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Academic year: 2021

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博 士 ( 水 産 科 学 ) 笠 井 久 会

     学位論文題名

   海水電解殺菌装置による魚類飼育用水および    排水の殺菌と漁港ならびに産地市場における 水産物の衛生管理への本装置の応用に関する研究      学位論文内容の要旨

  

海産魚介類の種苗生産では沿岸海水を飼育用水として使用するため,

海水中に病原微生物が存在すると種苗生産現場への侵入は避けられず,

飼育環境や飼育魚の健康状態の悪化,さらに過度のストレス等が加 わった場合,病気が発生しやすい状況下にある。また一旦病気が発生 すると飼育排水と共に病原微生物を環境に放出することになり,沿岸 海水の汚染による悪循環を繰り返す危険性がある。こういった危険性 を回避するためにも,飼育用水および飼育排水を殺菌し,病原微生物 対策を十分行う必要がある。飼育用水の殺菌処理法として,各地の飼 育施設で紫外線やオゾンを利用した殺菌装置が普及している。しかし,

飼育排水の殺菌に利用する場合,大量の水を殺菌しなくてはならず,

現在の紫外線,オゾン殺菌装置では対処できない。そこで,本研究で は大量の水を殺菌することを目的に,海水の電気分解による殺菌法に っいて検討し,さらに本装置の漁獲から産地市場に至る道程の水産物 の衛生管理への応用.について検討した。供試海水電解殺菌装置には隔 膜がなく,海水中に次亜塩素酸を発生させ殺菌効果を得るものである。

  

まず,第一章では,流水式海水電解殺菌装置を供試し,魚類病原微 生物を

3

%食塩水中に懸濁し,電気分解した場合の殺菌・不活化効果 を検討した。魚類病原細菌としてレanguillarumとイ.

salmonicida

を,

(2)

ウ イ ル ス と し て ブ り の ウ イ ル ス 性 腹 水 症 原 因 ウ イ ル ス

YTAV

と , ヒ ラ メ ラ ブ ド ウ イル スIIRRVを 供 試し ,

Ecoli

を対 照 に供 試 して 殺菌 お よび不活化効果を検討した。その結果,有効塩素濃度

0.07

〜0.14 mg/L,

1

分間の処理 で供試細菌が

99.9

% 以上,0.49〜

0.58 mg/L

1

分間の処理 で供試ウイルスが99.99%以上不活化された。

  

第 二章 では飼 育用水およぴ 排水の殺菌へ の応用を試み, まず日本栽 培漁 業 協会 厚岸事業場の飼 育用濾過海水 を電気分解し ,殺菌効果を 検 討 し た 。 有 効 塩 素 濃 度

1

O mg/L

1

分 間 処 理 し た 場 合 , 生 菌 数 が

99.99%

以 上減 少し 十 分な 殺 菌効 果 が得 ら れ, 脱塩 素 処理 す れば 残 留 塩素 の 影響 もなく,飼育用 水としての使 用が可能と考 えられた。実 際 に脱塩素処 理電解海水でマツカワを飼育したが異常は見られなかった。

次い で 実用 規 模の 流 水式 海水 電 解殺 菌 装置

H‑100

型機を供試 し,同事 業場の排水の一部2.0 rr‑13niを電気分解処理し,残りの16.5 rrr3/liの排水 と 混 合 処 理 し た 場 合 , 残 留 塩 素 濃 度

0.5 mg

凡 以 上 ,1分 間 の処 理 で

99

% 以 上 の 殺菌 率 が得 ら れた 。

H

100

型 機は 計算 上

200m3m

の 飼育 排 水 を 処 理 で き るこ とに な り, 厚 岸事 業 場の 取 水量 は

100m3m

であ る こ と か ら , 一 般 的な 規模 の 飼育 排 水の 殺 菌に 用 いる のに 十 分な 能 カを 持っていると考えられる。

  

第 三章 では, 水槽内に電極 部を投入する バッチ式海水電 解殺菌装置 を供 試 し, 流水式海水電解 殺菌装置との 比較を行い, 電解海水によ る 飼育 器 具類 の消毒効果につ いても検討し た。細菌につ いては,有効 塩 素濃度

O

47

O

62mg

凡で

3

分間処理することにより

99

.9%以上の殺菌 率と な り, ウ イル ス でも

mI

水 .

