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博 士 ( 医 学 ) 横 山 和 之

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 横 山 和 之      学位論文題名

Functional antagonism between Helicobac をァpylori CagA     and vacuolating toxin VacA in control of   the NFAT signaling pathwaylngaStriCepithelialceuS

(胃上皮細胞のNFAT シグナル伝達系に対するへりコバクターピロリ      病 原 因 子 CagA と 空 胞 化 毒 素 VacA の 機 能 的 拮 抗 作 用 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    背景と目的

Helicobacter pylorj(H.」pW〇め感染と胃炎、消化性潰瘍、胃癌等の胃における多様な病態 との関連性は、臨床統計をはじめとした多くの研究報告により明らかにされてきた。特に、

cag・A陽性H.めロ〇rjは強い胃粘膜障害を惹起し、CagA夕ンバク質はH.p引〇襾病原因子 のーっとして考えられている。さらに、臨床疫学的な研究からcag.A陽性H.pWonの感染 と胃癌発症の間に強い関連性があることが示され、CagAが有する病原生物活性の解明は、

胃癌の発生、進展の解明のみならず胃癌の予防や治療法の開発においてもきわめて重要な意 義を有すると考えられる。本研究では、CagAを異所性発現させた.胃上皮細胞の遺伝子発現 プロファイル解析を通して、CagAが撹乱する未知の細胞内シグナル伝達系を同定し、cagA 陽性H.p川c晒による胃粘膜障害機構、胃癌発症機構を明かにすることを目的とした。

    方法

遺伝 子発現プロ ファイル の解析: ヒト胃上 皮細胞株AGSにH.めガ〇nNCTC11637株由来 cagA遺伝子を一過性導入し、CagA夕ンパク質を異所性発現させた。cag・A導入細胞より 抽 出 し たRNAを 用 い 、GeneChipHumanGenomeFOCuSArray(AffymetriX社 ) に よ り8500の既 知 の 遺伝子 に対するCagA発現依存的 なmRNA発現量 の変動の 有無を解 析し た 。cagA遺 伝 子 導入12時 間後の時 点でmRNA発現の 増加が認 められた71遺伝子に つい て、プロモ一夕ー/エンハンサー領域を含むと考えられる転写開始点より上流1000ベース ペアまでの塩基配列内における既知の転写因子結合配列を検索した。無作為に抽出した同数 のコ ントロール 遺伝子セ ットと比 較し、CagA発現によりmRNAの増加を示した71遺伝子 の 転 写 開 始 点 5 上 流 領 域 に 有 意 に 多 く 存 在 す る 結 合 配 列 を 検 索 し た 。 1uciferase誌say:CagAによるNFAT依存 的な転写 活性の変 化を検証 するため、NF、AT 結合配列をもつluCiferaSereporterplaSmid(pNFAT−LuC)を用い1uCiferaSeaSSayを施 行した。

細胞 免疫染色な らびElectrophoreticMobilityShiftAssay(EMSA) :CagA発現による     ―360―

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NFATc3( 胃細 胞に 発現 する 主要 なNFAT分 子種 )の 細胞 内局 在の変 化を 抗NFATc3抗体 による細胞免疫染色ならびにヒトinterleukin‑2遺伝子プロモー夕一内NFAT結合配列を プローブとした核抽出液のEMSA解析により検討した。

CagAとVacAの 機能 的相 互作 用:AGSを2.5Vg/ml( 空胞 化を 起こさ ない 濃度)の組み 換 え 型VacA(sl/ml)に 暴露 し、NFAT活性 に対 するCagAとVacAの 機能 的相互 作用 を 検討した。

    結果

1.CagAによ る遺 伝子 発現 プロ ファイ ルの 変化:CagA発現細胞におけるmRNAの発現量 の変化を解析した結果、CagAは胃上皮細胞においてNF丶AT依存的な転写を活性化してい ることが示唆された。

