博 士 ( 医 学 ) モ ハ メ ッ ド サ ド セ
1Jア
学位論文題名
Differential Expression of c‑7na 厂duringAdipOCyte andMuscleCellDiff ・erentiation
(脂肪細胞および筋肉細胞分化過程における
c‑maf遺伝子の発現)
学位論文 内容の要旨
Maf
は卜リ肉腫ウイルス、AS42 が持つ癌遺伝子として見いだされた、bZip 構造を
DNA結合ドメインとして持つ転写因子である。この遺伝子は目の水晶体、軟骨、脊髄、筋 肉、腎臓などの発生、分化の段階に特異的に発現している。Maf ファミリーには多くの、
転写因子、c‑Maf ,MafB ,MafA (L‑Maf) ,Nrl が含まれ、さらに、DNA 結合領域のみを持 ち転写活性化ドメインを持たないSmall Maf がいくっか知られている。それぞれが発生、
分化に関わる重要な機能を持っていると考えられているが、c −Maf は目の水晶体分化、
ヘル パー
T細胞の
Thl,Th2 への 分化、軟骨分化に働くことなどが報告されている。
本研究はどちらも間葉系線維芽細胞から分化する脂肪細胞と筋肉細胞において、そ れらの分化過程でのc −
maf遺伝子の発現変化を調ベ、脂肪細胞分化では抑制され、逆に 筋肉分化過程では活性化されることを見いだた。さらに、これらの遺伝子発現の変化 が ど の よ う な 機 構 に よ る も の か を 分 子 レ ベ ル で 明 ら か に し た 。
前脂肪細胞培養株、3T3L1 をインスリン、グルココルチコイドなどを含む培養液で処 理すると脂肪細胞へ分化する。この過程で
cー
maf mRNAの発現を調べたところ分化処 理後
58時間から
c―maf mRNA が低下し、
72時間後にはほとんど検出できなくなった。
この
mRNA合成の低下は分化させるための培養液のためでなく、細胞分化に伴ったも のであることは、線維芽細胞
NIH3T3細胞では低下しないことや脂肪細胞分化のマスタ ー転写因子である
PPAR72が発現した直後に見られることなどより明らかである。mRNA と同様に
c−Maf 蛋白質も低下することをウエスタンブ口ッティング法で確認した。
PPAR't2
発現と
c‑maf発現が逆に相関していることからPPAR'/2 とc ー
maf発現の関係を
調べた。
c‑maf遺伝子5 上流領域をレポーター遺伝子にっなぎ、PPARy2 の発現ベクタ
ーと共に線維芽細胞株C3HlOTl/2 細胞に導入した結果、
PPARア2 はc ―maf の発現を抑
制した。しかし、
c‑maf遺伝子の転写制御領域に
PPARア結合部位が存在しないことか
ら、PPAR アによるc −
mafの転写抑制は
DNA結合を介さないものと考えられた。 我々 は転写因子Pax6 、
c―Jun 、c −Maf がc ーmaf 遺伝子の上流領域に結合し、転写を活性化する ことを報告したが、PPAR ア2 によるc −maf 遺伝子発現抑制はそれらのc ―maf 遺伝子を活 性化する転写因子を阻害するためではないかと考え、レポーター分析による解析を行 った。その結果、PPAR ア2 は
Pax6による
c−
maf遺伝子の転写活性化を抑制した。
PPARア2 はPax6 やc ―Jun などの転写因子の活性を阻害することが報告されている。以上のこ とから、c ―maf の脂肪細胞分化過程での発現抑制は
PPARア2 がc −maf 遺伝子発現を活性 化する転写因子を阻害するためであると考えられた。この機構は転写補助因子、CBP な ど を こ れ ら の 転 写 因 子 が 競 合 す る た め で は な い か と 推 定 さ れ る 。
一方、筋肉細胞分化過程でのc ―maf 発現は、in vitro で筋肉細胞に分化する筋肉芽細 胞株
C2C12を 用いて行っ た。
C2C12細胞が筋肉細胞に分化する過程での
c−maf mRNA の発現を解析した結果、分化誘導2 日後に
c−
mafの増加が見られた。筋肉細胞分化の マスター転写因子である
MyoDはc ―maf 発現の直前に活性化される。
c‑maf遺伝子の5 上流 に は
2つ の典 型 的な
MyoD結 合配 列 、
