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企業独自のコーポレート ガバナンス原則の役割と課題

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神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』 第13号 2009年3月 107

企業独自のコーポレート ガバナンス原則の役割と課題

RoleandProblemofFirm SpecificCorporateGovernancePrinciple

神奈川大学大学 院 経営学研究科 博士前期課程

山 口 貴 嗣

YAMAGUCHI,Takashi

■ キー ワー ド

コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス、企業独 自の コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス原則、 日本企業 の原則 、企業経営 機構 、新 しい経営 システム

1は じめに

本 稿 で は、特 に 日本 企 業 で1990年代 か ら盛 ん に論 じられ るよ うになった コーポ レー ト ・ガバ ナ ンスに関す る考察 を行 う。 なかで も、今 日の 日本 企業 で策定 され てい る、企業独 自の コーポ レー ト

ガバ ナ ンス原則 に関す る考察 に焦点 を当てて論 じ るO まず、 コーポ レー ト ・ガバ ナ ンスは企業統治 と訳 され て お り、1990年 代 に発生 した企 業不祥 事 を契機 に、 日本経 団連 などの私的機 関や民間企 業 で その重要性 につ いての議論 が交 わ され た。具 体的には、社外取締 役や社外監査役の監査機能 の 強化、 そ して取締役会 と監査役会 の責任 と権限の 明確 化 な どで あ る。 また、外部 か らの有識者 (弁 護士 や公認会計士 、加 えて企業 と関わ りの ない学 識者) の起 用 を行 うとい った試み もな され た。 し か し、 コーポ レー ト ・ガバ ナ ンスには多 くの問題 が存在 してい るo まず、 コーポ レー ト ・ガバ ナ ン スの理論 的問題 と しては、企業経営 に深 く関係 す

るがゆ えに法律 や経済 、 そ して財務 や会 計監 査 と い った各理 論 が存在 し、 これ らを1つ の理 論 と し て体系化 を行 うことが極 めて困難 で あることで あ るO そ して コ‑ポ レ‑ ト ・ガバ ナ ンスの システ ム 的問題 と して は、第2節 で述べ る企業 経営機 構 や 情報 開示 ・透 明性 の制度 的欠陥、 そ して、利害 関 係者 に対す る説明責任 の不 明確 さで あ ると考 え ら れ る。 これ らの原 因の1つ と して、企業 経営機 構 を構成 す る機 関や それ らを統 括 す る経営者 の暴走 が挙 げ られ よ う。

一方 、企業独 自の コーポ レー ト ガバ ナ ンス原 則 は、 コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 (Corporate GovernancePrinciples)'とい った範 囲の なかで考 察 で きる もので あ る。 そ して、コーポ レー ト ガバ ナ ンス原則 自体 を広 義 と して は、コーポ レー ト・ガ バ ナ ンスに関す る各公的機 関が公表 した報告書 や 提言 書 が含 まれ ると され る。狭義 と しては、広範 は事項 を体系立 て て策定 され た原則で ある とされ て い る2。 また、この コーポ レー ト ガバ ナ ンス原

(2)

108 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第132009年3月

則 は、結果的に企業経営 において企業経営機構改 革 に健全な影響 を与 えうるものでなければな らな い。つ まり、各国国内で策定 された原則 が企業 ご との経営方針や経営環境 によって形 を変 えなが ら 最終 的に実践的な原則 を作 り上 げてい く流れ とな

る。実際には、すでに多 くの企業が企業独 自のコー ポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 を作 り、 その内容 を明 らかに している。 したがってこの潮流 は、企業に とって今後の経営に多 く活用で きることになる。

そこで筆者 は、 この企業独 自の コーポ レー ト・

ガバ ナ ンス原則の有用性 と必要性 を検討 し、今後 の 日本企業の経営課題 を示 したい と考 えた。第2 節ではコーポ レー ト・ガバ ナ ンスとコーポ レー ト ガバナ ンス原則、そ して企業独 自のコーポ レー ト ガバナ ンス原則の内容 を先行研究 に基づいて検討 し、最近の企業独 自の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス 原則の策定状況 を明示 した。 また、第3節では今 日の 日本企業 において代表 され るような企業独自 の コ‑ポ レー ト・ガバ ナ ンス原則についての現状 と特徴 を検討 し、性質別の特徴 とその問題点 と課 題 を探 ってい く。 さらに、第4節では企業独 自の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則において問題視 さ れつつある、経営者主体 による原則実行や企業経 営機構への浸透における新 しいシステム構築へ向け ての提言 を行っている。加 えて最後には、企業独自 のコーポレー ト・ガバナンス原則が今後いかなる経

企業経営機構I ー ヽ 巨二 三1 ‑3麺 亘 二 〇 垂 二ト:規王 子喜王 .I二巧

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営課題に立 ち向かっそいくのかを考 えている。

2

コーポ レー ト・ガバナ ンスとは

2‑1コーポ レー ト・ガバナンスと企業経営の関係性 今 日の企業経営 において、コーポ レー ト・ガバナ ンスには未 だ確立 され た定義 は存在 しない。また 第1節 で も述べ た よ うに、企業経営 に深 く関係 す るがゆ えに法律や経済、そ して財務や会計監査 と い った各理論 が存在 して い る。その ため、コーポ レー ト・ガバ ナ ンスで取 り扱 う問題の多様性 か ら、

様 々な分野か らアプローチが行われているのであ る。さらに、コーポ レー ト ガバナ ンスの 目的は、お およそ企業競争力の強化 と企業不祥事の防止 であ るとされているとい えよう。そのようななか、小島 大徳[2004]によるとコーポ レー ト・ガバナ ンスは、

(1)企業経営機構 を作 り上 げるか とい う内部 的側 面 と、(2)機 関投資家 に代表 され る利害 関係者 に よる企業の監視 ・監督 とい う外部的側面、そ して、

(3)その両者 を繋 ぐ連結環 と しての情報開示 ・透 明性の3つに焦点が集 まっているのである3。図表1 は(1)、(2)、(3)の関係性 をあ らわ した体系であるO この図表1か らも分 か るよ うに、企業 は企業 経営 システム (企業経営機構)をいかに構築す るかに重 点 を置 き、並行 して利害関係者 に対す る情報伝達

