博 士 ( 工 学 ) 渡 辺 恵 司
学位論文題名
Study on Formation of Composite Oxide Films on Aluminum by Sol‑Gel Coating and Anodizing (ゾル・ゲルコーテイング/アノード酸化による 複 合 酸 化 物 皮 膜 の 形 成 に 関 す る 研 究 )
学位論 文内容の要旨
アルミ ニウム 電解コ ンデン サーは 、アルミ ニウム 上に形 成したアノード酸化皮膜を誘電体と して用 いる電 子デバ イスのー つであ り、小 型・高 容量・ 高耐電圧および自己修復性などの特徴 を有す ること から、 各種のエ レクト ロニク ス製品 に数多 く使用されている。パワーエレクトロ ニクス におけ るイン バーター 制御回 路用ば かりで なく、 次世代を担う電気自動車の制御用コン デンサ ーとし ても大 きな期待 が寄せ られて おり、 より一 層の大容量化および高耐電圧化が強く 望まれている。
電解コ ンデン サーの 高容量 化のた め、これ までに エッチ ング技術の改良による電極面積の増 大、酸 化皮膜 の結晶 化による 皮膜厚 さの減 少など が精力 的に研究されてきたが、アノード酸化 皮膜の 誘電率 £値の 増大に着 目して 行われ た研究 は殆ど 見当たらない。また高耐電圧用の皮膜 作製に は、希 薄な電 解質溶液 の使用 や、多 孔質ル ヾリヤ ー型アノード酸化皮膜二段化成法など が試み られて きたが 、これら の方法 では多 数の欠 陥を有 する皮膜を生成したり、アノード酸化 のさい の皮膜 の生成 電流効率 が低い などの 欠点が あり、 高耐電圧アノード酸化皮膜の新しい作 製法が望まれている。
本研究においては、ゾル・ゲルコーテイングにより2r02,Ta20,,Nb205,Ti02,Si02およびBaTI03 を被覆 したア ルミニ ウムを中 性水溶 液中で アノー ド酸化 することにより、複合アノード酸化物 皮膜の 形成を 試みる とともに 、複合 アノー ド酸化 皮膜の 成長機構および構造と誘電特性との関 連性について検討した。
本 論 文 は 全 9章 か ら 構 成 さ れ て お り 、 各 章 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る 。 第1章は 緒論で あり、 アルミ ニウム 電解コンデンサーの開発動向、アノード酸化皮膜およびゾ ル・ゲ ル法に 関するこれまでの研究を総括し、本研究の工学的意義と目的について述ぺている。
第2章に おいて は、ゾ ル・ゲ ルコー テイン グによル アルミ ニウム 上に非 晶質2r02を 被覆した 試料を 中性の 電解質 溶液中で アノー ド酸化することにより、Al‑Zr複合酸化物皮膜の形成を試み るとと もに、 その皮膜の構造と誘電的特性との関連について検討しており、以下のことを見出し ている 。すな わち、 ゾル・ゲ ルコー テイン グのさ いの温 度を573Kの比較的低温で行うと、コー テイン グ層は ポーラ スな非晶 質2r02層 となり 、その 厚さはコ ーテイング回数に比例する。Zr02 被覆試 料のア ノード酸化により、被覆層/金属界面にA卜Zr複合酸化物外層とA1203内層から成る 二層構 造の皮 膜が生成し、内層の厚さは時間とともに増大するが、外層の厚さは増加したのち逆 に減少 する。 また、このアノード酸化皮膜の並列電気等価容量は、未被覆のアルミニウム上に生
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成するアノ ード酸化皮膜のそれより最大20%大きい。皮膜の詳細な 構造解析から、アノード酸化 皮膜の成長 のさい、複合酸化物外層/AI203内層界面においてAl3゛イオンと2r+イオンとの位置交 換 が お こ り 、 複 合 酸 化 物 か らA1203へ の 変 質 が 起 こ る こ と を 明 ら か に し て い る 。 第3章 にお いて は 、複 合ア ノー ド酸 化 皮膜 の成 長お よ び誘 電的 特性 に対 す るZr02被 覆の さ い の加 熱処 理温 度 の影 響に ついて検討している 。その結果、ゾル・ゲルコ ーテイングにおける 加 熱処 理温 度を873K以 上の 高温 に する と被 覆層 は緻 密 な結 晶性Zr02とな り 、これを被覆した 試 料を アノ ード 酸 化す ると 、複 合 酸化 物外 層は ほと んど成長せず、A1203内層のみが成長する が 、A1203内層 は、 結晶 性 のア ルミ ナを 含む こ とを 見出している。その結 果、この場合には複 合酸化物か らA1203への変質が起こらず 、これは結晶性Zr2におけるZr・一〇の結合エネルギーが 大きいため であることを推察している。
