研 究論文
原則 とい う響 きか ら
小 島 大 徳
要 旨
コーポ レー ト ・ガバ ナ ンスの議論では、かな らず コーポ レー ト ・ガバナ ンス原則が語 ら れる。 は じめは、 コーポ レー ト ・ガバナ ンスの外堀 に陣取 る程度であった原則 も、い まや 本丸‑ と登 りつめ ようとしている感がある。 さて、 これか ら、い よい よ天守 閣を狙 ってい こうとい う矢先、そ うそ う上手 く戦 を進め られないの も、過去 の歴史 を見ればみ るほ ど説 得力 を増すのである。 これ らの一連の布 陣は、企業経営 をと りま く環境 は暗雲たちこめ、
戦国時代 にある様相 を呈 しているなか、健全 な経営 とは何か、そ して、効率 的な経営 は何 か、 を原則が追い求めていることを立体 的に盛 り上が らせ ているのである。
本論文では、 コーポ レー ト ・ガバ ナ ンスの議論 を振 り返 る とともに、 コーポ レー ト ・ガ バナ ンス を制度あるいは経営実践の場 で活用す るツール としての原則 に焦点 をあてる。そ して、 コーポ レー ト ・ガバ ナ ンスのなかで原則が活用 される意義や性格 を論 じようと考 え ている。 ここ数年 を振 り返 りつつ、論 を展 開 している。
キ ー ワ ー ド :コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス原則 世界標準 経営の 自由
OECD
原則1. 日本 に お け る コーポ レー ト・ガバ ナ ンス 原則 の動向
やや もすれば早す ぎた進展 だったのか、それ とも望 まれない改革だったのか。コーポ レー ト ガバ ナ ンスは、時代 の要請 とともに議論が展 開 され、企業 に取 り入 れ られて きた。その歩み は、
着実かつ冷静であった と評価 す ることにため ら う者 はい まい。 この ように評価 され るのは、多 くの客観 的事実があるか らである。近年の動 向 か ら紹介す ると、 まず、 コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス を導入せ よと、会社法 において明確 に定め られた。 また、有価証券報告書 に もコーポ レー ト ・ガバ ナ ンスに関す る記載 を しなければな ら ない ことに もなった。
この ような制度の話だけでは終 わ らない。企
業 は、 コーポ レー ト・ガバナ ンスを強 く意識 し て経営 を実践 している。 これは、 まず、 コンプ ライア ンス部門の設置や専 門役員機 関 を重視 し た経営行動 に現れている。 また、会社 に関係す る者‑の説明の場 における重 しの役割 をも持つ ように もなっている。
なには ともあれ、 これだけ企業経営 と経営学 に深 く根 を下 ろ した概念、あるいは実践方式 は、
ここ数十年で も、 コーポ レー ト ・ガバナ ンス以 外 に見 当た らない と思 うのである。企業 に関わ るすべての者が関係す る会社 の経営 に興味 を持 ち、時 には愛 をもってムチ を打 ち、時 には自分 の利益 のためにモノをい う。じつ に人間 らしい。
欲望 を喜 ばせ なが ら、最終的には社会 の利益 に も資す るので あ る。 これ を企 業 に対 して ア プ ローチす る手段が、 コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス
とい う訳である。 これを 「抑制 と均衡」 と表現 す ることもある。
制度 と実践の隙間を埋 めるために、数十年、
もしくは大 きな経済変動が起 きた後 に、 コーポ レー ト・ガバナ ンス議論が巻 き起 こるのであろ う。あるいは、経済変動が起 こらない状態が数 十年続いているときにも、 コーポ レー ト ・ガバ ナンス議論が巻 き起 こるのであろう。これには、
