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博士(農学)李 栄吉 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)李   栄吉 学位論文題名

韓国農業協同組合の特質に関する研究 学位論文内容の要旨

  韓国の農業協同組合(以下、農協という)は、歴史的事情から日本の農協に近 い性格をもっとしてかねてから注目されてきた。しかし、わが同における研究は 金融事業を中心とした総諭的なものであり、各事業の位置づけや系統組織のあり 方など、総合農協としてのトータルな研究はなされてこなかった。また、韓国に おける研究も規範諭や実務諭の域を出ず、実態に即した経済学的研究は皆無とい ってよい。

  本論文においては、日本の農協に関する研究蓄積を踏まえた上で、韓国農協の 特質に関し、以下の視点からその特質の解明を行うこととした。第一には、農協 設立以降の組織と事業の展開を画期ごとに整理し、その到達点を明らかにするこ と( 第1・2章)。 第二には 、韓国の 農協の組 織・事業 の最大の特徴である巨大 な 農協 中 央 会( 以 下 、NACFと い う) の 事業内 容を金融政 策と系統 事業との 関 連を 中心に明ら かにする こと(第3章)。第三に、従来ほとんど未解明であった 単位農協レベルの事例分析を行い、農業再編の中での農協の新たな事業展開の方,

向と農家の利用実態を明らかにすること(第4・5章)である。このことにより、

歴史段階的特徴、系統組織としての特徴を明らかにし、あわせてj11他農協の発展 方向の吟味を行った。

  第1章 では、第二 次世界大 戦後の韓国農協の展開過程にっいて、歴史的背景を 確認しながら三つの時期に分けて整理し、組織上の変遷とその特徴を明らかにし た 。韓 国 の 農協 は1960年代 に 農 業銀 行 と 統合 さ れて3段 階 の 総合 農 協体制 を と り、1970年 代 には 単 位農 協 の 合併 を 行 って 基 盤の 強 化 を行 っ た。 さら に1 980年代 に は 郡農 協 が 吸収 さ れて2段 階 組織に 移行した。 この過程 で、アジ ァ の発展途上国に多い行政主導型の準国家機関的性格からtま脱皮したが、系統組織 の 頂点 に は 巨大 なNACF(農 協 中 央会 ) が君臨 し、道支会 、郡支部 を通じて 単 位農協を掌握する中央集権的な官僚組織が形成された。しかし、近年の農業生産 カの発展と、農産物貿易自由化などの環境変化が、地域特性に対応した地域農業

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の展開と、単位農協の独自性の発揮を要請しており、農協組織の中央集権的な体 制を見直すべき段階にあることを指摘した。

  第2章で は、経済開発計画下の農業政策を画期区分しながら、農協事業の展開 過程を農業政策との関連で位置づけた。設立当初は単位農協が小規模であり、上 部機関による農業財政資金と生産資材の供給が系統農協の主な事業であった。し かし、現実には強固な農村高利貸しの存在を払拭することができず、農協事業は Iヨ 立性を 持た なか った 。1970年 代は 、町 村単 位へ の合 併に よって 単位農協の 事業基盤が確立し、セマウル運動の主体としての位置づけのもとで各事業の進展 がみ られ た。1980年以 降は 、単 位農協 が独自の貯金貸付業務(「相互金融」)

を行うことで自立性を強めており、開放農政のもとでの地域農業開発事業(米以 外の作目導入による多核化戦略)の主体として位置づけられ、従来弱かった販売 事業への取り組みも強化されっっある。

  韓 国 の 農 協 は 全国 連 機能 が事 業別 でな くNACFに 集中 して いる 点に 顕著な 特 徴 が あ る 。 そ こ で第3章 で は ヾNACFの 現 段 階 にお け る 信用 事業 の特 質と、 単 位 農 協 と の 分 担 関 係 に っ い て分 析 し た 。NACFは 全 金 融 機 関 の 貯 金 残 高 の10

