博 士 ( 工 学 ) 今 野 克 幸
学 位 論 文 題 名
プ レ ス ト レ ス ト 二 重 鋼 管 コ ンク リ ー ト 構造 の 軸 方 向 力 下 の カ 学 的 特 性 に 関す る 研 究
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
近年,鋼とコンクリートを組み合わせた鋼コンクリート合成構造の利用が藍んで あり,その中に鋼管コンクリート構造がある.鋼管コンクリート構造は,鋼管とコ ンクリートが互いの短所を補い合い長所を合わせ持っことにより非常に高い強度と 靭性が得られる.さらに,断面寸法を小さく出来るため経済的であり,かつ,制限 されたスベースでの施工性にも優れている.コンクリート充填式二重鋼管柱は,こ のような従来の鋼管コンクリート構造の優れた性能を有するとともに,圧縮カと引 張カの両方に対して弾性的に挙動するので地震動に対して優れた復元能カを示し,
我が国において耐震設計上非常に有利な構造形式であると言える.コンクリート充 填式二重鋼管柱は,外径の異なる鋼管が同心円状に二重に配置され,外側鋼管と内 側鋼管の聞及び内側鋼管内にコンクリートが充填されたものである.さらに,内側 コンクリートの中心にはPC鋼棒が配置されており,これにより内側コンクリートに プレストレスが導入される.コンクリート充填式二重鋼管柱は,弓1張カにはPC鋼棒 と外側鋼管が抵抗し,圧縮カには二重鋼管と外側コンクリートによって拘束された 内側コンクリートのみが抵抗する新しい構造形式である.一般的な鋼管コンクリー ト構造の軸圧縮力下における特徴は,充填されたコンクリーHこより鋼管の座屈が 防止されるとともに,コンクリートも鋼管の拘束効果により強度の上昇が見込まれ,
さらに鋼管とコンクリートを単純に累加した以上の終局強度が得られると言ったこ とであるが,本研究で取り扱うコンクリート充填式二重鋼管柱も上述の特徴を有し ている.
本論丈は,新しい構造形式であるコンクリート充填式二重鋼管柱の実用化を図る 上で必要とされる基本的なカ学的特性を明らかにするものである.すなわち,軸方 向圧縮力及び軸方向引張カを受けるコンクリート充填式二重鋼管柱の変形及び耐カ に関する実験及び解析的な検討を行う.また,コンクリート充填式二重鋼管柱のー っの適用方法としてブレース材を考え,その動的応答特性に関する検討も行う,本 論文は.全5章から構成されている.
第
1
章 は , 序 論 で あ り , 本 研 究 の 背 景 と 目 的 を 述 べ て い る .第2章 では ,コ ンク リー ト充 填式 二重 鋼管柱の圧縮力下でのカ学的特性に関する実 験 及び 解析 的検 討を 行っ てい る.コ ンク リー ト充 填式 二重 鋼管 柱の 圧縮載荷試験よ り ,ニ つの 終局 限界 状態 を定 義でき る特 殊な 荷重 一変 位関 係を 得た .また,三次元 弾 塑性 破壊 モデ ルを 軸対 称問 題用の 有限 要素 解析 プロ グラ ムに 導入 することによっ て ,解 析的 にコ ンク リー ト充 填式二 重鋼 管柱 断面 の応 力状 態を 明ら かにし,内側鋼 管 降伏 時と 外側 鋼管 降伏 時の ,二重 鋼管 と外 側コ ンク リー トの 拘束 効果による内側 コ ン ク リ ー ト の 強度 増加 が二 重鋼 管と 外側 コン クリ ート の平 均拘 束応 カをCEB式 に 適用することによって評価できることを明らかにした.
第3章 では ,コンクリート充填式二重鋼管柱の弓I張力下でのカ学的特性に関する検 討 を行 って いる .コ ンク リー ト充填 式二 重鋼 管柱 の軸 方向 引張 力載 荷試験を行い,
コ ンク リー ト充 填式 二重 鋼管 柱は引 張力 下に おい て荷 重の 増加 にと もなって剛性が 三 段階 に変 化し ,除 荷時 に載 荷時と 同じ 経路 をた どる こと を実 験的 に明らかにする と とも に, 三つの剛性を弾性ノくネによルモデル化した計算手法によりその変形を正 確に算定することができることを明らかにした,
第4章 では ,コ ンク リー ト充 填式 二重 鋼管柱をブレース材ヘ適用した場合の動的応 答 性状 に関 する 検討 を行 って いる. コン クリ ート 充填 式二 重鋼 管柱 をブレース材と し て用 いた 場合 の地 震動 に対 する動 的応 答特 性を 解析 的に 把握 する ために,軸方向 圧 縮力 載荷 試験 と軸 方向 引張 力載荷 試験 の結 果よ り得 たそ れぞ れの 荷重一変位関係
(履歴曲線)を用いて,コンクリート充填式二重鋼管柱をブレース材として組み込んだ 一 層一 スバ ンの 柱・ はり 鉄骨 フレー ム全f本を一質点系にモデル化し,モデル化され た 一質 点の トリ リニ アな 剛性 を持つ 弾性 振動 系の 動的 応答 性状 を, 線形加速度法を 用 いた 動的 応答 解析 によ り明 らかに した .ま た, フレ ーム の剛 性が 第二段階で低下 す るこ とは ,フ レー ムの 固有 周期が 大き くな るこ とに 等し く, 第一 段階目での固有 周 期に 近い 周期 の加 速度 が与 えられ た場 合に も共 振に よる 発散 振動 を防ぐことがで き ,線 形弾 性系 と弾 塑性 系の 解析結 果と の比 較を 行う こと によ り, 剛性の低下を示 さ な い 弾 性 系 よ り も 応 答 変 位 を 小 さ く 抑 え 得 る こ と を 明 ら か に し た . 第 5章 は 結 諭 で あ り , 各 章 の 主 た る 結 果 を 取 り ま と め た も の で あ る .
