、液晶合成などですでに工業的規模で利用されるようになっ ている.これらの理由から本論文において著者は遷移金属触媒反応と有機ホウ素化合物 の利用をさらに発展させる目的から、触媒反応によるホウ素反応剤の開発、その有機合 成反応への応用および触媒反応機構の調査を行った.

  第 一 章 で は 関 連 す る 研 究 を 解 説 し 、 本 研 究 の 目 的と 意 義に つ い て述 べ た。

  第二章では、生理活性や機能性が注目されるgem‑ジフルオロアルケン類の新規合成法 に ついて述 べた。従 来法として はカルボニル化合物のWittig反応を用いるのが一般 的であるが、本研究ではgem‑ジフルオロビニリデン基の1位炭素上に2種類の炭素・炭 素結合形成を段階的に行うことにより達成した。すなわち、容易に得られるgem‑ジフ ルオロピニルトシルオキシアニオンとトリアルキ´レボランのアート錯体から1,2‑転位反 応によルァルケニルボランを調製する.これをヨウ化アリールとクロスカップリング反 応させることにより目的とする二置換型gem‑ジフルオロアルケンをワンボットで合成 することに成功した。

  第三章では、二置換型1.アルケニルボランの立体選択的合成法とその利用について述 べた,二置換アルケニルボランには三種の置換様式があるが、そのうちニつの合成法は 当研究室からすでに報告されている。今回残りの(Z) ‑1.2‐二置換‑1‑アルケニルホウ 素化合物の合成に初めて成功した.すなわち、1‑ヨ―ド‑1‑アルキンをジイソピノカン フェイルボランでハイドロボレーションした後、得られたボロン酸ジェチルを安定なピ     763

(2)

ナ コー ルエ ス テル に誘 導す る. 次に 、こ れを 有機 亜鉛 試薬 とクロスカップリング反応さ せ る こ と に よ り 合 成 で き た .さ らに こ の反 応の 応用 とし てexocyclic alkeneの 立体 選 択的合 成を行った。

  第四 章で は 、有 機ホ ウ素 化合 物の クロ スカ ップ リン グ反 応における反応機構の調査を 行 った 。こ の 反応 では 通常 、塩 基の 存在 が必 要不 可欠 であ るがその理由はニつ考えられ る 。ト ラン ス メタ ル化 段階 で塩 基が ホウ 素に 配位 して ホウ 素上有機基の求核性を増す、

あ るい は塩 基 がバ ラジ ウム 原子 を攻 撃し アル コキ ソま たは ヒドロキソパラジウム中間体 を 形成 する た めと 考え られ る。 実際 の反 応系 で両 者を 区別 するのは難しいが、いくつか の 反応 は確 か に後 者の 過程 で進 行す ると 考え られ る. 炭酸 プロバルギルはバラジウム触 媒 存在 下に 脱 炭酸 して アル コキ ソパ ラジ ウム 種を 生成 する ことが知られている.従って ア ルコ キソ バ ラジ ウム 中間 体と 有機 ホウ 素化 合物 のト ラン スメタル化を調査するには最 適 の反 応系 と なる .事 実、 反応 は中 性下 進行 し、 後者 のト ランスメタル化機構が存在す る こ と を 証 明 で き た . 種 々 の パ ラ 置 換 フ ェ ニ ル ホ ウ 酸 エ ス テ ル と の 相 対 反 応 速 度 と Hammet定 数 の 間 に 直 線 関 係 が 見 ら れ 、 芳 香 環 上 の 置 換 基 の 電 子 求 引 性 が 増 す ほ ど 反 応 が加 速す る こと 、ま たよ り塩 基性 の高 いア ルコ キシ 基に より反応が加速されることを 明 らか とし た .こ れら の事 実か らト ラン スメ タル 化段 階は ホウ素原子がアルコキシ基に 配位す るSE(coord)機構により進行 すると結論した.

  第五 章では、前章の反応の応用として、中性条件下における炭酸2.3‑ア´レカジェニ´レ と 有 機 ホ ウ 素 化 合 物 の 反 応 に よ る ブ タ ジ ェ ン 誘 導 体 の 新 規 合 成 法 に つ い て 述 べ た 。   第六 章で は 、(3‑ア ルコ キシ‑2‑プロ ベ ニル )ボ ロン 酸エ ステ ルの 簡便 な合 成法 につ い て述 べた.アリルホウ素化合物はジァステレオ選 択的な炭素・炭素結合形成法として有 機 合成 に利 用 され てお り、 その 誘導 体で ある (3‑アル コキ シ‑2‑プロ ベニ ル) ボロ ン酸 エステ ルはカルボニル化合物との反応により1,2‑ジオー レ誘導体を与える.しかし、そ の 合成 は多 く の場 合ア リル リチ ウム を用 いた 煩雑 な操 作や 試薬の取り扱いに特別な注意 を 要す る. こ こで はプ ロパ ルギ ルエーテルのハイドロボレーションにより得ら れる(3− ア ルコ キシ−1‑プロベニル)ボロン酸エステルの二 重結合を遷移金属触媒により異性化す る こと によ り 、そ の簡 便な 合成 を達 成し た. とく に、 カチ オン性イリジウム触媒を用い た 場 合 にE‑体 の ア リ ル ホ ウ 素 化 合 物 が 立 体 選 択 的 に 得 ら れ る こ と を 見 い だ し た .   以上 、著 者 は遷 移金 属触 媒反 応が 有機 ホウ 素反 応剤 の合 成およぴその利用に極めて有 用 であ るこ と 、並 びに クロ スカ ップ リン グ反 応機 構に おけ る(アルコキソ)パラジウム 中 間 体 の 存 在 と そ の ト ラ ン ス メ タ ル 化 段 階 に お け る 役 割 を 明 ら か と し た .

