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石   崎 泰 雄

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Academic year: 2022

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(1)論. 説. インフォームド・ディシジョン. 石. フォームド・ディシジョン. 崎泰雄. 二九一. ヨーロッパ大陸︵ドイツ・スイス他︶ におけるイン. 2.南アフリカ. ー.オーストラリア. ド・ディシジョン. 諸外国における情報開示による意思決定. カナダ・イギリス・ニュージーランドにおけるイン. 四. ー.判例. 総括と日本法への若干の示唆. 2.イギリス. 五. 2.学説. インフォームド・ディシジョン. 三 オーストラリア・南アフリカにおけるインフォーム. 3.ニュー ジ ー ラ ン ド. ー.カナダ. フォームド・ディシジョン. ニ. 一 アメリカにおけるインフォ;ムド・ディシジョン. 序.

(2) 早法七二巻三号︵一九九七︶. 二九二. ︵1︶ 石崎泰雄﹁医療契約における医師の説明義務と患者の自己決定権ーアメリカにおけるインフォームド・コンセント法理の生. 得ることができればと考える︒. ついての詳細は別稿に譲らねばならないが︑患者・医師関係における患者の﹁意思決定﹂のあるべき方向の示唆を. いるのかを︑比較法的視点から︑主として情報開示基準に焦点をあてて見ることにする︒従って︑日本法の検討に. ては︑そのインフォームド・コンセント法理が︑他の英米法圏を中心とした諸国でどのような現代的展開を遂げて. 旧稿においては︑アメリカにおけるインフォームド・コンセント法理の生成と展開を見た︒そこで︑本稿におい. ︵1︶. 則・基準として掲げ︑医療行為を為す際の指針となすことであろう︒. に明示することが求められよう︒そのためには︑医療機関・医師に義務づけられる医療情報開示基準を明確な準. 療に長くかつ深く刻印されてきた医意識・慣行が︑もはや現代社会では否定さるべきものであることを医療専門家. 医療パターナリズムの故に︑この個人臼患者の基本的な権利が十全には保護されない傾向があった︒このように医. う︒しかし︑医療の領域においては︑近代社会に至っても︑ヒポクラテスに起源を有し長く医倫理を支配してきた. 己の身体に対していかなる検査・治療をなすかを決定することも当然その個人の基本的な権利に属するといえよ. ることは︑社会的及び法的秩序の基礎とされる︒個人が︑傷害や疾病を被り︑あるいはその事実の確認のため︑自. 近代民主主義社会では︑個人が自己の身体をいかに扱うかということに関し︑その自由を認め︑その自律に委ね. 序.

(3) 成と展開1﹂早稲田法学会誌四二巻三九頁︵一九九二年︶︒. 一 アメリカにおけるインフォームド・ディシジョン. 一Φ冨渥ω蜜亀o鼠¢甲. アメリカ合衆国におけるインフォームド・コンセント法理の生成と展開の歴史的経緯に関しては︑既に別に詳述 ︵1︶ しているので︑ここでは主として情報開示基準に関する比較的近時の判例・学説の状況に焦点を当てることにす る︒. ︵2︶. さて︑インフォームド・コンセントという言葉が︑世に初めて登場したのは︑ω巴碧 ︵3︶. ︵4︶. お邑蔓判決においてであったが︑アメリカのインフォームド・コンセント法理を典型的に表わすものとして︑他. の諸国で理解されているのが︑O曽簿段ビ蔓ダ9窪8判決である︒この事件は︑椎弓切除術を受けた一九歳の男. 性患者が︑ベッドから転落し︑下半身麻痺となったものであるが︑菊○σぎω2判事は︑開示義務の範囲について次. のような見解を示す︒即ち︑﹁患者の自己決定権によって開示すべき義務の範囲が定まると考えられる︒その権利. は患者が︑理解をしたうえでの選択をすることが可能となるような十分な情報を持つときにはじめて有効に行使す. ることが可能となる︒そこで︑医師が患者に伝えるべき範囲はその患者の必要性によって定めねばならない︒そし ︵5︶ てその必要性とは︑その決定にとって不可欠な情報である﹂と︒. ニ九三. しかしながら︑結局︑その重大性・必要性に関するその患者の考えは︑医師にはとうてい知りえないことである ︵6︶ という理由から︑合理的患者を基準とすべきであるとの見解を採用した︒ インフォームド・ディシジョン.

(4) 早法七一一巻三 号 ︵ 一 九 九 七 ︶. 二九四. ︵7︶ これに対し︑具体的患者基準を標榜すると思われるω8洋<●卑銭8巳判決が現われる︒これは類繊維腫︵子宮. 平滑筋腫︶のため子宮摘出手術を受けた後︑失禁の症状を呈するようになった患者が︑手術に伴う危険や他の治療. 法を告げられなかったことを訴訟原因として執刀外科医を訴えたものである︒U8言判事は︑Oき冨吾貫K判決に ︵8︶ 示された準則は︑おそらく多数派の準則であろうが︑その合理人アプローチは︑幾人かの評釈者に自己決定権の後. 退であると批判されているとし︑次のように判示する︒即ち︑﹁O壁8き仁蔓判決の見解は確かに被害患者に認めら. れる保護を厳しく制限する︒もし十分な開示を受けていたら︑その患者は提示された治療を拒絶しており︑そして. 類似した状況に置かれた合理人ならば同意したであろうという範囲で︑患者の自己決定権は失われて取り返しがで. きないものとなる︒理解して決定するというこの基本的な権利は︑全面開示の準則の根拠である︒したがって﹃合 ︵9︶ 理人﹄基準を課すことによってこの権利を危うくすることはできない﹂と︒. 右の判示部分からは︑情報開示基準としての具体的患者基準と︑患者の意思決定との因果関係における主観基準. ︵具体的患者基準︶とが︑まだ完全には峻別されてはいないことがうかがわれるが︑本判決は︑﹁医師は︑自分の患 ︵10︶. 者が提示された治療や手術に同意するか拒否するかについて︑インフォームド・ディシジョン︵情報開示による意. 思決定︶をするのに必要とするであろうすべての重要な情報を開示すべき義務がある﹂としており︑情報開示に関 し︑具体的患者が基準とされるべきだとの認識が見られる︒ ︵n︶. これに対し︑患者の意思決定との因果関係につき明らかに主観基準を採用する判決がある︒. 霞8冨あ自くじ固房ケースは︑硬膜下血腫の疑いで︑動脈造影検査を受けた女性患者が︑検査の過程で閃光を感. じ目が見えなくなったので︑それを直ちに検査を施行している医師に告げたが︑当該医師は検査を続行し︑その結.

(5) 果︑患者は首の後に衝撃を感じた後︑突然︑腕︑脚︑胴体が麻痺したというもので︑動脈造影検査の危険性を知ら されていなかったとして幕笹碍窪8訴訟が提起されたものである︒. 霞一叶9亀判事は︑﹁因果関係の決定基準として客観基準を用いると︑個々の患者の個性・特異性が考慮されない. ことになり︑自己の身体に対して何がなされるべきかを自己決定する不可侵の権利が︑他人によって課される基準. ︵13︶. に服することになってしまう﹂という根拠や︑﹁同意の基礎となる権利が︑社会の主流の外にある恐怖︑不安︑宗 ︵12︶ 教的信念︑迷信といったものを持った人々にとっては︑事実上損われてしまう﹂といった根拠から︑主観基準を採 用した︒. 4︶. しかし︑このノースカロライナ州最高裁の判例は︑後に立法によって覆されることになる︒ ︵1 他にアラバマ州の閃○おダ㌍○名bケースのように︑因果関係の決定基準として客観基準を採用しながらも︑個. 別具体的患者の事情にも配慮を示す判決もある︒これは患者の食道の検査中に︑その狭窄が見つかったことから︑. 先の尖ったプラスチック製器具を食道拡張のため挿入され︑その結果︑食道穿孔が生じたというケースで︑通常の. 食道検査に伴う危険と合併症については説明されていたが︑食道拡張のための器具挿入の場合の危険等については ︵15︶. ︵16︶. oぎおω判事は︑﹁患者の証言は︑後知恵にもかかわらず︑重要で適用でき 話されていなかったというものである︒o. るものであり︑そして陪審により考慮される資格がある﹂と述べている︒ ︵17︶. しかし︑主観基準を採用する州は︑オクラホマ州とオレゴン州の二州のみである︒そのオクラホマ州のω需蓉R. <・ωΦ民巴ケースは︑無脳症児として生まれた子が︑二三−二四週の胎児で水頭症に罹患しているということがわ. ニ九五. かったときに︑他の治療法としての堕胎に関する重大な情報︵オクラホマ州では堕胎は禁じられていたが︑他の州では. インフォームド・ディシジョン.