い くつかの理由があるのだが、お もに、経営者 側か らは、企業組織 を改革 したい ときに、悪 く 言 うな らば、都合の良い意味 をコーポ レー ト ・ ガバナ ンスが含 んでいるか らだ といえる。 逆 に 経営者以外 の企業関係者側か らは、企業の監督 機能を強めたい ときに、悪 く言 うな らば、 とき には強制力 をも持つ強い権 限を、その者たちに 与 える機能 を含んでいるか らだ といえる。 これ を真正面か らとらえるな らば、企業競争力の強 化機能 と企業不祥事への対処機能 とい う2つの 機能 として表す ことがで きるのである。
コーポ レー ト ・ガバナ ンスの議論では、かな らず コーポ レー ト ガバナ ンス原則が語 られる。
は じめは、 コーポ レー ト ・ガバナ ンスの外堀 に 陣取 る程度であった原則 も、いまや本丸‑ と登 りつめ ようとしている感がある。 さて、 これか ら、いよい よ天守閣を狙 っていこうとい う矢先、
そ うそ う上手 く戦 を進め られないの も、過去の 歴史 を見ればみるほ ど説得力 を増すのである。
その うえでなお、過去 を顧みることな く突 き進 んで きた道程 を振 り返 り、足場 を固めることに 注力 している時期 なのだ とも感 じる。 これ らの 一連の布 陣は、企業経営 をとりま く環境 に暗雲 たちこめ、戦国時代 にある様相 を呈 しているな か、健全 な経営 とは何か、そ して、効率的な経 営 は何か、 を原則が追い求めていることを立体 的に盛 り上が らせているのである。
本論文では、 コーポ レー ト ・ガバナンスの議 論 を振 り返 るとともに、 コーポ レー ト ・ガバナ ンス を制度 あ るい は経営実践 の場 で活用 す る ツール としての原則 に焦点 をあてる。そ して、
コーポ レー ト ・ガバナ ンスのなかで原則が活用 される意義や性格 を論 じようと考 えている。 こ 72 国際経営論集 No.41 2011
こ数年 を振 り返 りつつ、 じっ くりと自問 しなが ら書 き進めてい きたい。
2 .
日本 にお け る コーポ レー ト・ガバ ナ ンス 原則 の意 義日本では、他の国 と比べて類 をみないほ ど多 くの原則が策定 されている。 これにはい くつか の背景が考 えられる。そのなかで もっとも強 く 押 し出される背景は、 1つ 目に、法令 の改正 に よ りコーポレー ト ・ガバナ ンスの重要性 を経営 者が強 く心 に留めるようにな り、 自主的なコー ポレー ト・ガバナ ンス‑の取 り組み‑ と進んだ ことがあげ られよう。 2つ 目に、情報公開や説 明責任 な どの声の高 ま りによ りコーポ レー ト ・ ガバナ ンスの利便性 を経営者が強 く感 じるよう にな り、積極的なコーポ レー ト ・ガバナ ンスの アピール‑ と進んだことがあげ られ よう。 この ような、静 と動の両面か ら経営者の心 に訴 えか けたコーポ レー ト ・ガバナ ンスは、 日本で急速 に拡大す ることになる。それが、この コーポ レー ト ・ガバナ ンスを具体化す る方策 として、原則 を活用 した という背景 につながるのである。
このごろは、あ りとあ らゆる機関が、議論 を した成果物 として原則 を公表するため、有象無 象の感がある。 一つひとつ、 ここであげるとい うことをしないのであるが、 もうしば らくした 後 に、流れをまとめるとい う作業 をしな くては な らないように感 じている。 このような一連の 動向は、否定 されるべ きでな く歓迎 しな くては な らない。力強い経営 を実践するためにコーポ レー ト ・ガバナ ンスはある。一方が信頼 し、 も う一方が安心 を与 える とい う好循 環 その もの が、 コーポ レー ト・ガバナ ンスであると思 うの である。 そ して、そのツールが、原則 なのであ る1。
3 .