(3)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授

  

宮 浦 憲 夫 教 授

  

米 田 徳 彦 教 授

  

徳 田 昌 生 助教授

  

石山竜生

学 位 論 文 題 名

Syntheses and Reactions of Organoboron Reagents      via Transition IVIetal Catalyzed Reactions

( 遷 移 金 属 触 媒 に よ る 有 機 ホ ウ 素 反 応 剤 の 合 成 と 反 応 )

  有 機 金 属 化 合 物 は 有 機 合 成 上 極 め て 有 用 な 中 間 体 で あ り 、 精 密 有 機 合 成 の た め の 新 し い 方 法 論 を 種 々 提 供 し て き た . と く に 遷 移 金 属 触 媒 に よ る 典 型 金 属 化 合 物 の 反 応 は 、 典 型 金 属 化 合 物 単 独 で は 成 し 得 な か っ た 新 た な 反 応 の 開 発 が 可 能 で あ り 興 味 あ る 研 究 分 野 と な っ て い る . こ の よ う な 状 況 に お い て 著 者 は 遷 移 金 属 触 媒 反 応 に よ る 有 機 ホ ウ 素 化 合 物 の 反 応 を さ ら に 発 展 さ せ る 目 的 か ら 、 触 媒 反 応 に よ る ホ ウ 素 反 応 剤 の 開 発 、 そ の 有 機 合 成 反 応 へ の 応 用 お よ び 触 媒 反 応 機 構 の 調 査 を 行 っ て い る . 主 た る 成 果 は 以 下 の 通 り で あ る .

  有 機 ホ ウ 素 化 合 物 と 有 機 ハ ロ ゲ ン 化 物 の ク ロ ス カ ッ プ リ ン グ 反 応 は す で に 多 く の 炭 素 ・ 炭 素 結 合 形 成 反 応 に 利 用 さ れ て い る が 、 著 者 は ビ ニ ル 型 有 機 ホ ウ 素 化 合物 の選 択 的 合 成 と そ の ク ロ ス カ ッ プ リ ン グ 反 応 が フ ツ 素 化 ア ル ケ ン お よ び 三 置 換 ア ル ケ ン の 選 択 的 合 成 に 有 効 で あ る こ と を 見 い だ し て い る . す な わ ち 、 ジ フ ル オ ロ ビ ニ ル 型 ホ ウ 素 化 合 物 の 新 た な 合 成 法 の 開 発 に 成 功 し 、 そ の ク ロ ス カ ッ プ リ ン グ 反 応 に よ り 様 々 な 多 置 換 ジ フ ル オ ロ ア ル ケ ン の 合 成 を 行 っ て い る . ま た 、1‑ヨ ー ド‑1 ‑ア ル キ ン の ヒ ド ロ ホ ウ 素 化 反 応 と そ れ に 続 く 亜 鉛 試 薬 と の ク ロ ス カ ッ プ リ ン グ 反 応 で は 、 従 来 困 難 で あ っ た シ ス 二 置 換 型 ビ ニ ル ホ ウ 素 化 合 物 の 位 置 お よ び 立 体 選 択 的 合 成 と そ の 応 用 に 成 功 し て い る ・

  上 記 の バ ラ ジ ウ ム 錯 体 を 触 媒 と す る 有 機 ホ ウ 素 化 合 物 の ク ロ ス カ ッ プ リ ン グ 反 応

(4)

に関する機構についてはぃまだ不明な点が多い. 著者は、炭酸プロバルギ少とバラ ジウム錯体の反応により生成するアルコキソパラジウム中間体と有機ホウ素化合物 の反応を調査し、その電子効果からトランスメタル化段階における反応機構を明ら かにすることに成功している.すなわち種々のパラ置換フウニルホウ酸エステ少と の反応における相対反応速度比から芳香環上置換基の電子求引性が増すほど反応が 加速すること、またより塩基性の高いアルコキシ基により反応が加速されることな どの 知見を基に、アルコキシ基がホウ素原子に配位するSE(coord) 機構によルト ランスメタル化段階が進行すると結論している・

  

さらに著者はビニル型ボロン酸エステルの二重結合異性化反応によるアリル型ホ ウ素化合物の合成がイリジウムなどの遷移金属触媒反応により簡便に達成できるこ とを見いだしている.アリル型ホウ素化合物はジアステレオ選択的な炭素・炭素結合 形成法として多くの合成反応に利用されており、その簡便な合成法の開発は有機合 成上興味ある成果である.

  

これを要するに、著者は遷移金属触媒反応が有機ホウ素反応剤の合成およびその 利用に極めて有用であること、またその反応機構に対する有益な新知見を得ており、

有機合成化学並ぴに有機金属化学の基礎および応用に貢献すること大なるものがあ る.

  

よって著者は北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める.

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