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博 士 ( 医 学 ) 中 山 洋 佑

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 中 山 洋 佑      学位論 文題名

     皮膚創 傷治癒 過程にお いて

cv9 イ ンテグ リンと そのり ガンド の相互 作用の 阻害は 成 熟 肉 芽組織 の形成 を遅延 させる

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

【背景と目的】

皮膚は損傷を受けると、一連の創傷治癒反応が生じる。この創傷治癒過程において、組織中 の 細胞 とそ れを 取り 巻く 細胞 外マ トリ ックス(ECM)や成長因子との相互作用は密接に関 与する。従来、ECMは細胞接着における足場として の役割の重要性が報告されてきたが、

最近では数多くの分泌 型ECMの存在も明らかになってきている。これら|ま発生過程で重要 であると考えられている一方で、成体での発現は創傷治癒や組織リモデリング過程に限局さ れる。これらのタンパク質は「マトリセルラープロテイン」と総称されている。現在までに、

創傷治癒過程における これらの役割にっいては遺伝子欠損マウスを使用して数多くの報告 がなされているが、その機能は未だ不明な点も多い。マトリセルラープロテインであるオス テ オポ ンチ ン(OPN)や テネ イシ ン ̄C(TN‑C)の 共通 の受 容体 とし てめインテグリンが同 定されている。そして 、oc9インテグリンもまた創傷治癒過程における役割が示唆されてい るが、a9インテグリン 欠損マウスは出生後約10日で死亡してしまうため、その役割は現在 までほとんど明らかに されていなぃ。そこで、oc9インテグリンの役割を検討するために、

リガンドとの接着阻害 能を持つ抗マウスa9インテグリン抗体(55A2C)を使用して創傷治癒 過程におけるa9インテグリンの機能解析を行った。

【方法と結果】

  C57BL/6マウス背部に皮膚全層性欠損を作製し、傷の面積を測定したところ、創傷作製後 0〜5日、及ぴ7〜10日に船いて、傷の面積の著しい低下が観察された。一方、創傷作製後5〜7 日においては傷の面積に顕著な変化は認められなかった。そこで、過去の報告をもとに今回 作製したモデルの創傷治癒過程を創傷初期、創傷中期、創傷後期という3つの時期に分類し、

各時期を創傷作製後0〜5日、5〜7日、7〜14日と定義した。そして、これらの時期において それぞれ、傷の再上皮化、肉芽組織の形成、肉芽組織の収縮が起こると考えた。次に、創傷 部位に韜けるoc9インテグリンとそのりガンドの発現の経時的変化を検討した。a9インテグ リン遺伝子の発現は創傷後直ちに亢進し、創傷後3〜10日にかけてその発現上昇は維持され てい た。 また 、a9イ ンテ グリ ンの りガ ンドであるOPN及ぴTN‑C遺伝子も創傷部位で顕 著 な発現亢進を示した。そこで、全層 性欠損を作製する1日前と創傷作製後2日目にマウス腹 腔 内 に55A2Cを 投 与 し 、 創 傷 治 癒 過 程 に お け るa9イ ン テ グ リ ン の 役割 を検 討し た。

  まず、傷の再上皮化に対する55A2C投与の影響を検討した。創 傷組織切片のへマトキシ リン・エオシン染色像を用いて、再生表皮先端の幅と遊走表皮細胞の領域を測定することに より表皮細胞の遊走能及び増殖能を評価したが、対照群との有意な差は認められなかった。

次に、肉芽組織の収縮に対する55A2C投与の影響を検討した。正 常皮膚周縁部の距離の測 定及びa‑平滑筋アクチンに対する免 疫組織染色を行い筋線維芽細胞の発現を観察したが、

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対照群との有意な差は認められなかった。次に、免疫組織染色によルビメンチン陽性線維芽 細胞の集積、CD31陽性血管の形成、F4/80陽性マクロファージが 認められる領域を肉芽組 織とし、またその中で、ビメンチン 陽性線維芽細胞、CD31陽性血管が密に集積している領 域を成熟肉芽組織と定義し、それら の面積を測定した。その結果、55A2C投与群において 成熟肉芽組織面積が顕著に減少して いることが観察された。さらに、55A2C投与群におい て創傷後7日で成熟肉芽組織に韜けるビメンチン陽性線維芽細胞 の密度も顕著に低下して いることが観察された。しかし血管新生とマクロファージの浸潤に対する対照群との差は認 められなかった。そこで、フローサイトメトリーを用いて、創傷部位から採取した線維芽細 胞におけるa9インテグリンの発現を 確認したところ、線維芽細胞上でのa9インテグリンの 発現が確認された。また、新生児マウス皮膚功ゝら単離した皮膚線維芽細胞を用いて、a9イ ンテグリンのりガンドであるTN‑Cに 対する細胞接着試験及び細胞遊走試験を行った結果、

