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教師の授業力量形成を視点とした体育授業改善のための研究方法の検討 : 小学校のバスケットボールの実践を通して

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(1)学位論文. 教師の授業力量形成を視点とした体育授業改善のための研究方法の検討. 一小学校のバスケットボールの実践を通して一. 兵庫教育大学 大学院 学校教育研究科. 教科・領域教育専攻 生活・健康系コース. M95757H大西隆博:.

(2) 目 次. 1. 1.緒言. 1. 1.はじめに 2.. 教師の授業力量とは. 1. 3.. 教師の力量に関する先行研究. 2. 4.. 授業研究の目的. 4. 5.. 授業研究の方法. 5. 6.. 分析視点の批判. 9. 7.. 授業の見方・捉え方. 11. 8.. 授業評価の方法. 15. 16. 9.研究の目的. 18. II.研究の方法. 1.対象. 18. 2.期日. 18. 3.. 18. 調査・測定項目 1)授業計画段階(plaming). 18. 2)授業実施段階(process)・. 21. 3)授業評価段階(product)一. 23 23. 4.処理の手続き 1)授業計画段階(planning). 23. 2)授業実施段階(process)一. 23. 3)授業評価段階(product)・. 25. 26. 田.結果および考察 1.授業計画段階(plaming). 26. 1)子どもの実態について. 26. 2)授業計画段階での情報収集のための抽出児童の選出. 30. 3)単元目標設定. 31. 4)グルーピング. 32. 5>学級担任による体育授業における抽出児童の学習行動. 33. 6)抽出児童の決定. 34. 一1一.

(3) 7)単元計画案作成. 34. 8>教師の授業力量形成. 37. 2.授業実施段階(process). 37. 1)第1時間目. 37. 2)第2時問目. 43. 3.授業評価段階(product). 47. 1)子どもの実態における課題の達成について. 47. 2)設定した学習目標の達成について. 54. 4.. 授業評価方法の総括. 54. 5.. 教師の授業力量形成の総括. 55. IV.総括. 61. 注. 63. 文献. 64. 謝辞. 付表 資料. mii一.

(4) 1.緒言 1. はじめに. 授業改善は,教師にとって永遠の課題であり,絶えず追い求めていかなければならない.. この改善に教育現場では,数多くの教師が日々取り組んできたが,つまるところ,授業改 善の主体者である教師の力量如何によって,授業の様相は一変すると考えられる.この力 量を形成する上で授業研究は,貢献しうる知見を輩出し続けてきた.しかし,そこで導き 出された知見の多くは,研究者を産出する側,教師をその知見を取捨選択し取り入れる側 という二項対立的な図式の中で生み出されたものであり,教師の授業力量形成,つまり授 業改善に歪みを生じさせているきらいがある.例えば,授業分析における行動科学的アプ ローチによって得られた有効な知見は数知れない.しかし,その知見に教師の内面,すな わち教師の想いを求めたとしても,教師の熱い想いがこもった行動もそうでない行動も, 同じようにカウントされてしまい,そのうえ,対象となる子どもの個性も人格も隠したも. のとならざるを得ないという限界を持っている.一方,教師の想いを中心とした主観的分 析では,教師行動の効用である生徒行動や授業評価についての客観性に乏しく,本当に子 どもがそうなったのか,本当に子どもがそう評価しているのかについて疑ってかからざる を得ず,真に授業改善を果たしているとは言い難い.そこで,この問題を解決するために,. 教師の授業力量を形成する方法,授業改善のための研究方法に検討を加えていく必要があ ると考えた.. 2.教師の授業力量とは 吉崎196)は, 「教師は,授業において,設計者(デザイナー),実施者(アクター),. 評価者(イバリュエーター〉という3つの異なる役割を同時にもっています.つまり,授 業の設計者である教師が,実践者としての自分自身が含まれている授業を対象に,授業を 分析・評価し,その結果から授業を改善していかなければならないのです.(中略)教師 はこれらの役割を遂行するために,授業の諸側面において意思決定(自己決定)する自由 と責任を持っているのです.」と述べている.そして,「私達が授業を観察していて,授 業が躍動し,授業がまさに生き物のように感じられるのは,教師が不確実性の高い決定場 面で臨機応変な意思決定を行い,その時その場での子どもの思いがけない発言や行動を授 業の中に巧みに生かしているときです.このようなダイナミックで不確実性の高い状況下 での教師の意思決定は,発見的,創造的なものになる必要があります.授業が野球や囲碁. 一1一.

(5) に例えられたり,授業の持つアドリブ性が問題になるのは,まさにこのような授業場面で の教師の意思決定が授業の性質を左右するからです.別な表現をすれば,教師の専門的力 量が問われるのは,まさにこのような授業場面なのです.」と述べている.つまり,教師 の授業力量は,授業の各段階においてなされる意思決定をもとにして成り立っており,特 に授業実施段階における適切な意思決定が,教師の専門的力量を如実に表していると言え る.. また,柴田144)は,「教育は,いうまでもなく子どもに働きかける営みである.対象が. 見えなくては,この営みは成立しない.この『見える』ということが,教師の力量として は決定的な意義を持つという人さえいる.子どもの表情,視線,指先などのかすかな動き. の中に,子どもの反応を見て取り,そのなかに重要な事実を発見する力といってよいだろ う.」と述べている.授業場面における学習者の正確な把握ができるか否かが授業力量を 左右するということであろう.. 一口に授業力量といっても,授業の設計から評価までの幅広い視点から,授業場面にお ける学習者の正確な把握という狭い視点まである.ここでは,授業力量を広義に捉えなが らも,特に「授業場面における適切な意思決定ができる力量」をクローズアップさせたい と考えた.なぜならば,授業改善のための知識を生かしたり,授業計画を変更したりする. のは,教師自身以外に頼るもののない授業場面における力量によるところが大きいからで ある.. 3.教師の力量に関する先行研究 秋田2)によれば,教師研究は,1960年代から1970年代後半頃までは,行動科学的アプロー. チによる研究が主流であったのが,1970年代後半から,認知心理学台頭の影響を受け,教 師の力量を,知識や意思決定過程の問題として捉え解明してきているという.直観や“わ ざ”という語により漠然と表現されてきていた熟練教師の行動を教授スキルとして取り出 していたのでは,その背景にある認識や判断が明らかにならないという反省からである.. そこで,意思決定研究,教師の知識研究,知識の形成研究に着目し,整理した上で,研究 方法に関し,再生刺激法,VTR中断法,発話思考法などが有効な方法であることを導き出 した.しかし,それらの方法の適用は,事例に頼らざるを得ないことや,わが国での研究 の必要性の急務を課題としてあげている.. 佐藤B2)らは, 「教師の教育活動は,授業場面で生起する実践的な諸問題の表象と解決. 一2一.

