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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 理 学 ) 宮 崎 ( 石 村 ) 美 幸

    学 位 論 文 題 名

Interaction of Amino Acids, Peptides and Proteins     with Solvent rvIolecules in Aqueous Solution     ( ア ミ ノ 酸 , ベ プ チド , 蛋 白質 と溶媒 分子 種の 相互 作用)

学位論文内容の要旨

  蛋白質は水溶性蛋白質と水に不溶性の膜蛋白質のニっに大きく分類される。そ の構造や機能発現にはそれ自身のみならず溶媒中の様々な分子種との相互作用が 重要な役割を果たしている。本研究はこの蛋白質と媒体間の相互作用を物理化学 的な変数によって一般化された形で記述し、また熱力学的手法によってその相互 作用と安定性を評価する事を目的とする。

  水溶性蛋白質の場合、その活性や安定性は溶液中に存在する様々な物質の影響 を受ける。一方膜蛋白質は、その表面は脂質2重膜の中に埋もれて存在している 疎水的部分と、環境に露出し、水和している親水的部分から成る。膜蛋白質の場 合、親水的部分に作用する溶液中の物質に影響を受ける一方、その疎水的部分を 取り囲んでいる両親媒性物質にも大きく影響される。

  以上の観点から蛋白質と溶液中の様々な溶媒分子種との3つの相互作用に着目 し、研究を行った。

  第一点は蛋白質の構成要素であるアミノ酸の水との相互作用、水和である。蛋 白質の水和の性質は表面に露出しているアミノ酸残基の水和の性質に大きく依存 している。水溶液中の蛋白質の水和についての基礎的な知見を得るために、15種 類 の ア ミ ノ 酸 とHexamerま で の グ リ シ ン ペ プ チド のDynamic Hydration Number(動 的水 和数 、門DHN)を アミ ノ酸 水溶 液中の 天然存在比での170̲NMR のスピン一格子緩和時間(T1)から算出した。

  一連の疎水性アミノ酸とMonomerからPentam erまでのグリシンペプチドで得 られたnDHNの値は、これらのアミノ酸水溶液について得られている様々な物理 化学的性質(部分モル体積・部分モル断熱圧縮率・部分モル比熱など)と非常に よい一次相関関係を示した。nDHN,は定義より水分子の回転の緩和時間という動 的な因子と水分子の配位数という静的な因子の両方を含んでいる。そのため、ア ミノ酸のような両親媒性の物質の水和の性質をよく示すことができるといえる。

  さら に、 魚の 精巣か ら得られる30残基程度のDNA結合蛋白質protamineの1 種clupeineについて門DHN,の測定を行った。グリシンペプチドの測定より、溶液

(2)

中でランダムな構造を取っている場合、ペプチドの門DHN,は個々の構成アミノ酸 の門DHN, の和 に等 しい こと がわ かっ た。clupeineは 分光学的な研究の結果、DN Aが存 在し ない 場合 には 水溶 液中 でラ ンダ ムな構 造を 取っていることが報告され て い る。clupeineに 対し て得 られ た門DHNは 構成 アミ ノ酸 の門DHN,の総 和に ほ ぼ等 しく かっ た。こ れは 溶液中でclupeineがランダム構造を取っていることを示 しており、分光学的な研究結果を裏付けるものであった。

  次 に水 溶性 蛋白質 につ いて水以外の溶媒分子種との相互作用、溶媒和の蛋白質 の物理化学的性質に与える影響を検討した。aーキモトリプシン(a―CT)はNaCl等 の塩 の存 在下 では2量体 を形 成す るこ とが 報告さ れて いる。NaCIのみを含む溶液 中とa―CTが2量体を形成しない燐酸緩衝溶液中で、a―CT水溶液の音速、密度、―

30℃でのIH―NHRのスペク卜ルの測定並びに31P−NMRの丁1測定を行った。これらの 測定 から 得ら れる部 分比 容、部分比断熱圧縮率、不凍水の量(水和量)が溶媒の イ オ ン 強 度 の 変 化 に 対 し て ど の 様 に 変 化 す る か を 検 討 し た 。   NaC1溶液中で、a−CTの部分比容と部分比断熱圧縮率は溶媒のイオン強度の増加 と共 に高 濃度 側で大 きく 増加したが、リン酸緩衝溶液中では高濃度側で増加量が 減少し、―定値に近づくという挙動を示した。不冫東水量も同様の変化を示した。

31P−NMRのr7の測定結果をLan9mu1「夕イプの吸着式で解析し、得られた燐酸イオン の吸着サイト数はaーCT分子表面に存在する正の荷電残基の数とほぼー致した。そ の結合定数は100程度と小さかった。

  こ れら の結 果から 、a−CT分子はNaC1溶液中では2量体を形成する為に水和量と 分子 容が 増し 、圧縮 率な どの大きな増加を生じる一方、燐酸緩衝溶液中では燐酸 イオ ンの 吸着 が水分 子と の置換で起きる弱い結合であるために圧縮率などの増加 がと もに 頭打 ちにな ると いえる。これは溶媒分子の違いが大きく蛋白質分子の性 質を左右する一例である。

  最 後に 膜蛋 白質を 可溶 化している界面活性剤がその膜蛋白質の性質にどのよう な影響を与えるかを調べた。光合成細菌由来の光合成反応中心膜蛋白質(RC)を用 いて 、熱 安定 性を指 標と して検討した。使用した界面活性剤はイオン性のLDAO、 中性 で糖 残基 が親水 基のB−0D、 両性 で嵩 高い疎 水性 基を持つCHAPSの3種類であ る。

