• 検索結果がありません。

博士(文学)学位請求論文審査報告要旨

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "博士(文学)学位請求論文審査報告要旨"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)博士(文学)学位請求論文審査報告要旨 論文提出者氏名 論 文 題 目. 成谷 麻理子 生・自由詩・内在律:19 世紀末から 20 世紀初頭の日仏文芸思潮に関する比較文学的考察 ―アンドレ・ジッドと相馬御風を中心に. 審査要旨 本論文は、フランス文学から発して比較文学へと展開した、独自な検討の成果である。 19 世紀末のフランスで、象徴主義の詩の時代に、定律の詩行によらない自由詩の考え方が生まれた。そ の根底には、内面の生の律動を詩行に反映させようとする姿勢があった。内面の生は、象徴主義から発し たジッドの問題でもあった。日本でも、新体詩から脱却した新しい詩の在り方を模索していた若い詩人た ちによって、自由律の詩の模索は行われていた。「自由詩」という呼称は借りものだったが、その模索は、 独自のものであった。内面の生に根ざす内在律を求めた詩人たちの中に相馬御風がいた。御風はジッドを 知ることはなかったが、両者の考え方の中に、通有するものを認めることが出来はしないか。 直接の関係のない、フランスと日本の二人の文学者の文学的営為には、あるいは重なり合うところがあ りはしないかと思われた、その印象を確かめようとすることから、探索は始められた。 言うまでもなく、ジッドは御風を知らない。また御風は、ジッドの文学を直接に学びとることはなかっ た。とはいえ、当時の日本の若い文学者たちは、貪欲に、西欧の思想と文学に学ぼうとしていた。御風が 知らずとも、背景となる日本の文学事情は、ジッドに反応する可能性を内包してはいただろう。そこまで が前提である。 論文は、四部からなる。この四部を通じて、一方でジッドの、時代の中での象徴主義に発する自己探求 の道すじを辿ることと、他方で御風の、これも時代の中で《自然主義》における主体・客体の議論を経て、 「内在律」の認識に至る過程を並行して、交互に取り扱う構成となっている。 第一部「象徴主義の終焉から次の時代へ」は、第一章「1890 年代の文学界」で、フランス世紀末の、象 徴主義から発してこれを脱却しようとする小説群を取り上げて、主としてシュウォッブの『モネルの書』 とジッドの『地の糧』を対比しつつ、時代に濃厚な死の影と、そこから脱しようとするジッドの模索を語 る。第二章「御風の自然主義と日本の象徴主義」は、日本のいわゆる自然主義の、同時に象徴派的主張に 着目しつつ、第三章「日仏の象徴主義と日本自然主義の思想の類似と差異:観照の美学」では、御風とと もに、これが主観客観の合一を目指す方向へ動こうとすることを確認する。 第二部「自由詩」は、第一章「フランスの自由詩と『地の糧』の自由詩性」と第二章「ジッドの周りの 自由詩運動」においては、フランス象徴主義の時代に起こった「自由詩」の模索の道を辿って、詩と散文 の区別なく、表現の自立性を求める自由詩に向かう動向を辿り、あわせて、テキストの断片化と不均一を 特徴としつつ、流動的で自由な詩的表現に到達した『地の糧』の書法を確認する。第二章「口語自由詩運 動」は、口語の使用、形式の自由と、旧来の情調の否定との上に、日本における口語自由詩の試みが定着 して行く方向を跡付ける。第三章「自由な詩とは何か:日仏の自由詩生成期において志向されたもの」は、 日本における「自由詩」の語のもとともなったフランス語 vers libre の歴史を振り返りつつ、日仏で「自 己の内部のリズム」の表現が求められていたことを明かす。 第三部は「生」と題されて、ジッドと御風の、自然、我、生の観念と、その表出の問題を辿る。第一章 「ナチュリスムとジッド」においては、象徴主義を極度に人工的で生の輝きを拒絶していると見るナチュ リスムなどの表現者たちがジッドを同党の士と見ることに違和感を持つジッドが、これとは異なる立場を 選んで、象徴派からの出自を守ったまま、新しい可能性へ向うことを描く。第二章「社会主義、アナーキ ズムと個人の思想」は転じて御風とその周辺の、明治末から大正に向かう時期の文芸思潮動向を辿って、.

