博 士 ( 農 学 ) チ ー プ タ ム ・ ナ オ ワ ラ ッ ト
学位論文題名
Studies on Antifungal AntibioticsfromEZ 肱めd わ協ぬ 励 g 銘励嬲L158 &A8 任M むああ励お励g 勿励ロ鯲L158 &A8 が 生 産 す る 抗 真 菌 抗 生 物 質 に 関 す る 研 究 )
学位論文内容の要旨
選 択性が高 く、副作 用の少ない 優れた抗 真菌剤の 発見および開発は難しく、実用化され て い る もの は 非常 に 少 ない 。 現在 、 真 菌感 染 症の 治 療 で用 い ら れて い る抗 生 物 質には AmphotericinBとAzole系 の も ので あ るが 、 そ の副 作 用は 大 き い。 一 方 、抗 生 物質 耐性 菌 の出現や 免疫不全 症患者の増 加などに 伴い、新 しい抗真菌剤の探索は、ますます重要か つ切実な問題となってきている。
真 菌はその 細胞壁に キチンを含 んでいる ことが、 動物及び細菌との大きな違いのーっと し て挙げら れる。キ チンはN一ア セチルグ ルコサミ ンが母一1,4結合に よって連 結したも の であり、 多くの真 菌類細胞壁の主要構成成分となっている(5−60%)。そこでキチンの 生 合成をタ ーゲット とし、これ を阻害す ることに よって、真菌に対して選択的に作用を発 揮するような抗生物質の探索を試みた。
1.抗真菌抗生物質生産菌の探索および生産菌の同定
酵 母のキチ ン生合成 については 、合成酵 素1,2,3が 関与する ことが知 られてお り、合 成 酵 素1は、 出 芽 時に お け る隔 壁 形成 に 関 与し 、 合成 酵 素2は 、主 に その 隔 壁 形成 を行 い 、nikkomycinな ど の 薬 剤 に 阻 害さ れ に くい 。 合 成酵 素3は 、細 胞 壁 のほ と んど の キ チ ン 合 成を 行 って い る 。合 成 酵素2と3の 二 重 欠損 は 致死 を 起 こす こ とな ど が 報告 され て い る 。本 研 究で は 、Saccharomyces cerevisiaeの キチ ン合成酵素1の欠損変 異株を用 い て、キチ ン合成阻 害物質の探 索を行っ た。キチ ン合成能カを下げた菌株を使うことで阻 害 能の低い 物質も検 出できるこ とが期待 される。 探索の対象としては、今までに多くの抗 生 物 質 が見 っ かっ て い るActinomycetesと 、 探 索が ほと んど行わ れてきて いなかっ た海 洋性真菌のLeptosphearほ属を用いた。
ま ず 、 酵 母 の 野 生 株 と 欠 損 株 を そ れ ぞ れYEPD( 20g/191ucose、 20g/1 POlypepton、 お よ び10g/1yeaSteXtraCt、 初 発pH7.O) 液 体培 地 を用 い て27℃ で一 晩 振 と う 培養 し 、培 養 液 をYEPD寒 天 培地 にO.5% (v/v)とな るように 添加して 、アッセ イ プ レ ー ト を 作 成 し た 。 生 産 菌 を27℃ で6日 間 培 養 し 、 そ の 培 養上 清 約80ロ1を 染み 込 ま せ たべ ー パー デ ィ スクをア ッセイプレ ートの上 に乗せ、27℃で一晩 培養し、 生育阻 止 円の形成 を観察し た。A・Ctfn〇mユ ′ce絶s146株と 己ゆめsp瓜羶rぬ属300株をスクリー ニ ン グ し た と こ ろ 、 野 生 株 に 比 べ 明 確 に 大 き な 生 育 阻 止 円 を 形 成 し た も の は 、 ACばn〇mユ′ce絶S中には見っからず、己卸めsp.址I.aぬ属中に2株見っかった。このうち、
Leptosp瓜 ユ ´am属 のL1588株 がよ り 大 きな 生 育阻 止 円 形成 の 差 を示 し た。L1588株 を 形 態上 の 特 徴お よ びLuttreuの 同 定法 に 基 づき 分 類し た 結 果、 本 菌は 日 口sj〇d〇 甜出 m(ヱL血ansと同定された(口ロ釘〇d〇脚s加(m加ansL1588―A8)。本菌による抗生物質の生 産は今回の報告が初めてである。
2.培養条件の検討
抗 菌 活 性 物 質 の 生 産 条 件 の 最 適 化 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 前 培 養 と し て 、30g/1 fruCtOSe、5g/1SOybeanmeal、 lg/1KH2P04、0. 5g/1MgS04お よ び O. lg/1 CaC12、 初 発pH6.0の 培 地 が 最 適 で あ り 、 こ の 培 地 で3日 間 振 とう 培 養後 、 本 培養 培 地 と し て 、3g/lgluCOSe、5g/191yCerol、2g/1POlypepton、3g/lyeaStextraCt、2 g/1NaClお よ び3g/1CaC○3、 初 発 pH6.0を 用 い て 6日 間 、27°Cで 培 養 し た 時 に 、最 も 高 い抗 菌 活 性が 得 られ る こ とが わ かっ た 。 さら に 上記 培 養 条件 を 用 いて5L、 10L、30Lの ジ ャー フ ァ ーヌン ターを用 い、大量 培養を行 った。最 終的にこ の条件を用 い て200L夕ンクを用いて、本抗真菌抗生物質の大量生産を行った。
