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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 歯 学 ) 太 田 祥 一

     学位論文題名

    Expression of N‑cadherin and cadherin‑ll      ●   ●

    1nhumanper10donta11igament 丘broblaStS

(ヒト歯根膜線維芽細胞におけるN .cadherin およびcadherin .11 の発現)

学位論文内容の要旨

【緒言】

近年 、ヒ ト歯 根膜 線 維芽 細胞 (以 後、PDLF)は ギ ャッ プ結 合お よび デス モゾ ームを構 成する蛋白を発現することが明らかにされた。ギャップ結合はセカンドメッセンジャーの 通路 であ り、 組織 細 胞間 の固 定結 合で ある 接着 結合 およびデスモゾームとは異なる。

固定 結合 は、 心臓 ・ 皮膚 など 機械 的刺 激を 強く 受け る組織に多く分布しており、応カ に対する生体防御を担っている。

一 方 、 歯 根 膜 は 、 歯 根 膜 線 維 を 主 体 と す る 靱 帯 組 織 で あ り 、 介 在 す るPDLFは歯 根 膜 線 維 と 固 定 結 合 を 形成 して その 配向 に 貢献 する こと 、ま た細 胞同 士は 固定 結合 す るこ とで 生活 活性 を 維持 する こと が考 えら れる 。デ スモゾームに関する最近の我々の 研 究 に お い て 、PDLFはデ スモ ゾー ム蛋 白 のう ちデ スモ プラ キン を産 生す るも のの 、 細胞膜には発現しないこと、またデスモゾームカドヘリンを発現しないことが明らかにさ れ た 。 そ こ で 我 カ はPDLFが デ ス モ ゾ ー ム 以 外 の も う ー っ の 固 定 結 合 で あ る 接着 結 合に よっ て細 胞間 結 合を 形成 する 可能 性を 考え た。 接着結合の構成分子はクラシック カドヘリンであり、その細胞外領域に ある接着領域は隣接細胞の同種カドヘリンと結合 する。また細胞内領域はカテニンを介 して細胞骨格であるアクチンフィラメントに結合 し固定結合の安定化に貢献する。クラシックカドヘリンは、接着領域にヒスチジン・アラ ニン・バリンモチーフを含むタイプIカドヘリンと、これを含まないタイプuカドヘリンと に分けられる。一般的な発現が報告されているクラシックカドヘリンとして、タイプIカド ヘリンでは上皮細胞が発現するepithelial cadherin(以後、Eカドヘリン)、問葉系細 胞が発現するneural,cadherin(以後 、Nカドヘリン)、またタイプIIカドヘリンでは間 葉 系 細 胞 が 発 現 す る カド ヘリ ン11があ る 。細 胞間 にお ける 接着 結合 の存 在は 、こ れ らカドヘリンに対する免疫染色によっ て光学顕微鏡下で同定することができる。そこで 本 研 究 は 、PDLFが 細 胞間 接着 結合 を形 成 する 可能 性を 検討 する こと を目 的と して 、 PDLFに お け るEカ ド ヘ リ ン 、Nカ ド ヘ リ ン お よ び カ ド ヘ リ ン11の 発 現 を 検 索 した 。

744

(2)

【材料と方法】

1) PDLFの確立

矯正治療を理由として抜去された小臼歯(17−30才、nニニニ3)と、カリエスのため抜去さ れ た 第3大 臼 歯(2330才 、n=4)を 用 い た 。 歯 根 表 層 か ら 根 尖 部 と 歯 頸 部を 含ま ず に 歯 根 膜 組 織 を 採 取 し 、 血 清 お よ び 抗 生 物 質 を 添 加 し たDMEMで 培 養 し た。 得ら れ た細胞に対して、アルカリフオスファターゼに 対する酵素染色およびオステオネクチン に対する免疫染色を行い、アルカリフオスファ ターゼ活性とオステオネクチンの陽性細 胞 の み か ら な る ク ロ ー ン を 確 立 し 、PDLF( 第2一4継 代 細胞 、population doubling 24) と し た 。 ま た 、 ヒ ト 胎 児 肺 線 維 芽 細 胞(IMR‑90)と ヒ ト 正 常 表 皮 角 化 細 胞 (PHK16−Ob)を以下 の検索の対照として用いた。

2)免疫染色

PDLF、IMRー90およ びPHK16ーObに対 し て、 抗ヒ トEカド ヘリ ンモ ノ クロ ナール抗体、

抗ヒトNカドヘリンポリクロナール抗体、およぴ抗ヒトカドヘリン11モノクロナール抗体を 反 応 さ せ 、Alexa 488標 識2次 抗 体 で 可 視 化 し た 後 、 レ ー ザ ー 頭 微 鏡 で0.5m厚 の 光学切片にてカドヘリン発現を検索した。

