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博 士 ( 医 学 ) 武 田 直 樹

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 武 田 直 樹

学 位 論 文 題 名

胸 椎 ・ 腰 椎 転 移 性 腫 瘍 に 対 す る 脊 椎 切 除 術 後 成 績 の 検 討 学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  転 移性脊椎 腫瘍に対 する脊椎 切除術の手 術成績は 、後方除 圧固定術 よりも良好と す る報告が 多いが、 脊椎切除 術後の長期 的な観察 を行った 報告は少 ない。また脊椎 を 完全に切 除する脊 椎全摘術の転移性脊椎腫瘍への適応に当たっては問題点も多い。

  本 論文の目 的は、(1)転移性 脊椎腫瘍に 対する脊椎切除術の長期成績を調査し、

2) 転 移 性 脊 椎 腫 瘍 に 対 す る 脊 椎 全 摘 術 の 適 応 を 検 討 す る こ と で あ る 。

【 症例]転 移性胸椎 腰椎腫瘍41例に対し脊 椎切除後 に脊柱再 建術を行 った。手術時 年 令 は37歳 から77歳、 平 均58歳 であ っ た 。性 別 は 女性22例、 男性19例で あった。

手 術 術 式で は 、前 方 進 入により 腫瘍およ び椎体を切 除し、Kaneda deviceと セラミ ッ ク人工椎 体で前方 再建を行 ったものが19例であっ た。後方 前方合併 進入により脊 椎 を 全 摘出 後 脊椎 の 後 方と前方 を再建す る脊椎全摘 術が22例で あった。 そのうち3 例 では椎弓 根部での み椎骨を 切離し、後 方要素と椎体を一塊にレて切除するen bloc 脊 椎 全 摘術 を 行っ た 。 原発巣の 癌種は、 腎癌12例、乳 癌11例、甲 状腺癌5例 、悪性 リ ンパ腫3例 などであ った。本 手術の適応 は1)腫瘍 が椎体内 に限局し ているか、あ るしゝは椎体/椎弓根の骨皮質を部分的に破壊し脊柱管に波及しているもの、2)腫瘍の 進 展 範 囲が12( 症 例に よ っ ては3) 椎 体以 内 の 限局性 病巣であ るもの、3‑1)放 射 線抵抗性 腫瘍であ るもの、3・2)放射線感受性腫瘍でも、腫瘍による前方支柱破壊 か ら脊柱不 安性ない し脊髄、 馬尾圧迫障 害を呈するもの、4)癌種の特性から椎体切 除 術の適応 は6力月以 上の生命 予後が期待 できるも の、脊椎 全切除術 の適応は1年以 上 の 生 命 予 後 が 期 待 さ れ 、 全 身 状 態 が 手 術 に 耐 え う る も の と し た 。   切 除脊 椎 レベ ル は 胸椎14例、胸腰 椎20例、腰 椎9例で、胸 椎と胸腰 椎にまた がっ て い る もの が2例 あっ た 。切除脊 椎数は、 一椎が37例、 二椎が2例 、三椎が2例であ っ た 。 術前 検 査で 臓 器 転移は9例 に、他部 位の骨転移 は14例に認 めた。術 前に22例 は脊椎のみの単発転移と診断した。

  疼 痛の程度 は、使用 する鎮痛 剤により分 類したMcAfeeの 疼痛分類 を用いて評価し た 。術前疼 痛のない ものは8例 、最小の痛 みで鎮痛剤が不要であるグレード1が5例、

非 麻 薬 系鎮 痛 剤で コ ン トロール 可能なグ レード2が16例 、麻薬系 鎮痛剤の 一時使用 で コントロ ール可能 なグレー ド3が6例、麻 薬系鎮痛 剤を常用 するグレ ード4が6例で あ っ た 。神 経 障害 はFrankel分 類で評価 した。術 前27例に障害 があり、 障害高位 以 下 の 運 動知 覚 の完 全 麻 痺であるAが1例、知 覚は保たれ るが運動 は完全麻 痺であるB3例、運動 機能はあ る程度保 たれるが実 用になら ないCが10例 、実用に なる運動機 能 が 保 たれ るD13例 であ った。術 前の移動 能は、ベッ ド上臥床 が11例、車 椅子が 11例、歩行が19例であった。

183

(2)

  

放射線治療は37 例に行われた。34 例は術前に7.5Gy から50Gy (平均31.5 Gy )の 照射をうけていた。術後照射が1 例(lOGy )、術前術後照射が2 例(42. 56Gy )に 行われた。また術前に動脈塞栓術を25 例に施行した。