%を超える貯金量をもつ巨大な金融機関であり、都市部では一般金融機関として 存 在 し て お り 、 これ に1980年代 から は単 位農 協の 「相 互金 融」 の資 金調整 機 関としての機能をあわせもっに至っている。近年、政策資金が減少する中で、独 自の資金と統合して農家に貸し付けする機能が強化されており、政府の財政的支 援 の 後 退 を 補 完 する よ うに なっ てい る。 単位 農協 にお いて は、NACFを通じ て の政策資金の導人と「相互金融」による農村部の資金吸収によって資金供給カが 強化され、特に単位農協独自の原資にもとづく貸付金の増大は地域農業再編に大 きく寄与している。その結果、単位農協は産地形成や流通対策など地域農業を支 援する経済事業を拡大することが可能となった。このように、農協信用事業は政 府から自立する傾向にあり、そのことが単位農協における経済事業を強化させて いることを明らかにした。

  以上の韓国農協の過渡的性格を確認したうえで、その発展方向を明らかにする ため に、 第4章では地域農業振興の先進事例として著名な江原道新北農協(組合 員1,497戸 ) の 事業 分 析を 行っ た。 そこ では 青果 物を 中心 に販 売事 業の大 幅 ナよ拡大がみられ、それに対応した生産資材購買事業とそのための融資体制が整備 され、それを支えているのが「相互金融」であることなどを解明した。ここから、

今日の単位農協は農業政策に保護されてきた従来の単位農協から脱皮しっっあり、

地 域 農 業 発 展 に お け る 独 自 の役 割 と 機 能 を 有 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。

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  第5章では、 同一農協 管内の農 家調査(30戸)をも とに、農業経営の側面か ら資金需要と農協利用の実態を分析した。組合員農家の経営は、従来の水稲単作 的な構造から大きく変貌してお′り、稲作における規模拡大と野菜、韓牛の導入に よ る集約化が併進している。その背景には、第4章で明らかにした農協による支 援がある。稲作部門においては農協の融資による機械化の進展が大きく寄与して おり、また精米事業による販売対応により農協シェアーも高まっている。野菜部 門にっいては、施設や資材に対するプロパ―資金の供給が部門拡大の誘因となっ ており、また販売に対しても作目班の育成や集荷場の設置と販売対応が大きな役 割を果たしている。このように韓国の先進的な単位農協においては日本の優良農 協に近、似した地域農業振興の手法および組合員の農協利用構造がみられることが 確認された。

  以上を踏まえ、終章では総括と展望がなされている。韓国の農協は、設立当初 の発展途上国型の政策補助機関から脱皮しっっある。それは、信用事業部門の自 立 化 を 原 動 カ と し て な さ れ 、NACFに よ る 市 中 銀 行 業 務 (1970年 代 ) と単 位 農 協 によ る 信用 事業(1980年代 )の開始 によって 独自の原 資による 貸付業 務が拡大じたことによっている。開発途上国においては、農村部のインフォーマ ル金融を払拭することが経済事業拡大の条件であり、,さらに生産資材供給を基礎 にすえながら農畜産物販売事業を拡大することが新たなステップとなっている。

韓国の農協は、政治民主化のなかで最後のテイクオフを迎えっっあるのであり、

そ の た めに は 巨大 なNACFの分割化 と地域農 業に即し た体制整 備が現実 的な課 題となっている。

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学位論文審査の要旨 主 査

副 査 副 査 副 査

教授 教授 教授 助教授

太 田原 七 戸 三 島 坂 下

学 位 論 文 題 名

高昭 長生 徳三 明彦

韓国農業 協同組合の特質に関する研究

韓国 の農 業協 同組 合( 以下 、農 協と いう )は、歴史的事情から日本の農 協に近い性 格 を も っ と して かね てか ら注 目 され てき たが 、わ が国 にお いて は断 片的 な紹 介が ある だけ で、 系統 的な 研究 はナ ょさ れて こなかった。また韓国における 農協研究も 総論 の域 を出 てい ない 。

  本 論 文 は 、 国 際 的 に み た 韓 国 の 農 協 の 特 質 を 、 と く に 変 化 の 激 し か っ た198 0年 代 に 視 点 を 置 い て 明 ら か に し た も の で 、 表52、 図12を 合 み 、5章 か ら 成 る198頁 の 和 文 論 文 で あ る 。 主 な 内 容 は 以 下 の よ う に 要 約 さ れ る 。

  (1)  組 織上 の特 質( 第1章 )