を行いなが ら経営 していると考 えられ る。

図表 1コーポ レー ト・ガバナ ンスの体系 情報開示 .透 明性

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し 対話 ( 縁遠総会等)

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利害 関係者

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(出所)小島大徳[2004]『世界の コーポ レー ト・ガバナ ンス原則一原則 の体系化 と企業の実践‑ 』 文 具 堂,135頁 よ り引用。

(3)

企業独自のコーポレー ト・ガバナンス原則の役割と課題 109 一方、平 田光 弘 [2008]で は コ‑ポ レー ト・

ガバナンスを、 (1)企業 と利害 関係者 との関係で あるとす る。つ まり企業 は誰のために経営 され る べきかとい う観点である。 また、(2)経営者の経 営を監視 ・監督す る仕組みであるとし、経営者の 経営に対す る監視 ・監督は誰の観点か らな され る べ きかが問題 で あると述べてい る4。 これ は、企 業と して (1) の経営 を行 えば、出資者 である株 主に対 して株主利益 を優先 させた経営 を推進 して いくであろう。 また、その状況 と結果 を株主 に報 告 し、株主の観点か ら監視 ・監督の仕組み を作 る ことに もなる。 さらに企業 と して (2)の経営 を 行えば、株主 を含めた利害関係者の利益 を考 える 経営 とな り、広 く利害関係者 に影響力を与 える仕 組みを作 ることに もなるであろう。

さらに他方では、貞松茂 [2007]が、コーポ レー ト・ガバ ナ ンスは企業不祥事 を防いだ り、企業価 値 を高めた り、 さらには企業の社会性 を一層追求 することに資 し、 もってより社会性 的な経済社会 の形成 に貢献 しなければな らないと考 えるが、そ れには企業 ・経営者 を外部か ら監視す るのみな ら ず、企業内部の機 関を通 した監視 もまた不可欠で あり、そこでの一層の改善 が行われなければなら ないであろう5、 としている

ここで筆者 が解釈す るには、 コーポ レー ト・ガ バナ ンスには、企業不祥事の防止や企業競争力の 強化 とい う側面 を持つ と同時に、経営者の経営に 対す る監視や監督の機能 を有す る必要 があるので はないか と考 えられ る。 また、 コーポ レー ト・ガ バナ ンスが広 く社会性 に富んだ機能 を有す るため には、利害関係者 に対する情報開示 を忘れてはな らず、 これ を行 うことがで きるような経営 システ ム (企業経営機構) をいかに作 るかが模索 されて いると考 えられ る。 また、そのシステムを構築す る主体が経営者 にあることも示唆 しなければな ら ないと考 えられ る。

2‑2コーポ レー ト・ガバナ ンス とコーポ レー ト・

ガバナンス原則

1990年代 に入 り、 コーポ レー ト・ガバ ナ ンス

の議論が先進諸国を中心に行われ るようになって い る。 その背景 の1つ となったことが、 イギ リス における大型企業不祥事であった。企業のガバナ ンスの対処や事後対応 に関す る対策 を整 えるため に も、 コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則の策定は急 務であった。 そこで1992年にイギ リスで 「キャ ド バ リー委員会報告書6」 が策定 され た。 そこか ら 1990年代半頃 には イ ンターナ シ ョナル ・コーポ レー ト・ガバ ナ ンス ・ネ ッ トワーク (International Col・pOrateGovernanceNetwork, 以 下 「ICGN」

とす る) が設立 され、1998年 か ら2000年 にかけ て多 くの コーポ レ‑ ト・ガバ ナ ンス原則が策定 さ れ た。 また、 日本 において も1998年 に私的機 関 として、 日本 コーポ レー ト・ガバ ナ ンス ・フォー ラム OapanCo叩OrateGovernanceForum,以下

「JCGF」 とす る) が公表 した 「JCGFコーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則」 が策定 され、経済 同友会 の提言 (1996年、1998年、1999年) も公表 され、

特に企業の競争力 を強化 させ、実務的内容 に加 え 実効性 ある原則 となった。 また、公的機関におい て は、 旧通商産業 省 の提言 (1998年) や経済産 業省の提言 および意見書 (2001年) らが公表 され、

これ らも企業の競争力強化の方向性 が強い。

そ して企業の不祥事防止 としての特徴が強い原 則 は、私 的機 関 と して、経済 団体連合会 の提言 (1997年)や社会経済生産性本部の提言 (1998年) が挙げ られ る。 また、公的機関においては、 日本 監査役協 会の提言 (1996年、1997年) や旧通商 産業省 の提言 (2000年) な どが代表 的な例 と し て挙 げ られ る7。 これ らは、すべ て各機 関の一部 に過 ぎないため、改 めて調査行 う必要 があるが、

その数 と内容 には企業経営 における経営環境の変 化に応 じるよ うな企業への提言や企業組織の変革 を呼び掛 けているであろうとい うことを念頭にお かねばな らない とい うことを認識 しなければな ら ない。

213先行研究 にお ける企業独 自の コ‑ポ レー ト・

ガバナンス原則

今 日、 コーポ レー ト・ガバナ ンスは企業経営 に

(4)

110 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』第13号 2009年3月

おいて議論 の対象 とな ることが多 くなって'い る。

その背景 には、粉飾決算や食品偽装 などの企業不 祥事の発生 が大 きな原 因で あると考 えられ る。 こ の事態 を受 け、企業 では経営者 の関与 による社 内 規律強化やモ ラル向上、そ して業務監視や会計監 査 な どを 目的 とした企業独 自の コーポ レー ト・ガ バ ナ ンス原則が策 定 され る こととなったので あ る。 この企業独 自の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原 則 は企業 によって、 その特 徴や内容 に違いがみ ら れ、企業の経営方針や企業理念 にあった企業独 自 の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則が策定 されてい る. したがって、企業 には この企業独 自の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則の有用性 について拘束性 の低 い社 内規定 と しての側面 と、企業 に もよるが 拘束性 を有 す る側面 とに分 け られ るのではないか