(6) 早法七一一巻三号︵一九九七︶. 二九六. 可能な所があった︶を開示しなかったことが器⑯凝窪8になるかどうかが争われたものである︒U8浮判事は︑先 ︵18︶. 例のω8簿判決を引用し︑﹁患者は重大な危険や他の治療法の十分な開示があれば︑患者の意思決定が変更された ︵19︶. であろうということを個人的に証明したときにのみ勝訴する﹂として︑主観基準を採用する︒. またオレゴン州の︾お轟<︑9漏ユ畠ケースは︑裂孔ヘルニア手術で︾轟巴3涛リングを使用することにつき︑. 患者の同意を得ていなかったことを理由とし︑外科医と病院に対し︑冨閃凝窪8とω讐9員訴訟が提起されたも ︵20︶ のであるが︑ご民①判事は︑﹁仮定的な合理的患者を因果関係という裏口を通して再導入するつもりはない﹂と述 べている︒. このようにアメリカの比較的近時の判例を見ても︑医療情報開示基準としてのそれと意思決定との因果関係の基. 準としてのそれという区別の意識は比較的稀薄である︒ ︵21︶ 一方︑学説の方では︑合理的患者基準を主張するものとされる譲巴N節ω9窪器ヨきの論稿においては︑﹁イン ︵22︶. フォームド・ディシジョンをする際に︑患者の利益が最高のものであるので︑すべての重大な危険は患者に開示さ. れねばならず︑従って危険の重大性の基準の内容が︑開示義務の範囲を決定する﹂とされるが︑その基準の内容と ︵23︶. しては︑﹁合理人が患者の立場にあれば提示された治療を受けるか否かを決定する際に危険の意義を重要視するで. あろうということを︑医師が認識しているか認識すべきときにその危険は重大である﹂として︑合理人基準説を主. 張する︒そして患者の主観的な心の状態だけが︑認識と同意の要素を決定するのに考慮されるアプローチでは︑患. 者が主観的に危険を理解し︑主観的に同意を表明した場合にしか医師は治療を行なえないことになるといった点. や︑患者の証言が︑審理において事実上同意の問題を支配するといった洞察を根拠に︑﹁客観基準﹂が適切である.

(7) ︵鍛︶. ︵25︶. としており︑因果関係においても患者の立場にある合理人が基準とされる︒ ︵26︶. これに対し︑﹁具体的患者基準﹂を主張するものとして挙げられる>毒霧の著書も︑提示された治療について決. 定する際に患者が知るのに何が重要であるかという患者の視点によって何が開示されねばならないかを決定する判. 決例がいくつかあるとし︑開示基準としての面に視点を当てている文脈の中で︑﹁これらの判決例では︑もし適切 ︵27︶. な情報が開示されていたらその具体的患者がなしたであろうということではなく︑平均的合理人がなしたであろう. ということを考慮しなければならないという見解が採用されている﹂と指摘しており︑開示基準としての具体的内. 容・基準は示されないまま︑因果関係で客観基準を採用する裁判所の見解が批判されている︒ ︵28︶. 同じく﹁具体的患者基準﹂を主張するものとして引用される竃Φ一ωΦ一の論稿では︑﹁もし開示がなされないとす ︵29︶ るとたいていの患者は︑インフォームド・ディシジョンをすることができない﹂との指摘がなされた後︑﹁開示基. 準﹂と﹁因果関係﹂の項目が分けられて叙述がなされている︒そして︑﹁開示基準﹂の項目では︑Oき9吾仁曙判決 ︵30︶ が引用され︑﹁開示義務の範囲は患者の自己決定権によって決定さるべきだとされた﹂とされ︑﹁もし個々の目的︑. 1︶. ︵32︶. 個人の自己決定権の促進︑人間的尊厳︑そして合理的な意思決定が尊重されるなら︑情報の開示をしないことは︑ ︵3 これらの目的を損うものである﹂と述べられるが︑開示基準としての具体的な内容・基準は示されない︒また﹁因. 診断 ②. 提示した治療の性質と目的 ③ 治療の. 果関係﹂の項目下では︑主観基準を採用すべきとの趣旨の叙述が見られる︒ ︵33︶. さらに︑これが比較的近時の著作では︑開示事項を︑﹁①. 危険・結果・懸念④成功の可能性⑤他の治療法⑥何もしなかった場合の予期される結果⑦スタッ. ニ九七. フと設備の制約⑧助言﹂といったように具体的に列挙するものが多く見られるようになるが︑これは開示のた インフォームド・ディシジョン.

(8) 早法七二巻三号︵一九九七︶. 二九八. ︵34︶ めの法的基準として半分以上の州で立法がなされ︑列挙主義による合理的医療専門家基準が採用されたことと無関. 係ではないと思われる︒しかし︑例えば霞餌お魯普の著書では︑同時に﹁開示基準として︑医療判断は生物学的 ︵35︶. データや実験的価値より以上のものに基づくものであり︑それは患者自身の生活プランの重要な考慮を含み︑患者. だけがこれらの主観的要素へのアクセスを持つ﹂とされるように︑具体的患者を基準とすべきだとの視点も含まれ る︒. なお︑アメリカというより︑むしろ世界的な認識のレベルでは︑情報開示基準は以下のように理解されていると. いえよう︒即ち︑合理的患者基準は︑﹁医師の認識又は認識可能性を前提とし︑もし患者の立場に合理人があれば︑. その治療に関する意思決定にとって重要だと思われるすべての情報を開示すべきである﹂という公式で示されよ. う︒また因果関係の認定においては︑客観基準として︑合理人であればその治療を拒絶していたか否かという形で. 適用される︒これに対し︑具体的患者基準は︑﹁医師の認識又は認識可能性を前提とし︑提示された治療を受ける ︵36︶. 具体的患者が︑その治療についての意思決定に必要とする情報が重大な情報であり︑その重大な情報をすべて開示. すべきである﹂というように公式化されよう︒これは︑﹁具体的患者にとって重要である情報をすべて開示すべき. である﹂という理念が存するとき︑実際の事例で情報開示義務違反という医師の責任を認定する際に︑その注意義 ︵37︶. 務違反の構成要素として認識可能性があり︑もし医師に認識可能性がなければ︑最終的には責任は認められないと. いう法的構成になるわけであるから︑開示基準として︑医師の認識又は認識可能性を義務のレベルにおいて入れて. おいた方が︑医療行為者にとっても明僚であると思われるからである︒また︑具体的患者基準は因果関係の認定に. おいては︑主観基準として︑具体的患者が自分に開示されなかった情報が開示されていれば治療を拒絶していたか.

(9) 否かという形で判断される︒. 以上︑主として開示基準に焦点を当ててアメリカの判例・学説を考察してきたが︑そこでは︑具体的患者の権. 利・利益への志向は見られるものの︑具体的患者開示基準は︑ほとんどの州で採用されていないというのが現況で. ある︒具体的患者開示基準が理念として優れていながらも︑現実の医療現場で適用する基準としては︑学説・判例. が批判する以外の何らかの機能的困難性が存するという可能性も考えられよう︒この意味で︑後述する﹁混合基 準﹂の検討は有益であるように思われる︒ ︵38︶. また︑アメリカのインフォームド・コンセント訴訟の多くが︑たとえ具体的患者の権益を保護しようという志向. を見せる裁判所であっても︑結局︑因果関係の認否の段階でこれを否定する傾向にあることも︑ある意味で至極必 ︵39︶. ︵40︶. 然的なことと思われる︒インフォームド・コンセントの欠如を理由とする損害賠償請求は︑物理的損害の発生を前. 提とし︑説明されなかった危険が実際に現実化したときにのみ認められる︒そして患者側が︑情報を開示されてい. たら︑現に損害を生ぜしめた治療に同意していなかったであろうという因果関係の立証に成功しなければ︑当該治. 療を受けたことによって生じた損害賠償の請求は認められないということになるからである︒. しかし︑この因果関係の問題と開示義務違反の問題とを︑殊にその効果の面において峻別する扱いがなされれ. ば︑アメリカのインフォームド・コンセント訴訟も更に違った展開が期待できるのではなかろうか︒つまり︑因果. 関係が否定された場面においても︑また患者に身体的損害が生じなかった場合にも︑もし患者に重要な情報が開示 ︵41︶ されていなければ︑そのこと自体が開示義務違反による患者の自己決定権の侵害であると考えられよう︒インフォ. ニ九九. ームド・ディシジョンの崇高な理想からすれば︑医師が患者に適切な情報を開示しないで︑そして患者が結果的に インフォームド・ディシジョン.