V

0

57mg

凡,

1

分間 の処理で最大 不 活率(

99

4

%以上)が,

YTAV

では

O

.71mg几,

3

分間の処理で99.9%以 上の 不 活化 率が得られた。 次に,実際の 飼育用濾過海 水を電気分解 し た場 合 ,

O

54mg

几,

1

分間の処理で

99

% 以上の殺菌率 を示し,十分 な 殺菌 効 果が 得 られ た 。ま た, 飼 育排 水 の場 合でも有 効塩素濃度0.

64

(3)

mg/L

で1分間処理することにより

99

%以上の殺菌効果が得られた。流 水式とバッチ式海水電解殺菌装置の殺菌効果を同一条件で比較すると,

両装置は同程度の殺菌効果を示し,殺菌能カに差は認められなかった。

  

疾病の水平感染を防止する上で飼育器具類の消毒は重要な課題であ る。そこで電解海水による飼育器具類の消毒効果を検討したところ,

電解海水をかけ流しにして飼育器具類を30〜120分浸漬することによ り一般生菌数は99.9%以上減少した。電解海水は飼育用水および排水 の殺菌のために海水電解殺菌装置を導入すれば容易に得られるもので あり,またバッチ式海水電解殺菌装置ならば配管の必要もなく場所も 選ばない。さらに有効塩素濃度の調整も容易なことから,飼育現場に おいて実用性の高い優れた消毒法と考える。

  

最後に第四章では漁獲の際に使用される海水の殺菌を目的としてま ず第一飾で道東の標津川,伊茶仁川および古多糠川の細菌学的調査を,

第二節では道内の漁港の細菌学的調査を行い,第三節において海水電 解殺菌装置による漁港内海水の殺菌と漁獲物の衛生管理への応用につ いて検討した。まず第一節では道東の標津川,伊茶仁川および古多糠 川の水質,一般生菌数,大腸菌群最確数および大腸菌最確数を測定し,

細菌叢にっいて検討した。その結果,水質,生菌数およぴ細菌叢に流 域による違いは見られなかったが,各定点の大腸菌群数はそれぞれの 河川で検出限界以下〜9200/100 mLと幅広く測定された。大腸菌数は 大腸菌群数と比較しておよそ1/10の値を示した。道東の標津漁港周辺 には標津川,伊茶仁川,古多糠川,薫別川など多くの河川の河口があ り,それら河川は多くの牧場の間を流れてくる。大腸菌の海水中での 生存性が,5℃で

3

日以上

7

日以内と比較的長かったことから,大腸菌 が河川から根室海峡に出たあとの消長についても観察する必要がある と考える。第二節では標津漁港を始め道内の漁港の細菌学的検査を 行ったところ,道内27漁港のほば全ての港内海水からも大腸菌群およ

(4)

び大腸菌が検出された。より高度な衛生管理を目指す上で,大腸菌陽 性の海水で船体をはじめ,選別台,岸壁等を洗浄したり,漁槽や保冷 タンクに港内海水を用いることは食品衛生上好ましくなく,改善の余 地があると考える。そこで第三節では海水電解殺菌装置による漁港内 海水の殺菌と漁獲物の衛生管理への応用について秋サケ定置網漁をモ デルに検討した。まずItタンクおよび船倉に注入した電解海水の有 効塩素濃度の消長を検討した。氷投入区では未投入区に比べて塩素の 残留時間が長く,またltタンクにおいては断熱シートで覆った方が より長く残留し,現場での作業時間を十分賄うものであった。また電 解海水が甲板ならびに漁業用具の消毒にも有効であった。続いて電解 海水を注入した

11t

タンクに漁獲物を投入して有効塩素濃度の消長を 検討したところ,カ、ラフトマスを20尾投入しただけでも大幅な減少が 認められた。実際の漁では一度に数百尾を投入するため,有効塩素濃 度は漁獲物の投入と同時に検出限界以下となることが容易に推察され る。従って海水電解殺菌装置を用いることにより,港内海水中の大腸 菌および大腸菌群による漁獲物の汚染を防ぐことが出来,海水電解殺 菌装置のイニシャルコストおよぴ処理能カを考慮すると,海水殺菌装 置の有力候補と考えられ,温度管理や他の衛生管理対策との相乗効果 で , 漁 獲 物 の 衛 生 管 理 の 向 上 に っ な が る と 考 え る 。