と考 えることがで きるとい えよ う。 図表2は先行 研究 に もとづ いて作成 した2003年 にお け る企業 独 自の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 である。で は、 それ らの原則の内容 を追 ってみたい。

まず、2003年4月に帝人株式会社 (以下、「帝人」 とす る) は 『帝人 グル ープ ・コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 (以下、 「帝人原則」 とす る)』 を策定 した。 その 内容 は、1.利害 関係者 に対 しての社 会貢献、企業の繁栄 と利害 関係者 に対す る説明責 任、3.企業 競 争 力 の強化、 の3つ を 目的 と して い る。 そ して原則 の構成 と しては、1.意思決定、

監視 ・監督 と監査の仕組み、のなかに、①取締役 お よび取 締 役会 、⑦ ア ドバ イザ ー とア ドバ イザ リー ・ボー ド、 そ して③監査役 および監査役会 を 規定 した。また、2.コ ンプ ライア ンス と トー タル ・

図表2企業独 自の コーポ レー ト・ガバナ ンス原則 (2003年)

帝人原則 ソニー原則 住友原則

原則の策定時期 2003年 4月 2003年5月 ‑ 2003年6月 原則の 目的 1.利害関係者に対 しての社会貢 1,法令、社内規制 .方針 1.経営の効率性の向上

献 の遵守および誠実で 2.経営の健全性の維持

2.企業の繁栄 と利害関係者に対 倫理的な事業活動 3.経営の透明性の確保 する説明責任 2.ステークホルダーとの

3̲企業競争力の強化 34.5..構造的利益相反の回避関係社内通報多様性の理解

原則の構成 1.意思決定、監視 .監督 と監査 1.基本原則 1.取締役会

の仕組み 2.人権の尊重 2.取締役

(∋取締役およ.び取締役会 3.誠実で公正な事業活動 3.執行役員 (むア ドバ イザーとア ドバイザ 4.倫理的行動 4.ア ドバ イザー

リー .ボー ド 5.会議体 .委員会

③監査役および監査役会 6.監査役会

2.コンプライアンスと トー‑タル . 7.監査役

リスクマネジメン ト

① コンプライアンス

(参 トータル .リスクマネジメン

ト 8̲情報開示

特徴 企業競争力の強化に力点の置かれ 一人ひ とりの経営活動に 企業競争力の強化 と企業 た原則 (副次的に企業不祥事の対 対する規範的原則 不祥事への対処を同時に

(出所)小島大徳 [2007

]

『市民社会 とコーポ レー ト・ガバナンス』文具堂,72頁.(一部で筆者による加筆)

(5)

企業独自のコーポレー ト・ガバナンス原則の役割と課題 111 リスクマネジメ ン ト、の なかに、(Dコンプ ライア

ンス、② トータル ・リス クマネジメ ン ト、 を規定 した。 したがって帝人原 則 は、企業競争力の強化 を主軸 とし副次的に企業 不祥事に対処す る仕組み を取 り入れ る性質 を持 ち合 わせてい ることがい え るであろう9。

2003年5月には、 ソニ ーが 『ソニ ーグル ープ行 動基準 (ソニー原則)』 を策定 した。 その内容 は、

1.法令、社 内規 定 ・方 針の遵守 お よび誠実で倫 理 的な事業活動、2.ス テークホル ダー との関係、

3.多様性 の理解、4.構 造 的利益相 反の回避、5.

社 内通報、の5つ を 目的 と して い る。 そ して原則 の構成 と しては、1.基本 原則、2.人権の尊重、3.

誠実 で公正 な事業活動、4.倫理 的行動、 を規 定 した。 したがって ソニ ー原則 は、一人ひ とりの経 営活動に対す る規範 的な原則であるとい えよ う1。。

さらに2003年6月には、住友商事 が 『住 友商事 コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 (住 友原則)』 を 策定 した。 その内容 は、 1.経営 の効率性 の向上、

2.経営の健全性 の維持、3.経営の透明性の確保、

の3つ を目的 と してい る。 そ して原則 の構成 と し ては、1.取締役会、2.取締役、3.執行役員、4.

ア ドバ イザー、5.会議体 ・委員会、6.監査役会、

7.監査役、8.情報 開示 、を規定 した。 したがっ て住友原則 は、企業競争 力強化 と企業不祥事への 対処 の両方 を達成 しよ う とす る企業経営機構体制 つ くりを重視 した原則 で あるとい えよ う日。

2‑4今 日の企業独 自の コi‑ポ レー ト ・ガバナ ンス 原則

先行研究 に基づ いた企 業独 自の コーポ レー ト・

ガバ ナ ンス原則 はおおむ ね図表2で あった。 また、

その原則は企業独 自の コ ーポ レー ト・ガバ ナ ンス 原則 としてではな く、企 業 ごとの組織 体制にあっ た形 (例 えば、行動規範 や行動指針 とい う形)で その役割 と効果 が分かれ た。 ここでは、 さらに 日 本企業 の原則 の特徴 を検 討す るために新 たに8社 の企業独 自の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 を示

したい。 まず図表3に示 した4社 をまとめた。

1992年 か ら2001年 に か けて トヨタ 自動車 は、

『トヨタ行動指針 (トヨタ原則)12』 を策定 した。

これ は、1.企 業 競 争 力 の強 化、2.各種 委 員会 や ステ ークホル ダー との連携、3.トップマ ネジ メ ン トへの適切 な情報伝 達、の3つ を 目的 と して い る。 そ して原則 の構成 と しては、1.執行 と監督 の分離、2.ア ドバ イザ リー・ボー ド、3.取締役、4.

監査役、 を規定 した。 したがって、 トヨタ原則 は 企業競争力の強化や取締役や監査役へのチ ェ ック 機 能強化に力点 が置かれ た原則であるといえよ う。

1992年 か ら2005年 にか けて松下電 器産 業 (覗 パ ナ ソニ ック) は、 『コーポ レー ト・ガバ ナ ンス に関す る基本 的 な考 え方』 と 『行動指 針』、 そ し て 『コーポ レー ト・ガバ ナ ンスに関す る報告 書

3』 らを策定 した。特 に行動指針 に関 しては、企 業 理 念 的 な性 質 が見 られ た ため1992年 か ら策定

された と考 えられ る。 これ ら3つ をまとめると、1.