(6) の思考を基礎とする一連の選択と判断の活動である.」として,熟練教師の保有している 実践的知識の特質とそれを基礎として展開される実践的な思考様式の性格の解明を試みて いる.教師の実践的思考に関する研究は,①教師の「実践的知識」の性格に関する研究,. ②教師の知識領域と構造に関する研究,③教師の意思決定に関する研究,④教師の熟達研 究,⑤教師の反省的思考に関する研究の五つの問題領域を形成してきているとし,それぞ れについて整理している.①については,教師の専門領域に,行動科学を基礎とした「理 論的知識」 (theoretical knowledge)とは異なる「実践的知識」 (practical㎞owledge)と呼. ばれる知識領域が存在する(Schwab),②については,「教師の知識」の研究は,「授業 を想定した教材の知識」 (pedagogical content㎞owledge)の具体を解明する研究を発展さ せ(Wilson,S. et・al),認知心理学の提示した諸命題で教師の思考を説明する研究を促進し. (Leinhardt&Greeno),さらには,それらを総合して教師の活用している「授業」と「学. 習」の概念の認知構造を解明する段階にまで接近している(Lampert),③については, 教師が個々の場面で行った思考活動を授業後に教師に語らせる内観法で明らかにし,それ. ぞれの意思決定における情報処理と推論の活動を一般化する研究が推進されてきた (Shavelson&Stern, Clark&Peterson,吉崎),④については,熟練教師は,初任教師より. も豊富なレパートリーに習熟し,それらを構造化して保有していること,問題解決の方略 とスクリプトが自動化しルーティン化していることなどを明らかにしてきた(Berliner, Leinhardt, B orko&Livingston),⑤については,現代の専門職概念が「科学的技術の合理 的適用」 (technical rationality)の原理から「活動過程での省察」 (reHection in action)の原. 理への捉え直しを迫られている(Schbn)を挙げ,教師の知識領域の複合性と実践的思考 の重層性を反映して,多岐に分化して進展しているとまとめている.. それらの研究の限界や課題から,教師の専門領域で機能している「実践的思考様式」の 特徴的な性格を明らかにすべく研究に取り組み,熟練教師の実践的思考様式を,①実践過 程における即興的思考,②不確定な状況への敏感で主体的な関与と問題表象への熟考的な 態度,③実践問題の表象と解決における多元的な視点の統合,④実践場面に生起する問題 事象相互の関連をその場面に即して構成する文脈化された思考,⑤授業展開の固有性に即 して不断に問題表象を再構成する思考の方略の五つの性格で特徴づけている.そして,① 実践経験を基礎として既知の事柄の意味を深めたり再解釈する熟考的な知識,②教材の特 性,子どもの認知の特性,教室の文脈の特性に規定された事例知識,③問題解決に向けて 多領域の理論的知識が活用される総合的知識,④暗黙知や無意識の信念が重要な魚蝋をは. 一3一.

(7) たす経験的な知識,⑤個人的な経験を基礎とした個性的な知識の五つの「実践的知識」の 性格の特徴を裏付けているだけでなく,熟練教師には「実践的知識」が豊かに存在し,彼 らに特有の「実践的思考様式」に支えられて機能していることを明らかにしている.さら に,教師の熟達過程が,「実践的思考様式」の形成を軸として展開していること,および,. 「実践的思考様式」にもとづいて獲得された「実践的知識」の網の目が,教師の専門的力 量の内実を形づくっていることを予見させるものであると述べている.これまでの熟達は,. 既存の技術や理論の合理的な適用への習熟と狭義に定義されてきたが,表面に表れる行動 に限定せず,行動を支える思考にまで範囲を広げないと,教師の熟達は語れない様相を呈 してきている.. このような現実に対し,授業改善のための理論はそれのみにとどまらず,授業力量の形 成のためにも積極的に貢献すべき状態にまで進んできている.. 4.授業研究の目的 授業研究の目的については,広義・狭義でその捉え方は異なり,解釈の仕方によっては,. 授業に関するものであればすべて「授業研究」に含まれるものもある.そこで,それぞれ に定義された中から共通する授業研究の目的について言及する. 大友11 1)は, 「一般に,学校教育における授業を対象とする研究.授業の改善,教師の 専門的力量の形成,授業についての学問的研究を目的として行われる.」と述べ,東3)は,. 「現実に学校で行なわれている授業について,その方法や技術の改善を目指してなされる 実証的研究のこと.」と定義している. また,杉山ら149)は, 「学校における授業を効果的に行うために,授業を一定の考え方. にもとづいて計画し,実際の授業を行い,それを観察し,記録し,その資料を分析して授 業改善の方策を明らかにする研究.」とし,吉本194)は,「主として学校教育における現 実の授業を研究対象とし,より効果的で質の高い授業の創造と発展のために,授業の構造,. 機能およびその成立条件,さらに,それらを貫く合法則性を解明し, 「授業の科学」の樹. 立を志向する実証的・実験的研究であり,また,教師の力量を高めようとする取り組みで ある.」と定義づけている.. 大友の定義は,授業研究を広義に捉えたものであり,一般に授業を対象とする研究とし ている.その目的を「授業の改善」 「教師の専門的力量の形成」 「授業についての学問的. 研究」と,並列にそれぞれを独立した授業研究の目的としているのである.東や杉山らは,. 一4一.

(8) より狭義に捉え,授業改善を目的とし,特に杉山らは,その方法まで具体的に示し,実践 のための理論の産出を目的としている.吉本は,授業研究の目的を授業の改善とし,その ための内容として「授業の科学化」を目指し,授業改善のために教師の力量を高めようと. する取り組みと捉えている.これらの定義の根底には,授業研究が授業改善を第一義の目 的として行われる研究であると捉えることができる.すなわち,授業の構造,機能および その成立条件,それらを貫く合法則性の解明(授業についての学問的研究),教師の専門 的力量の形成も授業研究の範疇には入ってくるが,目的の根底に流れるのは,あくまでも. 授業改善なのである.. ’. 5.授業研究の方法 高橋158)は,体育科教育学の研究領域を図. 1のような構造で表し,①体育科教育の実. 体育科教 育の実践 的研究. 践授業そのものを対象にして行われる「実. (授業研究). 教授一学習過程の. ●記述・分析的研究. 実践を対象として,. ●プロセスープロダクト研究. 事実を記述・分析 したり,仮説の検 証を行なったりす. ●アクション・リサーチ ●多次元的方法による研究. 骭、究. 践的研究」 (授業研究),②体育科教育の. 仮説の提示. 仮説の検証. 方法原理を体系的に明らかにする理論的研 究(授業づくり研究),③体育科教育の理 論と実践のための基礎となり,条件となる. 体育科教 育の実践 のための 理論的研. ●カリキュラム論 ●方法論 ●評価論. 示. ら構成されるものと捉えた.そして,この. し,より実践との融合を図っている捉え方. ●内容論(教材論〉. 究. 基礎的知識を提供する基礎的研究の3層か. 授業研究の目的や内容をさらに詳細に分類. ●体育科の本質論 ●目的・目標論. 教授一学習過程の 計画のための研究. 体育科教 育の基礎 的研究. ェ. ●学習環境論. ↓事実分 ●教師論 ●学習者論(発達論〉. 教授一学習過程の 前提条件に関かる 基礎的研究. ●体育科教育史 ●比較体育科教育学. もしている. 「授業づくり研究は,体育科. 「3篇霧綴言髄1 体育の諸科学的研究. 教育の実践に対して直接方向を与える理念. 体育科教育学のメ タ理論的研究. や方法原理(目的一内容一方法)を理論的・. 解釈学的に究明しようとするものである.. 一. 一. 一. 一. 一. 一. 一. 一. 一. 1. 一. ●体育科教育学の 科学理論・方法論. 図1体育科教育学の研究領域の層(高橋,1994). そこでは現代社会の体育的課題分析,教育 学的知識,体育科教育の基礎科学的知識さらに実践によって得られた経験や理解を総合・. 統合して理論化が図られる.しかし,ここで生み出された理論はあくまでも体育科教育の 仮説であり,批判され,修正されなければならない.」と述べている.しかも,この「授 業づくり研究」と「授業研究」を区別し, 「授業研究」を「体育科教育の実践的研究(授. 一5一.