3) RT一PCR

  PDLFIMR90お よ びPHK16Obか ら 全RNAを 抽 出 し た 。 全RNAに 対 し て、 すで に 塩基配列の報告されているプライマーを用いてEカドヘリン、Nカドヘリンならびにカド ヘリン11のmRNA発現を検索した。

4) Western blotting

  PDLFお よぴIMR90を 用い た。 培養 シャ ーレ で100%コンフルエントとなった培養細 胞 を ス ク レ イ パ ー で 採 取 し 、RIPA緩 衝 液 に 溶 解 し た 。 細 胞 溶 解 液 に つ い て SDSPAGEを 行 っ た 後 、 蛋 白 をPVDF膜 に 転 写 し、 免疫 染色 で使 用し たも のと 同じ 抗 カド ヘリ ン抗 体に よっ てPVDF膜 を処 理 した 。そ の後 、ペ ルオ キシ ダー ゼ標 識2次抗体 と酵素発色基質を用いて抗体反応産物を可視化 した。

【結果】

PDLF、 お よ びIMR90Eカ ド ヘ リ ン を 遺 伝 子 レ ベ ル で 発 現 し な か っ た 。PDLFN カドヘリンを核に強く発現し、細胞質においても発現 が見られた。しかし、隣接細胞と の 接 触 部位 には 発現 しな かっ た。 また 、PDLFは カド ヘリ ン11を 隣接 細胞 との 接触 部 位に 発現 した 。こ れに 対し てIMR―90はNカドヘリンとカド ヘリン11の両者を隣接細胞 と の 接 触部 位に 発現 した 。隣 接細 胞と の接 触部 位に おけ る カド ヘリ ン11の発 現は 、 PDLFで はIMR90よ り も 少 な か っ た。PDLFはNカ ドヘ リンmRNAをIMR―90より 弱く 、 ま た カ ド ヘ リ ン11 mRNAIMR90と同 程度 に発 現し た。 さら に、PDLFはNカ ドヘ リ ン蛋 白をIMR―90より 少 なく 、ま たカ ドヘリン11蛋白をIMR−90と同程度に発現した。

    −745―

(3)

なお、PHK16―ObはEカドヘリンを発現したものの、Nカドヘリンとカドヘリン11に関し てはmRNAを発現し、蛋白を発現しなかった。

【考察】

PDLFは隣接細胞との接触部位にカドヘリン11を発現したことから、PDLFがカドヘリ ン11によって細胞間接着結合を形成することが示唆された。PDLFは隣接細胞との接 触部位にNカドヘリンを発現しなかった。しかしながら対照としたIMR―90は隣接細胞 との接触部位にNカドヘリンとカドヘリン11の両者を発現したこと、また隣接細胞との 接触部位におけるカドヘリン11の発現はPDLFではIMR−90よりも少なかったことから、

歯根膜組織における主要な固定結合は細胞間接着結合ではなく、むしろ細胞一マトリ ックス間結合である可能性が考えられた。

本研究で はオステオネクチン産生細胞をPDLFとして用いた。一方、Nカドヘリンは カルシウムイオンが奪われることで立体構造が変わり、細胞膜から外れること、またオス テオネクチンはカルシウム結合型タンパクで、細胞外マトリックスに存在して抗接着分 子として機能することが知られている。本研究ではPDLFにおけるNカドヘリンの産生 はIMR―90より少なく、またNカドヘリンの細胞質内分布は観察されたものの、IMR−90 とは異なり、隣接細胞との接触部位における発現は見られなかった。これらのことから、

PDLFが産生す るオステオネクチンが細胞膜に船けるNカドヘリンの発現を抑制する 可能性が考えられた。

さらには、PDLFはIMR‑90とは異なり、Nカドヘリンを核に強く発現した。現在、骨芽 細胞やある種の腫瘍細胞において、Nカドヘリンがカテニン類を介して転写因子を活 性化することで、分化調節因子として種々の細胞内情報伝達に貢献する可能性が考 えられている。NカドヘリンはPDLFにおいても、細胞内情報伝達などの細胞接着以外 の機能を担うかもしれぬい。

746

(4)

学位論文審査の要旨

    

学位論文題名

    Expression of N‑cadherin and cadherin

11

    

●   ●

    1nhumanper10dontalligament

broblaStS

(ヒト歯根膜線維芽細胞におけるN .

cadherin

およびcadherin ・ll の発現)

  

審査は,吉田,脇田および川畸の各審査担当者が個別に,学位申請者に対して提出論 文 の 内 容 な ら び に そ れ に 関 連 す る 学 科 目 に つ い て 口 頭 試 問 に よ り 行 っ た .