E‑box(CAGCTG)が5 塩 基 隔て て 存在 し 、 この領域にMyoD が結合して
c―maf 遺伝子の発現を活性化していることが予想された。
このことを明らかにするため、ゲルシフ卜分析、DNaseI フットプリント分析を行いMyoD がこの領域に直接結合することを確認した。 さらに、c ―maf 遺伝子の
5上流領域を持 つレポータ一遺伝子とMyoD 発現ベク夕一を導入したレポーター分析よって、c ―maf 遺 伝子が′E ―box 依存的にMyoD によって活性化されることを明らかにした。これらの結 果から筋肉分化過程では
MyoDの発現によって
c‑maf遺伝子も活性化されることが明ら かになった。
以上の結果から同じ間葉系線維芽細胞から分化する脂肪細胞と筋肉細胞ではc ―maf の
発現が全く異なることが明らかとなった。同じように間葉系細胞から分化する軟骨細
胞も分化の最終段階である肥大軟骨細胞で特異的に発現されており、間葉系細胞から
の分化過程にはc ー
mafの発現変化が伴うことが示唆された。 これらの細胞分化の過程
でc −maf がどのような標的遺伝子を制御し、どのような働きをしているかが今後の課題
である。
学位論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教 授
西 教 授
渡 教 授
石 助教授 酒
信三 辺 雅 彦 橋 輝 雄 井 正 春
学位論文題名
DifferentialExpressionofc
. ケ 咒 驪 厂
duringAdipOCyte andMuSCleCellDifEerentiation
(脂肪細胞およぴ筋肉細胞分化過程におけるc ・maf 遺伝子の発現)
Mafは卜リ肉腫ウイルス、AS42が持つ癌遺伝子として見いだされた、bZip構造をDNA結合ドメイン として持つ転写因子である。この遺伝子は目の水晶体、軟骨、脊髄、筋肉、腎臓などの発生、分化の 段階に特異的に発現している。Mafファミリーには多くの、転写因子、c−MafMa毋,MafA(L―MaD,N :
rlが含まれ、さらに、DNA結合領域のみを持ち転写活性化ドメインを持たないSma‖Mafがいくっか 知られている。それぞれが発生、分化に関わる重要な機能を持っていると考えられているが、c―Maf は目の水晶体分化、ヘルパ二T細胞のTh1,.Th2への分化、軟骨分化に働くことなどが報告されてい る。本研究はどちらも間葉系線維芽細胞から分化する脂肪細胞と筋肉細胞において、それらの分化 過程でのcーmaf遺伝子の発現変化を調べ、脂肪細胞分化では抑制され、逆に筋肉分化過程では活 性化されることを見いだした。さらに、これらの遺伝子発現の変化がどのような機構によるものかを分 子レベルで明らかにした。前脂肪細胞培養株3T3L1をインスリン、グルココルチコイドなどを含む培 養液で 処理する と脂肪細 胞ヘ分化する。この過程でc―mafmRNAの発現を調べたところ分化処理 後58時間 からc―mafmRNAが 低下し、72時間後にはほとんど検出できなくなった。このmRNA合成 の低下は分化させるための培養液のためでなく、細胞分化に伴ったものであることは、線維芽細胞 NIH3T3細胞で は低下し ないことや脂肪細胞分化のマスター転写因子であるPPAR昭が発現した直 後に見られることなどより明らかである。mRNAと同様にc―Maf蛋白質も低下することをウエスタンブロ ッティング法で確認した。PPAR昭発現とc―maf発現が逆に相関していることからPPAR昭とc―maf発 現の関係を調べた。cーmaf遺伝子5 上流領域をレポーター遺伝子にっなぎ、PPAR昭の発現ベクタ ーと共 に線維芽 細胞株C3H10T1/2細胞に導入した結果、PPARッ2はcーmafの発現を抑制した。し