(9) 業研究)」とし,「『授業分析』という言葉で表現されることが多い」と述べている.こ の「授業研究」,すなわち「授業分析」では,授業を量化するための組織的観察と称され るALT−PE観察法をはじめとした調査・測定法が用いられ,授業の事実が記述・分析・検 証される.そして,検証された仮説は,新たな仮説として理論的研究で構築され(授業づ くり研究),実践的研究(授業研究)に提示されるという研究ルーチンを確立している. 、したがって,この「授業づくり研究」は狭義に捉えられ,方法論的アプロ・一一一チによる検証. を「授業研究」とし,理論的研究と大別している.. 小林一久S)は,『体育の授業づくり論』を著し,その中で「授業をつくる」と記してい. る.「授業をつくる」ということに関して,「現実の教育諸条件に即して行われる,教師 一人ひとりの創造的な仕事である」,「『つくる』という行為が自己目的なのではなく,. それに答えて子どもがどう学ぶのかが問題なのである」と述べている.すなわち,現実の 子どもをはじめとする教育諸条件を考えたとき,授業は“真似るもの”ではなく“つくる もの”であるということである.さらに,授業研究において「考える筋道の一般的な原則 を明らかにし,授業をつくるという創造的な仕事がよりょく遂行できるより確かな条件を 解明」し,それが「教師の力量のバックボーン」となるようにしていかなければならない と述べている.授業をつくる主体である教師が,特定の条件や場面で適用できる理論を生 み出すのではなく,教師の力量形成に貢献しうる理論を構築せねばならないと考えている のである.そして「実践の場で検証されない理論は,それが授業に関するものである限り,. 無意味だと言っても過言ではない」と述べているように,「授業づくり研究」を現場の授 業づくりに貢献しうる理論的研究と捉えている.. また,民間の教育研究団体の中にも「授業づくり研究」を読み取ることができる実践が 存在する.出原32)は,運動文化を継承するために体育実践に取り組み,短距離走の実践例. として「田植えライン」実践を創出している.この実践は,ストライドの変化とスピード 曲線から走の技術構造の全体を理解させること,つまり技術の科学的認識を目標にし,た だ単に短距離走で速く走らせることではなく,速く走るためのメカニズムを科学的に理解 させ,その知識に裏付けられた運動技術の獲得を目指しているのである.この基底には,. 体育科の教科としての成立根拠の模索があり,換言すれば,授業で学ぶべき内容設定のた めの目標を言及していると考えられる.その目標の変遷を見てみると,丹下保夫が歴史的・. 社会的文化としての運動文化をすべての子どもが主体的に学習し,継承するだけでなく,. 批判的摂取と新しい文化創造(国民文化運動)の担い手に育てることを「体育の本質」と. 一6一.

(10) 主張したことに始まり,前川峯雄・中村敏雄の文化領域の整理,中村敏雄の「運動文化の 継承・発展に関する科学を教える」,草深直臣の「スポーツの権利主体にふさわしく獲得 されるべき学力」と発展していった.そして現在,①「スポーツ文化の発展」論,②競争・ 勝敗,③技能,技術,戦略,戦術へと深まっていっている31).「体育は何を教える教科な のか」, 「できるだけでよいのか,うまくするだけでよいのか」という問いに対しての答 を求め続け,ここに至ったのである.すなわち,「何のために」「何を」「いつ」「何で」. 「どのように」教えるのかを理論的に追及することで授業をつくりあげようとしているの である.. 「授業づくり」について,藤岡信勝lo)は「授業づくりにおいて,教師は,まずレベルの. 異なる四つの問題領域(教育内容・教材・教授行為・学習者〉を自覚的に区別すべきであ る.その上で,これらの問題領域のそれぞれについて,理論的・実践的に蓄積された知見 を学ぶ.新たに構想を練る.多様な発想をつき合わせ,その中から自分独自のスタイルを. つくり出す.各レベルがどのように関連しあうかの見通しを立て実践する.このような創 造的な過程が授業づくりの仕事なのである.この四つのレベルは,授業自体に内在する要 素であると同時に,授業づくりにおいて授業者が意識すべき問題領域でもある.従ってま た,この四つのレベルとその相互関係が授業研究の対象にもなる.」と述べ,授業づくり. 研究の方法を示唆している.すなわち,授業に関わる知見を寄せ集めるだけではなく,集 めた知見のつながりを考えることの重要性を示している. よい授業の創造のために小林篤ng)は「原理(理論〉と実践(方法)が表裏一体のものに. なっていないといけない」と述べ,理論と実践の乖離を否定し,授業研究を進展させてき た. 「『実践のわかる研究者』と『研究のわかる実践者』との相互協力によって実践の質. も高まり,研究者も生かされる」と述べているように,よい授業の創造を目指し,研究者 と実践者相互に授業研究の意義を説き,自らも参画してきたのである.「よい授業を生み 出すための研究の結果というものは仮説であって,それが正しいかどうかは,それ・を実際. に取り入れてみた授業を分析することによって検証される(授業分析)」とし,「授業分 析は授業研究に欠くことのできない方法」として,授業の客観的な記録と子どもの目を通 した記述の両面から授業を分析した.この研究の基底には,学習者の体育に対する好意的 な態度を育てることを第一に考え,その心情を量的データとして把握することにより,よ りよい授業を創造しようとし,その取り組みは,日本における体育授業研究の発展に大き く貢献した.また,教育理念の明確な実践,つまり土谷実践を取り上げ,「子どもの自律. 一7一.

(11) 的学習を育てる」という教育目標に対し,授業を通して如何に到達させるかを,授業過程 における数多くの教師の発言や子どもの感想文の分析から導き出そうとしている.これは,. 授業分析という方法論的アプローチと教師のねらい,すなわち目標論的・内容論的アプロー チの統合を示唆するものではないかと考える.. 「授業研究」は,授業改善を目指し,授業改善の方法や技術などの知見を生み出すこと を目的としてきた.それらの知見を生み出すためには,一定の視点からのアプローチを必 要とするため,授業研究の方法は多岐に分化していった.そういった流れの中でも,「授 業改善」という授業研究の目的は基底にあり続け,生み出された知見を適用させる方向で 「授業づくり研究」が展開されていったのである.. 海野187)は,教育課程研究の研究課題と学習過程研究の研究課題は,相互補完的な関係 にあり,一画面からだけのアプローチでは「よい授業の創造」という目的を達成すること ができないという認識のもと,「①何らかの体育観(当然,これには教育観・スポーツ観・. 子ども観なども含まれる〉を基盤にもって,②その体育観に根ざした授業の目標一内容 一方法一評価計画を構成し(=研究仮説),③実験的実践による検証・修正を繰り返すこ とを通じて,④よい授業の典型的事例(=典型的実践)を創出し,⑤その事実に即して,. よい授業の成立条件やそれらを貫く合法則性を探求していく研究法」というように「授業 づくり研究」を捉えている.以上のような過程を通じて取り組まれる「授業づくり研究」. は,授業実践(=個性的な実践)が研究対象となるため,価値志向性は高くならざるを得 ず,鼻高研究(事例的研究)にこだわるとしている.この捉えは,授業づくり研究を推し 進めていく上で,目標・内容論的及び方法論的なアプローチを統合するモデルとして参考 になる.しかし,海野が前述したように,授業が価値志向性の高いものであるとすると,. 授業づくり研究を推し進めるとき,「よい授業」の捉えも価値志向性が高くならざるを得 ず,「よい授業」の像を示すことができなくなる.. そこで,個例として「よい授業」の見解を示せば,まず「誰にとってよい授業なのか」. である.教育の目標が「人格の形成」ということから,子どもにとって「よい授業」でな くてはならず,しかも対象とするすべての子どもにとってである.しかし,子ども達は一. 人一人違った個性を持つ主体として存在しているため,子ども達すべてが満足できる「よ い授業」をつくるためには,教師が直接的に相互作用をもつだけでは困難である.そこで,. 何人かのターゲットを中心に,その子どもたちへの直接的な関わりを通して,間接的に他 の子ども達にもねらった目標を達成させようと授業を仕組むのである.当然,教科や単元. 一8一.