(10) ︵42︶. 早法七二巻三号︵一九九七︶ ︵43︶. 三〇〇. は何の身体的損害を被らないときにこそ︑その役割が果たされるべきものではなかろうか︒また患者には︑たとえ. 治療自体はうまくいった場合でも︑開示義務違反があれば損害賠償請求が認められるべきではないだろうか︒これ. は勿論︑因果関係が認められた場合の損害賠償額と比較すれば︑そうした損害とは無関係に認められる︑開示義務. 違反匪自己決定権侵害の賠償であるため︑一般的には金額的には低い評価がなされることになると思われるが︑む. しろこうした開示義務違反U自己決定権の侵害が︑インフォームド・ディシジョン︵情報開示による意思決定︶訴訟 の中核とされるべきではなかろうか︒. なお︑近時のアメリカの政治政策的影響による逆流的潮流については︑吉田邦彦﹁近時のインフォームド・コンセント論への. 一疑問ー日本の医療現場の法政策的考察を中心としてー﹂民商法雑誌一一〇巻二号五八頁以下︑三号一頁以下︵一九九四年︶. ︵1︶. 臣嵩︒︵9一︒u一撃9●>唇峯睾︒. の中で詳述されている︒また︑情報開示基準と因果関係の決定基準との峻別については︑丸山英二教授により示唆を賜った︒ ︵2︶ω9 ︒而・<●いΦ一餌薦ω雷鉱・噌αd三<Φ邑q切8こ・︷↓霊総のωる嵩℃. 殊にイギリス貴族院の裁判官は︑インフォームド・コンセントとは︑9葺Rど曙判決に示された見解そのものを指すとの極. 端な理解をしてい る ︒. ︵3︶. ︒℃Φ8ρま轟コ臣刈認︵U ○Ωぴピ§畳 ︵4︶9旨Rど曙< ︒ o. ︒P き蕊こ碧刈○︒︒ o ㌔o. ︵5︶きミる二︒︒S ︵6︶. ぎ出︒§①α08のΦ旨9ωのωぎ︑.害一一−U一ω︒一・ωξ①︑.冒誘象&8ρにUβ﹇菊の ︒︒︒︒︵一零①︶旧. ︵7︶ω8辞<﹂W惹&○具︒︒︒℃●圏切罐︵○包㊤﹂︒§●. 因緯N﹂氏・§90・霧①暮−>閃巴蔓ぎ一①っ冨壽≦の凶・pω︒q勺算じ菊①<﹂︒︒刈︵一︒ミ︶.. ︵8︶ω①こ︒一の︒P 寓 Φ 象 ︒ 巴 竃 巴 ℃ 轟 & 8. ︵10︶. 奪幾こ簿㎝留●. ︵9︶ω8ヰ<︒ω蚕象o具㎝㎝倉讐3︒︐.

(11) 16 15 14 13 12 11 ) ) ) ) ) ). O撃ωけ異ω①︒●︒︒−田お︵鋤︶︒. 緕O●. ω9Φ琶①目蝉p一嘗o吋ヨaOO霧Φ導8↓げ段8ざ匿Zを. 8S. gO. ①ミ●. ①倉−O留︒. NOO︒. NO㎝︐. インフォームド. ・ディシジョン. 三〇. 冒団o﹃ヨ900霧窪汀≦ぎUΦo一8ω︷○吋≦げo筥評ぎ匡①良o餌一 蝉露8き傷跨Φ9類︵ヌ匹一一Ra.︶ レ︒刈㊤蕊︒︒︵お︒︒一︶. 黛駄 讐. 』. \. d曾 ご幻Φメ爵︒︒︵お刈︒︶︒. 頴暑︒︒牙①ωぎヨ↓︒旨い睾甘評け一①耳︑ω空讐房︵﹃≦①総昌賦一辱○℃包言ω㊦α︒ン. 一︒︒ ︒︒︶︒. ︒旨︵客O︒一︒︒︒N︶︒ 冒︒喜Rω8<︒田一一ωるG︒刈ω 中Nα︒. 2. ︿︒鯨o類p㎝良ω・︒臣︒緕︵≧聾 象03︒. 一園O●. <︒ωΦ一訂一為島頃︒鑓一旨︒︵○箆鋤﹂︒︒︒刈︶︒. まミ︸. ≦巴N. 黛駄. きミ︶. ま匙. 』. 禽3簿 NOF. o︒. 騒織 簿 NOG. 讐. 匡①一ω9. 蝉け 認 − 騒 ︒. >巨霧︶ ﹃︷ONBaOo霧窪茸oO¢箏㊤5丙巻①ユe窪母戯oφ一︒刈刈●. きミ︶. 〜黛斜. 』. 9 脳黛織. 緯緯讐簿2。讐. >﹃①づ9<︒9諺旨プ趨︒︒℃・窪㎝蟻︵9︒お︒︒︒︒︶︒. きミ︸讐. 讐ω︒︒︵一㊤ 濾 y. ω98FH鼠○円BaO8ωΦ旨けぎ跨①q ω. き匙﹃. 男oお. O︐. 黛3 讐ooOS \. 9窪oR. 32 31 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 20 19 18 17 ω ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) QO ω.

(12) 早法七二巻三号︵一九九七︶. ︵ 3︶ 4. ωoどoFGっ愚ミ88一9簿も︒OS. ︵33︶ 例えば︑甲竃巽曽富FのR貯鼠oωきα90い蝉ヨ︵N&Φemけ器﹄O︵お露︶参照︒. 三〇二. こうした基準を示唆するものとして︑新美育文﹁医師と患者の関係﹂加藤π森島編・医療と人権︵有斐閣︑一九八四年︶ニニ. ︵35︶ 霞胃ω魯巴一も愚ミ⇒09ωG︒もけ一〇●. 三頁︒. 6︶. ︵3. て指摘されている︒. ︵37︶ 日本法においても既に同様のことが︑金川琢雄・診療における説明と承諾の法理と実情︵多賀出版︑一九八八年︶八頁におい. ︵ 3︶9巴ヨRω律ω魯毒餌昌斜勾o閃震ω<●≦露6畏R弩αぎ貼oベヨ808ω①旨一口︾=ω賃践窪︾評騨9艮仁ヨU旨図o協9ωo一〇ω弩ρ一 8. 困a︒い●カΦ<こ一ωO︶讐一脇︵一8ω︶.. ●. >︑=きωo匡貸uR9鵠の$び注﹃島Φ弩N島魯Φ︾象E似ε轟冒>eR一〇き凶ωo冨P①轟一一ω畠窪二&α①暮ω3①づ園Φo算ω﹂一︒. ︵39︶︸9Φ9ミ≦器﹃俸い①①■●幻の<●巽P碧ω3︵一8︒︶●. ︵40︶. 匡Φ一の9曽冥簿8けΦPo︒噂碧NO. ︵一︒漣y ︵ 4︶ 1. 一Φ窓ξ且ヨ①象8モR呂8牙のω9跨①冒剛○毒aO・霧①筥. ︵42︶ なお︑﹈≦Φ一の9>..U蒔巳蜜曼↓○辞︑.器鋤ゆユq閃のσ卑譲8嵩9ΦHα$9困旨9ヨ①α○○霧Φ旨鋤旨α夢①い四≦o︷目8︻B①αOo昌ω①旨︶. 一①︵G︒ム︶い餌ヨζ9鼠器俸=$詳げO霞ρ曽P魯N嵩︵這o︒︒ o ︶参照︒. U・葺ぎ①帥&餌牢8・ω8評8琴Φ讐轟一一N慧・p嵩︵邑9在8一9冨竃Φ蝕︒ぎρ一ω参簿一︒︒禽︵一︒︒︒︒︶●. ︵43︶ω冥§鵬帥≦菖︒FH託o§aO8ωo簿言↓ぽo蔓㊤且勺醤&8.

(13) ニ カナダ・イギリス・ニュージーランドにおけるインフォームド・ディシジョン. 1.カナダ. カナダはアメリカ合衆国に隣接する国という事情もあり︑アメリカの判例を積極的に参照し︑その影響を受けて ︵1︶ 判例が形成されるという状況が見られる︒殊に一九七二年のOき8吾霞<<9ωづ魯8判決の影響が顕著である︒一. 九八○年にカナダ最高裁において︑インフォームド・コンセントに関する初めての判決が二件出されており︑それ らを中心に見ておく ︒ ︺ ︵2︶ 1 鵠oもO<︒いΦ℃℃︵一〇G︒O︶. 当時六六歳の患者の椎間板手術を行なうに先だち︑UΦ9ぼ箆鴨病院の整形外科医により︑脊髄造影検査がなさ. ︹. れたが︑その際第三腰椎骨と第四腰椎骨との間で造影検査による閉塞が生じ︑それはその後の椎弓切除の手術によ. っても取り除かれなかった︒結局︑手術は期待されたようにはうまくいかず︑神経外科医による更なる手術後︑神 経根管の神経損傷による永続的障害が生じた︒. 原告は︑本来はO巴彊蔓で手術を受けたかったので︑被告となる整形外科医に手術の重大さの程度とO巴讐曼. 三〇三. で受けた方がよいのかどうかを尋ねていた︒被告は︑原告たる患者が行こうと考えているO㊤蒔簿曙の病院施設と インフォームド・ディシジョン.