コ ー ポ レー ト ・ガ バ ナ ンス原 則 の 二 側 面 と時代の流れ原則 は、経営者策定型 と利害関係者策定型の
2つに大分類 される。 経営者策定型原則 は、経 営者が策定す る原則であるため、その原則が社 内のコーポ レー ト ・ガバ ナ ンス体制 を形作 ると い う効果 を持つ。それに、経営者が策定 した原 則 は、経営者 の意思表 明 とい う情 報 開示 や ア ピール とい う実利がある。有価証券報告書 など で コーポ レー ト ・ガバナ ンスに関す る記載が求 め られるようになってか らは、 コーポ レー ト ・ ガバナ ンス と内部統制が同義語 のように語 られ ることも多 くな り、実用化への一歩 を進み始め た と考 えられる。ただ、 コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス と内部統制は、全 く別の議論であ り、混同 す ることの無い ように気 をつけなければな らな
い 。
一方、利害関係者策定型原則 (企業関係者策 定型原則)2は、経営者 以外 の企業 に関係 す る 者が策定す る原則であるため、その原則が経営 者、あるいは企業組織の コーポ レー ト・ガバナ ンス体制 を強化 させ るとい う効果 を持つ。それ に、企業関係者が策定 した原則 は、経営者 に対 す る監督 と牽制 とい う謙抑的役割 を担 うとい う 実利がある。近時において、上場規則 などで コー ポ レー ト ・ガバナ ンスに関す る規則 を強制的に 守 らせ る潮流 となってか らは、原則 というと遵 守 させ るとい う意味合 いを持つ ようなイメージ を感 じられることも多 くな り、浸透への一役 を 演 じた と考 え られる。ただ、経営は自由である ことが一番重要なのであ り、原則 の法令化 には 十分 に気 を置かなければな らない。
最近では、企業関係者が多 くの原則 を策定 し ているため、経営者策定型原則 よ りも力強い動
きをみせている。それにともなって、企業関係 者策定型原則の色分 けをしなければ、混乱 をき たす状況 にな りつつある。そこで、 この企業関 係者原則 を概観す ると、やは り、株主が関係す る機関や団体が活発 に策定 している。そのため、
何 らかの形で、株主が関与 していると考 えて も 大 きく間違 えることは無いであろう。 株主は、
株主総会で議決権 を行使す ることがで きるし、
その他の場で も、経営 に対 して大 きな影響 を与 える。しか も、株の保有割合 によって、株主の力
は逓増する様子 をか もし出 しているのである。
4.
コ ー ポ レー ト ・ガバ ナ ン ス原 則 と企 業 経営の 自由原則 と経営の 自由の問題 は、密かな課題であ る。 なぜ な らば、 自由な企業活動 を縛 るおそれ があるか らである。経営の 自由については、市 民社会 と企業 との関係の中で論 じるべ きである のだが、当然 に、原則が影響力 を与 える範囲 も、
市民社会 と企業 の関係 の中で収 まるこ とにな る3。そこで、原則の密か な課題 を考 える と、
大 まかに言 って、企業関係者 による原則が、市 民社会 の範 囲 を逸脱 した役 割 を担 うこ とが あ り、それをまず改めなければな らない とい うこ とである。
市民社会の欲望の発現 として、企業制度が形 作 られ、企業が市民の欲求 を代行す る形で市民 の欲望 を実現す る。 ここでは当然 に、企業活動 は、常 に市民の想定の範囲内の行為のみに絞 ら れ る4。そのため、市民、あ るいは市民社会が 想定 していない事件が起 こると、それが企業不 祥事 とい うことになる。そ もそ も、ひとことに 企業不祥事 といって もランクがある。た とえば、
生命 に関わ る結果 を引 き起 こ した企業不祥事 は、 もっとも重い責任 を負 うべ きであろうし、
財産 に関わ る結果 を引 き起 こ した企業不祥事 も、額 にもよるが軽 くはない責任 を負 うべ きで あろう。ただ、社会 に対す るものではな く、単 に会社内で収 まる結果 を引 き起 こした企業不祥 事 は、社会か らの批難 も少 ない。
企業不祥事 を考 えるにあたって も、 ひとくく りに企業不祥事 といって しまうのではな く、市 民社会で どう判断 されるのか、対象物が何であ るのか、の2つの面か ら評価 を下 さなければな らない。 この 「市民対象基準」 を用いて、善か 悪か とい う両極端 な判断だけをすべ きではない のである5。