(12) が変わればターゲットも変わるが,絶えず教育全般を通して子どもの成長を願うのである.. 次に,「どうよいのか」である.体育には固有の目標があるが,価値志向性が高いから といって,体育の目標を無視することはできない.目標達成は,当然の条件である.その うえで小林reng)の言うような,高田四原則(「動く楽しさ」「集う楽しさ」「解る楽しさ」. 「伸びる楽しさ」)が体験でき,「体育に対する好意的な態度の育成」ができれば「よい 授業」と言うことができよう.. 6.分析視点の批判 佐Pt。 「z9)は「教室を『ブラック・ボックス』とみなして,授業過程の諸要素の機能の因. 果関係を定量的方法で探求し,他方で,教室の観察にもとづき質的研究で授業過程の理論 的解釈を求める場合も,教室は『ガラス箱』であり,あたかも作業場をガラス窓を通して 見るように,教室と子どもの諸活動を記録し授業過程の技術の合理的な理解を追求してき た.最近三十年間, 『授業の科学』と『教授学』の建設を標榜する一連の研究者たちは, このような方法で,授業を完結した固有の対象領域に設定し, 『授業科学』を教育学研究. の一領域に押し上げて,多数の研究論文と専門的な研究者を送りだしてきた.こうして,. 多数の『授業研究者』が形成されたが,彼らは,どこまでも『授業研究』を専門とする 『学問的』研究者であり,教室で自ら実践を試みることもなかったために,『ブラック・ ボックス』を開けることも『ガラス箱』の中に踏みこむこともなく,したがって, 『パン. ドラの箱』を開くこともなかった.あるいは,そこに『パンドラの箱』を見た人もいただ. ろうが,何よりも『ブラック・ボックス』や『ガラス箱』の機構の合理的な解明が先決だ と考えられてきた.しかし,こうして形成された『授業研究』は,教室を複雑な社会的文 化的文脈から切り離し,『授業研究栄えて授業滅ぶ』という皮肉な現象を引き起こしては こなかっただろうか.さらには,『授業研究』の普及は,教師たちの視野から『パンドラ. の箱』を開く鍵を見失わせる結果をもたらしはしなかっただろうか。」と,痛烈な批判を している.. 海野の言葉を借りて換言すれば, 「近年の授業研究は,行動科学的アプローチを中心と. したカテゴリー分析・数量化の試みが進み,その成果として『授業の基礎的条件』に関す る有効な知見や授業目標に照らした限定的な範囲での有効な教授技術を明らかにしてきた.. また,仮説を検証する道具としての精度(客観性,再現性)を飛躍的に高めることにも成 功した.けれども,その反面で,授業研究は客観性・科学性(=価値中立性)を志向する. 一9一.

(13) あまり,そこでの研究視点や仮説の限定化,細分化が進行し,その結果,研究対象として の生きた授業のトータルな理解からますます遠ざかる傾向を生み出してきている.」とい うことになりはしないだろうか.佐藤は,授業研究そのものを批判しているのではなく, その分析視点を批判し,授業研究の進む将来を危惧しているのである.. 体育授業研究の立場でも,反量的に自覚されている.出原ZZ)は「私は,これらの方法 (数量化による授業の客観的把握と評価)では授業を『解釈する』ことはできるが『変革. する』ことは難しいと考えている.実践者である教師自身が授業改革課題を発見し,そし て実際に新しい授業づくりに取り組むという授業研究本来のねらいとは外れていくことが 多いのである.このように考える根拠はいくつか上げられるが,その第一は,データ分析 による授業の長所や短所の発見や改革課題の析出から得られた結論が,部分改良の提示に 終始して授業の丸ごとを作り替えるという巨視的視点を見失いがちであるということであ る.第二にはこのような統計的手法を駆使したデータ分析による授業研究は,そこで得ら れたデータがひとり歩きし,その実践に込めた実践者の想いと乖離することである.授業 研究の科学化はきわめて重要な課題であるが,それは決してデータ化,統計化のことでは ない.コンピューター処理することが科学的なのではない.」と述べている.授業研究に おける「授業まるごとの視点」と「実践者の想い」の欠落は,けっして「授業の科学化」 にはつながらないという授業研究の目的に向けられた指摘である.. 佐藤ng)は, 「多数の『授業研究者』が形成された」と皮肉ったが,授業研究者だけに. 向けられた批判ではない.教師にも当てはまるところがある.というのは,自分の実践を あまりにも第三者的に分析し,教師としての思いが伝わってこないような実践記録に出く わすことがあるからである.小林篤49)が,「『思いは熱く,分析はクールに』であって,. 客観的資料,客観的分析のなかに,現職教員としての熱い思いが書き込まれてこそ,現職 教員の研究としての意義と独自性があるのではないだろうか.」と述べているように,授 業研究の主体に向けられた反省的自覚である.. 客観的授業分析の第一人者である高橋b8)も, 「授業の目的・内容・方法の論理が学習. 指導過程にどのように現れ,それが授業成果にどのように反映したかということに関して は,現在適用されている組織的観察によっては明らかにできる部分は少ない.これらにつ いてはt:研究の目的に照らして有効な方法を随意に適用する必要があり,そこで得たデー タや観察した印象にもとづいて総合的に解釈・評価することが求められるであろう.」と. 述べているように,組織的観察のみの授業分析だけでは,授業は見えないということであ. 一10一.

(14) る.これは,授業研究の方法に向けられた反省的自覚である.. 以上は,研究の主体についての批判・反省であるが,研究の客体からの批判を見落とす ことはできない.研究の客体(子ども)は,直接批判をしているわけではないが,研究の 主体側からのみ捉えた授業は,「まるごと」捉えたということになっているのだろうか.. 行動科学的アプローチを中心とした統計的手法は,割合,平均,標準偏差といったような 概念を用いて結果を評価する.ここでは,「できなかった子」 「楽しくなかった子」等,. 子ども一人ひとりの想いが軽視されても仕方のないような状況が存在する.研究の客体か らは,「一人ひとりの想いを大切に見つめてほしい」という声が聞こえてくる.. これらを総合すると,授業の一面だけを切り取って論議することの危険さを読み取るこ とができよう.さらに,吉田188)の「授業は人間と人間の間の営みである」,稲垣,佐藤割. の「授業は,生身の人間が生身の身体を投入して生身の言葉を交換し合っていとなまれて いる」,中森88)の「授業は生き物」という捉えからも,過剰な科学主義は避けられるべき. である.しかしながら,佐伯114)が「過剰なロマン主義は,授業の神聖化によって教師を. 聖職者に祭り上げ(これは相互関係的である),授業研究を魔術的秘技の性格を持つ職人 芸・技能の探求にする危険がある.また過剰な科学主義は,授業の工場化によって教師を シス’. eム管理者に倭小化し(これも相互関係的である),授業研究を工程の合理化の研究. にする危険性を持っている.授業の存在論を棚上げする授業研究は,必然的に授業を孤立 した閉鎖システムとしてとらえることになるからである.」と述べているように,客観性 をゆるがすような過剰な人間主義も避けられるべきである.. これらのことを念頭においたとき,授業づくり研究では,授業をまるごと捉えることが 必要であることと,偏った方法のみでアプローチすることを避けることが重要になってく る.. 7.授業の見方・捉え方 授業分析批判から読み取れる巨視的な授業づくり研究の仮説は,授業をまるごと分析す ることと,教師の思いを反映させることと捉えることができる.しかし,この仮説を具体 化していく上で,授業を構造的に捉える必要がある.. 水越刀)は,授業を構成する要素として,①授業目標,②学習指導法,③学習活動,④教. 授組織,⑤学習集団,⑥学習形態,⑦教育メディア,⑧学習時間,⑨スペース,⑩評価の 10の要素と,83のサブ要素をあげている.また,坂元「z5)は,授業設計のための構成要素. 一11一.