(14) 早法七二巻三号︵一九九七︶. 三〇四. 同程度にぱ爵再一轟Φも施設はよいということを述べたが︑万一合併症が生ずれば︑ここ冨些ぼこ鴨では神経科. 医や神経外科医もいないから迅速な対応が困難であるということは言わなかった︒また被告は︑これが専門医の資. 格を得て行なうその種のものとしては初めての手術であったが︑そのことも言わなかった︒. 第一審では器ひq凝98等はないとされ︑原審では︑この手術に対する同意はインフォームド・コンセントのな. いものであり︑原告の身体的安全に対する違法な侵害︵富箒遷又は霧器葺︶であるとされた︒. ︵3︶ 本判決はカナダ最高裁へ提出されたインフォームド・コンセント訴訟の最初のものである︒判決において一器− ︵4︶ 江づ判事は︑基本的にはアメリカのOき8吾q蔓判決に示された合理的患者基準を採用するが︑﹁外科医は患者の同. 意を得る際に︑一般的に附随する危険について患者によってなされたいかなる特定の質問に対しても答えるべきで. あり︑質問されない場合にも︑患者に提示した手術の性質︑その重大性︑その手術の施行に附随するいかなる重大 ︵5︶ な危険及びいかなる特別の危険や稀な危険も開示すべきである﹂との見解を示す︒. 開示基準としては︑右のように述べられながらも判決では︑結局︑原審判決が覆され︑損害賠償請求は認められ. なかったが︑その原審判決では注目すべき見解が表明されていた︒即ち︑﹁たとえ患者の決定が︑専門家が行なっ ︵6︶ たであろう決定と一致していなくても︑患者には誤謬する権利がある﹂と︒. 右の原審判決の見解は後の竃匙98<あ3三唐き判決でも︑﹁患者の決定が死と同じくらい重大な危険を伴って ︵7︶ おり︑医療職や共同社会の目には誤りであるように見えようとも治療を拒絶できる﹂とされるが︑こうした見解 ︵8︶ は︑後述する一九六五年のニュージ⁝ランドの判例に大いに影響を受けたものであるように思われる︒.

(15) ︵9︶. 2勾Φ置<.寓⊆讐Φ9︵一︒︒︒︒︶. ︺. 原因は不明だが高血圧との診断を受けた患者が︑被告H神経外科医による検査を受け︑左頸動脈にプラークが存. ︹. 在し︑それが血流の一五%以上を阻害していることが判明し︑手術を受けた︒その結果︑発作に見舞われ右半身麻. 痺となった︒患者は形式的には手術に同意していたが︑インフォ!ムド・コンセントがなされていないと主張し︑. 第一審ではそれが認められ︑原審では責任と損害の双方の点において再審理が命じられた︒. 本判決において︑﹇霧匹o判事はび鉾富蔓についての責任の検討の箇所で︑﹁インフォームド・コンセントという ︵10︶ ︵n︶. 言葉がσ簿$曙と器磯凝窪8とを混乱させる傾向があるときには︑その言葉を捨て去った方がよいであろう﹂と. 述べ︑インフォームド・コンセントという言葉の使用に関して注意深い姿勢を見せる︒そうした中にあって︑﹁イ ︵12︶ ンフォームド・ディシジョンに対し一定の危険の不開示の重大性は︑事実認定者の問題である﹂と表明し︑インフ ォームド・ディシジョンという言葉を用いているところが注目される︒. 本判決は基本的には︑情報開示の合理的患者基準説に立つものと思われるが︑因果関係においても︑﹁原告︵患 ︵13︶. 者︶の立場にある合理人が︑蓋然性の利益衡量に基づいて手術を受けるよりもむしろ手術拒否の選択をしていたで. 三〇五. あろう﹂との判断を示し︑結局本件では因果関係が認められ︑原審の判断が覆され︑患者の主張が認められてい る︒. インフォームド・ディシジョン.

(16) ︺. ︵14︶. 早法七二巻三号︵一九九七︶. 三〇六. 3竃身R国ω鼠9< 勾・鴨β︵毯一︶ ︹ 女性患者が静脈内腎孟尿管造影検査︵IVP︶を受けた︒染料が入れられると︑患者の様子がおかしくなり︑あ. ばれたので押さえつけて挿管された︒その直後︑患者は呼吸が停止し︑四日後に死亡した︒そこで夫が放射線科医. と泌尿器科医の二人を訴えたものであるが︑泌尿器科医に対しては患者のアレルギーについて放射線科医に伝達せ. ず︑患者に対し︑他の治療法についての示唆もなく十分な対話をしなかったという点を理由とし︑一方︑放射線科 医に対しては︑染料を使用する際に危険を告げなかったことを理由とするものである︒. ︵15︶ 本件で特に争点となったのは︑放射線科医が意図的に危険についての情報をさし控えたという点におけるいわゆ. る﹁治療上の特権﹂についてである︒三巴自身判事は︑アメリカのO彗6Rど曼判決や︑特にイギリスのωこ卑 ︵16︶. ≦塁判決におけるUO巳ωo巽ヨ嘗の少数意見︑即ち︑﹁治療上の特権は患者に心理的ダメージを与えるときに認め. られるものである﹂という見解に影響を受け︑﹁この治療上の特権というものは︑元来は患者の身体的健康ではな ︵17︶. く︑心理的健康が︑情報を受け取ることによって悪影響を受けるかもしれない患者を混乱させることから︑医師を 免れさせようと意図されたものであったように思われる﹂との見解を示す︒. ︵20︶. 更に竃巴9亀判事は︑アメリカの学説において竃①一ωの一が︑﹁治療上の特権が医療上の意思決定における自己決 ︵18︶ 定に生じさせる危険は非常に大きいので真剣にその廃止を考慮すべきである﹂との主張をしていることを参考と ︵19︶ し︑﹁カナダ最高裁は︑勾Φ置ケースで︑治療上の特権は採用していないし︑是認すらしていない﹂と分析を加え︑. ただ﹁=雲讐一碧<.℃巴づケースでωぎ窃8三8諌判事が︑この特権を患者の心理的健康の保護のみに関係するもの.

(17) ︵21︶. ︵22︶. として枠づけているにすぎない﹂と見る︒そして︑﹁治療上の特権は現在カナダ法には採り入れられていないし︑ また将来的にも採用されるべきではない﹂と結論づける︒ ︵23︶. しかし︑本判決でも因果関係に関し︑客観基準が採用されているので︑患者の立場にある合理人ならIVPを受 けていたであろうということで訴訟は棄却される︒. 右に見たように︑カナダでは︑治療上の特権を認めないという独自の進歩的な立場も見られるが︑アメリカの判. 例︑殊に○き9吾仁蔓判決の影響を濃厚に受容しており︑基本的には合理的患者開示基準が採用されている︒また. 因果関係においても客観基準が採用されているので︑もし十分に情報が与えられていれば︑自分が治療を拒絶して ︵24︶. いたであろうということばかりでなく︑合理的患者も提示された治療を拒絶していたであろうということまで立証 ︵25︶. しなければならず︑この客観基準によると︑誤謬する権利︑個人の好みに従って行動する権利︑他人によって認め ︵26︶. ︵27︶. られる最善の利益に反する行動をする権利は保護されないわけで︑カナダでは客観基準が悪影響をもたらしている と批判される︒ ︵28︶. 一方︑製造物責任の判決では︑主観基準採用の方向も示されており︑医療の領域においても主観基準採用の方向 に進むことが期待される︒. 2.イギリス. 三〇七. 英米法圏の諸国にとっては︑それぞれの国の成立の由来からしても︑また判例法主義という点でも豊かな先例を インフォームド・ディシジョン.

(18) 早法七二巻三号︵一九九七︶. 三〇八. 蓄積している国家としてイギリスの判例は︑一種格別の重みを持つ存在として積極的に参照されていたし︑現在で ︵29︶. も基本的にはそうであるといえるが︑こと医療の領域では︑その姿勢の保守性と世界的孤立性が︑憂慮と慨嘆を以. ︵30︶. て批判されるといった現状にあり︑明確にイギリス法には従えないとし︑アメリカ以外にも独自の法理の展開を図. る諸国が現れてきている︒ここでは︑イギリスの比較的近時の判例をとりあげて︑その現状を一瞥しておく︒ ︵31︶. 4ω一量≦電く︐望琶Φ日菊○く巴頃○ωロけ巴︹一︒︒︒㎝︺. ︺. 原告は頸部の反復性︵再発性︶の痛みのため脊椎手術を受け︑その結果四肢の機能障害を被った︒脊髄損傷と神. ︹. 経根の損傷の危険は一〜二%であったが︑第一審の認定によると︑執刀医は︑それが必要な手術というより︑選択. 的意味合いのある手術であるということを言わなかったということと︑神経根の損傷の可能性とその結果について. は説明していたが︑脊髄損傷の危険については言及していなかったとされた︒しかし︑これら二つの点で説明をし. なかったのは︑一九七四年当時の医療専門家の慣行に従ったものであり︑ω○冨目基準を満たすものであったこと. が考慮され︑原告の器鵬一蒔窪8を理由とする損害賠償の訴えは棄却された︒また原審においても第一審判決が支 持され︑上告がなされたものである︒. 本判決では全員一致により上告が棄却されたが︑その判決意見の多くがイギリスで確立された切○一蝉ヨ基準を適 ︵32︶. 用するものである︒この国○一㊤ヨ基準というのは︑ω○一餌巳<●閏震8旨瓜08諌巴言き囲oヨ①旨Oo日目津8判決によ. って示された準則であるが︑簡単に言うと︑﹁医師はたとえ他の医師が異なった慣行を採用していようとも︑当時.

