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博士(医学)武田充人 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)武田充人 学位論文題名

シクロオキシゲナーゼ―1 選択的阻害薬     SC‑560 の 動 脈 管 収 縮 作 用

学位論文内容の要旨

背景

  胎児循環において動脈管は主肺動脈から下行大動脈への血流を保つ役割をもち、

動脈管の開存は胎児の生命維持に必要である。動脈管は胎生期に胎盤や胎児動脈管 壁よ り生成 され るプ ロス タグ ランジンEによって拡張し、その合成酵素であるシク ロ オキ シ ゲ ナ ー ゼ(COX)の 阻 害 によ り 収 縮す る。1991年にCOXア イソ ザイ ムの 存 在が発見され、COX−1は構成型、COX−2は誘導型酵素であることが明らかとなった。

近年開発されたCOX―2選択的阻害薬はCOXー1阻害による消化管、血小板ーの副作用 が少たい抗炎症薬として臨床応用が進んでいる。周産期領域では未熟児動脈管開存 症ーの臨床応用ーの可能性が期待されるが、胎生期動脈管におけるcOx―1,COX―2の 役割は明らかでない。COX−2選択的阻害薬NS―398により満期近くのラット胎仔の動 脈管が投与量依存性の動脈管収縮を示したことが報告されているが、COX―1選択的 阻害薬による胎生期動脈管収縮作用にっいては報告がない。今回、胎生期動脈管に おけるCOX―1の役割を明らかにする目的でCOXー1選択的阻害薬SC−560 (Searle社)

を用いた胎生期動脈管収縮作用にっいて検討した。

対象 およ び方 法

  妊 娠 満 期 以前 ( 妊 娠19日 ) お よ び 満 期近 く( 妊娠21日 )のWistar種 ラット に 対し、COXー1選択的阻害薬SC―560を用いて、以下の実験を施行した。SC−560投与 後の胎仔動脈管最大収縮時間を決める目的で、満期以前および満期近くの親ラット にSC−560(満 期以 前にImg/kg、 満期 近く に1、10mg/kg)を胃内に注入し、一定時 間後に帝王切開により胎仔を娩出、ドライアイスーアセトン溶液に投入し全身急速 凍結法で固定した。固定した胎仔の胸部前額断面をミクロトームで切り、顕微鏡下 に 主 肺 動 脈 (P) と 動 脈 管 の 内 径 (D) の比 (D/P比 )を 求め た。 同様 の方法 で 満 期 以 前 でSC−5603投 与 量 、 満期 近 く で4投 与 量 を 投 与 、4時 間 後 のD/P比 を

(2)

求めた。比較として、満期以前でCOX非選択的阻害薬インドメサシン4投与量での D/P比、満期近くではインドメサシン4投与量およびCOX―2選択的阻害薬NS―398 3投与量でのD/P比を求めた。SC―560と他剤間とのD/P比の比較は最大収縮時 の D/ P比 で unpalredー t検 定 を 行 い 、 p〈 0. 05を 有 意 と し た 。

結果

  満期以前ではSC―560 Img/kg投与後4時間後に動脈管最大収縮を認めた。満期近 くでは10mg/kg投与により4時間後に動脈管最大収縮を認めた。満期以前では投与 量依存性の動脈管収縮を認め、最大収縮時の比較でインドメサシン投与群と同等で あった。満期近くでもSC―560で投与量依存性の動脈管収縮を認めたが、インドメ サシン、NS−398投与群に比して動脈管の収縮は弱く、最大収縮時の比較で有意差を 認めた。

考察

  COX−1阻害薬は満期近くよりも満期以前の動脈管に対して強い収縮作用を有した。

COX非選択的阻害薬であるインドメサシンが満期以前より満期近くで強い収縮作用 を示すことと、COXー2選択的阻害薬NS―398が満期近くで強い収縮作用を示すことを 考慮すると ̄、満期近くではCOX−1よりCOX―2由来のプロスタグランジン産生が有意 となるものと思われる。すなわち、胎生期動脈管に対するCOX−1の役割は満期近く になると弱くなり、COX−2優位となることが判明した。COXアイソザイムの動脈管 における役割を検討することで、より副作用の少ない未熟児動脈管開存症の薬物治 療ヘ発展できるものと期待される。

(3)