(15) として,①目標,②内容,③教材,④展開,⑤教授媒体,⑥指導法,⑦指導形態,⑧教授 活動,⑨学習者の特性,⑩評価を取り上げている.これらのように,授業を捉える上で,. 把握すべき要素が数多くあることがわかる.しかも,これらの要素を考慮し,授業づくり (設計一実施一評価)をする教師の仕事の複雑さを理解することも容易である.しかし,. 授業をまるごと捉えることは必要であり,先に仮説した授業づくり研究を具体的にするた めにも,授業構造の把握は避けられない問題である.. そこで,先にあげた複数の授業の構成要素は,一般にどのように構造化されているのだ ろうか.まず授業を実体的に捉えた教師,子ども,教材の三角形モデルがあげられる52).. 第二は,指導的側面からの,目標,内容,方法,評価による論理的構造である.どんな授 業にも,目標,内容,方法,評価はあり,よい授業づくりのためにはこれらの一貫性が必. 要である.第三の視点は,時間的枠組みから見た,授業計画(planning),授業過程 (process),授業成果(product)である.例えば,長期レベルで見たとき,年間計画,年. 間での実践,年間の成果という見方ができるし,1単元で見たとき,単元計画,単元を通 しての実践,単元の成果という見方ができる.短期レベル(1時間)で見たとき,授業計 画,授業過程,授業成果という見方ができるし,1行動単位で見たとき,意思決定に基づ く教授意図,教師行動,学習行動による教授成果という見方もできる.授業の構造は,こ. れら3つの視点が幾重にも折り重なった複雑な構造をなしており,さらに構成する要素と して水越や坂元があげたような単一な要素も錯綜し,全体構造を捉えるには,何らかの基 準なしには困難極まりないものである.. 興業は生き物である」の言葉で表現されるように,大いに生物的な性格を持っている. 教師の一言が,その後の雰囲気をダメにしてしまうこともあれば,盛り上げることもある.. 非常にデリケートな,まさしく「生き物」と言えるものである.その「生き物」であり,. 複雑な構造をなしている授業の全体を把握する一つの理論に「システム理論」がある.ベ ルタランフィ45)は, 「有機的組織化,全体制,目的論,制御,自己管理,差異化といった. 概念や伝統的な物理学ではのけ者にされていた概念は,生物学,行動科学,社会科学のい たるところに飛び出してくるし,実際,生命体や社会集団の研究になくてはならぬものな のである.」と述べている.. そこで,システム理論を踏襲して授業構造の把握をすれば,その構造はどのように捉え られるのだろうか.. 1)システムとは. 一12一.

(16) 大村109)の定義によれば,システムとは,「多くの要素が互いに関連をもちながら,全. 体として共通の目的を達成しようとしている集合体」と捉えられる.また,クニール・ナ セヒ45)は,「互いにある一定の関係にある要素をもつ一つの全体」と表している.この定. 義にあわせて授業を捉えるなら,例えば坂元のあげた10の要素が互いに関連をもつ全体と 捉えることができ,授業を一つの「システム」と見なすことは間違いではないだろう.し かも,坂元や水越らは,教育工学の領域において授業研究を「授業システム研究」として 展開してきた事実もあり,教育学とシステム理論は親密な関係にあると言えるだろう.. 2)システムの階層性 システムは,要素のそれぞれが共通の目的を達成するために機能する全体である.それ ぞれの要素は,サブシステムやサブ・サブシステムとして位置づけられ,全体として階層 構造をなしている.授業は,このような単純な階層構造ではなく,タテにもヨコにもつな がつた複雑な階層構造をなしていると考える.例えば,授業計画の段階で「授業目標を設 定する」ならば,子どもの実態はどうなのか,教材の持つ特性は何なのか,教師の考えは どうなのか,施設・設備はどうなのか等,いくつかのサブシステムを考える必要がある. そして,その中で教師の考えを規定する要因として,性格,性,運動経験,年齢等,いく. つかのサブ・サブシステムを考えなければならない.また,施設・設備といったようなこ とも教師の考えを規定するのに影響を与えているというように,非常に複雑なのである. 3)インプット(入力)とアウトプット(出力). システムを構成する要素は,インプラトに対してアウトプットをするという機能を持っ ている.教師という要素は,あらゆる情報(授業目標・生徒行動・授業評価等)をインプッ. トし,ある目的を達成するために教師行動をアウトプットする.生徒という要素は,教師. 行動,教材,他の生徒の行動等の情報をインプットし,学習行動をアウトプットする.し かし,これらの要素は人間であるので,同じインプットに対していつでも同じアウトプッ トをするとは限らない.アウトプットは,システムの目的や要素の個人特性に規定される.. また,一つの情報が複数の要素に対してインプットとなったり,特定の要素にだけインプッ トになったりする.. 4)要素の結びつき 授業を構成する要素は,互いに複雑かつ有機的に連関していると述べてきた.例えば,. 目標一内容一方法一評価の連関がそうである.しかし,これらの要素は互いに一方向で連 関しているのではない.それぞれの要素には,子ども,教師,教材が結びついているし,. 一13一.

(17) これらにも水越や坂元の言う要素が結びついている. 5)複雑さの縮減(ブラックボックス). 授業全体を一つのシステムとして見た場合,階層性,インプットとアウトプット,要素 の結びつきと,授業システムの構造は,複雑極まりない.大村109)は, 「システムを見る. とき,いつも全体として考えるため,一つ一つの要素については必要以上に知る必要はな い」と述べている.要素の中の情報の流れを隠し,ブラックボックスとして置くことで複 雑さを縮減し,授業システム全体を見えやすくするわけである.こうすることで,複雑な 授業の全体構造を把握しやすくできるのである.. 6)閉鎖システムと開放システム. 閉鎖システムとは,インプットもアウトプットももたない内部的に安定した変化しない システムのことを言う.したがって,環境(要素・システムの周りにあるもの,他の要素,. システム〉との交換関係ももたない.それに対し,開放システムは,インプットやアウト. プットをもち,それによって構成要素の交代が行われる.すなわち,授業システムは,そ の階層により,閉鎖システムとも開放システムとも捉えることができる. 7)システムと環境. システムの外部にあるもの,開放システムにおいて連関しているものを環境と呼ぶ.見 方によって,システムと環境の境界は変動する.ある目的を持ったシステムが,環境と関 連しあって一つの目的を持つとき,環境までを含んだ大きなシステムとして見ることがで きる.またその大きなシステムが,別の環境と関連しあうとき,また大きな一つのシステ ムと見ることができる(階層性).. さらに授業目標も一つのシステムと見ることができる.教育目標や生徒特性,教師の価 値観,目標論などの環境と情報交換をしながら,一つの大きな目標システムを形成してい ると考えられる.目標システムは,他の要素と連関しながら大きな授業システムを形成し ているのである.. 8)システムの再組織化(オートポイエーシス概念). チリの生物学者であり神経生理学者であるマトゥラーナとヴァレラng)は,生命体の組織 の特性を記述するために,ギリシャ語のautos(=自己)とpoiein(=つくる)を合成し,. Autopoiesis(=自己産出,自己制作)という語を造った.四馬トポイエーシス的システム. は,自分自身を構成する要素が相互に作用しあって,みずからを存続させる構成要素をみ ずから生産し,新たなシステムとして再組織化し,システムを維持,継続させている.ま. 一14一.