経営者 自 ら関係会社 に対す る経営行動規範の伝達、

2.コ ンプ ライア ンス委員会 の充実、 を 目的 と し ている。 そ して原則の構成 と しては、1.取締役会、

のなかに、①社外取締役、(9取締役、を規定 し、2.

ア ドバ イザ リー ・ボー ド、のなかに、(∋社外有識 者 、(む取締役、 を規定 している。 したがって、松 下電器産業 における原則 は経営者や従業員への倫 理 的行動規範 を順守 させ る原則であるとい えよ う。

2004年 にサ ンオ ー タスは 『サ ンオ ータスの コー ポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 (サ ンオ ー クス原則)

‖』 を策定 した。 これ は、1.企業 経 営 の チ ェ ッ ク体制の充実、2.法令順守 と倫理 的 な経営活動、

3.牽制機 能体制の充実、4.経営の効率性の向上、

5.経営 の健 全性 の維持 、 の5つ を 目的 と して い る。 そ して原則の構成 と しては、1.取締役会、2. 経 営会議、3.予算実績検討会、 を規 定 した。 し たがってサ ンオ ータス原則 は、法令順守 と牽制機 能 を充実 させ る原則 であ り、説明責任 を果 た し情 報開示 と透明性確保 に重点の置かれ た原則 で もあ

ると考 え られ る。

2008年 に 日立製 作所 は 『企業行動基準5』 を策 定 したO また、 コーポ レー ト・ガバ ナ ンス体制 と

CS R

経営方 針の両 方 を内在 させ た コーポ レー ト・

ガバ ナ ンスの報告書 には 『企業行動基準』 が 目立

(6)

112 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』 第13号 2009年3月

図表3今 日の企業独 自の コーポ レー ト・ガバナ ンス原則1

トヨタ自動車 (現パナソニ ック)松下電器産業 サ ンオークス 日立製作所

原則策定時期 199720011992(トヨタウェイ年策定年改定年策定) 200511992998年改定年策定年改定 2004年策定 2008年策定 原則の 目的 1.企業競争力の強化 1,経営者 自ら関係 1.企業経営チエツ 1.公正かつ透明な

2.各種委員会やステー 会社に対す る経 ク体制の充実 経営活動 クホルダ‑との連携 営行動規範の伝 2.法令順守 と倫理 2.情報開示 3.トソプマネジメン ト 逮 的な経営活動 3.監督機能の強化

への適切な情報伝達 2.ス委員会の充実コンプライアン 3.4ー5.牽制機能体制の充実経営の効率性の向上経営の健全性の維持

原則の構成 1̲執行 と監督の分離 1ー取締役会 1.取締役会 1.取締役会 2.ア ドバイザ リー.ポー (∋社外取締役 2.経営会議 2.取締役

3.取締役ド

4.監査役 2.②取締役①社外有識者(∋取締役ア ドバ イザ リー.ボー ド 3.予算実績検討会 3.委員会

特徴 取締役や監査役への 経営者や従業員への 法令遵守 と牽制機能 企業理念 に基づいた チェック機能強化に力 倫理的行動規範 を順 を充実 させ る原則 理念的行動規範 とし

(出所)筆者作成。

製作所 の コーポ レー ト ・ガバ ナ ンスの基本方 針で あ る との記述 が明示 され て い る。 これ は、1. 公 正 か つ透 明 な経 営 活 動、2.情 報 開示、3.監 督 機 能 の強化、 の3つ を 目的 と して い る。 そ して原 則 の構成 と して は、1.取 締役会、2.取締 役、3, 委 員会 、 を規 定 してい る。 したが って、 日立製作 所 の企業 行動基準 は企業理念 に基づ いた、理念 的 行動規範 とい う性質 で あると考 え られ る。

図表3で示 した4社 の企業独 自の コーポ レー ト・

ガバ ナ ンス原則 は、 コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス原 則 とい う言 葉 を用 い ない企業 が3社見 られ た。 こ れ こそ、企業 ごとの コーポ レー ト ・ガバ ナ ンスに 対す る解釈 や浸透度 の違 いで あろ う。 さ らに、図

表4で は2006年 か ら策 定 お よび改 定 が行 われ た原 則 をま とめた。

1995年 に花 王 は、 『花 王 ウ ェ イ (企 業 理 念 )』 に基づ いた 『行動原 則16』 を策定 した。 これ は、1.

利 害 関係者 お よび社会 に対 す る社会 貢 献、2.荏 営 の 妥 当性、3. 経 営 の効 率 性 、 の3点 を 目的 と して い る。 そ して原 則 の構 成 と して は、1.取締 役 会、2.取締 役、 の なか に、(D社 外取締 役 を規 定 し、3.監査役 、の なかに、① 社外監査役 を、4. 経営監査室、5.報酬諮 問委 員会 、を規定 してい る。

したが って、花王 は経営効率性 と企業競争力の強 化 を 目的 と した監査室 ・委 員会 よ る業務 チ ェ ック

を行動 指針 に含 め る原則 で あると考 え られ る。

(7)

企業独自のコーポレー ト・ガバナンス原則の役割 と課題 113

図表4今 日の企業独 自の コーポ レー ト・ガバナ ンス原則2

花王 新 日鉄 損害保険ジャパ ン 三井物産

原則策定時期 199519992008年策定年改定年6月改定 2008年策定 20062008年9年7月改定月策定 2006年4月策定 原則の El的 1.利害関係者および社 1.公正かつ透明性 1.株主価値の向上 1.理念 に基づ く経

会 に対す る社会貢献 のある経営 2.経営者 自らのコ 営 目的の達成 2.経営の妥当性 2.従業員教育 ンブライアンス 2.日的達成のため

3ー経営の効率性 3.全社的経営状況教育の徹底の報告義務 3.2の経営の監督 .監査体制の構築て、その構成要素の役割 と要件を満たす ものの内容 に加 え 原則の構成 1.取締役会 1.取締役会 1.取締役会 1.取締役および取