(19) ︵33︶. その分野の権威ある医師団体によって適当であると認められた慣行に従って行為すれば過失があったことにはなら ない﹂というルールである︒. ︵34︶ 中でも︑一〇巳臣巳o爵の見解は極めて保守的なものであり︑合理的医師基準を支持するものであるが︑以下の. ような見解である︒即ち︑﹁イギリスの判例では︑患者が医師の助力を求めるいかなる点についても︑患者の健康 ︵35︶. を増進させるための医師の技能と判断を行使する通常の注意義務は︑これまで医師のすべての措置をカヴァーする. 一つの包括的な義務として扱われてきた﹂と捉えられており︑それに対する支持が表明された後︑情報開示につい ︵36︶. て︑﹁もし患者が実際に質問という方法でその態度を表明すれば︑医師は患者の知りたいことが何であろうとも患. 者に言わねばならない﹂とされてはいるものの︑患者が求めてはいない情報の開示につき︑それは︑﹁医師の包括 ︵37︶ 的な注意義務︑医療専門家の判断事項である﹂としてωo圃薗e基準を適用する︒. 8巳野こ鵯︵8三囚Φ窪もその見解を支持︶は︑開示慣行には批判的な目を向けるべきであるとの見解を抱きな. がらも︑﹁患者がその治療を受けるかどうかインフォームド・ディシジョンをするのを可能とするのに必要である ︵38︶ ところの重要な情報を︑患者にいかに最もうまく伝えるかということについても医師の医療判断の問題である﹂と. いうように︑基本的にはω○寅目基準が適用されるべきだという判断を示す︒ ︵39︶ い○置↓①ヨ巳のB碧は︑患者の利益衡量に基づいた判断が可能となる十分な情報が︑患者に提供されたかどうか ︵如︶ の問題は︑裁判所が決定すべき問題であるとの考えを有しつつも︑﹁本件では患者は質問をすることができたであ ︵41︶ ろうし︑そうしていたら情報を得ていたであろう﹂との判断をしている︒. 三〇九. こうした中にあって︑冒○巳ω8同Bきの少数意見には注目すべきものがある︒一〇巳ωo鶏日きは︑﹁医師が情報 インフォームド・ディシジョン.

(20) 早法七二巻三号︵一九九七︶. 三一〇. を開示しなかったことが義務違反を構成するかどうかという問題については︑もっぱら医療専門家の意見を参照し ︵42︶. て決定されるのではなく︑患者自身が重要な情報に照らして決定をするために︑法が医師に対して与えるよう求め. る考慮をしたかどうかは裁判所が決定すべきことである﹂とする︒また患者の意思決定については︑﹁医師は非常 ︵43︶. に多くのケースで︑純医学的要素以外の要素が患者の意思決定過程で重要な役割を果たすものであるということを. 認めねばならない﹂と考え︑次のように述べる︒﹁患者は︑合理的に見ると医師に認識されることはないかも知れ. ないが︑純医学的見解によって示唆されるものとは異なった決定へと導くかもしれない状況︑目的︑そして価値を. 心の中に有するということはもっともなことであるから︑医師の義務は︑医療について助言をするだけではなく︑. 例えば︑患者の家族︑仕事や社会的責任といった︑医師には告げられたとしてもほんの一部しか告げられてはいな. いかもしれないその他の重要な事項と並んで︑患者が医療上の利益と危険とを考慮し︑比較衡量することを可能と ︵44︶ するのに必要な情報を患者に提供することでもあると考えられる﹂と︒. 右に示された見解は︑具体的患者の必要を考慮した医師の開示でなければならないという方向性を胚胎するもの. ︵5 4︶. との評価も可能と思われるが︑果たしていo巳ω8﹃B磐は︑﹁﹃合理的患者﹄は現実の人間ではなく患者自身でも ︵46︶. ない﹂との合理的患者基準に対する批判的視点も見せる︒だが結局︑﹁具体的患者自身について考慮するというこ ︵47︶. ︵48︶. とは理想論であり︑法はユートピアではなく現実の世界で機能するものである﹂との理由から︑合理的患者基準を. Oo一α<. 自 胃 ぎ 鵬 亀 鵠 Φ 巴 9 ︾ q 些 o ユ 蔓. ︹お︒︒○︒︺. ︵49︶. 採用する︒しかも医師の裁量権︑治療上の特権を広範囲に認めるので︑結論的には原告の主張を認めない︒. 〔5〕.

(21) 卵管切除術を受けた患者が︑その後も子供を出産したことで︑手術のま磯凝窪8と手術に附随する危険︵失敗. の可能性︶や精管切除の方法︵他の治療法︶について説明がなされなかったことを理由として訴訟を提起した︒. 原審では︑手術の壽頒一蒔窪8に対する損害賠償は認められなかったが︑手術が成功しないかもしれないという. ことと精管切除という他の治療法を言うべきであったとされ︑原告に生じた苦痛及び︑子供が成長するに従い金銭 を支出する必要が生じたことに対し損害賠償請求が認められた︒. 本判決において︑口o琶判事はω凶量項身判決における一〇巳U互○良の意見を引用し︑診断︑治療及び助言に. おける医師の注意義務は︑分けられるべきものではないとし︑﹁ωo一蝉臣基準は︑治療上の状況で与えられる情報と. ︵53︶. 非治療上の状況で与えられるものとを区別するものではなく︑避妊の助言を与えることも医療技術に属するもので ︵50︶ ある﹂との意見を述べ︑情報開示についても閃o鼠ヨ基準が適用になるとの判断を示した︒ ︵51︶ そこで︑本判決に対しては︑ωo一的筥基準の直接的適用の最高水準であると皮肉られ︑医師の﹁正当な﹂行為を ︵52︶ テストするいかなる基準も出そうという試みをしていないと批判される︒なお︑原審においてはωo践①ヨ習旨判事. ︵55︶. 4︶. 三二. が︑治療上の情報と非治療的状況における情報とを区別し︑非治療的状況にはω一3毛昌の同意についてのアプロ ︵5 iチは適用されないとし︑具体的患者の情報の必要を考慮して課した開示基準を本判決は明確に拒絶した︒ ︺. 6 冒勾Φり︹お8︺. インフォームド・ディシジョン. 成人女性の輸血拒否の意思表示があったといえるか否かが争われたケースである︒. 〔.

(22) 早法七二巻三号︵一九九七︶. 三一二. い○鼠U9巴房自匡園は︑﹁患者の利益は︑たとえそれが患者の健康を侵害したり︑その死をもたらす危険があ ︵56︶ ろうとも︑自己決定の権利︑即ち︑自分が望むように自分自身の人生を生きる権利から成り立っており︑﹂﹁すべて. 7︶. の成人は︑たとえ拒絶により自分の健康に永続的な障害の危険が生じたり死期が早まったりすることがあろうと ︵5 も︑治療を受けるか否かを決定する権利と資格を有する﹂との見解を述べる︒ω母轟算9貯トも﹁精神的能力を ︵58︶. 備えた成人は︑たとえ患者が治療をしないことにより死ぬ蓋然性があったり或いは確実に死ぬという状況にあろう ︵59︶. とも︑治療を受けるか否かを自分で決定する権利がある﹂とし︑患者の自己決定権を認めている︒ただ判決では︑ 治療の有効な拒絶はなかったとの判断が示されている︒. ︵60︶. 右に見てきたように︑イギリスでは︑Oo崔事件の第一審判決︑ぎ勾①臼判決と︑下級審判決では︑ 徐々に学説. 3.. ニュージーランド ︵飢︶. による具体的患者基準や患者の自己決定権の主張が︑侵透し始めているのではないかと思われる︒. ︺. 患者は大動脈造影検査を受け︑その検査の過程で︑右大腿動脈の内壁からアテローム状の内皮を偶然に切除する. 7ω巨9タ︾8匹蝉巳=○ω葺巴ω8こ︹お①U︺ ︹. というカテーテルによる外科的事故を被った︒それに附随し血液凝固︵巳○鼠鑛︶の状態が生じ︑結局右脚は悪化 して壊疽状態となり︑膝から下を切断したというケースである︒.

(23) いくつかの点で器ひQ一お窪8が訴答されたが︑陪審は治療行為の点に関しては︑防御︵被告︶に有利な認定をす. る︒しかし事故の危険は︑低い確率にすぎなくても合理的に予見できるものであり︑本ケースの状況では患者に告. げるべき事項であったとされる︒その理由は検査に伴う危険について特定の質問をしたという証拠が提出されてお. り︑それに対する解答は何もないとの保証をするようなものであったからであると認定されたが︑結局原審におけ る判決は︑原告H患者の主張を認めなかった︒. ︵62︶. 本判決で︑○お器9判事は︑﹁個々の患者は︑たとえ医療助言者の目には不合理であったり愚かであるように映. ろうとも︑検査や治療を拒絶する権利を常に有する﹂との見解を述べ︑上訴を認容し︑陪審の評決を支持する判決 をした︒. ︵63︶. 本ケースでは︑患者が特定の質問をしており︑それに対する医師の開示義務を認めるという点では︑後のイギリ. スのいo巳U旦09のω一量ミ鋼アプローチと同様との評価もできようが︑既に一九六四年︵判決時︶の時点で︑個. 三一三. 別具体的患者の﹁不合理な﹂意思決定を認めるものであり︑その後︑カナダ︑イギリス︑オーストラリア等の多く. 閃︒因刈認︵∪●ρΩ﹃﹂︒§︒. の判決に影響を与えたと思われる先駆的判例として記憶すべきものであると思われる︒ ︵1︶99Rゴ曼く︐9①8ρ&. ︵3︶き罰こ簿刈︒︐. ︵2︶=・薯く︐い8℃︵一︒︒︒︒︶一一NPじ菊●︵G︒α︶︒8. 国黛織こ簿ooO︒. ︵5︶﹄闘罫讐︒. ︵4︶. ︒一. インフォームド・ディシジョン.