皮膚 線維 芽細胞はTN‑Cと結合し、さらに、TN‑Cに対す る遊走活性を示した。これらの線 維芽細胞の機能は55A2Cの添加により特異的に抑制された。また 、末梢血中に存在するフ ィブロサイトにおけるa9インテグリ ンの発現について検討を行ったが、発現は認めなかっ た。

【考察】

インテグリンとECMとの相互作用は、皮膚創傷治癒過程において重要 な役割を担っている ことが報告されているが、その中でa9イ ンテグリンの役割は不明である。そこで、55A2C を用いて、創傷治癒過程の1)傷の再上皮化、2)成熟肉芽組織の形成、3)肉芽組織の収縮、と いう3つの時 期におけるa9インテグリンの役割について検討を行った ところ、傷の再上皮 化及び肉芽組織の収縮に対して55A2C投与の影響は認められなかった 。従って、これらの 過程はa9インテグリン非依存的であるか 、もしくは、その他のインテグリン等によりa9イ ンテグリンの機能が補完されてしまったと考えられる。

ー方、55A2C投与により成熟肉芽組織面積の減少が認められ、さらに 成熟肉芽組織内の線 維芽細胞の密度が顕著に低下しているこ とが観察された。また、創傷治癒過程において、

a9イ ンテ グリ ンのみならず、そのりガンドであるOPNやTN―Cの発現も強く亢進すること が確認された。さらに、加vitroにおいて、皮膚線維芽細胞はめインテグリンを強く発現し てお り、TN‑Cに対 する 遊 走活 性は55A2Cで抑制されることを 確認した。これは、a9イン テグリンが線維芽細胞の運動に関与することを示唆するものである。以上の結果より、皮膚 線 維 芽 細胞 上のa9イ ンテ グリ ン はOPNやTNーC等のECMの受 容 体と して 遊走 を促 進す る 働きを持ち、これらの相互作用を55A2Cの投与により阻害することで 創傷組織中への皮膚 線維芽細胞の遊走が抑制され、それゆえ成熟肉芽組織の形成が遅延すると考えられた。さら に、皮膚線維芽細胞はOPN、TN‑Cの分泌能を有することが知られてい る。皮膚線維芽細胞 上のa9インテグリンは、これら自身の産 生するマトリセルラープロテインに対してオート クラ イン 、ま たは パラ ク ライ ン的 に遊 走能を獲得すると考えられた。OPNやTN‑Cとa9イ ンテグリンの相互作用による成熟肉芽組 織形成の機序について、更には、OPN、TN‑Cのど ちらがより密接にその機序に関与するかについて、今後更なる詳細な検討が必要であると思 われる。

【結論】

本研究により我々は以下のことを明らかにし た。

1)皮膚創傷部位 においてa9インテグリンの発現が亢進していた。2)皮膚線維芽細胞はめ インテグリンを発現しており、その遊走活性 は55A2Cによって抑制された。3)皮膚全層性 欠損モデルにおいて、傷の再上皮化、肉芽組 織の収縮に対する55A2C投与の影響は認めら れなかった。4) 一方、55A2C投与により成熟 肉芽組織の形成が抑制された。これらの結果 より、皮膚創傷治癒過程やその他の組織リモ デリング過程において、めインテグリンは線 維芽細胞の遊走を調節することにより成熟肉 芽組織の形成に重要な役割をもっことが示唆 された。

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学位論文審査の要旨 主 査    教授    上出利光 副査   教授   小野江和則 副 査    教授    清水    宏