第4章 にお いて は 、Zr02よ り誘 電率 の 大き いNk05を 被 覆し たア ルミ ニウ ム をア 丿ー ド酸 化 し たさ いの 複合 酸 化物 皮膜 の構 造 と誘 電的 特性 とに ついて述べている。す なわち、Nb205被覆 層 は 比 較 的 緻密 であ り、Nb205被 覆試 料 をア ノー ド酸 化 する と、Nb205被 覆層 の下 部 にA1203 内 層が 生成 する が 、時 間と とも に それ らの 層の 界面 が 不明 瞭に なり 、Alお よびNbに逆向きの 濃 度勾 配が 形成 さ れる こと を見出している。ま た、得られた複合酸化物皮 膜化成試料の並列等 価 電気容量は、未被 覆試料上に生成したアノー ド酸化皮膜のそれに比べ200Vにおいては240%、
400Vにおい ては150%大きいことを見出 している。
第5章に おい ては 、1、a205およびTi02をコー テイングしたのち、アノー ド酸化したさいの挙 動 につ いて 述べ て おり 、す なわち、両者におけ るアノード酸化皮膜の成長 挙動は極めて類似し ており、次 のことを見出している。すな わち、アノード酸化のさ, い皮膜の成長は、酸素ガスの 発 生を 伴う ため 、 アノ ード 酸化皮膜中には数多 くのボイドを含む。このガ ス発生は、アノード 酸化皮膜の 電子伝導性によることを推察 している。
第6章にお いては、強誘電性酸化物と して知られるチタン酸バリウ ム(Balri03)を被覆したア ル ミニ ウム のア ノ ード 酸化 挙動について述べて いる。すなわち、BaTi03被 覆アルミニウム被覆 試 料を アノ ード 酸 化す ると 、被覆層/金属界面 にAlIBaTi03複合酸化物外層 とA1203内層から成 る 二層 構造 の皮 膜 が生 成す るが、生成皮膜にお ける複合酸化物外層が薄く 、試料の並列等価電 気容量は未 被覆試料の場合とほぼ同じで あることを見出している。
第7章に おい ては 、Si02被覆 試料 のア ノー ド 酸化 挙動について述べてい る。すなわち、Si02 被 覆試料をアノード 酸化すると、Al・Si複合酸 化物外層とA1203内層が、被 覆層/金属界面に成 長 する が、 外層 の 成長 速度 が内層の生成速度に 比べて大きいことを見出す とともに、このアノ ー ド酸 化皮 膜は 、1.2X109V/m.の高いアノー ド電場を保持できることを 明らかにしている。
ま た、アノード酸化 のさい複合酸化物層中のSi.アニオンの内方移動によるA1203から複合酸化 物への変質 が起こることを明らかにして いる。
第8章においては 、Si02被覆アルミニウムの希 薄ホウ酸塩溶液中でのアノ ード酸化挙動につい て 述べている。すな わち、この場合にはブレー クダウン電圧が最大1,300Vまで上昇させること が可能であ り、欠陥のない緻密なアノード酸化皮膜が高生成電流効率で成長することを見出した。
第9章は, 本論文の総括である。
本論文は 、アルミニウム電解コンデン サーの高容量化・高耐電圧 化を目指し、ゾル・ゲルコー テイングと アノード酸化とを組み合わせ た新しい方法により、各種 のバルブ金属―アルミニウム 複合酸化物 皮膜の形成を試みて、その成 長機構および構造と誘電的 特性との関連性を明らかにし たものであ り、酸化物皮膜成長理論の構 築において大きく貢献する とともに、電解コンデンサー 製造工業の 発展に多大な寄与をもたらす ものである。
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学位 論文審査の要旨
主 査 教 授 高 橋 英 明 副 査 教 授 瀬 尾 眞 浩 副 査 教 授 成 田 敏 夫 副 査 教 授 大 塚 俊 明
副 査 助 教 授 平 井 伸 治 ( 室 蘭 工 業 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 )
学位論文題名
Stucly on Formation of Composite Oxide Films on Aluminum by Sol‑Gel Coating and Anodizing (ゾル・ゲルコーテイング/アノード酸化による 複 合 酸 化 物 皮 膜 の 形 成 に 関 す る 研 究 )
アルミニウム電解コンデン サーは、アルミニウム上に形 成したアノード酸化皮膜を 誘電体とし て 用いる電子デパイスであり 、小型高容量、高耐電圧および自己修復性などの特徴を有するため、