そ もそ も企業の責任 には、4つの分類がある。
それは、「法律責任
」
「結果責任」
「説明責任」
「社 会責任」であ る6。それぞれ を詳 しくみ ると、まず、法律責任 は、委任契約 に基づいた責任で あ り、一番小 さい責任の範囲である。 また、結 果責任 は、因果関係 に基づいた結果 に対する責 任 であ り、経営者が負 うべ き責任 の範囲である。
そ して、説明責任 とは、説明を尽 くし潔 白を証 明す る責任であ り、契約社会のなかで例示 しに くい責任 の範囲である。さらに、社会責任 とは、
人の道徳 に関す る責任であ り、現代社会で認め ることので きない責任 の範 囲である7。企業 の 責任 は、 これ らの うち、結果責任 によるべ きで ある。 ただ、現実的には、責任 の範囲が広が り つつあ り、 はてにた どり着いたのは、社会責任 であった。その うえ、社会責任 とい う範囲 も超 えるだけの責任 を負 わせ ようとす る機運 もな く はない8。
原則、 と くに
OECD
原則 な どは非拘束性 と 参照可能性 とい う性格 を持つ ことか らもわかる ように、上場規則 に採用 される原則 などの特別 な性格 の原則以外 は、基本的に守 らなかったか らとい って法 的責任 を負 うとい うもので はな い。原則 は、経営の 自由と寄 り添い、同 じ概念 で多 くの部分が重 な り合 うのである。 だか らと いって、対立 しないわけではない。た とえば、経営者の 自由な意志 に基づいて策定 された原則 と、株主の 自由な意志 に基づいて策定 された原 則 は、時 として鋭 く対立す ることになる。 経営 者の原則 によってコーポ レー ト ・ガバナ ンス体 制 を構築 した として も、株主の原則 にか らみる
と不十分であることも十分 に考 え られる。ただ、
一方の 自由 とまた一方の 自由が対立関係 にある とき、つ ま り 「自由の対立」状態 こそ、経営の 諸問題が表面化す るのであ り、経営学の多 くの 分野 は、 この 自由の対立9を どの ように解 決す るのかに、時間を割 くことになる。 その意味 に おいて、原則 は、それぞれの主体 における意思 の発現であると評価 して もよいのだろう。
5 .
コ ー ポ レー ト ・ガ バ ナ ン ス原 則 の2 つ
目の波
や は り
、OECD
コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス 74 国際経営論集 No.41 2011原則 は、世界標準 とい うよりも、参照可能性 と 非拘束性の両方 を持ち合 わせ る性格 であった。
その性格 のなかで、最近では、参照可能性 とい う性格 を受ける形での相手方の解釈 によ り、規 範性 を帯びていることが多い と評価 で きるので あ る。 もちろん
、OECD
原則 が規範性 とい う 性格 を持つ ので はな く、OECD
原則 を利用す る側が、相手の性格 を評価す る段階で、独善的 に、場合 によっては偏向的に、規範性 をい う性 格 を重視 してみているといえるのである。 その 意味において、OECD
原則が、世界標準 にもっ とも近い原則 と理解す ることは、何年た とうが 変わることがない真実であったのであろう。ここで論 じている世界標準 とい う議論 は、過 去の段 階 とは別の、新 しい段階に入 っていると みて もよい といえよう。 このことは、世界標準 の原則 を策定 しようとい うよりも、国 と国を結 んだ地域 レベルや企業 と企業 を結んだ企業 レベ ルにおける原則の活用‑ と、軸足が動いている ことか ら導かれるのである。い きな り細かい議 論へ と進 んだ感があるので、 ここで詳 しく世界 標準原則 の説明をしなければな らない。
原則 は、そ もそ も規範 と実践の中間に位置 し て、規範 を実現 させ るための表現物 として、あ るいは実践 を円滑化 させ るための表現物 とし て、存在感 を発揮す るものである。 もっとも、
原則 は、「コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス原則」 と その まま表 された り、「コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス規範
」
「基準」