(2) 御風の「我」と「生」の思考の源を探ろうとする。 第四部「内在律」では、いよいよジッドと御風、両者が到達した場所を確認する作業に入る。第一章『地 の糧』は、宗教的倫理を乗り越えて、全的な人間の自由を打ちたてたジッドにおける、我の全的な表出の ありかたを検討する。第二章『還元録』では、これも仏教とキリスト教とに馴染みながら、宗教を越えて、 最も強い生の表現としての芸術を確認するに至る御風を確認するに至る。 結論として、深い自己観照による意識の分裂に一方で悩みながら、「自己の内部のリズム」の発見を通 じて全的な我の獲得に至ることにおいて、両者の共通性を見出すことができたのである。そしてまたこれ は、同時代性に起因する側面はありながら、しかしまた両者の個我の特性によるものであると、論者は結 論する。 出発点において、あるいは否定的結論に至るかもしれない仮説を措定して、そのために必要な検討の筋 道と、そのために必要は資料体を選び出し(筋道も資料体も、検討の途中で変化し膨れ上がる)、論文と しての形を得るに至った、その構想は首肯できるものであった。またジッドと御風両者を時代の中におき つつ、並行して対照検討した手続きは間違っていない。その過程での、資料体の選び方および、基本的に 初出に当たるなどの厳密な手続きは、信頼に足るものであった。 さらに御風の、文壇からの離脱直前の作品『還元録』、これまでは、文学的著述としては必ずしも重視 されてこなかったが、新しい視点で文学として読み解いた意義が認められる。 ただし、批判すべき点もあった。特にフランス文学の立場からは、象徴主義と、その思想的背景に関し ては、さらに深化した検討が望まれた。またジッドにおける、 『地の糧』以前の作品群については、やや表 面的な検討にとどまり、そのために、ジッド作品世界の内面およびその発展を必ずしも明確に示しえてい ないうらみがあった。さらに、 『地の糧』を論ずるに当たって、テキストに寄り添ってそこから思想を抽出 することに急なあまり、テキストそのものの全体にわたる精緻な批評的読解が必ずしも充分に果たされた いないと考えられる点もあった。見取り図の成立に力を注ぐ故に、多面的な作品の、特定の面のみを検討 の対象としていると見られる場合もあった。さらにいえば、時にフランス語の読解が、より精密であるこ とを望ませる場合があった。 とはいえ、これまでにない視点を持って、遠く国境を隔てた二人の文学者を対照させることによって、 時代の文学表現の要請に応えながら、個人の資質によって道を探った二人には、共に、内面の声に耳傾け て、道を切り開く姿勢のあったことを、本論文は示しえている。また、検証の道筋の設計および文献操作 の手続きにおいて、確かな方法意識を獲得していることも明らかであった。 その故に本論文は、博士号を授与されるにふさわしいものであることを、審査委員会は全員一致で認め たものである。. 公開審査会開催日 審査委員資格. 2012 年 11 月 26 日 所属機関名称・資格. 博士学位名称. 氏 名. 主任審査委員. 早稲田大学・名誉教授. 小林 茂. 審査委員. 早稲田大学文学学術院・教授. 博士(文学)早稲田大学. 中島 国彦. 審査委員. 早稲田大学文学学術院・教授. Ph.D(パリ第 1 大学). 千葉 文夫. 審査委員. 早稲田大学文学学術院・教授. 川瀬 武夫.

(3)

参照

関連したドキュメント

, Performance of the ATLAS Inner Detector Track and Vertex Reconstruction in the High Pile-Up LHC Environment, (2012). [35]

電磁カロリメータ試作機に実装された SKIROC2 について、 ASIC から PCB に伸びる配. 線長の違いによる、 S/N の差を評価した。

Jarlskog, A basis independent formulation of the connection between quark mass matrices, CP violation and experiment, Zeitschrift fur Physik C Particles and Fields.. 29

lous magnetic moment and the electric dipole moment of the muon, and a direct test of relativistic time dilation, Nuclear Physics B 150 , 1

Nomura “Solar and atmospheric neutrino oscillations and lepton flavor violation in supersymmetric models with

Jarlskog, A basis independent formulation of the connection between quark mass matrices, CP violation and experiment, Zeitschrift fur Physik C Particles and Fields. 29

Thomson, Particle flow calorimetry and the PandoraPFA algorithm, Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 611, 25 (2009), 0907.3577. [14]

Liaud, Neutron de- cay measurements with a helium-filled time projection chamber, Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 284 , 120