各 種のエレクト口ニクス製品 に数多く使用されている。パ ワーエレクトロニクスにお けるインバ 一 夕一制御回路用ばかりでな く、電気自動車の制御用コン デンサーとしても大きな期 待が奇せら れ て お り 、 よ り 一 層 の 大 容 量 化 お よ び 高 耐 電 圧 化 が 強 く 望 ま れ て い る 。 本論文は、ゾル・ゲルコー ティング法により各種バルプ金属酸化物を被覆したアルミニウムを、
中 性水溶液中でアノード酸化 することにより、複合アノー ド酸化物皮膜を形成し、ア ノード酸化 皮 膜の成長機構および構造と 誘電特性との関連性にっいて 検討するとともに、電解コ ンデンサー の 大 容 量 化 お よ び 高 耐 電 圧 化 の た め の 基 礎 技 術 開 発 を 目 指 し た も の で あ る 。 本 論 文 は 全 9章 か ら 構 成 さ れ て お り 、 各 章 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る 。 第1章は 緒 論で あり、これまでの研究を 総括するとともに、本研究 の工学的意義と目的にっい て 述べている。
第2章に お いて は、AトZr複 合酸 化物 皮 膜の形成を試み、1)ZJ:02被覆試料のアノード酸化に よ り 、被 覆層/金 属界 面にAl‑ Zr複合 酸化 物外層とAl203内層から成 る二層構造の皮膜が生成す る ことおよび2)複合アノード 酸化皮膜の並列電気等価容 量は、未被覆のアルミニウム上に生成す る アノード酸化皮膜のそれよ り最大20%大きいことを見出 している。また、アノード 酸化皮膜の 成 長 のさ い、 複合 酸化物外層/Al203内層 界面において、複合酸化物のAl203への変質が起こるこ
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とを明らかにしている。
第3章においては、複合アノード酸化皮膜の成長および誘電的特性に対する2r02被覆のさい の加熱処理温度の影響にっいて検討しており、加熱処理温度を873K以上の高温にすると、複合 酸化物外層はほとんど成長せず、結晶性のAl203内層のみが成長することを見出してしゝる。
第4章においては、Nb205を被覆したアルミニウムをアノード酸化したさいの複合酸化物皮膜 の構造と誘電的特性とにっいて調べており、,1) Nb205被覆試料をアノード酸化すると、Nb205被 覆層の下部にAl203内層が生成するが、時間とともにそれらの層の界面が不明瞭になること、お よび2)得られた複合酸化物皮膜化成試料の並列等価電気容量は、未被覆試料上に生成したアノ ード酸化皮膜のそれに比べ、50%大きいことを見出している。
第5章においては、′ra205およびTi02をコーティングしたのち、アノード酸化したさいの挙動 にっいて調べており、いずれの試料の場合にも、アノード酸化のさい、酸化皮膜の成長とともに 酸素ガスが発生し、生成したアノード酸化皮膜は数多くのポイドを含むことを見出している。
第6章においては、強誘電性酸化物であるチタン酸パリウムくBaTi03)を被覆したアルミニウム のアノード酸化挙動にっいて調べており、Al―BaT103複合酸化物外層とAl203内層から成る二層 構造の皮膜が生成するが、複合酸化物外層が薄く、試料の並列等価電気容量は未被覆試料の場合 とほぽ同じであることを見出している。
第7章においては、Si02被覆試料のアノート:酸化挙動にっいて調べており、Al‑Si複合酸化物 外層とAl203内層とからなるアノード酸化皮膜は、1.25xl09V/mの高いアノード電場を保持 できることを見出すとともに、アノード酸化のさい、複合酸化物層中のSi一アニオンの内方移動 に よ る Al203か ら 複 合 酸 化 物 へ の 変 質 が 起 こ る こ と を 明 ら か に し て い る 。 第8章においては、Si02被覆アルミニウムの希薄ホウ酸塩溶液中でのアノード酸化挙動にっい て調べており、1,300Vのプレークダウン電圧を有する欠陥のない緻密なアノード酸化皮膜の形 成に成功している。
第9章は,本論文の総括である。
これを要するに、著者は、アルミニウム電解コンデンサーの高容量化、高耐電圧化を目指し、
ゾルゲルコーティングとアノード酸化とを組み合わせた新しい方法により、各種のパルブ金属
/アルミニウム複合酸化物皮膜の形成を試みるとともに、その成長機構および構造と誘電的特 性との関連性にっいて有益な知見を得ており、応用電気化学の発展に貢献するところ大なるも のがある。
よって、著者は、北海道大学の博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。
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