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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 井 村 明 弘

学 位 論 文 題 名

生体触媒を用いるキノロン系合成抗菌薬及び カンプトテシン誘導体の重要不斉中間体の合成研究

学位論文内容の要旨

I.はじめに

  近年、酵素あるいは微生物が有機合成手段の1っとして見直されるようになって きた。それは、酵素は条件次第で目的の基質に対して極めて選択的な反応を触媒し うるからである。著者は、酵素(微生物)が有するメリッ卜のうち、O通常の化学 反応では実現しにくいようなspecificityを発揮できる、◎kinetic resolutionを 用いることにより変換生成物のみならず回収される基質も光学活性体のため両者と も有効に利用できる、という点に着目して医薬品の不斉中間体合成のキーステップ に酵素反応を組み込むことを目的として研究を行ってきている。今回、キノロン系 合成抗菌薬及びカンプトテシン誘導体の重要合成中間体を酵素触媒を用いて高い光 学純度で合成することに成功すると同時に、カンプトテシン誘導体の不斉中聞体に ついては工業的スケールで実施できる知見が得られた。

H.キノロン系合成抗菌剤不斉中間体の合成゛

  キノロン系合成抗菌薬の重要な不斉中間体である(1S,2S)−2‑fluorocyclopropane‑

carboxylic acidの合成を目的とし、ラセミ体のエステルを不斉加水分解する酵素を探 索した。まず最初に、本不斉加水分解反応を触媒する酵素を市販酵素の中に求めた が、光学認識がなされていないことが明らかとなった。これはフッ素原子が生体(酵 素)により識別されにくい(mimic効果)ためであるニとが推測されたため、酵素源 を微生物にまで広げてスクリーニングを行った。市販の微生物であるタイプカルチ ヤー(500菌)の検討で、いくっかの菌株において不斉認識が観測されたが。しかし E値が低いことに加え目的物の光学純度(28一68%ee)も満足できる結果ではなかっ たため、集積培養法により自然界の土壌から目的物を高い光学純度で生成する菌株 を 探 索 し 、 目 的 の 酵 素 活 性 を 有 す る 菌 株 を 選 出 す る こ と に 成 功 し た 。   本不斉加水分解反応を触媒する酵素を精製しその性質を検討したところ、この精 製酵素は、モノマー酵素でありpH4―9、50℃以下で安定であったが水銀イオン及び DFPで強く阻害された。また本酵素は、炭素鎖3〜5の脂肪族のエステルに広く作用

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するが、芳香族のエステルには作用しないことが明らかとなった。更に、粗酵素び 精製酵素での光学認識能の比較から、不斉加水分解反応においてフッ素原子を完全 には認識していないことが明らかとなった。

m.カンプトテシン不斉中聞体の合成

  アセテートの酵素的不斉水解反応を利用して、目的のS配置を有する不斉中間体 をを得ることを検討した。スクリーニングの結果、パパイン等植物由来のプロテア ーゼに良好な加水分解活性と不斉認識能を見い出した。この反応を水ー酢酸エチル の2層系で行うと、不斉加水分解反応は定量的に進行し、目的のS配置を有する化 合物を99%eeという高い光学純度で単離することに成功した。この不斉中間体は、

脱アセチノレ化後TFAでケタールを除去することにより容易にカンプトテシンに誘導 することが可能であった。

本酵素反応の基質特異性についてはかなり狭く、@アセチル基よりも炭素鎖が長い エステル、◎ラクトン部分をエステルに変換した基質は加水分解反応が殆ど進行し なかった。R配置を有するエステルは反応時間を長くしても全く加水分解されず、

本 反 応 の 光 学 認 識 が 完 全 に 行 わ れ て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。   更に、不斉加水分解反応で副生するR配置を有する不要な異性体は、2行程を経て ラセミ体にりサイクル可能であることを見出し、酵素法と化学法を組み合わせたカ ン プ 卜 テ シ ン 重 要 中 間 体 の 工 業 的 プ ロ セ ス の 確 立 に 成 功 し た 。

1V.まとめ

(1)生体触媒による認識が難しいとされている、モノアルキルフルオロ化合物の 不斉加水分解反応を試み、自然界の土壌中から目的のS―配置を有する化合物を高い 光学純度で生成する菌株を見出すことに成功した。更に、この不斉加水分解反応を 触媒する酵素蛋白を単離しその性質を明らかにした。

(2)カンプトテシン誘導体合成で、汎用性の高い不斉中間体の合成において、市 販酵素パパインが良好な不斉認識能を有することを見出した。水一酢酸工チル二層 系で酵素反応を行なうと、目的のS配置を有する化合物が定量的かつ99%ee以上と いう高い光学純度で得られた。現在、このパパインを用いる酵素法は、200Lスケー ルのパイロットプラントでの製造に成功している。

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学位論文審査の要旨 主 査    教授    大塚栄子 副 査    教授    松田    彰 副査   助教授    井上英夫 副 査    講師    南川典昭