  

歯 根膜線維芽 細胞

(PDLF)

は隣接する歯根膜線維芽細胞および歯根膜線維と結合す ることで生活活性を維持していると考えられている.近年,学位申請者らの研究グルー プ は,ヒト歯 根膜線維芽 細胞が

gap junction

くGj) を有すること,およびdesmosome

(Des)

構成蛋白の一部を発現することを明らかにした.しかし,Gj はセカンドヌッセン ジャーの通路であり,厳密な意味での細胞間結合装置ではない.またDes についても,

発 現する蛋白 は

Des

構成 蛋白の一部 のみである ので,

PDLF

が細胞間結合装置として

Des

を有して いる可能性 は少ない. そこで学位 申請者は, 本研究でPDLF が

adheres junction

(悶)によって結合する可能性を検討することにした.なお,対照としてヒト肺 線維芽細胞

(IMR‑90)

を用いた・

  

飼の構成分子は

classic cadherin

であり,その細胞外領域にある接着領域は隣接細胞 の同種

cadherin

と結 合する.そのため,細胞間におけるAj の存在は

cadherin

に対す る免疫染色を施すことによって光学顕微鏡下で同定することが可能である.そこで学位 申 請者 は ,培 養 ヒト

PDLF

を 用い ,

Aj

に関連する と考えられ ている

E

cadherin

N

ーcadherin ,ならび に

cadherm

−11 の 発現を免疫 染色,westemb10tting ,および 即ーPCR により検索した.

  

その結 果,学位申 請者は◎

PDLF

IMR‑90

の 両者ともN −

cadherin

とcadherin −11 の

mRNA

と蛋 白 の両 者 を発 現 するが,

E

―cadherin につい ては

mRNA

レベル でも発現 しないこと.◎

N

ーcadherin の発現は,

IMR‑90

では隣接細胞との接触部位で強く,細 胞質で弱く,核では全くみられないのに対し,PDLF では隣接細胞との接触部位ではみ

生 光

貴 重

崎 田

川 吉

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

られず,細胞質で弱く,核で強くみられること.◎一方で,cadherin ー11 の発現は,

IMR

90

,PDLF の両者とも隣接細胞との接触部位で強く,細胞質で弱く,核では全く みられないこと.@しかし,

PDLF

での隣接細胞との接触部位におけるcadherin −11 の 発 現 は ,

IMR‑90

に 比 べ る と 明 ら か に 弱 い こ と . ◎ ま た ,

PDLF

に お け る

N

cadherin mRNA

の 発 現 は

IMR‑90

よ り も 弱 く ,

cadherin

11 mRNA

の 発現 は

IMR‑90

と同程度であること,などを明らかにした.

  

こ れらの結果 から,学位申請者は,

PDLF

はcadherin ―

11

によってAj を形成してい る可能性があるが,対照として用いたIMR‑90 が隣接細胞との接触部位にN −cadherin とcadherin ー

11

の両者を発現したのに対し,

'PDLF

はcadherin ―

11

しか発現しなかっ たこと,ならびにその発現は

IMR‑90

よりも明らかに弱かったことを考えると,その結 合対象は,隣接細胞と言うよりはむしろ細胞間マトリックスである可能性が高いのでは ないかと述ぺている.また,

PDLF

の核における

N

cadherin

の強い発現は,細胞内情 報 伝 達 な ど の 機 能 に 関 与 し て い る の で は な い か と 推 測 し て い る .

これに対し,各審査担当者から

1.

2.

3.

4.

5.

6.

7.

咬合カに対する歯根膜線維芽細胞の関与 歯根膜線維芽細胞の特異性

細胞接着に関連する因子

cadherin

の機能

歯根膜線維芽細胞が核内にN −

cadherin

を発現することの意味

PHK16

Ob

に お け る

N‑cadherin

cadherin

11

mRNA

発現 の 意味 本 研 究 の 発 展 性 な ら び に 将 来 展 望

などに関する口頭試問が行われたが,いずれの質問に対しても明快な回答が得られたこ とから,学位申請者は本研究に直接関係する事項のみならず,関連分野全般に亘って広 い学識を有していると認められた.また,本研究は,歯根膜線維芽細胞の特異性を明ら かにするための一連の研究の中で重要な位置を占めるものであり,研究の将来性も十分 に高いと評価された.

そこで主査ならびに副査は,学位申請者は博士(歯学)の学位を授与されるにふさわ

しいと認めた.

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