(18) た,組織的には閉じており,物質的またエネルギー的に開かれている.. 授業システムは,オートポイエーシス的システムと考えることができる.授業は,絶え ず動いている運動体であって,瞬間瞬間に評価され,新たな目標がつくり出され,新たな 行動として表出される.構造は変化しないが(組織的には閉じている),情報の交換によっ. て(物質的またエネルギー的に開かれている),新たな授業システムを組織している(再 組織化).. 以上のように複雑な. Process. 構造の授業を,図2に. Planning. 示す「授業研究システ. 態度測定法1こよる総括的授業評価. 畳anm㎎. 難(鴫. (. 驚. N. 運動の有能感. ム試案」というモデル で捉えた.このモデル は,ピエロンとチェファー. 客観的指標. 厘動技能. 幽. 篇騒・ノ. 囮. )itiiiiiiii)iii)i. 籍Il. 学習者の性格特性. 「中間関係と親密度. 学級での様子. …撫ノ. ズ11 3) (Pieron,M. and. 運動の有能感. Cheffers,J.)によって. 運動意欲. 客観的把握. nrocgfi,tiS. 藩鑑募鯉. 舞 ‘’震. 仲間関係と親密度. 示された「プロセス. 感想文 担任教師からの主観的印象. ープロダクトの研究モ. デル」を発展させた. )rodllct. ALT・PE観察法. roduct 図2 授業研究システム試案. 「プランニングープロ セスープロダクト研究」をベースにシステム化したものである.. このモデルは,年間や単元といった長期的スパンから,一つのできごとといった短期的 スパンまでの階層性を持つことを表している.そして,それぞれの要素が有機的に連関し ながら「よい授業」という目的を達成するためにはたらく「開放システム」であることを 意味している.このうえに,行動科学的アプローチによって開発された客観的指標となる 道具と,教師が日常的に行っている印象的把握と想いをのせ,授業まるごとを捉えること ができると考えたのである.すなわち,システム理論を基礎とした把握の仕方は,一つの 有効な手段であると考えられる.. 8.授業評価の方法 授業づくり研究においては,「授業をまるごと」捉えることが必要であると述べてきた. そこでは,どのような方法でアプローチするのかが問題となる.. 一15一.

(19) 授業場面における授業力量を向上させるためには,柴田144)が言うように,子どもが見. えなくてはならない.しかし,一方では,子どもを見る目が育つ(教師の熟達)には,長 い年月が必要というテーゼもある.この対立する論理を崩すことはできないであろうか. 佐藤132)の報告に, 「熟達者は,教師の教育活動と子どもの学習活動とを連鎖として関連. づけて捉えていると言えるだろう.」というものがある.これを裏返せば,教育活動と学 習活動とを関連づけて捉えることができれ.ば,熟達者の持つ実践的思考様式の一部に迫る. ことができるということになりはしないだろうか.また,これができれば,授業場面にお ける授業力量を高めることにつながるということにならないであろうか.そこで,この仮 説のもとに立ち,教師行動を客観的に把握するための「言語行動」,生徒行動を客観的に 把握するための「学習従事量」,授業評価を客観的に把握するための「形成的授業評価」 を統合させて分析し,そこに「学習ノート」や「教師の思考」といった主観的分析を折り. 込むことによって,教育活動と学習活動とを関連づけて捉えることができるのではないか と考えた.. また,授業全体を一つのシステムとして捉えたとき,よい授業をつくるためには,それ ぞれの要素の有機的な連関が必要になってくる.目標一内容一方法一評価の連関,子ども 一教師一教材の連関,planning 一 process−productの連関と,それぞれの連関が錯綜した形. での有機的連関である.これらの全体が最適な状態に達したとき,よい授業の創造という. 目的達成に迫ることができたと言うことができよう.そこで,その目的の到達度を確認す るために,フィードバックさせる情報を得る評価が問題になってくる.現在の行動科学的 アプローチの発展は,仮説を検証する道具としての精度を飛躍的に高めたと言うことがで きる.それには,授業の一側面を評価するという条件が加わるが,検証する道具も有機的 に連関させることによって,おおまかにではあるが授業の全体を評価することができるの ではないかと考えた.この授業の全体を評価する,すなわち総合的授業評価が行われた授 業にフィードバックされ,授業まるごとの評価をしたうえで次時の授業計画にフィードフォ. ワードされるという評価システムを働かせることで,授業全体をよくしていこうとするの である.総合的授業評価という評価方法は,教師を授業全体に目を向けさせ,授業の要素 と要素の連関構造を認識させ,授業実施段階における子どもや場面の状態を推論・把握さ せ,それによって教師の授業力量を形成させる方法であると考えられる.. 9.研究の目的. 一16一.

(20) 教師にとって授業力量の形成は,授業改善の方法上の生命である.その授業力量を合理 的技術の適用のみに限定せずに「実践的思考様式」にまで拡大して捉えるとき,授業研究 の生み出す理論や知識は,「こんなときこうすればよい」とか「こうすればこうなるであ ろう」といった次元に留まることはできない.教師の授業力量の内実を形成する「実践的 思考様式」を高めることができる研究方法を求めることは,差し迫った課題である.そこ で,本研究は,これらのことを勘案し,授業力量を形成していく方法構築の理論をシステ ム理論に求め,授業改善の主体である教師が,理論を実践で検証し,また新たな理論を構 築していく作業を通して力量は形成されていくと仮説し,この仮説を検証するための方法 の道筋を明らかにすることを目的とする.すなわち,システム理論に立脚した授業改善の 方法は,教師の授業力量形成にどのように影響を及ぼし,また,授業改善はなしえるのか を検討することを目的とする.さらに,今後の体育授業研究のあり方や教師教育について の示唆を得たいと考える.. 一17一.

(21) II.研究の方法 1.対象 兵庫県下の小学校6年生1学級を対象に,授業計画段階の情報を得るために,担任教師 による跳び箱運動の授業,1時間を対象とした.授業実施段階では,バスケットボールの. 教材,全8時間を1単元として,本研究者が授業者として実施した.授業者は,対象校の 現職教員,男性,36才(教職経験12年)である.対象校児童のミニバスケットボールチー. ムを指導しているため,対象学級の児童7名(男子3名,女子4名)とはすでに面識があ る.運動経験は陸上競技,テニスを行っており,バスケットボールの競技経験はない.担 任教師は,教職経験20年の女性で,対象学級を担任して1年目である.. 2.期日 平成8年10月下旬∼ll月上旬 3.調査・測定項目 1)授業計画段階(planning). 授業計画のための資料・情報とするために,以下の項目について調査した. ①体育の授業に関する調査(態度測定法による総括的授業評価) 高田俊也らs5)の作成した「たのしむ」「できる」 「まもる」 「まなぶ」の体育の目標. 領域に対応した4因子からなる小学校高学年用の質問項目で,単元開始前の学習者の体育 の授業に対する態度を把握するために用いた. (付表1). ②運動に関するアンケート(運動の有能感〉. 岡澤ら105)の作成した,“運動ができる”という自信に関わった「身体的有能感」,努. 力すればできるという「統制感」,仲間や教師に受け入れられているという「受容感」の 3因子からなる質問項目を用いて単元開始前の学習者の運動に対する有能性を把握した. (付表2). ③MIPE(運動意欲). 猪俣as)によって作成された45項目からなる用紙で,運動に対する自己自身についての認. 識(自己概念),運動を行う楽しさや親しくなれる喜び(親和欲求),勝利志向(競争欲 求),運動に対して学ばれた価値観・認識(価値感),目標達成のための困難の克服(達 成意欲),運動をしたい(活動意欲),運動に対する失敗を恐れ,回避しようとする(失 敗回避),の7つの因子で構成されている.(付表3). 一18一.