2.CagAによ るNFAT依 存的 な転 写の活 性化 :cagA導 入AGS細 胞にお いてpNF丶AT―Luc を用いluciferasereporterassayを行った結果、CagA発現によってNF丶AT依存的な転写 が活性化することが明らかになった。

3.cag.A陽性H.刪〇rj感染によるNFATの活性化:cag・A陽性H.めガo灯をAGS胃上皮 細 胞に感 染さ せNFATの活性化を検証した。その結果、感染によりH・pりonから細胞内 に直接注入されたCagA分子も、cag.A遺伝子異所性発現とまったく同様にNFATを活性化 することが示された。

4.CagAによるNF、ATの核内移行:NR丶Tは通常不活性型として細胞質に存在し、calcineurin により脱リン酸化されることで核内移行し、NR゜汀標的遺伝子の転写を活性化する。細胞免 疫 染色な らび にEMSAの結果から、CagAはりン酸化非依存的にNR゜汀c3を細胞質から核 内に移行させることが明らかとなった。

5.CagAによるPLCY―calcineurin依存的なNFATの活性化:calcineurinの特異的阻害剤 で あ るCyClOSporinAあ る い はPLCYの 特 異 的 阻 害 剤 であ るU73122によ って、CagAの NFAT・活性化ならびにNn゜汀c3の核内移行は抑制された。したがって、CagAはりン酸化 非依存的にPLCーYもしくはその上流分子に作用し、Ca2゛依存的なcalcineurin活性化を介 してNR゜汀の核内移行ならびにNFAlT依存的転写活性化を引き起こす可能性が示唆された。

6.CagA依 存 的NFAT活 性 化 に 対 す るVacAの 影 響 :NF丶AT活 性に 対 す るCagAとVacA の機能的相互作用を1uciferaseassayおよび細胞免疫染色で検証した。その結果、CagAに よ るNR灯 依存 的な 転写 活性 化は 低濃 度のVacA暴露 下に より 抑制さ れ、NFATc3のCagA に よる核 内移 行も阻害した。以上のことからVacAはNFATに対して抑制的に働くことが 示された。

    まとめ

H.j乃ガ〇ガ病原因子CagAは、胃上皮細胞内でチ口シンリン酸化非依存的にNF丶ATの核内移 行ならびにNFAT標的遺伝子の転写活性化を誘導することが明らかとなった。さらに、H. p川 〇nが 保有 する 主要 毒素 であ るVacAは 胃上 皮細 胞内 でのCagA依 存的 なNFAT活性化 を抑制することが示された。以上の結果から、胃上皮細胞のNF、AT活性に対しCagAとVacA は拮抗的な関係にあり、CagA優勢の状況下ではNF丶AT核内移行を介してp2ヱ転写に代表 されるNFAT依存的転写を誘導し、細胞増殖の抑制あるいはアポトーシスを引き起こすこ

361 ‑

(3)

とが予想される。一方、VacA優勢の状況下ではNF丶ATのCagA依存的活性化が抑制され る一方、チ口シンリン酸化依存的なCagA活性(SHP―2ーMAPキナーゼ経路の活性化など)

は保持される結果、脱制御された細胞増殖が誘導されることが示唆される。個々の胃上皮細 胞に 作用 するCagAとVacAの 相対 的濃 度によ り、 細胞 内NFAT活性の脱制御の方向(正 あるいは負)と程度が決定され、その結果、胃潰瘍や胃癌に向かう多彩な胃粘膜病変が惹起 されるものと推察される。

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学位論文審査の要旨

     学位 論文題 名

Functional antagonism between よた licob ・口 C たダ参ソZ 〇ダ fCagA     andVaCuolatingtOXinVaCAinCOntrolof

     ●    .

  theNFATsignalingpathwaylngastriCepithelialcells

(胃上皮細胞のNFAT シグナル伝達系に対するへりコバクターピロリ      病 原 因 子 CagA と 空 胞 化 毒 素 VacA の 機 能 的 拮 抗 作 用 )