学 位論文審査の要旨 小林 安田 北畠

学 位 論 文 題 名

邦彦 慶秀     

シ ク ロオ キ シ ゲナー ゼ― 1 選択的 阻害薬     SC ・ 560 の 動 脈 管 収 縮 作 用

  胎 児 循 環 に お い て 動 脈 管 は 主 肺 動 脈 か ら 下 行 大 動 脈 へ の 血 流を 保 つ 役割 を も ち 、 動 脈 管 の 開 存 は 胎 児 の 生 命 維 持 に 必 要 で あ る 。 動 脈 管 は 胎 生 期 に 胎 盤 や 胎 児 動 脈 管 壁 よ り 生 成 さ れ る プ ロ ス タ グ ラ ン ジ ンEに よ っ て 拡 張 し 、 そ の 合 成 酵 素 で あ る シ ク ロ オ キ シ ゲ ナ ー ゼ(COX)の 阻 害 に よ り 収 縮 す る 。 1991年 に COXア イ ソ ザ イ ム の 存 在 が 発 見 さ れ 、COX1は 構 成 型 、COX2は 誘 導 型 酵 素 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 近 年 開 発 さ れ たCOX‑2選 択 的 阻 害 薬 はCOX1阻 害 に よ る 消 化 管 、 血 小 板 へ の 副 作 用 が 少 な い 抗 炎 症 薬 と し て 臨 床 応 用 が 進 ん で い る 。 周 産 期 領 域 で は 未 熟 児 動 脈 管 開 存 症 へ の 臨 床 応 用 へ の 可 能 性 が 期 待 さ れ る が 、 胎 生 期 動 脈 管 に お け るCOX‑1COX2の 役 割 は 明 ら か で な い 。COX‑2選 択 的 阻 害 薬NS‑398に よ り 満 期 近 く の ラ ッ ト 胎 仔 の 動 脈 管 が 投 与 量 依 存 性 の 動 脈 管 収 縮 を 示 し た こ と が 報 告 さ れ て い る が 、COX‑1選 択 的 阻 害 薬 に よ る 胎 生 期 動 脈 管 収 縮 作 用 に つ い て は 報 告 が な い 。 申 請 者 は 、 胎 生 期 動 脈 管 に お け るCOX‑1の 役 割 を 明 ら か に す る 目 的 でCOX1 選 択 的 阻 害 薬SC560 (Searle社 ) を 用 い て 検 討 し た 。

  妊 娠 満 期 以 前 ( 妊 娠19日 ) お よ び 満 期 近 く ( 妊 娠21日 ) のWistar種 ラ ッ ト に 対 し 、COX1選 択 的 阻 害 薬SC‑560を 用 い て 、 以 下 の 実 験 を 施 行 し た 。SC‑560 与 後 の 胎 仔 動 脈 管 最 大 収 縮 時 間 を 決 め る 目 的 で 、 満 期 以 前 お よ び 満 期 近 く の 親 ラ ッ ト にSC560( 満 期 以 前 にImg/kg、 満 期 近 く に110mgg) を 胃 内 に 注 入 し 、 一 定 時 間 後 に 帝 王 切 開 に よ り 胎 仔 を 娩 出 、 ド ラ イ ア イ ス ー ア セ ト ン 溶 液 に 投 入 し 全 身 急 速 凍 結 法 で 固 定 し た 。 固 定 し た 胎 仔 の 胸 部 前 額 断面 を ミ クロ ト ー ムで 切 り 、 顕 微 鏡 下 に 主 肺 動 脈 (P) と 動 脈 管 の 内 径 (D) の 比 (DP比 ) を 求 め た 。 同 様 の 方 法 で 満 期 以 前 でSC5603投 与 量 、 満 期 近 く で4投 与 量 を 投 与 、4時 間 後 の

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

D/P比を求めた。比較として、COX非選択的阻害薬インドメサシンおよびCOX−2 選択的阻害薬NS‑398を用いて同様の検討をした。SC―560と他剤間とのD/P比 の比較は最大収縮時のD/P比でunpaired―t検定を行い、pく0.05を有意とした。

  満期以前ではSC‑560 Img/kg投与後4時間に動脈管最大収縮を認めた。満期近く では10mg/kg投与後4時間に動脈管最大収縮を認めた。満期以前では投与量依存 性の動脈管収縮を認め、最大収縮時の比較ではインドメサシン投与群と同等であ った。満期近くでもSC−560で投与量依存性の動脈管収縮を認めたが、インドメサ シン、NS―398投与群に比して動脈管の収縮は弱く、最大収縮時の比較で有意差を 認めた。以上、COX―1阻害薬は満期近くよりも満期以前の動脈管に対して強い収 縮作用を有したこと、COX非選択的阻害薬であるインドメサシンが満期以前より 満期近くで強い収縮作用を示すことと、また、COX―2選択的阻害薬NS―398が同様 に満期近くで強い収縮作用を示すことから、満期近くではCOXー1よりCOX−2由来 のプロスタグランジン産生が有意となっていることが示唆された。すなわち、胎 生期動脈管に対するCOXー1の役割は満期近くになると弱くなり、COX‑2優位とな ることが判明した。COXアイソザイムの動脈管における役割を検討することで、

より副作用の少ない未熟児動脈管開存症の薬物治療ヘ発展できるものと期待され る。

  公開発表に際し、副査の安田慶秀教授から組織学的変化にっいて、血管におけ るCOXの発現部位について、薬剤投与と収縮発現の時間的関係についてなど、ま た副査の北畠顕教授から、COXアイソザイムの発現に違いの出るメカニスム、分 娩後の動脈管閉鎖のメカニスム、他の動物モデルでの研究にっいての質問があっ た。主査の小林邦彦教授から、未熟児における動脈管開存が多いことと本研究で の結果との関係、治療薬として何れの阻害薬が有効かなどの質問があったが、申 請 者 は 、 何 れ の 質 問 に 対 し て も ほ ば 妥 当 な 回 答 を 行 っ た 。 .   本研究は、ラットの胎児動脈管におけるCOXアイソザイム発現の時間的変化を 種々のCOX阻害剤を用いて明らかにし、今後の未熟児動脈管開存症の治療薬物と し て の COX阻 害 剤 の 選 択 と 応 用 に 利 用 さ れ る こ と が 期 待 さ れ る 。 審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位 なども併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと 判定した。

参照

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