2,取締役 (∋目的別経営委員 (D取締役 締役会

G)社外取締役 会 (∋コンプライアン 2.監査役および監

3.監査役 2.監査役会 ス委員会 査役会

(∋社外監査役 (∋監査役 (∋人事委員会 3.会計監査人

4.経営監査室

5.報酬諮問委員会 3.経営会議 2.監査役会3.監査役による別途監査部門の設置

特徴 経営効率性 と企業競争 全社的な業務監査 と 徹底 した業務監査 に 企業競争力の強化 力の強化 規範意識 を向上 させ よる経営者主体の規 原則による効率的な

監査室 .委員会による 業務チェックを行動指

針に含める原則 る原則 範的原則 構築企業経営機構体制の

(出所)筆者作成。

2008年 に新 日本製蹟 (以下 、「新 日鉄」 とす る) は 『グル ープ企業理念 ・社 員行動指 針7』 を策定 した。 これ は、1.公正 かつ透 明性 の ある経営、2.

従業 員教育 、 の2点 を 目的 と して い る。 そ して原 則 の構成 と して は、1.取締 役会 、の なか に、(∋

目的別 経 営 委 員会 を、2.監 査 役 会、 の なか に、

①監査役 を、3.経営会 議 、 を規 定 して い る。 し たがって、新 日鉄 の原則 は全社 的な業務監査 と規 範意識 を向上 させ る原則で あると考 えることがで

きる。

20069月 に は損 害 保 険 ジ ャパ ンが 『コ ーポ レー ト・ガバ ナ ンス方 針lS』 を取締役会 において 決議 され、 の ちに策定 され た。 これ は、1.株主

価値 の向上、2.経営者 自 らの コ ンプ ライア ンス 教育 の徹底、3.全社 的経営状況 の報告義 務、 の 3点 を 目的 と して い る。 そ の 原 則 の構 成 と して は、1.取 締 役会 、の なか に、(∋取締 役、(むコ ン プ ライア ンス委 員会 、③人事委員会 、を規定 し、2.

監 査 役会、3.監 査 役 に よ る別 途監査 部 門 の設置 、 を規 定 して い る。 したが って、損害保 険 ジャパ ン の原則 は徹底 した業務監査 によ る経営者主 体の規 範 的原則 で あると考 え られ る。

2006年4月に は三井物産 が 『三 井物 産 の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 (以下 、「三井原則」とす る) ユ9』 を策 定 した。 これ は、1. 理 念 に基 づ く経 営

目的 の達 成、2.日的達成 の た め の経 営 の監 督 ・

(8)

114 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』 第132009年3月

監 査体制の構築、3.2の内容 に加 えて、その構成 要素の役割 と要件 を満 たす もの、の3つ を目的 と

してい る。 その原則の構成 と しては、1.取締役 お よび取締役会、2.監査役 および監査役会、3.

会計監査人、 を規定 している。 したがって三井原 則 は、企業競争力の強化 としての側面 と原則 によ る効率的な企業経営機構体制の構築 といった特徴 をもつ ものであると考 えられな 0

3.

企業独 自のコーポ レー ト・ガバナンス 原則の現状 と特徴

3‑1社 内規定的要素のある原則の現状 と特徴 これ まで企業独 自の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス 原則 は、帝人原則や ソニー原則、そ して住友原則 のよ うにおおむね企業競争力強化 と企業不祥事へ の対策 とに 目的や特徴で分拝が可能であった。企 業 ごとの原則には、 コーポ レー ト・ガバナ ンスと い った記載項 目の存在 や、企業 経営機構構 築 と いったコ‑ポ レー ト・ガバ ナ ンスシステムに関す る記載 も見受 けられ る。 しか し、今 日の企業経営 において、環境問題や社会貢献、そ して企業の社 会 的責任 といった課題が立 ちはだかっている。 い つ しか企業はそれ らを原則 に織 り込み、制度改革 や経営改革 とい う側面 が隠れて しまう。つ まり、

企業経営機構 に関 しては取締役や監査役、そ して 会計監査人、委員会設置会社においては各種委員 会項 目の詳細 が一部具体性 に欠けるといった特徴 がある。 その結果、企業の経営理念が企業経営の 基本規定 とな り、原則の内容 に抽象性が生 まれて

しまうもの と考 えられ る。

社内規定的要素のある原則は、原則に抽象性 を 与 える一方で、企業の利害関係者 に対 して効率的 に影響 を与 えている特徴 もあると考 えられ る。た とえば、直接 的に経営 に関与 しない従業員へ は、

企業理念や行動原則の周知徹底 を促 し、自社の企 業経営の理解 を深める目的 として経営者が実践 し ていることが挙げ られよ う。加 えて、直接的に経 営 に関与す る経営陣へ は、企 業理念や行動原則

20(もしくは行動規範)の周知徹底 を土台 として、

土台に基づいた経営戦略の策定 を行っていること が挙げ られ よ う。 そ して経営陣に与 えた原則の影 響 は、従業員への人事教育 に も反映 されてい く。

したがって、抽象性 がある原則で も、社内規定が 企業へ浸透 し実践 されてい くことで有効性 を発揮

しているとい うことができる。

3‑2企業不祥事への対処 と企業競争力の強化のあ る原則の現状 と特徴

コーポ レー ト・ガバナ ンスにおいて、理論的に も広 く認知 されている定義 としてはおおむね、企 業不祥事への対処 と企業競争力の強化 であろ う。

今 日の企業不祥事 においてコーポ レー ト・ガバ ナ ンスが欠かす ことので きない今、企業独 自の コー ポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 に もその役割が求め ら れて い る。今 回検 討 した11社 の原則 を比較 す る と、 まず、帝人 とソニー、そ して住友商事 はコー ポ レー ト ガバ ナ ンスに関す る記載はあるが、コー ポ レー ト・ガバ ナ ンスに関す る記載項 目と独立 し た形で企業競争力の強化や内部統制 といった戦略 計画 が記載 されている。

そ して、図表3を分析す ると、松下電器産業 と サ ンオータスは法令遵守や倫理的行動規範の順守 を主 目的 とし、企業不祥事への対処 としての意味 合 いが強 く感 じられ る。 また、 トヨタ自動車 と日 立製作所 は、企業競争力の強化のために監査体制 やチェック機能の強化、そ しで情報開示 といった 活動 を主 目的 と し、一部に企業不祥事への対処の 項 目があるだけに留 まっている。

また、図表4を分析す ると、花王 と三井物産 は 経営効率性 を有す る企業経営機構の構築 を主 目的 とし、企業競争力の強化 としての意味合 いが強 く 感 じられ る。 また、新 日鉄 と損害保険ジャパ ンは 監査体制の強化や経営者 による全社的な規範意識 の向上、そ して従業員教育の実施 により倫理教育 を主 目的 としている。つ まり、企業不祥事への対 策 としての意味合いが強い と感 じられ るD

(9)

企業独 自のコ‑ポレー ト・ガバナンス原則の役割 と課題 115

4.