  これらのRC水溶液についてDSC測定、CD並びにUVの温度スキャン測定で得た蛋白 質の熱変性温度はLDA0〈B―OD〈CHAPSの順で高くその差は10℃にもなった。また、

熱変 性に 対す る可逆 性も 同じ順で高くなった。この膜蛋白質め熱安定性は用いる 界面 活性 剤の 種類で 大き く異なったが、それは界面活性剤自身の構造と水和の性 質に密接に結びっいていると考えられる。

  以 上述 べた 結果か ら蛋 白質の性質と相互作用の解明には構成要素のアミノ酸の 性質 の解 明が 重要で ある こと、また、溶媒との相互作用に依存して蛋白質の性質 が大きく変化する事を見いだした。

(3)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査   教授   引地邦男 副査   教授   新田勝利 副査   教授   長田義仁

副査   教授   堤   耀廣(大学院工学研究科)

     学 位論 文 題 名

Interaction of Amino Acids , Peptides and Proteins     with Solvent Molecules in Aqueous Solution

( アミノ酸 ,ペプチド ,蛋白質 と溶媒分 子種の相互作用)

近年 、蛋白質 と水あるい はそこに 溶解して いる様々 なイオン 、脂質との相互作 用の 重要が指 摘されてい る。しか し、その 相互作用 の詳細は いまだ明確ではな い。 本論文はこれらの相互作用と蛋白質の安定性に及ぽす効果を、170―NMRのス ピン―格子緩和時間(Tl)、1H−NMRのスペクトル強度、31PーNMRのTl、円二色性、

紫外 吸収の温 度依存性等 の分子レ ベルの測 定と、音 速、密度 、示差熱等のマク

□ な 測定 を 併用 し て 研究 し た結 果 を まと め たも ので ある。構 成アミノ 酸、30 残基 のべプチ ド、蛋白質 について 研究を行 い、コン ホメーシ ョンとの関連につ いて述ぺている。

  水溶 液中の蛋白質の水和につしゝての基礎的な知見を得るために、15種類のア ミ ノ 酸とHexamerまで のグリシ ンペプチ ドについて 、水溶液 の170ーNMRのTlを 測定 し、その結果を、申請者が初めて導入したDynamic Hydration Number(動的 水和 数、nDHN)とい うパラメー タで整理 した。一 連の疎水 性アミノ 酸とMonomer か らPentamerま で の グリ シ ンペ プ チ ドで 得 ら れたnDHNの 値は、こ れらのア ミ ノ酸 水溶液についてすでに報告されている部分モル体積、部分モル断熱圧縮率、

部分 モル比熱 などと非常 によい相 関関係が あること を見出し た。nDHNは、水分 子の 回転緩和 時間と水分 子の配位 数が関与 し、動的 因子と静 的因子の両方を含 んで おり、ア ミノ酸のよ うな両親 媒性物質 の水和の 性質をよ く表すと結諭して いる 。さらに 、30残基のぺ プチドに ついて調 ぺ、溶液 中でラン ダムな構造を取 っ て いる 場 合、 ベ プ チド のnDHNは個 々 の 構成 ア ミノ酸のnDHNの和に等 しいこ と を 示し た 。こ れ は蛋 白質のコ ンホメーシ ョンを調 べる1つの 方法を提 供する ものである。

従来 、蛋白質 の物理化学 的性質を 調べるの に燐酸緩 衝溶液を 用いている場合が 多い が、蛋白質と燐酸イオンの相互作用についてはいまだ明確ではなしゝ。申請 者は 、a−キモ トリプシン (a−CT)のNaCl溶液と燐酸緩衝溶液について、音速、

密度 、―30℃での1H−NMRスベクトルおよび31P―NMR Tl測定を行い、両者の比較

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からaーCTと燐酸イオンとの相互作用について研究した。NaCl溶液中で、aーCT の部分比容と部分比断熱圧縮率は溶媒のイオン強度の増加と共に高濃度側で増 加したが、リン酸緩衝溶液中では一定値に近づくことを見出した。不凍水量も 同様の変化を示した。31P―NMRのTlの結果から得られた燐酸イオンの吸着サイ 卜数はa−CT分子表面に存在する正の荷電残基の数とほぼ一致した。その結合定 数は100程度と小さい。これらの結果から、a−CT分子はNaCl溶液中では2量 体を形成するが、燐酸イオンは吸着水分子と置換して吸着していると結諭した。

  最後に、界面活性剤と光合成細菌由来の光合成反応中心膜蛋白質(RC)との相 互作用について述べている。界面活性剤はイオン性のLDAO、中性で糖残基が親 水基のロ―OD、両性で嵩高い疎水性基を持つCHAPSの3種類を用いている。これ らのRC水溶液についてDSC測定、CDおよびUVの温度スキャン測定で得た蛋白 質の熱変性温度はLDAOくp−ODくCHAPSの順で高いことを見出し、膜蛋白質の安定 性は界面活性剤自身の構造と水和の状態に深くか関係していると述べている。

本論文で述べられた結果は蛋白質の物理化学的性質の基礎的知見として高く 評価される。審査員一同は申請者が博士(理学)の学位を得る充分な資格があ ると認めた。

参照

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