3.抗真菌抗生物質の単離および精製
本菌 の 培養 上 清 より 酢 酸エチル 抽出、ダ イヤイオ ンHP―20およ びシリカ ゲルカラム ク 口マ トグラフイ ー、高速 液体クロ マトグラ フイー等 を用いて、抗真菌活性物質の単離、精 製 を行 っ た 。少 な く とも4種 の 抗真 菌 活 性を 持 つ物 質 が 確認 さ れ、 こ の うち のNCAflを 完 全 に 精 製 し 、 構 造 の 解 析 を 行 っ た 。 本 物 質 はFAB−MSよ り 分 子 量646、HRE卜MSよ り 分 子 式C37H5809と 決 定 さ れ た 。 さ ら にNMR等 の 機 器 分 析 を 行 い 、NQい1の 構 造 を glycoSylatedlanOStane―typetnte叩enoidと決 定 し た。 本 物質 は1997年 に米 国 にて 他 の 真菌 か ら 発見 さ れ たAscosterosideと 同 一 のも の であ ること が判明し たが、作 用機構 を はじ め 、 抗真 菌 剤 とし ての詳 細な検討 はなされ ていない ため、さ らに解析を 進めた。
4.NQや1の抗菌スベクトルおよび作用機構
本物 質 の抗 菌 ス ベク ト ルを 解 析 した と ころ 、 酵 母の キチ ン合成酵 素1欠損株に 対して 明 確 な 生 育 阻 止 円 を 形 成 し 、 酵 母 野 生株 お よびBac田ussp.の 生 育を 僅 か に阻 害 し、
Afむem甜 ぬsp.および &出n〇ne.ぬsp.の生育は阻害しないことがわかった。また、欠損 株 に 対 す るMICはO.1ロg/m1で あ っ た 。 酵 母 野 生 株 の ス フ ェ ロ プ ラ ス ト お よ びUDp N―aceけ1[U―14C]glucos甜mneを 用いて、 キチン生 合成に対 するNQい・1の影響を 調べ た とこ ろ 、10ロg/m1の 濃度 でUDP−N一aCeぢ1[U−14C]glucosa亅Tdneの取り込 みが完 全 に 阻 害 さ れ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 ま たDNA合 成 、RNA合 成 、蛋 白 質 合成 に 対す るNQや1の 影 響を 調 べ るた め 、[methyト3H]t恥mmdme、 [5,6ー3H] 丗acil、お よ び L― [4,5―3H(N) ]1eucineの酵母 欠損株へ の取り込 みを測定 したとこ ろ、DNA合成 、 RNA合成 に 関 して は 、 生育 阻 害に よ る と思 わ れる 若 干 の影響 がみられ たのみであ るが、
蛋 白 質 合 成 に 関 し て は 、 10ルg/mlの 濃 度 で 完 全 な 停 止 が 観 察 さ れ た 。 本 研究 よ っ て、 酵 母 のキ チ ン合 成 酵 素1欠損 株 と野 生 株を 用いたス クリーニン グ系の有 用性 が明らかと なり、キ チン合成 阻害物質 生産菌の 探索による、新しい有望な抗真菌剤発 見の 可能性が大 きく開か れた。ま た、海洋 微生物で あるE.加(舛】ansからの抗生物質の 生 産は 、 今 回の 報 告 が始 め てで あ る 。NQい1につ い て は、す でに他菌 株由来の同 じ物質 の報 告はされて いたが、 そのキチ ン合成阻 害作用に ついては本研究で初めて明らかにされ た もの で あ り、 新 し いキ チン合 成酵素阻 害剤のー っとして 、その有 用性が期待 される。
学 位 論 文 審 査の 要 旨 主 査 教 授 冨 田 房 男 副 査 教 授 吉 原 照 彦 副 査 助教 授 横 田 篤
学位論文題名
Studies on Antifungal Antibiotics from Ellisiodoth ぬ inquina7zs L1588‑A8(Ellisioab 励お励¢勿励ロ鯲L158 &A8 が 生 産 す る 抗 真 菌 抗 生 物 質 に 関 す る 研 究 )
本論文は、英文138頁、図53、表23、引用文献106、5章からなり、他に参考論 文3編が付されている。
選択性が高く、副作用の少ない優れた抗真菌剤の発見および開発は難しく、実用 化されているものは非常に少ない。現在、真菌感染症の治療で用いられている抗性 物質の副作用はまだまだ大きい。一方、抗生物質耐性微生物の出現や免疫不全症患 者の増加などに伴い、新しい抗真菌剤の探索は、ますます重要かつ切実な問題と なってきている。
