博士(文学)李 這博 学位論文題名
日本借用語の近代中国への移入 ― 梁 啓 超 の 場 合 一
学位論文内容の要旨
本 論 文 は 、 梁 啓 超 『 飲 氷 室 合 集 』 ( 文 集45巻 ・ 専 集104巻 ) を 主 要 調 査 資 料 と し て 、 著 作 の 割 注 に あ る 語 、 及 び 英 語 原 文 を 付 け て い る 語 を考 察対 象 語と し、
概 観 的 な 視 点 か ら 日 中 両 言 語 に お け る 語 の 借 用 関 係 を 明 ら か に す る 。 そ し て 、 日 本 借 用 語 の 近 代 中 国 へ の 移 入 に お い て 、 梁 が 果 た し た 役 割 の 重 要 性 と 大 き さ を考察したものである。
考 察 にあ たっ て 、最 初の 本格 的な 華英 ・英 華辞 典で ある モリ ソン 『華 英 字典 』、
日 中 近 代 語 交 流 の 起 点 と な る 辞 書 と し て 位 置 づ け ら れ る ロ プ シ ャ イ ト 『 英 華 字 典 』 『 英華 和訳 字 典』 『新 増英 華字 典』 『華 英音 韻字 典集 成』 、及 びロ プ シャ イト 辞 典 か ら直 接の 影 響を 受け た『 英華 大辞 典』 を中 国対 照資 料と し、 『哲 学 字彙 』、
『 和 英 語林 集成 』 、『 明治 のこ とば 辞典 』を 日本 対照 資料 とし た。 そし て 、『 新和 仏辞典』などの英和・和英、和仏 ・仏和、和独・独和辞典及び『言海』、『大言海』、
『日本国語大辞典』と、『大漠和辞典』、『辞源』、『辞源続編』ご『辞海』、『国語辞 典』、『漢語大詞典』などの補助 資料を加えた。
考 察 手 順 と し て は 、 ま ず 、 考 察 対 象 語 が ど の よ う に 『 哲 学 字彙 』『 和 英語 林集 成 』 『 明 治 の こ と ば 辞 典 』 に 採 録 さ れ て い る か を 検 索 し た 。 次に 、そ れ らが 中国 の 辞 書 類 に 採 録 さ れ て い る か ど う か を 調 査 し た 。 採 録 さ れ て い る 場 合 、 い ら 、 ど の よ う に 採 録 さ れ た の か 、 古 典 の 出 典 が 書 か れ て い る か ど う か を 調 査 し た 。 古 典 の 出 典 が あ る 語 に つ い て は 、 意 味 の 変 遷 が あ る か ど う か を 分 析 し た 。 新 た な 意 味 が 付 与 さ れ た 場 合 、 そ れ は 中 国 語 内 部 で 独 自 に 生 じ た も の か 、 そ れ と も
日本語の影響によったのかを検討した。
日本 対照 資料 に採 録さ れて いない語については、日本補助資料を利用して、
日本語 であ るか どう かを 調査 した。日本語である場合、上記の手順で日中両国 の語の利用時期を探った。
最後 に、 その 概観 を把 握し て日中両国の語の利用時期を探りながら、梁と日 本借用 語と の関 係、 特に 日本 借用語の近代中国への移入における梁の役割を明 らかにした。
梁啓超が自ら「日本謂」「日本人謂」「東訳」「日本人訳」などの特徴的な表現 を付け て、 日本 借用 語で ある と明確に指摘した49 語は全て彼の認識した通りで ある。そのうち、「公武合体、為替手形、社債、小作」4 語を除いて、全ての語 が近代 中国 の辞 書類 に採 録さ れている。梁啓超の積極的な努カによって、多く の日本借用語が近代中国に移入された可能性が高い。
考察対象語(割注及び英語原文付きの語)161 語のうち、142 語は日本借用語に
属する 可能 性が 高い 。中 国製 と認 めた 19 語 のう ち、 「法 律、木乃伊、原因」3
語は中 国製 であ りな がら 、先 に日本の辞書類に採録され、また梁の使用によっ
て近 代 中 国 で 再 認識 させ たも ので ある 。日 本借用 語の 142 語の うち 、141 語は
梁の努 カに よっ て近 代中 国に 移入された可能性が高い。これらは梁の使用以前
に既 に 定 着 し て いた 1 語( 哲学 )に 比べ ると 圧倒 的に 多い 。141 語の うち 、元
は古典 中国 語で あり なが ら日 本で新たな意味が付与された語は52 語である。そ
のうち、「推論、自治、比較、合意、先占、官庁」を除いて、これらの語は、そ
れ以後 中国 で、 古典 の意 味よ りむしろ新たに付与された意味でよく使用されて
いる。
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
日本借用語の近代中国への移入 ― 梁 啓 超 の 場 合 ―
本 論 文 は 、 梁 啓 超 『 飲 氷 室 合 集 』 を 主 要 調 査 資 料 と し て 、 梁 啓 超 が 割 注 や 英 語 原 文 を 付 け て い る 語 を 考 察 対 象 語 と し て 、 概 観 的 視 点 か ら 日 中 両 言 語 に お け る 語 の 借 用 関 係 を 明 ら か に し 、 日 本 借 用 語 の 近 代 中 国 へ の 移 入 に お い て 梁 啓 超 の 果 た し た 役 割 の 重 要 性 を 明 ら か に し た も の で あ る 。
梁 啓 超 が 「日 本謂 」「 日本 人謂 」「 東訳 」 「日 本人 訳」 など の特 徴的 な表 現を 付 け て 日 本 借 用語 であ ると 指摘 した49語 のう ち 、「 公武 合体 」「 為替 手形 」「 社債 」
「 小 作 」 の4語 を 除 い て 総 て の 語 が 、 近 代 中 国 の 辞 書 類 に 採 録 さ れ て い る こ と が 実 証 さ れ た 。
割 注 及 び 英 語 原 文 付 き の 語161語 の う ち 、142語 が 日 本 借 用 語 で あ る 可 能 性 が 高 い こ と を 示 し 、 そ の142語 の う ち の141語 が 梁 啓 超 に よ っ て 近 代 中 国 に 移 入 さ れ た 可 能 性 が 高 い こ と を 解 明 し た 。 ま た 中 国 出 自 の19語 の う ち「 法律 」「 木 乃 伊 」 「 原 因 」 の3語 は 、 先 に 日 本 の 辞 書 類 に 採 録 さ れ 、 梁 啓 超 の 使 用 に よ っ て 近 代 中 国 で 再 認 識 さ れ た 語 で あ る こ と を 解 明 し た 。
厖 大 な 資 料 を 扱 い 、 多 く の 語 を 考 察 対 象 語 と し た 為 に 、 証 明 不 十 分 な 要 素 や 清 末 言 論 界 の 把 握 に 不 十 分 な 要 素 を 含 む が 、 辞 書 類 を 駆 使 し て の 概 観 的 把 握 に は 成 功 し て お り 、 梁 啓 超 が 近 代 中 国 に 移 入 し た 日 本 借 用 語 の 全 貌 が 明 ら か に さ れ 、 こ の 分 野 に お け る 研 究 を 大 き く . 進 展 さ せ て い る こ と は 疑 い ない ので 、本 委 員 会 は 全 員 一 致 で 本 論 文 を 博 士 ( 文 学 ) に 相 応 し い も の と 認 定 す る 。