  第 二 次 世 界 大 戦 後 の 韓 国 農 協 の 展 開 過 程に っい て、 歴史 的背 景を 確認 しな がら 三 っ の 時 期 に 分 け て 整 理 し 、 組 織 上 の 変 遷 と そ の 特 徴 を 明 ら か に し た 。   韓 国 の 農 協tま1960年 代 に 農 業 銀 行 と 統 合 さ れ て3段 階 の 総 合 農 協 体 制 を と り 、 さ ら に1980年 代 に2段 階 組 織 に 移 行 し た 。 こ の 過 程 で 、 ア ジ ァ の 発 展 途 上 国 に 多 い 行 政 主 導 型 の 準 国 家 機 関 的 性 格か らは 脱皮 した が、 系統 組織 の頂 点に は 巨 大 なNACF( 農 協 中 央 会 ) が 君 臨 し 、 道 支 会 、 郡 支 部 を 通 じ て 単 位 農 協 を 掌 握す る中 央集 権的 な官 僚 組織 を形 成し てい る。

    こ うし た特 質と 共に 、 近年 の農 業生 産カ の発 展と 、農 産物 貿易自由化 などの環 境 変 化 が 、 地 域 特 性 に 対 応 し た 地 域 農 業 の展 開と 、単 位農 協の 独自 性の 発揮 を要 請 し て お り 、 農 協 組 織 の 中 央 集 権 的 な 体 制を 見直 すべ き段 階に ある こと を指 摘し て いる 。

(2)  事 業 上 の 特 質 ( 第2、 第3章 )

  韓 国 の 農 協 は 全 国 連 機 能 が 事 業 別 で な くNACFに 集 中 し て い る 点に 顕著 ナょ 特 徴 が あ る 。 そ こ でNACFの 事 業 の 特 質 と 、 単 位 農 協 と の 事 業 分 担 関 係 に っ い て

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分析した。

  設立当初は、農業に対する財政資金と生産資材の供給が系統農協の主な事業で あ った が 、 現在 で は中 央組織 であるNACFが 、経済事 業にっい ては単位農 協へ の 移管 を 進 め、 自 らは 信用事 業に特化 する傾向 を強めて いる。NACFは巨 大な 金融機関として、都市部での貯金吸収と単位農協を通じての相互金融による二元 的 資 金 調 達 に よ っ て 、 政 府 の 直 接 的 支 援 の 後 退 を 補 完 し て い る 。   単 位 農 協に お いて は 、NACFを通じ ての政策 資金の導 入と相互 金融による 農 村部の余裕金の吸収によって資金供給カが強化され、とくに相互金融の発達は政 策資金の不足を補う独自の資金循環構造を形成させている。その結果、単位農協 は産地形成や流通対策など地域農業を支援する経済事業を拡大することが出来た。

  このように、農協信用事業は政府依存から自立する傾向にあり、そのことが単,

位 農 協 に お け る 経 済 事 業 を 強 化 さ せ て い る こ と が 明 ら か に さ れ た 。

(3)  単位農協の先進事例の分析(第4、第5章)

  韓国農協のこのような過渡的性格を確認し、その発展方向を知るために、地域 農 業振興の 先進事例 として著 名な江原 道新北農 協(組合 員1,497戸)と その 組合員農家30戸の実態調査を行った。

  そこでは青果物を中心に販売事業の大幅な拡大がみられ、それに対応した生産 資材購買事業とそのための融資体制が整備され、それを支えているのが相互金融 であることなどが明らかにされた。

  組合員農家の経営は、稲作の規模拡大と野菜、韓牛の導入による集約化が併進 し ており、 農協利用 率は、ト ラクタ一 導入で75% 、管理用 機械で85%と 高い 水準にある。青果物の生産・販売においても農協の下部組織である作目班が中心 的役割を担っている。

  このように韓国の先進的な単位農協においては日本の優良農協に近似した地域 農 業振興の 手法およ び組合員 の農協利 用構造が みられる ことが確認 された。

  以上のように、本研究は、韓国の農協について初めて体系的な分析を行い、そ れが発展途上国型の政策補助機関から脱皮し、地域農業への対応カをもつ日本型 の総合農協に移行しっっあることを解明し、多くの新知見を得ている。この結果 は学 術的に高く 評価されると共に、農協の健全な発展に寄与するものである。

  よっ て審査員一同は、最終試験の結果と合わせて、本論文の提出者李栄吉は 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 が あ る も の と 認 定 し た 。

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参照

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