  Spin alinstrumentation

では、上位胸椎罹患3 例と第4 腰椎罹患の1 例を除く37 例 にKan edadevice を使 用し た。後 方

ins trumentation

では、SteffeeVSP10 例、

Isola spinaJ system

9

例、頚椎椎弓根スクリューが2 例、

Kanedadevice

が1 例で あった。椎体置換材としてA‑W ガラスセラミック人工椎体が38 例に、アルミナセラ ミ ッ ク 人 工 椎 体 、 チ タ ン ケ ー ジ 、 自 家 腸 骨 が 各

1

例 に 使 用 さ れ た 。

  

手術時間は、椎体切除術で中央値

4

時間(2 時間29 分〜6 時間25 分)、脊椎全摘術 で中央値8 時間(6 時間44 分

‑  11

時間)であった。出血量は、椎体切除術で中央値

800ml

464

〜290 0ml )、脊椎全摘術で中央値

2300ml

672

〜12430mJ )であった。

【結果】1 .累積生存率:術後経過観察期間は60 月から100 ケ月、平均

36

ケ月であ った。観察時生存例は19 例、死亡例は22 例で、生存期間は1 ケ月から108 ケ月、平均

22

ケ月で、1 年累積生存率は74 %であった。

2

.疼痛軽減:術後は、術前グレード2 の16 例中2 例、グレード3 の6 例中1 例が不変で あったが、疼痛のあった33 例中30 例(91 %)に一段階以上の疼痛軽減が見られた。

3

.神経学的改善:術前

Frankel  B

の3 例中、2 例は

C

、1 例は

E

(神経障害なし)に 改善 した。術前FrankelC の

10

例中7 例はD に、2 例はE に改善し、

1

例はC にとどま った 。術前FrankelD の

13

例中6 例はE に改善したが、7 例はD にとどまった。術前 神 経 障 害 の あ っ た

27

例 中

18

例 (

67

% ) に 一 段 階 以 上 の 改 善 を み た 。

4

.移動能:術前ベッド上受動的臥床であった11 例中、8 例は歩行可能、2 例は車椅 子移動が可能となり、1 例は不変であった。術前車椅子移動であった11 例中8 例は歩 行可能となり、3 例は不変であった。術前22 例が歩行不能(受動臥床、車椅子)で あったが18 例(82 %)が歩行や車椅子での移動が可能になった。術後41 例中33 例

(80 %)は自宅へ退院可能となった。

5

.再発:再発は11 例(27 %)で生じ、再発までの期間は4 ケ月から19 ケ月、中央値 は18 ケ月であった。

6

.合併症:合併症は11 例(27 %)に生じた。1 例は術後1 ケ月で肺炎で死亡した。神 経障害の悪化を4 例(うち3 例は一過性)に、感染を2 例に、骨粗鬆症による脆弱性 からセラミック人工椎体が隣接固定椎に陥入した人工椎体の移動が2 例に、人工椎 体固定椎の圧壊(後方固定追加)が1 例に、前方スクリュー破損が1 例に生じた。

【結論】

1

.脊椎切除術では良好な神経障害の回復が得られた。また脊椎切除術での手術侵襲 は大きくなく、重篤な合併症も少なかった。

2

.術後生存率の高さは、手術適応として予後が比較的良好な患者を選択したためと 考えられた。

3

.骨粗鬆症による脆弱骨での再建の問題と長期的には再発による不安定化が問題と し て 残 っ た 。 し か し そ れ 以 外 で は 再 建 脊 柱 の 長 期 安 定 性 は 得 ら れ た 。

4

.生存期間の延長と共に再建脊柱の長期安定性も問題足なってきており、正確な予 後の予測のもと、再発のりスクの高い症例には根治性の高い脊椎全摘術が転移性脊 椎腫瘍に対しても適応となりうる。

184

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

胸椎・腰椎転移性腫瘍に対する脊椎切除術後成績の検討

  転 移性 脊 椎 腫 瘍に 対 す る脊椎切 除術後 の長期的 な観察を 行った 報告は少 ない。 また脊椎 を 完 全 に切 除 す る 脊椎 全 摘 ・術 の 転 移性 脊 椎 腫瘍 へ の 適応 に 当 たっ て は 問 題点 も多い 。   本 論文 の 目 的 は、 (1)転移 性脊椎腫 瘍に対 する脊椎 切除術 の長期成 績を調 査し、(2) 転 移 性 脊 椎 腫 瘍 に 対 す る 脊 椎 全 摘 術 の 適 応 を 検 討 す る こ と で あ る 。

【 症 例 】転 移 性 胸 椎腰 椎 腫瘍41例 に対し 脊椎切除 後に脊柱 再建術 を行った 。手術 時年令は 37歳 から77歳 、平 均58歳 であ った。性 別は女 性22例、男 性19例で あった。 手術術 式では、