学位論文審査の要旨 主査 教授 角田輿史雄 副 査 教 授 佐 藤浩一 副 査 教 授 佐 伯 昇 副 査 教 授 城 攻 副査 助教授 上田多門
学 位 論 文 題 名
プレストレスト二重鋼管コンクリート構造の 軸方向力下のカ学的特性に関する研究
近 年、鋼コ ンクリー ト合成 構造の優 れた特 性が注目 され、各種の合成構造の研究と応用 が盛 んにな りつっあ る。本 論文は、 荷重の 大きさに よって弾性剛性が変化する新形式の合 成構 造であ るプレス トレス ト二重鋼 管コン クリート 構造の軸方向力下のカ学的特性に関す る研 究につ いて述べ たもの である。 この合 成構造は 、同心円状に配置された二重鋼管の間 およ び内側 鋼管内部 にコン クリート (外側 および内 側コンクリート)を充填し、内側コン ク リ ート に は 付 着の ないPC鋼 棒によ ルプレス トレスが 与えら れるもの で、軸 方向圧縮 カ に対 しては 二重鋼管 によっ て横方向 拘束さ れた内側 コンクリートが抵抗し、軸方向引張カ に 対 し て は 荷 重 レ ペ ル に 応 じ てPC鋼 棒 と 内 側コ ン ク リー ト 、PC鋼 棒 のみ 、 ま たはPC 鋼棒と外側鋼管が抵抗する部材である。
初 めに、二 重鋼管コ ンクリ ート部材 が軸方 向圧縮カ を受ける場合のカ学的特性について 実験 により 検討し、 内側鋼 管が降伏 した後 も外側鋼 管が降伏するまではほぽ線形の荷重―
変形 関係が 保たれる こと、 二重鋼管 による 高い横方 向拘束効果により内側コンクリー卜の 圧 縮 強 度 は 、 一 軸 圧 縮 強 度 の 数 〜10数 倍 に 達 し 得 る こ と を 明 ら か に し て い る 。 次 に、三次 元弾塑性 破壊モ デルを導 入した 非線形有 限要素解析により、軸方向圧縮カを 受け る二重 鋼管コン クリー ト部材の カ学的 挙動を算 定できることを実験結果との比較によ り示 すとと もに、外 側コン クリート の挙動 について 解析的に検討し、外側コンクリートは 低荷 重では 岡方向に 引張応 カを受け るが、 高荷重で は圧縮応カに転じること、半径方向に は一軸圧縮強度の数倍の圧縮応カを伝述しうることなど、外側コンクリートの特ゼ1:をIリjら かにしている。
ま た、二重 鋼符コン クリー ト部材の 内側鋼 管降伏時 および外側鋼管降伏時の軸方向圧縮 カ の 大 き さ は 、CEB/FIPモ デ ル コ ー ド の 拘 束 コ ンク リ ー ト強 度 式 より 近 似 的に 算 定 できることを1リJらかにしている。
次 に、プレ ストレス ト二重 鋼管コン クリー ト部材の 軸方向引張実験を行い、荷重の大き さに よって抵抗断而が変化することにより、や#性範囲内で剛性が三段階に変化するトリリ ニァ なノ]学的特性を有すること、および、除荷時には載荷時とほぼ同じ経路をたどるほぼ
―468― ‐
允全な回復性をもつことを実証している。
続t、て、プレス卜レスト二重鋼管コンクリート部材をブレース材に用いたフレームの一 質.L系モデルについて、定常波およびEl Centro地震波に対する応答解析を行い、線形弾 性系および弾塑性系と比較し、弾性範囲にありながら変形量により剛性が変化することに より、耐震上優れた応答特性を示すことを明らかにしている。
これを要するに、著者は、新しい合成構造であるプレストレスト二重鋼管コンクリート 構造のカ学的特性について検討し、軸方向圧縮カに対する二重鋼管による拘束作用や軸方 向引張カに対する回復性をもつ非線形性状など、そのカ学的特性に関して多くの新知見を 得たもので、構造工学の発展に寄与するところ大である。
よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。
‑ 469―