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振動台を用いた実大石灯篭の耐震補強効果に関する実験的検証

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Academic year: 2022

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振動台を用いた実大石灯篭の耐震補強効果に関する実験的検証

金沢大学理工研究域 正会員 村田 晶 同 正会員 宮島昌克

(株)日本海コンサルタント 清水 諒

1.はじめに

日本は大規模災害となるような地震が多く発生す る地域であり,近年も大規模な地震災害が頻発して いる.それに伴う石造構造物の被害も多く発生して おり,特に灯篭や墓石は石材を積み重ねた単純な不 安定構造物であることから多くの被害を受けている.

墓石に関しては,兵庫県南部地震を契機に振動台 実験や解析等により様々な補強方法の考案や検証が 行われてきた例えば1)が,石灯篭に関する耐震対策の検 証は十分に行われていると言えない.石灯篭の場合,

墓石と異なり意匠を施されているため,耐震対策に 制約があり,形状を考慮した対策が求められる.その ため,耐震対策を施しても十分な効果が得られず灯 篭が倒壊するという事例もある.また,2011年東北 地方太平洋沖地震による灯篭被害は,全壊・半壊・小 壊・一部損傷を合わせて 960 件もの被害が報告され ている2).筆者らはこれまでに石灯篭の振動台実験3) を行っているが,東北地方太平洋沖地震を扱った実 験は行っておらず,長時間震動による構造物への影 響が評価できていない.

そこで本研究では,振動台実験で芯棒によって耐 震化された実寸大石灯籠に対し,東北地方太平洋沖 地震の地震波を用いて補強効果を検証することを目 的とする.

2.振動台実験の概要

石灯篭試験体については,御影石を石材とした石 灯籠のうち,神前灯篭と春日灯篭と呼ばれるタイプ について検証する.地震による倒壊を防止するため には各部材が離れてしまわないように,それぞれを 一体化させることが有効であると考える.そこで本 研究では,各部材に対しステンレス芯棒を通し,その 両端をボルトで固定することで一体化させる耐震対 策を施すこととする.

入力地震動については,東北地方太平洋沖地震で

最大加速度が最も大きかったK-NET築館と,予備実 験により補強済みの石灯篭の固有振動数と地震波の 卓越周波数が同程度であると確認した,K-NET大宮 の 2 波を選定する.また,既往の研究との比較のた め,兵庫県南部地震(JMA神戸),岩手・宮城内陸地震

(K-NET 一関西)の合計 4 波を用いて加振する.なお

加振の順番は,大宮,築館,神戸,一関西の順とする.

入力レベルは原波入力を100%とし,他に50%,75%

レベルによる加振を行う.なお紙面の都合上,実験結 果については神前灯篭の結果のみ記載する.

3. 神前灯篭における加振実験結果および考察 3.1 部材ごとの応答倍率

地震波加振の結果,神前灯篭ではどの地震波で加 振しても倒壊,ひび割れは見られなかった.ここで,

それぞれの地震動に対する各部材の加速度応答倍率 を図-1に示す.図に示すように,部材の位置が上部 になるにつれて応答が大きくなることから,芯棒の 効果により石灯篭の応答としては 1 次モードが卓越 し,ほぼ一体となって振動すると考えられる.しか し,入力の地震動レベルが大きくなるとロッキング 振動が表れる.例として,築館100%レベルで加振し た際の火袋受けの左右における加速度応答を図-2に 示す.図に示すように加速度波形が逆位相を示して いることから,ロッキングが発生していることが分 かる.なお,実際には築館100%レベルで加振した場 合,柱の下部でロッキングが発生していた.ロッキン グ振動が起きると部材の端部に大きな応力が発生す るため,写真-1に示すような石部材の割れが発生し やすくなる.割れが発生すると石灯篭としての経済 的・文化的価値が大きく毀損してしまう.石部材の割 れは石の強度に依存するが,強度を上げることは難 しいため,ロッキングの影響を回避する方法か,ロッ キングの発生を抑制する方法を考慮することが必要 である.

土木学会第69回年次学術講演会(平成26年9月)

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Ⅰ‑366

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3.2 ロッキングの発生原因

次に,ロッキングが発生した原因について考える.

実験終了後に石灯篭を解体した際,芯棒と石部材を 固定する為のボルトがかなり緩んでいることがわか った.これより,ロッキングはボルトの緩みにより石 部材同士の摩擦力が低下したためであると考える.

ロッキングは強振時に発生していたため,強振によ る振動特性の変化を検証する.そのために,得られた 波形を強振前,強振中,強振後に分けてフーリエ変換 しスペクトルの増幅率で表したものを図-3に示す.

ここで築館波は強振となるところが 2 回あるため,

図中にはそれぞれ強振中1,強振中2と表記する.図 に示すように,ロッキングが発生した築館100%の強 振中2で卓越振動数が4Hz付近から3Hz付近へと変 化することがわかる.この結果から,ロッキングによ り石部材が一体化しきれず,石灯篭の固有振動数も 変化したことがわかった.

4.おわりに

灯篭被害が数多く発生した東北地方太平洋沖地震 のような長継続時間の地震動に対しても芯棒を用い た耐震補強により効果が得られるのかを検証した.

その結果,倒壊を防ぐという点では既往の地震のみ ならず,東北地方太平洋沖地震の地震動でも本方法 による補強効果のあることが分かった.しかし,ロッ キング振動の影響により,石部材の割れを防ぐこと ができなかった。しかし,本方法ではロッキングを防 ぐことは難しい.ロッキングによる影響が少ない部 分で発生させ,ひび割れが生じるのを防ぐ方法等も 考えられるが,まずはロッキングの発生を抑制する 方法を考慮することが必要である.また,今回の補強 法は新しい石灯篭に適用しているが,既存の石灯篭 に適用することは簡単でないため,既存の石灯篭に 適用可能な補強方法も検討する必要がある.

謝辞

実験をサポートして頂いた中村氏(現(株)CPU)

をはじめとする学生各位,振動台実験の供試体を提 供して頂いた越前(株)に,心から感謝申し上げます.

また,入力地震波としてK-NET観測記録および,JMA を利用させていただきました.

参考文献

1) 古川愛子,清野純史,三輪 滋,縦山貴昭:実寸大 模型を用いた振動台実験に基づく墓石の各種耐震補強 策の効果の検証,地域安全学会論文集,Vol.8,pp.31- 39,2006.

2) 宗教者災害救援マップ:

https://sites.google.com/site/fbnerjmap/,(2013/12/11アクセス) 3) 村田 晶,清水 諒,宮島昌克,伊藤直洋:石灯篭の地 震応答特性に関する振動台実験と3次元個別要素法によ る解析的検討,土木学会論文集, A1, Vol.69, No.4, pp.I- 965~ I-972,2013.

0 1 2 3 4 5 6

大宮50% 大宮100% 築館50% 築館75% 築館100%

応答倍率

入力地震波 中台

火袋受け 笠(上部)

ギボシ

図-1 神前灯篭の加速度応答倍率(水平方向)

図-2 築館 100%加振時の加速度応答(火袋受け左右)

図-3 強振前,中,後に分割したスペクトルの増幅率

写真-1 ひび割れが発生した柱下部(春日灯篭)

土木学会第69回年次学術講演会(平成26年9月)

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参照

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