(22) ④運動技能. 前年度と本年度のそれぞれの学級担任により,バスケットボールにおける技能を主観的 に5段階で分類してもらった.. ⑤学習者の性格特性 ①∼③の調査・測定から個人特性の概要は把握できるが,把握した個人特性の確認とよ り細かな把握をするために子ども用Y−G性格検査を用い,その質問項目を「社会的向性」 「支配性」 「思考的活動性」 「一般的活動性」 「のんきさ」 「攻撃性」 「協調性」 「主観. 傾向」 「神経質傾向」 「劣等感」 「回帰性傾向」 「抑欝血」の12の観点に分類し,処理し た.そして,それらをy・一G’1定格検査法の手続きにしたがい「外向性」 「活動性」 「社会的. 不適応」 「情緒不安定」の4の観点に集約し,分析した. (付表4). ⑥友人に関する調査(仲間関係と親密度) 仲間関係は,クラスの中で一番仲のよい友達をあげてもらうことにより把握した.また, その親密度については, 「学校外の行動」 「住んでいる場所」 「体育の時間外での行動」. 「将来の友人としての予測」の4つの項目を用いて分析した. (付表5). ⑦学級での個々人の様子 担任へのインタビューを実施し,健康面で配慮すべき事項,仲間関係,個人に対する現 在の指導方針,学級全体の雰囲気,個人の特筆的な特徴を把握した.. ⑧体育授業での学習者行動 実際の体育授業における学習行動を把握するため,授業計画段階での調査・測定の分析 結果をもとに15名の対象者を選定し,ALT−PE観察法の手続きにしたがい,授業中の生徒. 行動を6秒インターバルで観察・記録した.本研究では,Metzler,M.W.および Birdwell,D.M.によって詳説された7)ALT−PE観察法のカテゴリーに若干の補足を行ったもの. を用いた.それは,内容の次元の一般的内容のマネージメントを「準備」 「教師の説明」 「挨拶」 「非従事」に,体育的内容の知的活動を「教師による教授」 「模範・示範」 「グ. ループでの話し合い」 「学習ノート」に,学習行動の次元の従事の問接的活動を,「アド バイス・教え合い」 「応援」 「記録・得点係・審判」 「運動での補助的な反応」 「他の子. のプレイを見ている」を詳細に分類することで,より具体的なフィードバック情報を得る ために行った.カテゴリーとその定義は表1に示した通りである.この補足されたカテゴ. リーを用い,ALT−PE観察法の手続きにしたがい,授業中の生徒行動を6秒インターバル で観察・記録した.対象児童は,授業計画段階の調査・測定の結果より授業者が設定した. 一19一.

(23) 表1ALT−PE観察法のカテゴリーとその定義 内容の次元 一般的内容 (1)待機. ・実際に授業が開始される前や、ある学習と次の学習との間の何も学習活動が行われていない期間。 (例:授業が始まるのを生徒が待っている。). (2)移動. ・ある活動から他の活動へと移っていく期間で、次の活動に移るために整列するような活動も含む。 (例=生徒が体育館からグラウンドに移動。). (3)マネージメント. ・教授活動に関係なく、クラス運営に当てられるような時間。 (例=授業中に、スポーツ会議の代表者を選出する、準備に費やす時間。). A:準備. ・授業に必要な用具の準備や後片付けをしている時間。. B:教師の説明. ・教師が授業の進め方などの伝達事項を児童に説明している時間。. C:挨拶. ・授業前後の挨拶など。. D=非従事. ・みんながマネージメントに従事している場面で、遊んでいたりした場合。. (4)休憩. ・休憩させたり水を飲ませたりすることが、意図的に設定される期間。 このような活動は教師の指示によって始められなければならない。. (5)非学問的指導. ・授業の焦点となっている課題とは関わりのない活動。(例:クラス親善のための活動や談話。}. 体育的内容 (1)個人的技能の練習 (2)集団的技能の練習. ・個人的な技能発達を主な目的としたドリルや活動への参加。(例=テニスのサーブの練習。}. ・指導やフィードバックが頻繁に起こるように設定されたグループ練習。ある具体的な課題を持った 模擬的・修正的なゲームを含む。. (ハーフコートでのバスケットのゲームや3回触球を条件づけたバレーボールのゲーム。) (3)ゲーム. ・ゲームという場面での練習。(例=修正されていないゲームや陸上競技での記録会。). (4)体操・トレーニング. ・体力向上のための反復的活動。ストレッチなどのウォーミングアップやクーリングダウンなどを含む。. (5)知的活動. ・技術,体力,あるいはスポーツの歴史的背景等についての知識の指導にあてた活動。 (例:教師が走り幅跳びの技術について説明している。). A.教師による教授. ・教師による運動に関する学習についての説明を聞いたり,示範を見ている場面. B模範・示範. ・運動に関する学習場面での生徒による模範・示範. C.グループでの話し合い. ・めあてや作戦、ゲームの反省などについてグループで話し合っている場面. D学習ノート. ・生徒が個人で学習ノートなどを利用して学習している場面. (6)社会的行動. ・社会的行動や態度に焦点のある活動。. (例:教師が「これから行うゲームは、クラスメートをお互いがよりょく知り合うためにやります」と 説明した後で、新しいゲームを行うような場合;ゲームの前後の挨拶。) (7)その他の運動. ・その日の授業の目標とは関係のない運動による活動。. (例=器械運動の授業の最後の10分間に、生徒が教師の許可を得てバスケットボールを行う。〉. 生徒の学習行動の次元 従事 (1)運動での反応 (2)間接的活動. ・生徒が技能練習を行っている。(例ニテニスのサーブレシーブ,バスケットのシュートで失敗。). ・生徒は活動に従事しているが、直接的な行為では参加していない。 (例=技能練習の際に、他の生徒の補助をする,ハードル授業の田植え,記録の測定.審判、得点係。〉. A.アドバイス・教え合い. ・運動の技術に関して生徒同士教え合いや他の生徒にアドバイスをしている場面. C.応援. ・ゲーム場面などで、他の生徒を応援している場面. B.記録・得点係・審判. ・ゲームの場面の審判・得点・記録係など、運動技術の学習に関わりのない活動. D.運動での補助的な反応. ・練習中、コート外に出たボールを拾いにいっている場面など. E他の子のプレーを見ている. ・他の生徒の運動に関する動きを見ている場面. (3)認知的活動. ・教師に関係のある認知的活動で、説明を聞いたり、質問、回答、思考などの活動を含んでいる。. 非従事 (t)合い間. ・体育的内容であるが、そこに指導的な内容が含まれていない活動。 (例=ゲーム中のコートチェンジ、ゲーム中にボールが場外に行き、ゲームが再び開始されるまでの時間。). (2)待機. ・生徒が活動のための指導や援助を待っていたり、再び活動に参加するために待機している時間。 (サーブの順番を並んで待っている,ゲームでの補欠,教師の指導を待っている。). (3)課題からはずれている. ・生徒が授業から不適切に解放されている期間。. (例:生徒が教師の許可なしに水を飲みにいく、教師の説明を聞かずに友人とふざけている。). 困難度の次元 (1)容易に成功. ・誤りがほとんどなく、適切に行動している。また、成功を経験している。. (2)どちらともいえない. ・容易であるとも、困難であるともいえないような達成行為。. (3)大きな困難・失敗. ・多くの誤りが生じ、生徒は適切に行動していない。まだ成功を経験していない。. 注1)諸定義は下記の2つの論文に基づいている。例示については若干の週足を行った。 ’ Metzler,M.W.,The measurement of academic }earning time in physical education, Doctoral dissertation, University Microfilms lnternational, No.8009314: Michigan,1979.pp.42−45. ・Birdwell,D.M.,丁he effe(rts of modification of teacher behavior on the academic learning time of selected student in physical education, Doctoral dissertation, University Microfilms international,No.8022239 : Michigan,1 980,pp.43−48.. 注2}内容の次元のマネージメント、知的活動と生徒の学習行動の次元の間接的活動については、より詳細な情報を得るために若干の補足を行った。. 一20一.

