神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』 第
1 3
号2 0 0 9
年3月1 5 5
■修士論文要旨
ラテンアメリカにおけるコーポレート ガバナンス
ー資本市場の整備 と経営者の取 り組み‑
CorporateGovernanceinlatin
A
merica‑ Improvementofthecapitalmarketandtheactionofthemanager一
神 奈川大 学大 学 院 経営学 研究科 国際経営専攻 博士前期課程
牧 野 雄 貴
MA氾NO
,Yuki『 キーワー ド
コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス、 コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 、 コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス白書 、地域 円卓会議、 カ ンパ ニ ー ・サ ークル
コ ‑ポ レー ト ・ガバ ナ ンス は
、1 99 0
年 代 初 頭 か ら、先進諸国の研究者 や実務家 によって、議論 や研究 が行われ、企業の コーポ レー ト ・ガバ ナ ン ス構築 が求 め られて きた。先進諸 国 において コー ポ レー ト ・ガバ ナ ンスに関す る議論 や研究 が進 め られ て い くなか、1 9 9 0
年 代 後 半 か ら、 発展 途 上 国 において も議論や研究 が始 まった。 その要 因の 1つ と して、 国際機 関 で あ るOECD
に よ る取 り組 み が挙 げ られ る。OECD
は、発展途上 国 において もコーポ レー ト・ガバ ナ ンス改革 が必要 であると の見解 か ら、1 99 9
年 に策定 したOECD
コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス原則 を広 め るため、OECD
非加盟 国が多 く集 まる地域 を、 アジア、南東 ヨーロ ッパ 、 ユ ー ラシア、 ラテ ンア メ リカ、 ロシア、 の5
つ に 分割 して、 コーポ レー ト・ガバ ナ ンスに関す る円 卓会議 を開催 させ たので ある。 この円卓会議の開 催 をきっかけに、発展途上国において も、 コーポ レ‑ 卜・ガバ ナ ンスに関す る議論 や研究 が活発 と なったので ある。この よ うな取 り組 み が あ る ものの、 い まだに、
発展途上 国 は、 コーポ レー ト ・ガバ ナ ンスへの取 り組 み が鈍 い との 指摘 が 多 く、先進 諸 国 に比 べ、
発展 途上 国 を対 象 と した研究 は少 ない。 しか し、
今 日に至 るまで 円卓会議 が継続 されて い ることか らも、発展途上 国 において も、 コーポ レー ト ・ガ バ ナ ンスへの関心 は高 く研究意義 の ある もの と考 えた。 そ こで、 円卓会議 が開催 されてい る地域 の なかで も、BRICsの一 国 を担 うブ ラジル をは じめ と して、資源 の豊富 さな どか らも今後の経済成 長 に注 目が集 まるラテ ンア メ リカに着 目 し、 コーポ レー ト ・ガバ ナ ンスの特徴 や課題 を明 らか にす る。
また、 ラテ ンアメ リカにおいて、 コーポ レー ト ・ ガバ ナ ンス改革 の ために行 われてい る取 り組 み も 明 らかにす るこ とを 目的 に研究 を行 うことに したO その た め、第
1
章 と第2
章 に お いて、先 行 研 究 として先進 諸国 におけ るコーポ レー ト ・ガバ ナ ンス 議論の進展 を検討 した。また、先進国 におけ るコー ポ レー ト ・ガバ ナ ンス改革 の現状 と して、 日本 の
156 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』第13号 2009年3月
企業経営機構 に焦点 をあて、改革の現状 と課題 を 明 らかに した。 そ して、第3章 と第4章、第5章 に おいて、発展途上国におけるコーポ レー ト・ガバ ナ ンス議論の進展 を検討 し、 ラテ ンアメ リカにお けるコーポ レー ト・ガバ ナ ンス制度の特徴や問題 点、 それ を解決 させ るために行われている取 り組 み を明 らかに した。
これ らの研究 を通 じ、 ラテ ンアメ リカにおいて も、積極的にコーポ レー ト・ガバ ナンスに関す る 議論や研究 が行われていることを明 らかに し、発 展途上国に焦点 をあてた研究の必要性 を明示す る ことがで きた。第1に、 ラテ ンアメ リカをは じめ とした発展途上国では、円卓会議において、地域 の コーポ レー ト・ガバ ナ ンスに関す る特徴や課題 を示 したコ‑ポ レー ト・ガバ ナ ンス自書の策定 を は じめ、近隣の国々が協力 して議論 を行い、 コー ポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 を用いた改革 を積極的 に行 っているのである。 また、 コーポ レー ト・ガ バ ナ ンスの適応範囲 を国有企業や銀行 など、上場 企業以外に も広 げよ うと議論 を重ね、地域全体の コーポレー ト・ガバ ナ ンスを向上 させ ようと取 り 組 んでいるのである。第
2
に、 ラテ ンアメ リカ各 国の コーポ レー ト・ガバナ ンス制度 を明 らかに し た ところ、社外取締役の選任 が義務付 け られてい ない ことや、各種委員会が未整備であること、代 理取締役制度 とい うラテ ンアメ リカ独 自の問題点 を抱 えていることが明 らか となった。 また、議決 権行使の方法が未整備であ り、株主の権利 が尊重 されていないなどの問題 も抱 えてお り、 ラテンア メ リカでは、企業経営機構改革 を中心 とした改革 が必要であることを浮 き彫 りに したのである。第3
に、それ らの問題 の解決 に向けて、企業経営者 が中心 となってコーポ レー ト・ガバナ ンスに関す る議論 を行 うカンパニー ・サークルが開催 された ことや、ブラジルのサ ンパ ウロ証券取引所 におい て、 コーポ レー ト・ガバナ ンスを用いた格付け制 度や株式市場 を設立 したこと、発展途上国の企業 において も、企業独 自コーポ レー ト・ガバナンス 原則の策定が行われていることを明 らかに し、 ラ テ ンアメ リカにおけるコーポ レー ト・ガバ ナ ンスの議論や研究 は、企業の実践へ と移 っているほど、
活発に取 り組 まれていることを明 らかに した。