(5)学(C班)
IV. 総括
授業研究は,授業改善のための知見の生産を目的に行われてきた.この作業は,同時に 教師の力量を形成するものと認識されてきた.しかし,本研究では,知見を使用する側の 力量をも問題にしなければ,授業改善は成し遂げることはできないという仮説のもと,教 師の力量形成を授業研究の方法に求め,システム理論に立脚した方法で研究に取り組んで
きた.
その結果,これまでに生産された授業改善のための方法理論は,使用する側ρ力量が形 成されていくにともない,読み取り方や使われ方も変化していったのである.単体で使用
しては授業全体を把握することができず,授業改善の情報も誤ったものとなる可能性のあっ た道具は,連関させることにより方法論的アプローチのメカニズムが認識され,それによっ て実践場面における教師の思考も佐藤132)のいう実践的思考様式化されていった。
このことは,教師の日常の仕事の中で,授業力量を豊かに形成することができる可能性 を予見している.学習成果を客観的に把握するためにこれらの道具を用いたが,日常,教 師は印象的に学習成果を把握している.「今日は○○君はあまりのっていなかった」とか
「今日は助言や賞賛より説明が多かった」とか「今日は○○さんは楽しそうでなかった」
と,ALT−PE観察法や,言語行動分析法や,形成的授業評価の代わりになるような作業を 印象的に行い,教師の思考と結びつけて反省しているのである.これらの情報をもとに次 時を展望し,授業過程の子どもとの相互作用で修正していくような日常的な方法を通して 力量は形成されると言えるからである.
ただ,これらはあくまでも事例研究の結果に過ぎず,結果の一般化については,今後さ らに事例を増やしながら慎重に行っていくことが必要であると考える.
また,本研究では,行動科学的アプローチを連関させ,認知科学的アプローチで解釈し きれないところを補う形で授業を評価していったが,この方法が授業改善のための最善の 方法とは言いきれない.なぜならば,ALT−PE観察法の対象とする子どもについては,個 人を特定し,教授行動の適否や教師の思考の適否を判断することはできたが,対象外の子
どもについては,言及しきれないという行動科学的アプローチの持つ限界点を露呈したか らである.本研究では,途中でALT−PE観察法の対象者を変更することは,測定の信頼1生 に関わるため,できなかったことであるが,日常の授業では,対象者を変更することは可 能である.子どもの想いも尊重した授業実践により,さらに授業力量を向上させるよう,
本研究を発展させていきたいと考える.
最後に,この研究の提起する教師教育への示唆と今後の課題についても触れておきたい.
よい授業を創るためには,効果的な教育技術や授業に関する理論の習得は必要であろう.
しかし,固有の文脈の中で展開される授業を読み,流動的な状況を解釈・思考する力量が
ないと,これらの技術や理論はほこりをかぶってしまう.教室での授業とは違い,体育は
大きな動きの中で埋もれてしまう小さな行動や表情を読み取るのが難しい教科である.技
術や理論を活かすためにも,実践的思考様式に焦点を当てた授業力量の形成が望まれる.
注
注1)ALT−PE観察法の信頼性を維持するために,観察者相互間の一致率がS−1法
(Scored−lhterval method)によって算出された.算出方法は,「一致率=一致÷(一致
+不一致)」の計算式によって行われた,なお,通常,研究目的のためにはその一致率が 80%の水準を維持することが必要であるとされ,本研究でもすべての項目についてこの水
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ドキュメント内
教師の授業力量形成を視点とした体育授業改善のための研究方法の検討 : 小学校のバスケットボールの実践を通して
(ページ 64-72)