「準則」 などと、変形 した語 で表 された りするが、それ らのほとんどは、規 範 と実践 の中間に位 置す る とい う意味 にお い て、同義なのである。 そのため、原則 とよばれ る範囲を広 くとって も、 この立ち位置 さえはっ きりさせていれば、何 も不都合が発生す ること はな く、単 なる言葉の相違だけの話 となるので ある10,11。さて、世界標準原則 は、 コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス原則論だけではな く、 コーポ レー ト ・ガ バナ ンス論 をも突 き抜 けて経営学の発展 にも大 きな功績 を上げた といえる。 なかで も
、OECD
原則12は
、OECD
原則 の策定前、策定 中、策定図 1 規範 と実践 と、 そ して原則
(出所)筆者作成。
後 の3つか ら分析 をす る と、OECD原則 の大 きな功績が認め られるのである。 まず、策定前 は、世界標準原則 の策定の機運のなかか ら、原 則の役割や内容が形作 られて くる時期である。
また、策定中は、今 まで他の原則 を策定 してい た者が中心 となって議論がなされて、原則の影 響力や性格が形作 られて くる時期である。 さら に、策定後は、策定 された原則の影響 を測定 し てい くなかで、 さらに原則の深化 を模索す る時 期である。 このような3つの時期 を繰 り返す こ とにより、企業経営 を助けるための、そ して各 国のルールを定めるための基準 を示 してい くと い うサイクルのなかか ら、最良な企業経営‑ と 時代 とともに経営学 は発展 を遂げてい くのであ る。
6 .
経 営 を リー ドす る コ ー ポ レー ト ・ガ バ ナンス原則これ らの原則 は、経営実践の潤滑油 としての 位置づけをもっている。具体的にい うと、図1 の ように規範 と実践の間に、原則 は位置 してい
るのである。近時においては、 この任 に原則が 当たっているのである。原則 は、時や場所 によっ て、多様 な言葉で表現 されるが、その意味は、
多い ものではな く単一の事柄 を指 し示 している のであった。
1990年代初頭か ら原則が策定 されは じめた頃 か ら、OECD原則‑2004‑が策定 され た ころ ま での15年間の原則 を体系化す る作業は、ほぼ終 了 している。 しか し、2000年代半ばか ら今 日ま での新 しい原則 の動向を体系立てて説明 しては いない。 この数年間は、本当に激動 を絵 に措い たような状態 にあ り、制度 も乱立 している。 自 信 を持 って将来 を指 し示す ことがで きない状態 である。そんな状態であるか らこそ、検討 に検 討 を重ねて、企業経営に役立つための諸施策 を 提示 し、実践 させてい く必要があろう。
なにも原則 は 日本だけが活発 に策定 している とい う状態ではない。多 くの国や地域で、原則 作 りに熱心 になっている。 資本市場 を統合 した り、共通通貨 を導入 した りと、経済 を統一化 さ せ ようとす る場合 に、原則が活用 され る13。た とえば、各 国独 自の会社法制度があるのだか ら、
なに も他 の国の会社 法制 度 を導入 す る こ ともな い し、統 一 させ るに して も、 どち らの会社 法制 度 に合 わせ るか な ど、少 し考 えただ けで も頭痛 が お こ りそ うであ る。 そ の ようななかで、原則 を緩衝剤 と して両 国 な らび に複数 国 を接着 させ る役 割 を もつ ので あ る。 ここで は、原則 の強制 的で はない任 意性 が一役買 って、各 国 を安心 し て 目標 ‑ と導 く役 割 を も持つ ので あ る。 これか らもコー ポ レー ト ・ガバ ナ ンス原則 の活躍 に 目 が離せ ない。
参考文献
明山健師 [2011]「EUコー ポ レー ト・ガバ ナ ン スの壮大な挑戦一多様性 と単一性 を保持 した 経営 シス テムの創 出
」
『経営教 育研 究一 日本 の中小企業の発展 と課題‑』Vol.14 No.1, 29‑38頁,学文社.小 島大徳 [2010
]
『株 式会社 の崩壊一 資本 市 場 を 幻惑す る5つの嘘‑』創成社.小 島大徳 [2009
]
『企業経営原論』税務経理協会.小 島大徳 [2007
]
『市 民社 会 とコー ポ レー ト ・ガ バナ ンス』文具堂.小 島 愛 [2008
]
『医療 システム とコーポ レー ト・ガバナ ンス』文其堂.