(24) 早法七二巻三号︵一九九七︶. 則刃︵轟琶器一届け岱G ︒もR菊o画昌ε︾. いの薯く︒=︒薯︵一S︒︶︒︒︒U︐い︒界︵G ︒α︶ま介簿ミρもR即・霧ε︾︒. 匡巴一①什Φ︿︒ω︒ゴ巨き︵一︒︒︒︶雪O. ω邑9<︒︾8匹m区=oω冨巴ω8三︹お︒㎝︺Z●N︒い︒菊︒一︒ザ○>:. ︒. ︒︒︶一置Uヒ刃︵窪︶一︒ 勾︒琶<︒=仁讐①ω︵一︒︒. 黛織こ鉾ω一︒︒. 一QQ︑. 幻○閃霞ρ蝉け︒︒一ω︒. 酷ω≦一の●炉勾Φ<・る江雪︵一︒お︶︒. 自翌讐一き<︐評ぎ︵一︒︒︒刈︶零∪︐好力●︵ 琶①鐸. 竃魯R雰富8<︒勾o伊Q霞ρm葛罫. UのO一ω圃○づIB餌犀一⇒ ひ q 博. 三一四. 家Φ蘭ω9↓ぎ︑.国図8呂8ω.︑89巴氏9B&08ω①旨U8鼠霧あ鼠置罐効ω巴餌8ΦぴΦ薯①窪OoB需ぎ磯く巴qΦωぎ竃Φ9︒巴. 鋸魯段雰5け①<. ︒巴一︾○・︒斧︒︒・︒刈︐ ω置四≦昌<︒ω①什匡Φヨ菊○旨一缶oω冨巴O・<Rp・お︹一︒︒. いD舛︵春琶ω︒刈︵○緊のo戸臣ε︒. 即○鵬Rω<︐≦窯$犀R︵這︒︒︶一胡Or刃ミPお︒. き匙こ簿o. 幻Φ一σ一<●国仁閃げΦω一帥叶. 4讐ω9. 斜鉾G︒一一曹. 竃①鴇﹃雰鼻①<︒勾・鴨お︵一︒︒一︶刈G︒U. 〜竃織. 』. 黛. 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18. 帥汁ω﹈−O●. 騨§一g評僧一Φ巨︾葺goヨ冤㊤呂Oo霧︒日8醇窪ロま暮. ︒ω濃o魯︵お︒ ︒①︶ま○○い↓︒扇ρ中Ωρ>参照︒. ︵25︶. O一Φω窪帥=塁①ρ↓ぼ℃魯①耳︑ω箆閃窪8疹・斧>○︒e短頚一<︒<凶Φヨ曽≧αq一・−>馨誉弩い寄<﹂︒ザ簿一一︒︵一︒︒Ny. 目8勾o一︒・p一おr四ミ9為び︒αq巴の叶且凶ΦωL︒︒も江︒︒刈︵一︒︒︒噴y. ︵26︶. ﹈≦○○お<. ︒α︶曽曾 例えば︑≦圧8<︐↓雪毎R︵這o︒一︶園O⇒い卑︵践︶ま9刺R讐ω8< 山曽日津OpΩ<8寓8営$5︵這o︒ω︶H康ご︒い界︵も. ③帖駄こ. 竃①蜜R評冨8 < ︒ 幻 ・ α q R 9 9 葛 一 ︒ ●. 』 』. 19 20 21 22 23 24.

(25) ︵ 2︶P9Φω①P一箕Φ旨鋤江8巴鋸の島8一三巴鷺鋤&8霊墨>O・ヨ唱鋤聾一<①げ署o oけ&図o出Ω<凶Fご藍芽簿凶ωぎ臓円・ヨ霞①身巴 8. ︵27︶野魯き<︒9夢○写巽ヨ碧①邑︒巴︵9鋸量︶い巳︵一︒︒︒︒︶90︐丙︵髭︶るド. 9①ω窪帥缶亀Φωも愚ミ8けΦN9簿一寅一︒ド. O巽ρ︒︒︒︒︵一︒︒︒︒︒︶︐. ︒芦 ω一3類哉<●ω①珪ΦB勾・旨一国・ω冨巴Oo<Φ毎oあ︹一︒︒︒㎝︺︾●○︒. 例えば︑オ⁝ストラリア︑南アフリカといった諸国である︒. 寄閃Rωく︒≦罫葵段き匹目葭︒琶aO8ωΦ暮ぼ>霧け﹃巴雪︾閃接Oぎざヨ宮姶︒︷. お︒緯一お︵一8G︒︶︒. ○凶①ω①Pの愚ミ8富N︒︒︶簿も︒︒︒︒. 一9①Fぴ●寄<. Q ω圃α鋤毒餌︾︑<●ωO什び一Φヨ菊O網餌一=Oω℃一け餌一〇〇<①構巨O村の︶㊤け0 0 0 Q︒. 3讐8野なお︑98g俸鵠塁Φωも§ミ8冨ま︾簿一8も参照︒. ℃①吋ωO①O什一<①ω︶. 騒3象o︒刈9. O↓冨甘自旨巴900算①簿葛莚蔓霞①巴けげい卑≦餌&℃呂q﹄お一母N霧︵這8︶も参照︒. ω凶鼠類塁<﹂W9巨ΦB沁o葦一国oの豆け巴OO<R8﹃ρ讐︒β︒︒㎝︒. 爲織こ簿︒︒︒︒︒︒−︒︒︒︒︒●. ﹄竪噛駄4餌けO QOO ①. き賊3碧o︒o︒㎝■. 』. 』. インフォームド・ディシジョン. 三一五. ω置餌≦餌鴇く︐ω魯巨ΦB菊○望巴=o魯詳巴Oo<①旨霞ρ讐OO9なお︑O一ΦωΦPく冒島09ぎ磯爵①唱簿冨辞.ω勾斜窪曾︾Oo匿℃貸簿ぞの. 〜闘. き箋←象c︒8600●. 導幾. ﹄昏賊駄4㊤貯QQO㎝・. 34. U一ωo一〇ω霞ρ. 簿目︵一8ωごOざぎRの鱒ω9譲餌旨N. ω一鼠類鎚く﹄Φ琶①旨勾・冨一=oω冨巴O・<oぎo﹃ρ簿︒︒︒ ︒ 一もR8&ω8同旨鋤三竃霧・p↓冨↓○昌鍔毒力Φく一①瀬一↓o暴い園①く. ωo一餌ヨく扇①ユoヨ顕oω風6巴冒窪濃①箏Φ簿9B昌お①口︒鴇︺一ミ︒ピ菊㎝︒︒呼. 30. 29 31 32 33 σ、. 35 36 37 38 39 40. 41 42 43 44 45.