か し 、c―maf遺 伝 子 の転 写 制 御領 域にPPARッ 結合部 位が存在 しない ことから 、PPARッに よるc−maf の 転 写抑 制 はDNA結 合 を介 さ な いも の と 考え ら れ た。 申 請 者ら は転写 因子Pax6、c―Jun、c―Mafが c―maf遺伝 子の上流 領域に結 合し、 転写を活 性化す ることを 報告し たが、PPARッ2に よるc−maf遺 伝 子 発 現抑 制 は それ ら のc―maf遺伝 子を活 性化す る転写因 子を阻害 するた めではな いかと 考え、レ ポ ー タ ー 分 析 に よ る 解 析 を行 っ た 。そ の 結 果、PPARッ2はPax6によ るcーmaf遺伝 子 の 転写 活 性 化を 抑 制 した 。PPARッ2はPax6やc―Junな どの 転 写 因子 の 活 性を 阻 害するこ とが報告 されて いる。以 上 の こ と か ら 、c―mafの 脂 肪 細胞 分 化 過程 で の 発現 抑 制 はPPARッ2がc―maf遺伝 子 発 現を 活 性 化す る 転 写因 子 を 阻害 す る た めで あ る と考 え ら れた 。 こ の機 構 は転 写補助 因子CBPなどを これらの 転写 因子 が競合 するため ではな いかと推 定される 。一方 、筋肉細 胞分化 過程でのcーmaf発現は、in vitro で 筋 肉 細 胞 に 分 化 す る 筋 肉 芽 細 胞 株C2C12を 用 い て 行 っ た 。C2C12細 胞 が 筋 肉 細 胞 に 分 化 す る 過 程で のc−maf mRNAの発 現 を 解析 し た 結果 、 分 化誘 導2日後 にc―mafの 増加 が 見 られ た。筋肉 細 胞 分化 の マ スタ ー 転 写 因子 で あ るMyoDはc―maf発 現の 直 前に 活性化 される。c−maf遺伝 子の5 上 流 に は2っ の 典 型 的 なMyoD結 合 配 列 、E−box (CAGCTG)が5塩 基 隔 て て 存 在 し 、 こ の 領 域 に MyoDが 結合してc→maf遺伝 子の発現 を活性 化してい ることが 予想さ れた。こ のことを明らかにするた め、 ゲルシ フト分析 、DNaseIフッ トプリン ト分析 を行いMyoDがこの領 域に直接 結合することを確認し た。 さらに 、c―maf:遺 伝子の5 上 流領域 を持っレ ポーター遺伝子とMyoD発現ベクターを導入したレ ポ ー ター 分 析 よっ て 、c―maf遺伝 子がEーbox依存的 にMyoDによ って活性 化される ことを 明らかに し た 。 これ ら の 結果 か ら 筋 肉分 化 過程 ではMyoDの 発現によ ってcーmaf遺伝子も 活性化 されるこ とが明 ら か にな っ た 。申 請 者 の 発表 後 、 渡辺 雅 彦 教授 か ら 細胞 分 化 に伴 っ て 発現 が 変 化 するc―mafの 標 的 遺 伝子 は 何 か、cーmaf欠 損 マウ スの表 現型と その脂肪 組織や筋 組織の 発達につ いて質 問があり 、 申請者はL7遺伝子(小脳プルキンエ細胞)、クリスタリン遺伝子(水晶体)、グルカゴン(膵臓)、インタ ーロ イキン遺伝子(T細胞)などが標的遺伝子であること、c−maf欠損マウスの90%が胎児死亡となり、
生 存 する も は 水晶 体 形 成 異常 の 報 告が あ る が、 脂 肪 組織 、 筋 組織 の 発 達で の 異 常 は報 告さ れてい な い と聞 答 し た。 っ い で 石橋 輝 雄 教授 か らc−mafのPartner分 子とし て何が予 測され るか質問 があ り、 申請者 はbーZip domainを持つcーJun,c―Fos,ATF等の可能性があると回答した。さらに酒井正春 助 教 授か ら 脂 肪細 胞 、 筋 肉細 胞 分化 過程でのcーmafの機 能を調べ るため には、今 後どの ような研 究 が 必 要か 、c―maf欠 損マ ウ ス で筋 肉分化 は正常 と大きな 変化はな い理由 について 質問が あった。 申 請 者 はc一maf欠 損 マ ウス 胎 児 細胞 が 脂 肪や 筋 肉 に分 化 さ れる か 、 また そ の 過 程で の 標 的遺伝子 の 探索 を進める必要があること、c―mafの結合配列は関連遺伝子、mafI3,c―junなども結合できる配列で あり 、これ らの関連 遺伝子 などがc―mafの機能を相補していることが考えられると回答した。審査員一 同 は 、こ れ ら の研 究 成 果 を評 価 し 、大 学 院 課程 に お ける 研 鑽 や取 得 単 位な ど も 併 せ申 請者 が博士
(医学)の学位を受ける資格を有するものと判定した。
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