真菌はその細胞壁にキチンを含んでいることが、動物及び細菌との大きな違いの ーっとして挙げられる。そこでキチンの生合成をターゲットとし、これを阻害する 抗生物質の取得を試みた。
1.抗真菌抗生物質生産菌の探索および生産菌の同定
本研究では、Saccharomyces cerewsiaeのキチン合成酵素1の欠損変異株を用い て、キチン合成阻害物質の探索を行った。キチン合成能カを下げた菌株を使うこと で阻害能の低い物質や極微量の物質も検出できることが期待される。探索の対象と しては、今までに多くの抗生物質が見っかっているActinom ycetesと、探索がほとん ど 行 わ れ て き て い な か っ た 海 洋 微 生 物 のLeptosphearia属 を 用 い た 。 酵母の欠損株と野生株を用い、ベーパーデイスク法で生育阻止円の形成を観察す ることによってActinomycetes 146株とLeptosphearia属300株をスクリーニングし たところ、野生株に比べ明確に大きな生育阻止円を形成したものは、Actinom ycetes
中に は見っか らず、Leptosphearia属 中に2株見っ かった。このうち、Leptosphearia 属L1588株 が より 大 き な生 育 阻止 円 形 成の 差 を示 し た ため 、 形態 上 の 特徴 お よ び Luttrellの同定法に基づき分類した結果、本菌はEllisiodothis而quinansと同定された (E.血quinans L1588‑A8)。本 菌 に よる 抗 生物 質 の 生産 は 今回 の報告 が初めて であ る。
2.培養条件の検討
培養条件の検討を行った結果、3 g/l・ glucose、5g/l glycerol、2g/l Polypepton、3 g/l yeast extract、2g/l NaClお よび3g/l CaC03、初 発pH 6.0で6日間振とう培養を 行 った時 に、最も 高い抗菌活 性が得ら れること がわかっ た。最終 的に200L夕ン クを 用いて、抗真菌抗生物質の大量生産を行った。
3.抗真菌抗生物質の単離および精製
本菌 の培養上 清より抗 真菌活性物 質の単離 、精製を 行った。少なくとも4種の抗真 菌 活 性を 持 つ物 質 が 確認 さ れ、 この うちのひ とつ、NCA‑1を 完全に精 製し、構 造の 解 析 を 行 っ た 。FAB‑MSよ り 分 子 量646、HREI‑MSより 分 子 式C37H5809と 推 定さ れ た 。 さら にNMR等 の 機 器分 析 を行 い、NCA‑1の 構造をglycosylated lanostane‑type triterpenoidと 決 定 し た 。 本 物 質 は1997年に 米 国に て 他 の真 菌 から 発 見 され た Ascosterosideと同 一のもの であるこ とが判明し たが、作 用機構をはじめ、抗真菌剤 と しての 詳細な検 討はなされ ていない ため、さ らに解析 を進めて ゆくこと にした。
4. NCA‑1の抗菌スベクトルおよび作用機構
本物 質 は、 酵 母 キチ ン 合 成酵 素1欠損 株に対し て明確な 生育阻止 円を形成 し、酵 母 野生株 およびBacillus subtilisの 生育を僅か に阻害し 、Alterロaria sp.およ ぴ Salmonella sp.の生 育 は 阻害 し なか っ た 。欠 損 株に 対 す るMICは0.1Fg/mlであ っ た 。 キチ ン 生合 成 に 対す るNCA‑1の影響を 調べたと ころ、10〃g/mlの濃度に て完全 に 阻 害さ れ るこ と が 明ら か とな っ た 。ま たDNA合成 、RNA合 成 に関して は、生育 阻 害に よると思 われる若 干の影響がみられ、蛋白質合成に関して;ま、10〃g/mlの濃度 にて完全な停止が観察された。
本研 究 よっ て 、 酵母 の キ チン 合成酵 素1欠損株 と野生株 を用いた スクリー ニング 系 の有用 性が明ら かとなり、 キチン合 成阻害物 質生産菌 の探索に よる、新 しい有望 な抗 真菌剤発 見の可能 性が大きく開かれた。また、海洋微生物であるE,血quinansか ら の 抗生 物 質の 生 産 は、 今 回の 報告 が始めて である。NCA‑1について は、すで に他 菌 株由来 の同じ物 質の報告は されてい たが、そ のキチン 合成阻害 作用につ いては本 研 究で初 めて明ら かにされた ものであ り、新し いキチン 合成酵素 阻害剤の ーっとし て、その有用性が期待される。
よって審査員一同は、チープタム・ナオワラットが博士(農学)の学位を受けるに 十分な資格を有するものと認めた。