(26) ︵46︶. 讐G oo O o o ・なお︑の凶oω①⇒節=㊤蜜①ρ養暦ミ昌08Nρ象一に. 早法七二巻三号︵一九九七︶ ㌧黛爽. き轟なお︑この点に関し︑○き8き仁蔓判決との相異につき︑. ︵47︶ωこ鋤零身<ーωΦ琶の唐菊○冨一=・畳琶Oo<Φ導・β簿︒︒︒︒︐. 報医事法学ー二﹃二頁︵一九八六年︶が指摘する︒. ︵48︶. cOI ON︒ ぴ賊織こ 簿け癖G. も参照︒. ○・箆< 国畳轟塁浮9一些>旨ぎ同ξ︹一︒c︒︒ ︒ ︺一ρ中高c︒一︵○>●︶.. 富畳お亀=Φ節喜︾仁けげ鼠蔓﹂刈寄B. い●為二刈︵ご︒ ︒刈︶.. 三一山ハ. 塚本泰﹁英国におけるインフォームド・コンセントの現状﹂年. 9ΦωΦpΩ註口暮ま蔓○剛勺身ω旦きω剛○吋Z①名霞①跨oユωo︷⇒①讐ヨ窪3巳南巷9ヨΦ9豊o目>Oo導℃貰慧<①国蚤昌⇒呂op. O・疑<. 奪匙. 霊糞戸9凶8﹃凶巴・二菖o唇毬・づo昌空ω厨ぎ困①息︒巴摩①讐ヨ①算﹂一︵N︶零o爲ωω一8四一Z①αq凝①琴ρ①倉9︒葛︒︵一8凱︶︒. 』. ↓. ︹一〇〇N︺ ω≦ い︒園︒刈QQN. 讐おO こ. 簿ooOω︒. ︵︽︶k1.︶︐. 00準. 困讐算○国8ヨ鳶9ω8●︵這︒︒︒︶は主観的患者基準又は個別必要基準が個々の患者の自律には適しているとする︒. o︷ 一隷aヨaO8紹旨ぎ国⇒閃一一警きαOR導きい餌≦ふ竃a陣oぎ①き伍い餌≦る器象ω昭①けω8●︵這o ︒①yまたO Q︐ζOい8P. 簿曽雪なお︑○一①ω窪欝頃亀①ρ簑腎ミ8言ま︾讐旨ご98①Pω昌轟8冨お︸讐ω8も参照︒ こ. ﹈≦霧○昌る唇惹88ωωるこ一︒. 〜黛織. ωヨ一浮 <︒>8匹きα=○の葺巴切8巳︹一︒①巴Z・N︒い︒力﹂︒一︵○︾●︶曾. 勺8一Φ簿.ω. 冨誘o⇒. 伊・えば︑具体的患者基準に好意的だが︑むしろ医師と患者との協同決定という側面を強調するものとして︑ωoヨヨ9. も参照︒. なお︑ 爵良①き菊・ひQ①お<︒詣耳曽犀R6ヨ轟評什一8け部家8巳轟包9・一︒ρ50獣︒鐸︸90鵠畠巴ωε&①9一︒︒如二H︒︒︵一8㎝︶. きミ. 導罰こ 讐おO甲. 〜黛織. ぎ菊①. 竃Φ90巴 け●肉Φ< る︒︒る6ミム︒︒︵一︒︒軌︶●. 磐磐包》屈鯉革、讐馨琶艶距ω暑憩署邑聾撃.

(27) 三 オーストラリア・南アフリカにおけるインフォームド・ディシジョン. 近時オーストラリアでは︑殊に比較法への関心の復活が顕著であるが︑その主要な原因は︑枢密院への上訴の廃 ︵1︶. 止により最後のイギリスの法体系との絆が絶たれたことである︒イギリスの法体系は約二〇〇年間にわたり︑権. 威︑インスピレーション︑刺激といったものをオーストラリア法へ与えてきており︑オーストラリアの判例を一瞥 ︵2︶ すると︑イギリス法の判例の深い刻印︑継続的な影響を見ることができる︒しかし︑イギリス法は今日では︑比較. 法的刺激を与えてくれるものの源泉の一つにすぎなくなっており︑オーストラリアの裁判官のカナダ・ニュージー. ︵3︶ ランド・アメリカ・その他の典拠への参照の志向が強まっている︒ ︵4︶ こうした状況の中︑オーストラリアで︑世界的に注目すべき判決︑勾○ひQRωダ≦霞$パR︵お露︶判決がなされた. のである︒そしてこの判決で示された情報開示基準の公式は︑南アフリカの判決においても支持される︒. 1.オーストラリア ︵5︶. 8男●<●甲︵一︒︒︒ω︶. ︺. 既に二人の子供を帝王切開で出産した経験を有する女性が︑不妊手術を希望し︑そして医療行為者により卵管結. ︹. 一三七. 紮をすることを助言されたのでその手術を受けた︒手術は適切になされたが︑手術後にも妊娠した︒また医療行為 者は卵管結紮術は一%以上の失敗率を有することを助言していなかった︒ インフォー ム ド ・ デ ィ シ ジ ョ ン.

(28) 早法七一一巻三号︵一九九七︶. 三一八. 第一審では︑医療行為者が手術の失敗の低い確率を言わなかったことは器閃凝窪8ではないとされたが︑ 原審 では器笹置①p8が認められた︒. オーストラリア最高裁の困轟判事は︑﹁アメリカ︑そしてカナダにおいてはある程度︑インフォームド・ディ ︵6︶. シジョンをするために必要な情報を受領する患者の権利に︑より重きが置かれる傾向があるが︑オーストラリアで. ︵8︶. は本件がこれに関する初めてのケースである﹂と述べ︑医師の開示義務の範囲につき︑﹁それは患者の立場にある ︵7︶ 合理人の決定に影響を与えるかもしれない事項に及ぶ﹂との合理的患者開示基準を採用し︑危険の開示と助言や情. 報の開示の領域では︑ωo一㊤ヨ基準を放棄した︒そして﹁人は自分の人生について自分自身で決定をする権限があ ︵9︶. り︑医師は患者が情報提供されることを望んでいないという判断を軽々にすべきではないということを︑最大限に. 考慮することを銘記することが必要である﹂と指摘する︒また︑﹁裁判所は医療慣行が法によって課される合理性. ︵11︶. ︵12︶. の基準に一致することを確認するために︑医療慣行を調査しなければならない﹂としつつも︑﹁それは裁判所の仕 ︵10︶ 事であって︑それを決定する義務は︑社会の中のどのような職業や団体にも委ねることはできない﹂との意見を述 べるが︑他の二人の判事︑即ち︑い詔8判事もゆ〇一一窪判事もそれを支持する︒. しかし︑本ケースの状況では︑低い失敗の可能性があることを告げる義務はなく︑法的注意義務違反はないと判. ︵13︶ 勾o閃震ω<︒譲庄$犀R︵一8N︶. 示されている︒. 〔9〕.

(29) 九歳の頃︑右目を外傷で失明した女性患者が︑定期検査を受けた際︑眼科医から手術により視力回復の可能性の. あることを知らされた︒患者は合併症等につきかなりしつこく質問し︑手術の際に左目に害が及ばないように何か. カヴァーをしてほしいと要請する程であった︒しかし︑患者は右目の手術が左目に影響を与えるかどうかについて. は質問しなかった︒手術の結果︑情報開示されなかった交感性眼炎の発症により左目も失明した︒. 第一審において︑医師が交感性眼炎の危険を告げなかったことに漂の凝窪8があるとされ︑それは原審におい ても支持された︒. ︵14︶. イギリスのω一量≦亀判決において︑﹁医療行為者の注意義務は︑医師の技能と判断を行使するのに求められるす. べての方法をカヴァーする一つの包括的な義務である﹂ということが確認されていたが︑オーストラリア最高裁は この点につき詳細な検討を加える︒. 即ち︑﹁診断︑治療と助言︑情報の提供との間には︑基本的な相違が存する︒診断と治療においては︑患者の寄. 与は病状や重要な病歴を話すことに制約される︒医療行為者は自己の技術水準に従って︑診断及び治療を提供す. る︒しかしながら︑緊急性や必要性がある場合を除くと︑すべての治療はそれを受ける患者の選択が優先する︒そ. の選択は︑それが重要な情報や助言に基づいてなされなければ意味がない︒なされるべき選択は︑医療行為者に知. られていて患者には知られていない情報に関し︑患者によってなされる決定を要求するので︑医療行為者によって. ︵15︶. 三一九. 提供されるべき情報の量が︑医療行為者や医療職の視点から決定されうることを支持することは非論理的であ ろう﹂とし︑情報開示の局面で団○一餌ヨ基準を排除した︒. インフォー ム ド ・ デ ィ シ ジ ョ ン.

(30) 早法七二巻三号︵一九九七︶. 三二〇. そして情報開示基準として示された公式が︑次のようなものである︒﹁法は︑医師が提示した治療に附随する重. 大な危険を告げるべき義務があることを認めるべきである︒危険が重大であるのは︑特定の状況において︑患者の. 立場にある合理人が︑もし危険を告げられたらそれに重きを置くであろうという場合︑又は特定の患者がもし危険 ︵蔦︶. を告げられたらそれに重きを置くであろうということを︑医療行為者が認識しているか合理的に見て認識すべき場 合である.﹂. ここに示された基準が︑合理的患者基準︵合理人が︑患者の立場にあった場合に重要視するであろう情報で︑医師が. そのことを認識しているか認識すべきものを基準とする︶と具体的患者基準︵現実の患者がその意思決定に必要とする情 ︵17︶ 8︶. 報で︑医師がそれを認識しているか認識すべきものを基準とする︶とを合わせて適用しようというもので︑具体的患者 ︵1 基準の一種ではあるが︑特に﹁混合基準﹂と呼ばれるものである︒これにより︑開示すべき情報の範囲が︑合理的. 患者基準による範囲に具体的患者基準による範囲を加えた領域にまで拡大されることになる︒. 本件における手術には︑様々な危険が含まれていた︒例えば網膜剥離︑出血感染といったもので︑これらは交感. ︵19︶. 性眼炎よりも一般的なものであるが︑交感性眼炎は両方の目が︑失明することとなるかもしれない唯一の危険であ. った︒しかも交感性眼炎の発症の確率は︑片方の目に以前に傷害を受けていると上昇するということを医師は知っ. ていた︒そこで︑本件では︑当該患者が危険についての関心を示す質問をしていたことから︑当該医師はこの患者 ︵20︶ がそうした危険を重視しているということを認識すべきであったということになろう︒ ︵21︶. ︵22︶. 本判決において︑オーストラリア最高裁は因果関係を肯定したが︑客観基準と主観基準のいずれに依拠したかは. 明らかにされてはいない︒これはオーストラリアにおける他の判決例から推すと︑おそらく主観説を採ることは当.