(24) 4つのグループからそれぞれ3名を対象児として選定し,1グループに1台のVTRで,4 グループ計12名を毎時間対象として撮影を行った.この撮影されたVTRを毎授業後に再生 し,補足されたALT−PE観察法のカテゴリーを用い,分析を行った.その際,分析の信頼 性を保つため,分析者4名に対してS−1無駄)に基づいて信頼性テストを実施し,分析者相. 互間の一致率の基準(80%以上〉が充足されるまでトレーニングを繰り返した.対象者は 学習グループ編成の段階で12名に絞り込んだ. 2)授業実施段階(process). 毎時間の授業から得られる情報を,立時の授業改善のための資料とするために,以下の 観点から観察・記録及び調査・測定を行った.. ①学習者行動 前述したALT−PE観察法により観察・記録し,分析を行った.. ②教師行動 授業中の教師の言語的行動をVTRおよびワイヤレスマイクで収録し,岡澤らlo6)による言. 語行動分析法に若干の修正を加えて行った.カテゴリーとその定義は表2に示した通りで ある.分析は,カテゴリーの定義に従い,第1次元で教師の言語行動の対象を分析し,第. 2次元でその内容を分析する.そして,第3次元でその内容の種類を分析した.なお,分 析の信頼性を保つため,トレーニングテープを用い,Scott’s Coefficientの一致率算出法8)に. 基づいて信頼性テストを実施し,一致率が80%に達している分析者1名が一貫して行った. ③授業毎の子どもによる授業評価(形成的授業評価) 高橋ら165)の作成した12項目からなる調査票を用いて,毎時間授業終了後に実施した. (付表6). ④学習ノート 「学習内容」 「教え合い」 「学習集団」 「感想」の項目を基本にし,質問設定による自. 由記述形式で毎時間後に記入させ,その日のうちに授業者が記述を分析し,コメントを記 入し,返却することにより学習に供した.なお,単元の進行にともない学習内容が発展す るため,授業毎に学習ノートの質問も改変した.. ⑤教師の思考の分析億思決定) 授業過程における教師の意思決定から「実践的思考様式」の変容を捉えることができる のではないかと考え,撮影した教師行動のVTRを授業者が視聴しながら,意思決定を行っ たと思われる印象的な場面で停止させ,そのときの意思決定の詳細を回顧した.その様子. 一21 一.

(25) 表2 教師の言語行動分析法のカテゴリーとその定義 第1次元 ①全体. ・教師が全体に向かって話すこと.. ②個人. ・教師が個人,指名した個人に向かって話すこと.. ③グループ. ・教師がグループに向かって話すこと。. 第2次元 ①行動面. ②運動技術面 ③その他. ・教師の言語が児童の行動面について行われること. (例:整列,準備,かたづけ,移動, 話を聞く時など). ・教師の言語が,児童の運動技術面について行われる場合,また,運動に従事しているとき に行われる場合もこれとする.. ・教師の言語が,児童の行動面・運動技術面以外に行われるもので,児童の体調や授業に関 係のないことなどについて行う場合である、. 門3次元 ①単純動作指示 ・命令的な口調の言葉で,「集合1」「行け!」「来い!」「座れ!」などの指示である. ・何らかの形で学習に関わりながら児童の行動を方向付けることで「向こうの高い方のゴー ②学習関与指示 ルで練習しなさい」,「’t’君をよく見ていてごらん」などの指示である.. ③説明. ・教師が児童に対して,学習活動やその内容,また運動技術などについて具体的に伝えるこ とである.. ④発問. ・「どうずればいいのかなあ」 「なぜだろう」などと,問い掛けのなかでも狭義なもので児 童の思考を促すものである.. ⑤助言1. ・児童の行動や運動技術に伴った言葉を添えて手助けしてやること.未熟な技術に対して指 摘してやると同時に,具体的にどのようにしたらよいのかを教えることによって,次の技術 に結びつくように方向づけることである.. ⑥助言2 ⑦掛け声 ⑧賞賛 ⑨励まし. ・児童の行動や運動技術について,未熟な部分を指摘してやること.指摘したことに対して の方向づけは含まないものとする. ・「頑張れ一1」 「いけ一!」と言う具合いに,特に活動中に児童に対して声を掛けてやる ことである.. ・「よくやった」「上手だね一」「今のよかったよ」「そうだよそうだよ」などとほめたた えることである.. ・「もう少しだ,頑張れ」「その調子だぞ」と言うように児童の行動や運動に対して励まし 力づけることである.. ・技術的に未熟な児童に対して,まず,どの様な行動に対しても肯定的な働き掛けを行う. そして,自信をもたせると同時に頑張って欲しい未熟な箇所についての助言や励ましを与え ⑩代償的賞賛. てやることである.. ⑪問い掛け. (例=「お一,今のはすごく元気があっていい動きをしていたね一.それじゃ一今度は…を もっと…にして頑張ってごらん.そうすればとってもきれいな動きになるよ.」) ・児童に,何かを問うように声を掛けること.. ⑫確認. ’1…右イ2刀8っノこ(」 1(:フし1こV〃」な一(:■”i黒i妖㌣茜口詠W盟i誌りまノこ間麗な1貝同b『昌『も. ⑬応答. ・教師が児童の発言に対して答えること.. ⑭注意 ⑮叱責. ・児童の行為や望ましくない行動や運動に対して,それ正すために指摘するもので,感情は 伴わない.. ・児童の間違った行動に対して,強く否定し叱るものである.. ’注)諸定義は,下記の論文に基づき,若干の修正を加えたものである.. ・岡沢祥訓,三村忠,高橋健夫,伊東正信「小学校体育授業における教師の言語行動に関する研究」 文部省科学研究費(一般B)研究成果報告書;1991.3. 一22一.

(26) を1台のVTRで撮影し,佐藤らB2)による「教師の実践的思考様式の特徴」をもとにカテ ゴリー化した指標で,記録・分析した.カテゴリーとその定義は表3に示した通りである.. ただ,この方法は,道具として確立されたものではなく,客観性を保つには不十分である と考えられることから,ALT−PE観察法と形成的授業評価の結果を関連させて分析するこ とにより,より客観的なものとして捉えることができると考えた. 3)授業評価段階(product). 授業成果を判断する一つの資料・情報として,以下の項目について調査した. ①体育の授業に関する調査(態度測定法による総括的授業評価) ②運動に関するアンケート(運動の有能感). ③MPE(運動意欲) ④友人に関する調査(仲間関係と親密度). ①∼④の調査・測定項目は,単元開始前と比較するために同一のものを用いた. ⑤感想文. 授業を通して学んだことや心に残ったことなどを自由形式で感想文に記述させ,授業の 内容に触れる記述を取り上げ分析した.. ⑥学級での様子 担任教師へのインタビューを実施し,授業後の学級全体の様子,雰囲気,その後の体育 の授業での様子,各個人の様子等の印象を把握した.. 4.処理の手続き 1)授業計画段階(plaming). 日程調整等の打ち合わせ後,授業計画段階での質問紙調査を実施し,回収後,結果の分 析を行った.体育の授業に関する調査(態度測定法による総括的授業評価),運動に関す. るアンケート(運動の有能感),MIPE(運動意欲)の調査についでは,平均値と標準偏 差を算出し,全体,男女別,技能別,技能別男女別,個人の順に絞り込んで分析し,学習 者の性格特性,仲間関係と親密度,学級での個々人の様子を総合して学習者のレディネス を把握した.ALT−PE値への影響を考え,分析結果と運動技能,男女比を基に,マーク児 童を選出し,実際の体育授業(跳び箱運動)での行動を観察・記録した.これらを総合的 に解釈し,単元目標の設定,学習グループの編成,単元計画案の作成,第1時の学習ノー トの作成の順に作業を進めた. 2)授業実施段階(process). 一23一.

参照

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