前 方 進 入に よ り 腫 瘍お よ び椎体 を切除し 、Kaneda de viceと セラミッ ク人工 椎体で前 方再 建 を 行 った も の が19例 で あった。 後方前 方合併進 入により 脊椎を 全摘出後 脊椎の 後方と前 方 を 再 建す る 脊 椎 全摘 術 が22例 で あっ た 。 原発 巣 の 癌種 は 、 腎癌12例 、乳 癌11例、 甲状 腺 癌5例、 悪 性 リ ンパ 腫3例な ど で あっ た 。 本手 術 の 適応は1)腫 瘍が椎体 内に限 局してい る か、あ るいは椎 体/椎 弓根の骨 皮質を部 分的に 破壊し脊 柱管に 波及して いるも の、2)腫 瘍 の 進 展範 囲 が12( 症 例に よ っ ては3) 椎体 以 内 の限局 性病巣 であるも の、3・1)放射 線 抵 抗 性腫 瘍 で あ るも の 、3‑2) 放射 線 感 受性 腫 瘍 でも、 腫瘍に よる前方 支柱破 壊から脊 柱 不 安 性な い し 脊 髄、 馬 尾 圧迫 障 害 を呈 す る もの 、4) 癌種の 特性から 椎体切 除術の適 応 は6カ 月以 上 の 生 命予 後 が 期待 で き るも の 、 脊椎 全 切 除術 の 適 応は1年 以 上の 生 命予後が 期 待され 、全身状 態が手 術に耐え うるもの とした 。

  切 除脊 椎 レ ベ ルは 胸 椎14例 、 胸腰 椎20例 、 腰 椎9例 で、胸 椎と胸腰 椎にま たがって いる も の が2例 あ っ た 。 切 除 脊 椎 数 は 、 一 椎 が37例 、 二 椎 が2例 、 三 椎 が2例 で あ っ た 。   疼 痛の 程 度 は 、使 用 す る鎮 痛 剤 によ り 分 類し たMcAfeeの 疼 痛 分 類を 用 い て評 価した 。 神 経 障 害はFrankel分類 で 評 価し た 。 術前 の 移 動能 は 、ベッ ド上臥床 、車椅 子移動、 歩行 可 能に分 類した。

  Spina linstrumentationでは37例にKaneda  deviceを使用し た。椎 体置換材 としてAW ガ ラスセ ラミック 人工椎 体が38例に 使用さ れた。

  手 術時 間 は 、 椎体 切 除 術で 中 央 値4時 間 (2時 間29‑6時 間25分) 、 脊 椎全 摘 術で中央 値 8時 間 ( 6時 間 44分 〜  11時 間 ) で あ っ た 。 出 血 量 は 、 椎 体 切 除 術 で 中 央 値 800m1(464  2900ml) 、 脊 椎 全 摘 術 で 中 央 値23 00m1(672  1243 0ml) で あ っ た 。

【 結 果 】1. 累 積 生存 率 : 術後 経 過 観察 期 間 は6ケ 月 から100ケ月、 平均36ケ 月であっ た。

観 察 時 生存 例 は19例 、 死 亡例 は22例 で 、 生存 期 間 は1ケ月 から108ケ月、平 均22ケ月 で、1 年 累積生 存率は74% であっ た。

2. 疼 痛軽 減 : 術 後は 疼 痛 のあ っ た33例 中30例 (91% )に一 段階以上 の疼痛 軽減が見 られ

185一

志 彦

清 知

田 柳

金 小

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

た。

3.神経学的改善:術前神経障害のあった27例中18例(67%)に一段階以上の改善をみた。

4.移動能:術前22例が歩行不能(受動臥床、車椅子)であったが18例(82%)が歩行や 車椅子での移動が可能になった。術後41例中33例(80%)は自宅ヘ退院可能となった。

5.再発:再発は11例(27%)で生じ、再発までの期間は4ケ月から19ケ月、中央値は18ケ 月であった。

6.合併症:合併症は11例(27%)に生じた。1例は術後1ケ月で肺炎で死亡した。神経障 害の悪化を4例(うち3例は一過性)に、感染を2例に、骨粗鬆症による脆弱性からセラ ミック人工椎体が隣接固定椎に陥入した人工椎体の移動が2例に、人工椎体固定椎の圧壊

( 後 方 固 定 追 加 ) が 1例 に 、 前 方 ス ク リ ュ ー 破 損 が 1例 に 生 じ た 。

【結語】

脊椎切除術では良好な神経障害の回復が得られ、重篤な合併症も少なかった。再建脊柱の 長期安定性も得られており、比較的長期の予後が予測される再発のりスクの高い症例には 根 治 性 の 高 い 脊 椎 全 摘 術 が 転 移 性 脊 椎 腫 瘍 に 対 し て も 適 応 と な り う る 。   この脊椎切除術を発展させることにより、癌脊椎転移患者の生活の質(Quality of Life) の向上に寄与することができると期待される。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、また研究者として誠実かつ熱心であり、申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と判 定 した 。

186

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