  ″|alicobacterガめガ(H. pylori)感染と胃における多様な病態との関連性は、臨床統計をは じ めとした 多くの研 究報告に より明ら かにされ てきた。特 に、cagA陽性 ″.pyloriは強い 胃 粘膜障害 を惹起し 、CagAタンパク質は〃・pylori病原因子のーっとして考えられている。

そ の た め、CagAガ 有す る 病 原生 物 活 性の 解 明は 、 胃 癌の発 生、進展の 解明のみ ならず胃 癌 の予防や 治療法の 開発にお いても極めて重要な意義を有すると考えられる。本研究では、

CagAを 異 所 性発 現 させ た 胃 上皮 細 胞 の遺 伝 子発 現 プ ロフア イル解析を 通して、CagAガ撹 乱 する未知 の細胞内 シグナル 伝達系を同定し、cagA陽性″.pyloriによる胃粘膜障害機構、

胃癌発症機構を明らかにするととを目的としたる

  遺 伝子 発 現 プロ フ アイ ル の 解析 : ヒ卜 胃 上 皮細 胞 株AGSに 且pylori NCTC11637株由来 ca餌 遺伝 子 を 一過 性 導入 し 、CagAタン パ ク質 を 異 所性 発現さ せた。ca酣導 入細胞よ り抽 出 し たRNAを 用 い 、GeneChip Human Genome Focus Array(Affymetrix社)によ り8500の 既 知 の 遺 伝 子 に 対 す るCagA発 現 依 存 的 なmRNA発 現 量 の 変 動 の 有 無 を 解 析 し た 。 魍 騨 遺 伝 子 導 入12時 間 後 の 時 点 でmRNA発 現 の増 加 ガ認 め ら れた71遺 伝 子 にっ い て 、プ ロ モ ー タ ― ′工 ン ハ ンサ ― 領域 を 含 むと 考 えら れ る 転写 開 始点より上 流1000bpまでの 塩基配 列内における既知の転写因子結合配列を検索した。

  Luciferaseassり :CagAに よ るNFAT依存 的 な転 写 活 性の 変 化 を検 証 する た め 、NFAT結 合 配 列 を も つluCiferaSereporterplaSmidを 用 いluCiferaSeaSSり を 施 行 し た 。   細 胞 免 疫 染 色 お よ びElectrophor面cMObilityShiRAssり ¢MSA) :CagA発 現 に よ る N臣ATc3( 胃 細 胞に 発 現す る 主 要なNFAT分 子種 ) の 細胞 内 局在 の 変 化を 抗NFATc3抗 体に よ る細胞免 疫染色な らびにヒ ト加紹比甜舫2_2遺伝子プロモータ一内NF・AT結合配列をプロ

寛 也

哲 則

雅 哲

   

村 内

藤 山

今 守

近 畠

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(5)

一ブとした核抽出液のEMSA解析により検討した。

  CagAとVacAの 機 能的 相 互作 用 :AGSを2.5ug/ml( 空胞 化 を起 こ さな い 濃度 )の 組 み換 え型VacAに暴露 し、NFAT活性に 対するCagAとVacAの機 能的相互作用を検討した。