(5)

学 位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授 教 授 教 授 助教授

吉 水    守 田 島 研 一 難 波 憲 二 澤 辺 智 雄

学 位 論 文 題 名

海 水電 解殺 菌装置に よる魚類飼育用水および 排水の殺菌と漁港ならびに 産地市場における 水 産物 の衛 生管理へ の本装置の応用に関する研究

  増 養 殖 事 業 , 特 に 栽 培 漁 業 に お け る 種 苗 生 産 施 設 で は 沿 岸 海 水 を 飼 育J‖ 水 と し て 使i, ‖ す る た め , 海 水 巾 に 病 原 微 生 物 が存 在す ると 種繭 生 産現 場へ の侵 入は 避け ら れ ず , 飼 育 環 境 や 飼 育 魚 の 健 康 状 態 の 悪 化 , さ ら に 過 度 の ス ト レ ス 等が カ‖ わっ た 場 合 , 病 気 が 発 生 し や す い 状 況 下 に あ る 。 ま た 病 気 が 発 生 す る と 飼 育 排 水 と 共 に 病 原 微 生 物 を 環 境 に 放 凵jす る こ と に な り , 沿 岸 海 水 の 汚 染 に よ る 悪 術 環 を 繰 り 返 す 危 険 性 が あ り 、 飼 育 用 水 お よ び 飼 育 排 水 を 殺 菌 す る 必 要 が あ る 。 飼育J1] 水の 殺 菌 法 と し て 紫 外 線 や オ ゾ ン を 利 用 し た 殺 菌 装 置 が 普 及 し て い る が , 現 花 の 紫 外 線 や オ ゾ ン 殺 繭 装 證 で は 飼 育 排 水 の 殺 菌 に は 対 処 で き な い 。 本 研 究 で は 大 量 の 海 水 を 殺 菌 す る こ と を 目 的 に , 電 気 分 解 に よ る 殺 菌 法 に つ い て 検 討 し , 本 装 賦 の 漁 獲 か ら 産 地 市 場 に 葦 る 過 程 の 水 産 物 の 衛 生 管 理/丶 丶 丶 の 応 用 に つ い て 検 討 し た 。   ま ず , 電 極 問 に 海 水 を 通 す 流 水 式 海 水 電 解 殺 菌 装 厨 を 供 試 し , 魚 類 病 原 微 生 物 3% 食 塩 水 巾 に 懸 濁 し て 電 気 分 解 し た 場 合 の 殺 菌 ・ 不 活 化 効 果 を 検 討 し た 。 魚 類 病 原 細 菌 と し て ビ ブ リ オ 病 と せ っ そ う 病 の 原 因 菌 を , ウ イ ル ス と し て ウ イ ル ス 性 腹 水 症 と ラ ブ ド ウ ル ス 病 の 原 因 ウ イ ル ス を , 対 照 に 大 腸 菌 を 供 試 し て 殺 菌 お よ ぴ 不 活 化 効 果 を 検 討 し た 。 有 効 塩 素 濃 度O 07O14 mg/L1分聞 の処 理で 供試 細菌 99.9% 以 上 ,049058  mg/L1分 間の 処理 で供 試ウ イ ルス が99. 99%以 上不 活 化 さ れ た 。

  次 い で , 飼 育 用 水 お よ び 排 水 の 殺 菌 へ の 応 用 を 試 み , ま ず 飼 育 用 濾 過 海 水 を 電 気 分 解 し , 殺 菌 効 果 を 検 討 し た 。 有 効 塩 素 濃 度1.0 mg/L1分 間 処 理 し た 場 合 , 生 繭 数 が99. 99%以 上 減 少 し , ・ ト 分 な 殺 菌 効果 が得 られ た。 脱 塩素 処理 した 電解 海水

(6)