今後の企 業独 自の コーポ レー ト・ガバ ナンス原則の課題

4̲1経 営者 主 体 に よ る企 業独 自の コーポ レー ト ・ ガバ ナ ンス原則 の浸 透

今 日、 日本 企業 で は コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス 改革 を経営者 が主 体 となって実施 しな けれ ばな ら ない状況 が高 まって い るo そ して、全 社 的 な コー ポ レー ト ・ガバ ナ ンス を実施 し企業 に浸透 させ る ことは、企 業経営者 に とって急 務 で あ る こ とは他 な らない。 しか し、 い まだに 日本企業 は業種 や事 業規 模、 そ して利 害 関係者 の範 囲 で対応 す るコー ポ レ‑ 卜 ・ガバ ナ ンス体制 を築 けて い ない よ うに 思 われ る21。 た だ、 あ ま りに も複雑 な経 営環 境 に 応 じた コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス体 制 の構 築 は、

企業 に とって リス クが生 じて しま うこ と とな る。

つ ま り、経営者 は現行 の経営 をで きる限 り維持 す ることを前提 と して、既 存 の企業経営機 構 を活 か し経営 の活性 化 を推進 させ よ うと して い るので あ

る。

今 回検討 した企業 の なかで も、 多 くの企業 で現 行 の経 営 を維持 し活 か して い る特 徴 を見 出せ た。

これ は、企業経営者 が今 あ る経 営 体制 の状況 を十 分 に理解 した うえで、 さ らな る企 業経営 の効率性 や企業不祥事 を未 然 に防 ぐシステ ム構 築 を実践 し て い る とい うこ とにな ろ うC これ を考察 す るため には、経営者 が企業 経営機構 に対 して特 徴 的 な改 革 を行 った例 を取 り上 げて課題 点 まで検 討 す る こ とが今 後必要 にな るだ ろ う。 また、既 存 の経 営 シ ステ ムにおいて着 目 され て いない社 内制度 に も注 視 しなければ な らない と考 え られ る。

4‑2ア ドバ イザ リー ・ボ ー ドの必要 性 と原則 へ 向 けた有効性

コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス を重要 視 して い る企 業 に とって企業経営機 構 を監 視 しチ ェ ック させ る 体 制 の構築 は必須 で あ ろ う。 しか し、 その よ うな システ ムが企業慣 習 や経営者 の意 向 に よって健 全

図表5ア ドバ イザ リー .ボ ー ド (経 営諮 問委 員会 ) の概要 ア ドバ イザ リー ・ボー ド

(社 内 ・社外 による有識者機 関)

1. 日的

社外 の有識者 による助言や提言 を通 じた経営の透 明性 の向上 を目的 とす る。

2.権限

ア ドバ イザ リー ・ボー ドに決定権限は無いが、取締役会 に対す る経営意 思決定 に関 しての助言や提言 を行 うことがで きる。

3.機能

①企業の経営活動全般の助言 と提言

②指名委員会機能 (会長およびCEOの進退 に関す る提言 と助言) (釘報酬委員会機能 (代表取締役の報酬額や評価 に関す る助言 と提言) 4.開催頻度

国内外含めて年2回程度で開催す る 5.構成

構成人員 は10人程度であ り、その うち7割か ら8割 を社外 の有識者 (企業 経営者、大学教授、各種公的機関の勤務者 な ど)で構成 し、2割程度 を会 長やCEO、 もしくは両方兼務の場合 は相談役 としてい る。

6.任期

原則 として2年間 とし、 その後1年 ごとに自動延長の選択 がで きるもの と してい る。

(出所)TEIJINhttp://w ww.teijin.co.jp/japanese/news/2008/jbdO80430‑2.html 大和証券経営学即各レポー ト2005

http://vvww.air.co.jp/consulting/report/strategy/05083001strategy.html を参考 に筆者作成。

(10)

116 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』 第132009年3月

に機能 しな くな ることはコーポ レー ト・ガバ ナ ン スの仕組み 自体 が無機 能 とな りかねない と考 え ら れ る。 ここで筆者 は、図表2で も取 り上 げた帝人 が企業独 自の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 に も 規定 してい るア ドバ イザ リー ・ボー ド (経営諮問 委 員会)22に関 しての必要性 と他 の企業 や原則 へ の有効性 を示 したい。 ア ドバ イザ リー ・ボー ドは おおむね図表5の よ うな 目的 と権 限、 そ して機能 や構成 となってい ると考 え られてい る。

ア ドバ イザ リー ・ボ ー ドは、図表5の よもに社 外の有識者か らの助言 や提言 をもとに経営の透 明 性 を向上 させ る 目的がある。 さらに取締役会への 助言 と提言 といった権 限 は企業経営 の意 思決定、

つ まり経営活動全般 の意思決定 に携 わ ることが可 能 なことを意味 してい ると思われ る。 さらに、構 成 人 員 で は その人 貝 の約7割 か ら8割 を社外 か ら の有識者 で構成 され、残 りの2割程度 が社 内の会 長 やCEOで構 成 され るよ うな仕組 み で あ る。 ア ドバ イザ リー ・ボー ドの利 点は、今 までの社外取 締役の任 命 といった次善策 として客観 的視点 を経 営判断に関与 させ ることがで きる点であると考 え られ る。 したがって、 これか らの企業経営 に対 し ての コーポ レー ト・ガバ ナ ンス対策 と した施策 に おいて積極 的な役割 が期待 されてい る。 また、各 企業での企業独 自の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原 則への織 り込み も期待すべ き点であろ う。 しか し、