平 田光弘 [2008
]
『経営者 自己統 治論』 中央 経 済 社 .注
1 この ような意味で原則 をとらえるな らば、実 効性 あるプロセス を経 ようとす る原則 と、報 告書 に近い形 としての原則 との2つ に分 ける
こともで きそ うである。
2 本来な らば、企業の利害 関係者 といわず に、
企業 に関係す る者 と表記す るのが正 しいので あるが、小 島大徳 [2007] に準 じて、 ここで も利害関係者型原則 とい う表記 にす る。なお、
企業 と利害 を有す る者 (利害 関係者)お よび 企業 に関係す る者 (企業 関係者)の意味や区 別 については、小 島大徳 [2009]92頁 を参照 のこと。なお、同書80頁では、一般的な利害 関係者の分類 と、利害 関係者 (請)‑ の批判 を論 じている。
3 企業 と市民、 もっ と深 くい えば、企業経営 と 市民社会の関係 について、基礎 的な論 を、小
島大徳 [2009]第4章 (69‑93頁)で論 じて
76 国際経営論集 No.412011
いる。 また、 ここでの考 え方 を、 よ り実践 的 に論 じた ものに、小 島大徳 [2010]序章 (2
‑12頁)が あ る。 と くに、小 島大 徳 [2010]
の3頁の 「図序 ‑1市民社会 と国家、そ して 会社 制度 の誕生」 と 「図序 ‑2会社存 立 と 経営 目的」 を参照のこと。
4 市民社会 とコーポ レー ト・ガバ ナ ンスの考 え 方 は、小 島大徳[2007]第Ⅲ部の9章、10章、
11章 (155‑225頁) を参照のこと。
5 企業不祥事 の不祥事 とい う言葉 は、悪 い こと をした主体 をごまかす言葉 である、 とい う趣 旨の中村瑞穂氏 らの批判がある。つ ま り、「よ くない こ と
」
「運が悪 か った こ と」 をい う意 味 を含 んでお り、企業が主体 的に犯罪行為 を した場合 に、不祥事 とい う言葉 を使用すべ き でない とい うのである。 もっ ともな考 えであ るが、不祥事 とい う範囲が不 明確 である との 指摘 もせ ざるを得 ない。6 小 島大徳 [2010]123頁.
7 小 島大徳 [2010]122‑124頁.
8 企業の社会的責任 の議論 は、企業の責任 の4 つの分類 の うち、社会責任 に属す る。しか も、
本論で言及 したように、社会責任 の範囲 を突 き抜 けようとしてお り、無 限責任 を負 わせ よ うとす る機運にも入 りつつある。企業経営 は、
他 の分野 とは違い、人権 を考慮 に入 れる余地 があま りないことと、会社形態 に無 限責任 を 負 わせている形態が存在 してい ること、の2 つか ら、責任の範囲を無 限に認める性格 を取
り入 れやす い とい う事情 が あ る よ うに感 じ る。だが、その議論 の方向には、大 きな壁 を 作 らない といけない ように考 えている。
9 小 島大 徳 [2009
]
「第5章 自由 の対 立」95‑119頁 を参照 こと。
10 「コーポ レー ト ・ガバナ ンス規範
」
「基準」
「準 則」 などという使 い方 は、規範 と実践 の両側 面か ら経営 を捉 えると安当ではな く、やは り「原則」 とい う名前 で使用 した方が よい と考 える。
11 小 島大徳 [2004] 8頁の図1‑4で は、原則 の概念的範 囲について図示 しているので、 こ れを参照のこと。
12 0ECDコー ポ レー ト ・ガバ ナ ンス原則 は、
1999年 に初めて策定 されたが、2004年 に改訂 された。 ここでは主 に、1999年 に策定 された 時のOECD原則 を頭 において論 じている。
13 明山健 師 [2011]では、 コーポ レー ト ・ガバ ナ ンスがEUの経済統合や経営 システム統合 に役立 っている とい う。そのなかで、存在感 を表 しているのが、原則 だ と声 を大 に して主 張 したいのである。