  その 結果、O胃上皮細 胞のCagAによる遺伝子発現プ口フアイルの変化を解析したとこ ろ、CagAは胃上皮細胞においてNF.AT依存的な転写を活性化していた。@c .gA導入AGS 細胞においてpぼAT.Lucを用いlucif訂asereponerassりを行ったところ、CagA発現によっ て| ぼ觚依存的な転写ガ亢進した。◎cq烈陽性〃.ガ比WをAGS胃上皮細胞に感染させる と、 且めわガから細胞内に直接注入されたCagA分子も、c瞬4遺伝子異所性発現とまった く同 様にNFATを活性 化した。OMWは通常不 活性型とし て細胞質に 存在し、calcineurin によ り脱リン酸化されることで核内移行し、NFAT標的遺伝子の転写を活性化する。細胞 免疫 染色ならぴ にEMSAの結果か ら、CagAはりン 酸化非依存 的にNF:ATc3を細胞質から 核内に移行させることガ明らかとなった。◎cむcin恥nnの特異的阻害剤であるCyclosporin Aあ る い はPLCyの 特 異 的 阻 害剤 で あるU73122に よ っ て、CagAのNAT活性 化 なら び に NFATc3の核 内移行は抑 制された。 したガって 、CagAはりン酸化 非依存的にPLCYもしく はその上流分子に作用し、Ca2+依存的なcaldna}rin活性化を介してNF.ATの核内移行なら ぴにNF AT依存的転写活性化を弓Iき起こすことガ示唆された。◎F.AT活性に対する(:agA とVacAの 機能的相互 作用を検証 した結果、CagAによるNFAT依存的 な転写活性化は低濃 度のVacA暴露により 抑制ざれ、NFATc3のCagAによる核内 移行も阻害 された。以上のこ とから、丶龜`cAはNFATに対して抑制的に働くことガ示された。

  ″・ めめヵ病原 因子CagAは、胃 上皮細胞内でチロシンリン酸化非依存的にNATの核内 移行 ならぴにNFAT標的遺伝子の転写活性化を誘導することガ明らかとなった。さらに、

〃・めめ灯ガ保有する主要毒素であるV托Aは胃上皮細胞内でのCagA依存的なNF.AT活性化 を抑 制することガ示された。以上の結果から、胃上皮細胞のNFAT活性に対しCagAとvacA は拮 抗的な関係 にあり、CagA優 勢の状況下ではN脚 ̄核内移行を介してP2´転写に代表 されるNF AT依存的転写を誘導し、細胞増殖の抑制あるいはアボトーシスを弓1き起こすこ とガ予想される。一方、丶′acA優勢の状況下ではNF:ATのCagA依存的活性化ガ抑制される ガ、 チロシンリン酸化依存的なCagA活性は保持ざれる結果、脱制御された細胞増殖の誘 導ガ なされる。 個々の胃上 皮細胞に作 用亨るCagAとVacAの 相対的濃度により、細胞内 NFAT活性の脱制御の方向(正あるいは負)と程度ガ決定され、その結果、胃涜瘍や胃癌 に向かう多彩な胃粘膜病変ガ惹起されるものと推察される。

  口頭 発表において、副査守内哲也教授より、ONFATより存在頻度の高いIk.2の関与、

◎ゲ ルシフ卜アツセイで抗NF闇協抗体によるス―パーシフトガ認められない理由、◎且 カロ 洲感染時CagAに よるp21転 写活性亢進 の継続性、O発癌 との関連で幹細胞レペルで の増殖の亢進とI)NA障害の蓄積をみているガCagAによる個々の細胞の変化を調ぺる意義、

◎NF.ATの他の標的にっいて質問ガあった。続いて、副査近藤哲教授より、萎縮性胃炎 とCagAの 関与にっい て、副査畠 山昌則教授 より、CagAのPLCY活性 化機構にっいて質問 ガあ った。最後に、主査今村雅寛教授より、CagAとVacAのニつの拮抗するシグナルと発 癌の関係、およびその適切な実験系について質問ガあったガ、いずれの質問に対しても、

申請 者は主旨をよく理解し自らの研究データと文献的考察を混じえて適切な回答をした     胃上皮細胞に作用するCagAと丶′acAの相対的濃度により、細胞内NF・AT活性の脱制御の     −364―

(6)

方向と程度ガ決定され、多彩な胃粘膜病変ガ惹起されることを明らかにした本研究の意義

は高く、審査員ー同協議の結果、申請者ガ博士(医学)の学位授与に値するものと判定し

た。

参照

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