ア ドバ イザ リ‑ ・ボー ドも日本企業 では さほ ど普 及率 が高 まってお らず、その企業の経営体制や慣 行 に適応 で きるシステムとな りうるには まだ多 く の課題 が残 されている。

4‑3ア ドバ イザ リー ・ボー ドの企業経営における 位置づ けと実効性

企業経営 におけるコーポ レー ト・ガバ ナ ンスを 考 え、企業への有効性 や実効性 を常 に検討 してい る企 業経営者 は企 業 に とって も、 そ して社会 に とって も必要 な存在である。 また、企業経営者 が コーポ レー ト・ガバナ ンスに深い認識 を している とい う前提 で コーポ レー ト・ガバ ナ ンス政策 に取 組 むことは、少 なか らず企業 に良い影響 を与 える

ことがで きるのではないか と推測 で きよ う。 なぜ な らば、企業の経営体質や組織 的慣行 に関す る知 識 (兼 ね て か ら企 業 内で議論 され てい るコーポ レー ト・ガバ ナ ンス政策 を含む) が、筆者 の提案 す る次 の2つ の可能性 に よって ア ドバ イザ リー ・ ボー ドの原則 における有効性 と実効性 の発揮 に貢 献 で きるので は と考 えてい るか らで ある。 まず、

1つ 目は、既存 の システムを応 用 し効率経営 に結 びつ けることがで きる可能性 があること、 そ して 2つ 目は、企業 を取 り巻 く経営環境 に応 じた新 し い経営 システ ム を構 築 で きる可能性 が あ ること、

である。

5 おわりに

本稿 で は特 に 日本 企業 の なかで もコーポ レー ト・ガバ ナ ンスに積極 的な企業 につ いて触 れ、そ の企業独 自の コーポ レ‑ 卜・ガバ ナ ンス原則 を策 定 してい る特徴 と現状 につ いて検討 を行 った。 そ して、先行研究 に加 えて新 たに8社 の企業独 自の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 に触れたことでそ の原則 の性質 が、業種や規模 、そ して企業理念 に よって違 う形 を とることを論 じて きた。 さらに、

それ らの原則の現状 はいまだに抽象性 があ り、偏 りのある状況で ある。 しか し、その現状 の改善の ためには、原則 の統一性や 目的の一貫性 を視野 に 入れ る必要 があ り、 それは企業 に とって困難 を極 め るであろ う。今 日において この間題 は、 コーポ レー ト・ガバ ナ ンスを企業 で活 かす経営者 の意識 度 にあると考 えて よい と思われ る。 また、最終的 な結論 と して企業独 自の コーポ レー ト・ガバ ナ ン ス原則 には新 たなシステムを作 り上 げる制度 が織

り込 まれ ることが必要 であることを述べた。筆者 はその対策 と してア ドバ イザ リー ・ボー ドの今後 の可能性 と必要性 を挙 げた。 また、そのア ドバ イ ザ リー ・ボー ドの機能 は既存の企業経営機構 に何 らかの影響 を与 えうると考 え、企業独 自の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則への必要性 につ いて これ か らの課題 にな ると提言 した。

日本企業 は今、企業不祥事 をいかに起 こさない

(11)

企業独自のコーポレー ト・ガバナンス原則の役割と課題 117

ような仕組み作 りをす るか とい う対策 に力 を注 い でいる。 そのために作 られた企業理念や企業倫理 規範 などは持出すべ きで あると思 えるが、 それだ けで経営者の暴走 や従業員の反倫理的行動 は抑止 させ られ るであろ うか と疑問が残 る。筆者 は、企 業独 自の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則の役割 を より広 げなければな らない と考 えるとともに、そ の有効性 のある原則 として今後の企業の動向に注 目してい きたい。 なぜ な らば、企業の性格 によっ て原則の形 が異 なるのであれば、企業 を追 うこと が新 しい経営 システムの構築 に特色の ある企業経 営 を垣間見 ることがで きよ う。筆者 は、今後 も企 業の特色の ある企業独 自の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 と、その企業経営改革 に注 目しなが ら研 究 を深めてい きたい と考 えてい る。

1 小島大徳 [2004]32‑33頁.

2 小島大徳 [2004]33頁.

3 小島大徳 [2004]135‑136頁.

4 平田光弘 [2008]37頁.

5 佐久間信夫編著 [2007]41‑42頁.

6 キャ ドバ リー委員会報告書 は、取締役会の運 営や社外取締役の役割 を定めた最善慣行規範 を示 し、企業 の 自主 的 な遵守 を求 めてい る。

自主規制 は、 コーポ レー ト・ガバ ナ ンスに携 わる個人の資質 に依存 し、反面 で規範 の遵守 を促 すため権威 を高 める機能 が不可欠である。

コーポ レー ト・ガバ ナ ンスには、取締役会の 運営や情報 開示 などで企業の積極 的な姿勢 を 促 し、評価す る側面 がある。 このため法律 で 大枠 を定 め ることは可能で も、 その運用 には 取締役本人の意識や資質 に依存す る要素が多 く、定着 には法律、 自主規制、規範、個人の 倫理観 と幅広 い手段 を考慮す ることが求 め ら れ る。 「社外取締役 は独立 した判 断 を下す こ とに重大 な支障 を与 えかねない一切の事業上 その他の関係 を有 してはな らな

」 といった 規範 に強制力 はないが、基準 を満 た さない取 締役 を指名す る場合 には、その理 由 を株主等

に説明す ることが求 め られ、企業 が規範 か ら 外 れ る行為 を と りに くい環 境 が規律 にな る。

(http://ⅥW .dbj.go.jp/japanese/download/

pdf/economy/25̲3alし1.pdf#search‑1キ ャ ド バ リー委 員会 報告書は り一 部加筆修 正 を加

えた。)

7 菊池敏夫 ・平 田光弘編著 [2004]152‑164頁.