     学位論文題名

     皮膚創傷治癒過程において

cv9 インテグリンとそのりガンドの相互作用の阻害は 成熟肉芽組織の形成を遅延させる

皮膚は損傷を受けると、一連の創傷治癒反応が生じる。この創傷治癒過程において、組織 中の 細胞とそ れを取 り巻く細 胞外マ トリック ス(ECM)や成長因子との相互作用が密接に 関与 する。最 近では 数多くの 分泌型ECMの存 在も明ら かになってきて茄り、これらは創 傷治癒過程において一過性に発現が亢進する。これらのタンパク質は「マトリセルラープ ロテイン」と総称され、創傷治癒過程におけるこれらの役割について遺伝子欠損マウスを 使用して数多くの報告がなされているが、その機能は未だ不明な点も多い。マトリセルラ ー プ ロテ イ ン であ る オ ステ オ ポ ンチ ン(OPN)や テネ イシン ーC(TN‑C)の共通の 受容体 とし てa9インテ グリン が同定されている。a9インテグリンもまた創傷治癒過程における 役割が示唆されているが、その役割は現在までほとんど明らかにされていない。そこで、

q9インテグリンの役割を検言寸するために、リガンドとの接着阻害能を持っ抗マウス(めイ ンテ グリン抗 体(55A2C)を使用して創傷治癒過程におけるcr9インテグリンの機能解析を 行った。

  C57BL/6マウス 背部に皮 膚全層 性欠損を 作製し、 創傷部位におけるa9インテグリンと その りガンド の発現 変化を検 討したところ、(めインテグリン及びそのりガンドである OPN、TN‑C遺伝 子の発現 亢進が認 められ た。そこ で、マ ウス腹腔 内に55A2Cを投与 し、

創傷治癒過程におけるa9インテグリンの役割を検討した。

  まず、創傷組織切片のへマトキシリン‐エオシン染色像を用いて、再生表皮先端の幅と 遊走 表皮細胞 の領域 を測定す ること により傷 の再上皮 化に対する55A2C投与の影響を検 討したが、対照群との有意な差は認められなかった。次に、肉芽組織の収縮に対する55A2C 投与の影響を検討した。肉芽組織の収縮は、正常皮膚周縁部の距離の測定及ぴ甜平滑筋ア クチンに対する免疫組織染色を行い筋線維芽細胞の発現を観察する事により判定したが、

対照群との有意な差は認められをかった。次に、免疫組織染色により線維芽細胞や新生血 管が 高密度で存在する成熟肉芽組織の面積を測定したところ、55A2C投与群において成熟 肉芽 組織面積が顕著に減少していることが観察された。さらに、55A2C投与群において創 傷後7日で成熟肉芽組織における線維芽細胞の密度も顕著に低下していることが観察され た。 また、新 生児マ ウス皮膚 から単離した皮膚線維芽細胞を用いて、a9インテグリンの

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リ ガ ンド であ るTN‑Cに 対す る細 胞遊 走試 験を 行づ た結 果、55A2Cは皮 膚線維芽細胞の TN‑Cに対する細胞遊走活性を特異的に抑制する効果を有していることが明らかとなった。

最 後に近年創傷治癒に関与することが報告されている末梢血中に存在するフィブロサイト に ついてrt9インテグリンの発 現について検討を行ったが、発現は認めなかった。以上の 結 果より、皮膚創傷治癒過程において、a9インテグリンは線維芽細胞の遊走を調節するこ と に よ り 成 熟 肉 芽 組 織 の 形 成 に 重 要 な 役 割 を も っ こ と が 示 唆 さ れ た 。   公 開発 表に 際し 、副査の清水教授より、1)a9インテグリンと介合するp鎖、2)plイ ン テグリンと介合する(ぬ以外のインテグリン、3)55A2Cのa9インテグリン機能の抑制 効 果、4)a9インテグリン欠損 マウスを用いた創傷治癒実験に関する過去の報告事例の有 無 についての質問がなされた。次いで、副査の小野江教授から、1)(めインテグリン欠損 マ ウスの死亡原因、2)55A2C投与マウスにおける成熟肉芽 組織の形成不全の創傷治癒に 対 する意義、3)線維芽細胞の 筋線維芽細胞への分化機序にっいての質問がなされた。次 い で、主査の上出教授から、1)a9インテグリンコンディショナルノックアウトマウスと 55A2C投 与マ ウス にお ける 創傷 治 癒過 程の 差異、2)創傷治癒に韜ける、抗a9インテグ リ ン抗体の臨床応用の可能性にっいての質問がなされた。これらの質問に対して、申請者 は 過去に報告されたa9インテグリンや創傷治癒に関連する文献の引用、考察を交え、妥当 な 解答をなし得た。

  この論文は、創傷治癒過程におけるa9インテグリンの機能を見出したという点で高く評 価 され、今後、組織線維化等、線維芽細胞が関与する疾患に対する機序の解明が期待され る 。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども 併 せ 申請 者が 博士 (医 学) の学 位を 受け るの に充分な資格を有するものと判定した。

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参照

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