でマツ カワを飼 育したが 異常は見 られなかっ た。実用 規模の流 水式海水 電解殺菌 装厨を供試し,排水の‑n2.0rri3/hを電気分解し,残りの16.5 rr13/liの排水と混合 した場 合,残留 塩素濃度0.5 mg/L以上.1分 問の処理で99%以上の殺菌率が得られ た。こ の装賦は200 n13/hの飼育排 水を処理 できることから,一般的な規模の飼育 施 設 の 排 水 の 殺 1翁 に ・f. 分 な 能 丿 丿 を 有 し て い る と 考 え ら れ る 。   さ ら に ,水 槽 内に 也 極 部を 投人 するバッチ 武装l7tを流 水式と比 較した。 翁‖

i翁・ウ イルス共 に流水武 とほば州 濃度で殺菌 あるいは不活化され,A|d僉川濾過 海水を化気分解した場合も,0. 54 mg/L・1分剛の処FH99%以1 .の殺|翁卒を′ふ し,fid育 排水の場 合でも有 効塩索濃 度0.64 mg/L11剛処 刷!する ことによ り 99%以|..の殺|翁効栄が得られた。

  疾病の水`l':lLt染を防Iトする1.. で飼育器具類の消毒はm要な課題である。そこ で 電解 海 水 によ る 飼育 器 具 類の 消 毒効 果 を 検討 し た。 缶 解海 水をかけ 流しにし id育器 具類を30120分浸潰す ることに より一般生閑数は99.9%以t減少した。

  最後に ,漁獲の 際に使川 される海 水の殺1翁を11的に,まず道東の3011の細1 学 的調 奄 を ,次 い で道 内 の 漁港 の細繭学的 調杏をそfい,さら に海水電 解殺菌装 mに よ る漁 港 内海 水 の 殺菌 と 漁 獲物 の 衛生 管 理 への 応JTJに ついて 検討した 。ま ず道東の3wI川,標津側・伊茶イ.1.こ川・古多糠川の水質,生菌数および細菌叢に流 域によ る違いは 兄られな かったが ,各定点の 大腸菌群 数は検in限 界(18) 以ド

9200/100mlと 測定され た。大腸 菌数は約1/10の値であっ た。道東 の河川は 多 く の牧 場 の 問を 流 れて く る 。そ の ため 根 室 海峡 にiiた あ との大 腸菌の消 長につ い て検 討 し たと こ ろ, 海 水l11で の生 存 性 は5℃で3日 以 上7口以内 と比較的 長 かった 。次いで 標津漁港 をはじめ ,道内27漁港 を対象に 細菌学的 調杏を行 った。

調査し たほぼ令 ての港内 海水から 大腸繭群お よぴ大腸菌が検11‑11され,衛生管理 を 目指 す 上 で, 港 内海 水 を その ま ま船 体 を はじ め ,選 別 台, 岸壁等の 洗浄や,

漁 榊 ・ 保 冷 タ ン ク に 注 入 す る こ と は 好 ま し く なく , 改 善の 余 地が 示 さ れた 。   そ こ で ,海 水 電解 殺1翁 装 職によ る漁港内海 水の殺菌 と漁獲物 の衛生管 理への 応 用に つ い て, 秋 サケ 定 厨 網漁 を モデ ル に 検討 し た。 ま ずItタ ンクおよ び船倉 に 注人 し た 電解 海 水の 有 効 塩素 濃 度の 消 長 を検 討 した 。 氷投 入区では 未投入区 に 比べ て 塩 素の 残 留時 間 が 長く , またItタン ク に おい て は断熱 シートで 覆った 方 がよ り 長 く残 留 した 。 カ ラフ ト マス20尾の 投 入 によ り 有効塩 素濃度は 大幅に 減 少し 、 実 際の 漁 では 漁 獲 物の 投 入と 同 時 に検fu限界 以 下とな ることが 推察さ れ た 。 電 解 海 水 は 甲 板 な ら び に 漁 業 用 具 の 消 毒 に も 有 効 で あ っ た 。   こ の よ うに , 海水 電 解 殺菌 装鐙 を用いるこ とにより ,港内海 水巾の大 腸嶐i よび大 腸菌群に よる漁獲 物の汚染 を防ぐこと が lu来,海水電解殺菌装鍛のイニ シ ャル コ ス トお よ び処 理 能 カを 考 慮す る と ,海 水 殺菌 装 置の 有力候補 と考えら れ,t闇 .度管理 や他の衛 生管理対 策との相乗 効果で,漁獲物の衛生管理の向上に っながると考える。

参照

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