学 位 論 文 題 名

生体触媒を用いるキノロン系合成抗菌薬及び カンプトテシン誘導体の重要不斉中間体の合成研究

  申 請 者 は 生 体 触 媒 を 用 い る 重 要 不 斉 中 間 体 の 合 成 研 究 を 行 っ て き た が , 酵 素

( 微 生 物 ) が 有 す る メ リ ッ 卜 の う ち ,O通 常 の 化 学 反 応 で は 現 実 し に く い よ う なspeciflcityを発 揮で き る, kinetic resolutionを用いることにより変換生成物 の み な ら ず 回 収 さ れ る 基 質 も 光 学 活 性 体 の た め 両 者 と も 有 効 に 利 用 で き る , と い う 点 に 着 目 し た . 今 回 , キ ノ ロ ン 系 合 成 抗 菌 葉 及 び カ ン プ ト テ シ ン 誘 導 体 の 重 要 合 成 中 間 体 を 酵 素 触 媒 を 用 い て 高 い 光 学 純 度 で 合 成 す る こ と に 成 功 す る と 同 時 に , カ ン プ ト テ シ ン 誘 導 体 の 不 斉 中 間 体 に つ い て は 工 業 的 ス ケ ー ル で 実 施 で き る知 見を 得た .

  キ ノロ ン系 合成 抗菌 剤不 斉中 間体 の合 成

  キ ノロ ン系 合成抗菌 葉の重要な不斉中間体である(15,25) ‑2‑fluorocyclopropane carboxylic acidの 合 成 を 目 的 と し , ラ セミ 体の ェス テル を不 斉加 水分 解す る酵 素 を 探 索 し た . ま ず 最 初 に , 本 不 斉 加 水 体 反 応 を 触 媒 す る 酵 素 を 市 販 酵 素 の 中 に 求 め た が , 光 学 認 識 が な さ れ て い な い こ と が 明 ら か と な っ た , こ れ は フ ッ 素 原 子 が 生 体 ( 酵 素 ) に よ り 識 別 さ れ に く い ( mimic効 果 ) た め で あ るこ とが 推測 さ れ た た め , 酵 素 源 を 微 生 物 に ま で 広 げ て ス ク リ ー ニ ン グ を 行 っ た . 市 販 の 微 生 物 で あ る タ イ プ カ ル チ ャ ー (500菌 ) の 検 討 で , い く っ か の 菌 株 に お い て 不 斉 認 識 が 観 測 さ れ た が , し か しE値 が 低 い こ とに 加え 目的 物の 光学 純度 (28−68%ee) も 満 足 で き る 結 果 で は な か っ た た め , 集 積 培 養 法 に よ り 自 然 界 の 土 壌 か ら 目 的 物 を 高 い 光 学 純 度 で 生 成 す る 菌 株 を 探 索 し , 目 的 の 醇 素 活 性 を 有 す る 菌 株 を 選 出す るこ とに 成功 した .

  本 不 斉 加 水 体 分 解 反 応 を 触 媒 す る 酵 素 を 精 製 そ の 性 質 を 検 討 し たと ころ ,こ の

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精製酵素は,モノマ一酵素でありpH4−9,50℃以下で安定であったが水銀イオン 及びDFPで強く阻害された.また本酵素は,炭素鎖3〜5の脂肪族のエステルに作 用す るが ,芳 香族の エス テル には 作用しないことが明らかとなった,更に,粗 酵素 及び 精製 酵素で の光 学認 識能 の比較から,不斉加水分解反応においてフッ 素 原 子 を 完 全 に は 認 識 し て い な い こ と が 明 ら か と な っ た ,

  カンプトテシン不斉中間体の合成

  ア セテ ートの酵素的不斉水解反応を利用して,目的のS配置を有する不斉中間 体を得ることを検討し,/ヾ/ヾイン等植物由来のプロテアーゼに良好な加水分解 活性 と不 斉認 識を 見い 出し た. この 反応を 水― 酢酸 エチ ルの2層 系で行うと不 斉加 水分 解反 応は 定量 的に 進行 し, 目的のS配置を有する化合物を99%eピとい う高 い光 学純 度で 単離 する こと に成 功した.この不斉中間体は,脱アセチル化 後TFAで ケター ルを 除去 する こと によ り容 易に カン プト テシ ンに 誘導すること が可能であった.

  本 酵素 反応の基質特異性についてはかなり狭く,Oアセチル基よりも炭素鎖が 長い ェス テル ,◎ ラク トン 部分 をエ ステルに変換した基質は加水分解反応が殆 ど進 行し なか った .尺 配置 を有 する エステルは反応時間を長くしても全く加水 分 解 さ れ ず , 本 反 応 の 光 学 認 識が 完 全 に 行 わ れ て い る こ と が 示 唆 さ れ た .   更 に , 不 斉 加 水 分解 反応 で副 生す るR置換 を有す る不 要な 異性 体は ,2行程 を経 てラ セミ 体に りサ イク ル可 能で あることを見出し,酵素法と化学法を組み 合 わ せ た カ ン プ ト テ シ ン 重 要 中 間 体 の 工 業 的 プ ロ セ ス 確 立 に 成 功 し た ,

以上の業績は,博士(薬学)を授与するのに値するものと判断した.

参照

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