8 小島大徳 [2004]124頁.

9 小 島大徳 [2004]163頁,お よび以下 の報告書 を参照 した。

TEIJINアニュアル レポー ト2008http://www.

teijin.co.jp/japanese/ir/doc/annua12008/

arO8̲all.pdf

TEIJINコ ー ポ レ ー ト・ガナ ンス ガ イ ド 2007

http://www.teijin.co.jp/japanese/abou

t /

aboutO4̲10.html

TEIJINコ ー ポ レ ー ト・ガバ ナ ンス 報 告 書 2008http://ⅥW .teijin.cojp/japanese/about/ aboutO4̲12.pdf

lO ソニ ーにおけるコ‑ポ レー ト ・ガバ ナ ンスに ついては以下の報告書 を参照 した。

企業の社会 的責任

httpソ/www.sony.co.jp/Sonylnfo/IR/

financial/al‑/2008/qfhh7cOOOOOhtoada

t t /

arjO8̲07.pdf

コーポ レー ト・ガバ ナ ンス体制

http://www.sony.co.jp/Sonylnfo

/I R/

financial/ar/2008/qmh7cOOOOOht099‑att/ aljO8̲06.pdf

SonyJapan コーポ レー ト・ガバ ナ ンス http://www.sony.co.jp/Sonylnfo/IR/

governance.html

ll住友商事 におけるコーポ レー ト・ガバ ナ ンス につ いては以下 の報告書 を参照 した。

住友商事 アニ ュアル レポ ー ト2008

httpソ/www.sumitomocorp.co.jp/ir/doc/ 2008f/inV2008.pdf

住友商事 イ ンベス ターズ ガイ ド2007

http://www.sumitomocorp.co.jp/ir/doc/

(12)

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2007f/inv2007.pdf

住友商事 コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス原則

http://www.sumitomocorp.co.jp/company/

governance/detailO1.html

12小 島大徳 [2004]120頁. の 内容 を参 考 に一 部 で以下 を参照 した。

トヨタ自動車 コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス報告 書2008

httpノ/www.tOyOta.CO.jp/jp/ir/library/cg/

Corporate̲governance̲reports」.pdf 13松下電器産業 におけるコーポ レー ト ・ガラけ

ンスにつ いて は以下 の報告書 を参照 した。

コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス

httpノ/panasonic.co.jp/company/philosophy/

governance/index.html#section1

行動基準

httpノ/panasonic.co.jp/company/philosophy/ conduc

t /

14 サ ンオ ー タスにおけるコーポ レー ト ・ガバ ナ ンス原則 に関 して は以下 を参 照 した。

コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス原則

http://W .sunautas.co.jp/ir/index.htmi 15日立 製作 所 にお け る コーポ レー ト ・ガバ ナ ン

スに関 して は以下 を参照 した。

コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス

http://www.hitachi.co.jp/ⅠR/Corporate/

governance/index.btm1

16花王 におけ るコーポ レー ト・ガバ ナ ンス と行 動原則 に関 して は以下 を参照 した。

行動原則

http://www.kao.co.jp/corp/about‑kao/

kaoway/index5.lltml

コーポ レー ト・ガバ ナ ンス報告書

http://www.kao.co.jp/corp/abouLkao/aO8/ pdf/20080627.pdf

17新 日鉄 におけ るコーポ レー ト ・ガバ ナ ンス と 行動指針 は以下 を参照 した。

コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス

http://www.nsc.co.jp/company/pd

f /

nscguide2008」̲02.pdf

アニ ュアル レポ ー ト2007

http://www.nsc.co.jp/ir/finance/pdf/ alLanu̲0703.pdf

18損害保 険 ジャパ ンにおけ るコーポ レー ト・ガ バ ナ ンス と方 針 は以下 を参照 した。

AnnualReport損保 ジャパ ン2004

japan.co.jp/ir/presentation/annual/ download/sompoJapanFG2004E.pdf

19三井物産 の コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス原則 に 関 して は以下 を参照 した。

三井物産 コ‑ポ レ‑ ト ・ガバ ナ ンス及び 内部 統制原則

http://www.mitsui.co.jp/company/

governance/02/̲̲icsFiles/

afieldBIe/2008/04/15/ja̲cogovO70801.pdf 20行 動 原 則 ・行 動規 範 は、 各 社 の コ ーポ レー

ト ・ガバ ナ ンス原 則や規範 に含 まれ る場合 と、

コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス原則や方規範 とは 独立 した形 で解釈 しなければな らない場合 を 含めてい る。

21小 島大 徳 [2004]195頁 に基 づ いて論拠 して い る。

22 ア ドバ イザ リー ・ボー ドに関 して は、経営諮 問員会 とい う名称 で一般化 されてい るシステ ムで あ るが、本来 の役割 や名称 の変更 、 そ し て企業経営機構へ の設置法 は企業 に委ね られ てい る場合 が多い と解釈 して い る。 したがっ て、今 回取 り上 げた企業 の なかで役割 と名称 を採用 してい る企業 は帝人 と トヨタ、 そ して 松下電器産業 の3社 で あ り、採用率 が低 い。

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住友商事 コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス原則

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日本の コーポ レー ト ・ガバナ ンス と従業員主権 87 Vl そ もそ も,問 題 は,伊 丹氏 が経営者 を従業員 の 中に含 めてい る こ とにあ る。 その従業員

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過去 5 年間の平均で見ると,基本的な企業業績を表 す ROA(6.25%対 4.85%),ROE(4.09%対 3.78%)

であるからである。 第二章 「企業統治改革」 とあるべき企業統治改革 (コーポレート・ガバナ ンスの強化) ところで、 先にも若干触れたが、

以上のように本稿では、まず、中国におけるコー ポ レー ト・ガバナンスの系譜 を、政治型 ガバナ ン ス、契約型 ガバ ナ ンス、制度型 ガバナ ンスの 3

世界的に経済が発達 し、企業の役割が増大す るとともに、企業の負 の部分が露わ とな り、そ れ を克服す るために、企業の手綱 を締 める方策