(31) 然の前提として︑敢えて示されなかったものとも考えられよう︒. また︑オーストラリア最高裁は︑イギリス︑アメリカ︑カナダ等の諸国の判例を分析する中で︑保守的なイギリ ︵23︶. スの立場を批判するのは当然のことであるが︑アメリカのアプローチに対しても︑それとは異なる独自の地歩を築. こうとする︒例えば︑﹁アメリカで用いられている﹃患者の自己決定権﹄という表現は︑開示義務の違反があった. かどうかの決定の利益衡量過程にはほとんど役に立たないし︑﹃インフォームド・コンセント﹄というフレーズも ︵24︶ 患者の同意の有効性を示唆するもののような誤解を招く傾向がある﹂と批判し︑﹁カナダ最高裁の園①一亘判決も ︵25︶ ﹃インフォームド・コンセント﹄という言葉の使用には消極的である﹂ことを指摘する︒. オーストラリア最高裁の肉轟Rω首≦露け畏R判決で採用された﹁混合基準﹂は︑後述するドイツ・スイスの有. 力学説の主張を採用したものではないかと思われる︒また︑インフォ⁝ムド・コンセントという言葉に関してであ ︵26︶. るが︑これは一九五〇年代後半から一九七〇年代という当時のアメリカの社会的歴史的状況の中で誕生・生成され. たものである︒そうした意味では︑正しく歴史的制約性を帯びた用語であって︑時代が進展し︑法理もそれに伴い. 進歩・発展していき︑その用語が︑その進展した内容を十分には体現しえないものとなってくれば︑それにふさわ. しい用語・概念の形成を見ることも不可避かつ合理性のあることといえよう︒ ︵27︶ インフォ!ムド・コンセントという言葉は︑法の領域に慣れてはいない人には誤解を与えうるという指摘もあ. る︒また︑英語が堪能ではない医師の中には︑インフォームド・コンセントとは﹁医師が十分な情報を与えて患者. 三二一. の同意を取り付けることである﹂と理解する者が少なくないという現状もあり︑より適切な言葉・概念にとって代 インフォームド・ディシジョン.

(32) 早法七二巻三号︵一九九七︶. 三二二. えらるべき時期にきていると思われる︒ ︵28︶ ところで︑オーストラリアでは︸九八九年に.︑ぎ8同筥809巨o霧暮09匡a8巴汐8a畦①ω︑.というタイトル. のレポートが提出されており︑そこでは︑患者の決定がいかなるものであろうとも自己決定をする患者の権利を尊. 重すべきことが︑一般原則として強調され︑患者の主観的な考慮の確認を怠ったり︑無視したりする傾向がある現 ︵29︶ 状を打開するために︑コミュニケーション技術の水準を向上させるべきことの重要性が指摘されている︒. 因みに︑インフォームド・ディシジョンという用語は︑一九七〇年頃からアメリカの学説・判例の中で見られる. ようになり︑現在ではオーストラリアのみならず︑カナダ・イギリスにおいても頻繁に用いられるようになってき. ており︑今やインフォームド・コンセントにとって代わる程にまでなっているといえるように思われる︒このこと. は︑患者の自己決定・意思決定が︑治療法決定の文脈で最も尊重されるべきものとする潮流にも適ったものであ. 2. UΦ○おΦ脇︵一㊤逡︶. 南アフリカ. 0四ω6Φ一一<. ︵30︶. り︑導入の検討に値する用語であるように思われる︒. 10. ︺. 患者は母親を︑そしておそらくは祖母をも︑乳癌で亡くした家系を有し︑自分自身も数年前︑乳房に生じた塊を. ︹. 捌出されていたが︑今回も乳房に塊の生成が見られることが︑婦人科医により確認された︒そして婦人科医は患者. に病気の予防として︑皮下乳房切除術を勧め︑被告形成外科医を招介した︒当該形成外科医によって提示された治. 療は︑できるだけ多く乳房の細胞を取り︑同時にそこにシリコンを埋め込むというものであった︒手術後︑患者は.

(33) 乳輪周辺の壊死と細菌感染が生じ︑その対応の過程で︑当該形成外科医に対する信頼を喪失した結果︑別の医師の. ところで再手術を受け︑その最終的結果には満足している︒争点としては︑手術の重大な危険と合併症を患者に告. げなかったこと︑乳房の壊死を防ぎ︑その範囲を制限することができなかったこと等である︒. 1︶. >爵Rヨ餌目判事は︑患者を治療する際に求められる開示基準についてのオーストラリアの二つのリーディング ︵3 ケース︑即ち︑男ダ刃判決と園畠Rωダ名匡什畏段判決を特に参照する︒そして南アフリカ法にオーストラリア. の立場をそのまま適用すべきか否かについて考慮した結果︑﹁南アフリカでは︑こうした問題は注意義務違反から ︵32︶ 生ずる過失の問題として扱われるのではなく︑契約上の構成の中で扱われるべきものである﹂と判断する︒ ︵33︶ 南アフリカでは︑契約が有効なものであるためには︑十有余の要件があるとされるが︑ここでは︑﹁① 同意当. 事者は︑損害や危険の性質と範囲を認識していなければならない︒②同意当事者は︑損害や危険の性質と範囲を. 理解していなければならない︒③同意当事者は︑損害に同意し︑危険を予期していなければならない︒④同意. ︵34︶ は結果を含めて︑契約全体に及ぶ包括的なものでなければならない﹂といった要件が殊に問題となる︒. そして重要なことは︑患者の生命と健康であり︑患者だけが重要な事項の順位づけをする際に︑それを決定でき. る地位にある︒またここでは︑医療上の要素は︑提示された治療を受けるべきかどうかの決定に影響を与えるいく ︵35︶. つかの要素のうちの一つにすぎないわけであり︑最終的決定︑情報開示による意思決定︵インフォームド・ディシジ. ヨン︶は患者のものであって医師のものではないといったことが考慮されて判決が導かれる︒. 三二三. そして︾畠Rヨきp判事は︑﹁南アフリカにおいては︑閑○αQRω ≦匡蜜犀R判決で形成された公式を採用すべき. インフォームド・ディシジョン.

(34) ︵36︶. 早法七二巻三号︵一九九七︶. 三二四. であり︑それは南アフリカ法の必要に適合し︑南アフリカが向かっている個人の自律と自己決定の権利に一致 する﹂と述べ︑幻○鴨議判決の公式の支持を表明する︒. なお︑本件においては︑被告形成外科医が︑患者の感染に対し︑時宜にかなった適切な処置をしなかったことを. 理由として︑患者が被った付加的な苦痛︑病気︑不快︑そして不安の時期︵一二日間︶に対し︑そこから生じた損 害の賠償請求が認められた︒. ︵2︶㌧黛駄︐. ︵1︶困﹃ξ扇o良認<一睾山旨Φ旨豊8巴寓の象8一罵巴胃霧什一8冨薯︵ξU●9①ω窪γ黛>島けr一こG︒認︵一8︒︶︒. ﹄黛導なお︑○凶①ωΦβ俸鵠鋤くΦ即↓プΦ℃象δ暮︑ω勾お窪ε内昌o≦−>○OB℃弩象貯①<δヨ曽>昌魁9︾ヨ震8曽pじ勾Φ ﹂曾﹂8. ︵這露︶も参照︒. ︵3︶. きミ←緯一旨︒なお︑98窪俸眠昌①ωも愚ミ8け①鯉簿一まも参照︒. きミ¢簿お一 ・. ︵5︶男<︒卑︵お︒︒ω︶︒ ︒ωω︒︾・ω︒幻﹂︒︒O●. ︵4︶勾o閃Rω<︒≦岳汁畏R︵一︒§一謡○い勾ごミ︒.. ︵7︶. ︵6︶. ︵9︶閃︒く・園こ象一︒ω. ︵8︶ 幻oαqのあダ≦霞鼠犀9讐畠刈を参照︒. ︵10︶悩騒卸象一軍なお︑竃鋤ωoP↓訂ご訴鍔≦響≦零し↓訂↓︒講い寄〜・も二二一8ωご9霧窪帥=塁霧匂︒り愚ミ8帯ω一. 鉾一︒黛98Φp≦&凶8寓鑛岳Φ評膏算.ω覆讐萎︾9ヨ冨声身Φ評房冨&<ρい908富ヨ零轟蔓国$浮冨ゑm&℃呂9 零鯉讐器O︵5器ご幻○鴨周ω<︒≦圧$冨お讐蕊o︒も参照︒ ︵1 1︶ 男<9菊こ讐 N O ρ. ︵13︶. 菊○閃Rω<. 冬霞$ぎ吋︵一〇〇N︶一胡○い閑こミO︒. ︵12︶ き蕊←讐NO一る09.

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