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コーポレート ・ ガバナンス政策論の基礎的研究

一市民社会 を基 に した コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス原則論 の進展 一

小 島 大 穂

目 次

1

コーポ レー ト ・ガバナンスに関する問題意識

2

コーポ レー ト ・ガバナンス と市民社会

3

市民社会 によるコーポ レ‑ ト ・ガバナンスの必要性

4

経営法学

5

コーポ レー ト ・ガバナンス原則論

6

コーポ レー ト ・ガバナンス政策論

7

次なる課題 に向けて

1 コーポ レー ト ・ガバナンスに関する問

題意識

1.1 コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス機能 に関す る 素朴な疑問 一第

1

の問題意識 一

本稿でお もに論 じるのは、経営学分野だけで はな く、社会科学の一大 トピックとなってい る コーポ レー ト・ガバナ ンス1である。 この コー ポ レー ト・ガバナ ンスが活発 に議論 されてい る 背景は、 も うここで提示す る必要はないであろ う。周知の通 り、コーポ レー ト・ガバナ ンスは、

さま ざまな角度か ら研 究 と実践、そ して提言が な されている。私 は、 この よ うな多種多様 な議 論を歓迎す る。 しか し、同時に、コーポ レー ト・

ガバナ ンスに何 を求め、 どのよ うな機能 を有 し ているかが良 く分か らな くなるほ どの議論の拡 散は、戸惑いを覚 える。

早速ではあるが、図 1をみていただきたい。

コー ポ レー ト ・ガバナ ンスは、お もに、(1)各 学問領域、 (2)利害関係者、 (3)個別課題 、の3

か ら論 じられている とま とめることができる。

まず 、(1)につ いては、経 営学 をは じめ、法学 や経済学 とい う学問分野で、それぞれの学問的 背景を交えなが ら企業 を捉 え、 コーポ レー ト・

ガバナ ンスの機能 として組み込み、企業の コン プライアンス体制や効率経営 を求めよ うとして い るこ とを内包す る。 また、(2)については、

株主や従業員、機 関投資家な どといったそれぞ れの利害関係者集 団が、それぞれの利益を念頭 に置 きつつ、企業経営の改善を求めてい ること を表現 してい る。 さらに、 (3)については、近 年、企業買収や経営革新 な どといった個別経営 問題 とコーポ レー ト・ガバナ ンスを絡 め、限 ら れた経営事象な どに限定 し論 じられ ることが増

えていることを示 してい る。

はた して、 この よ うに各々がば らば らにコー ポ レー ト・ガバナ ンスを論 じてい る状態で、有 効的なコーポ レー ト・ガバナ ンスを企業経営に 反映 させてい くことができるのか とい うのが、

本稿 にお ける第1の問題意識である。

(2)

1

コーポ レー ト ・ガバナンス問題 に対するアプローチ

(出所)筆者 作成。

1. 2

コ‑ポ レー ト ・ガバナンス と企業不祥事 一第

2

の問題意識 ‑

それ とは別 に、私は以前か ら、 どうして も気 になる事柄があった。それ は、企業不祥事 は、

コーポ レー ト・ガバナ ンス機能か ら発見 され る わけで もない し、収束す るわけで もないのでは ないか とい う疑問である。た とえば、企業不祥 事の端緒の側面をみ ると、従業員 な どか らの内 部告発が多数 を占めている。 また、企業不祥事 の落着方法の側面をみると、消費者やマスメデ ィ アによる社会的批判が強ま り経営者が辞任す る ことが多い ことに気づ く。私が研究 を行 ってい るコーポ レー ト・ガバナンス論か らみると、少々 矛盾 を感 じる。 なぜ な らば、 コーポ レー ト・ガ バナ ンス論の企業不祥事‑の対処策では、主 と して企業内部 (経営者)によるセル フ ・ガバナ ンスによ り事前に不祥事の種 を摘みつつ、企業 外部者 によるチェ ックによ り常に緊張感 をもっ た企業経営の実践 を要求 してい るか らである。

つま り、 コーポ レー ト・ガバナ ンスの本質的な 機能によって、企業不祥事が発見 されたので も、

幕が下ろされたので もないのである2。

この ことは、第 1の問題意識 とも密接 に関係

し、 さま ざまな角度か ら論 じられているにもか かわ らず、一向に コーポ レー ト・ガバナ ンスの 全体像が把握 できていない ことにも関係 してい

ると思われ る。

1. 3

コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス と企業経 営の 影響力 ー第

3

の問題意識 一

第1と第2の問題意識か らも導き出され るが、

個 々ば らば らに論 じられ るコーポ レー ト・ガバ ナ ンス論 は、果た して有効 に作用す る論 なので あるか、そ して、それぞれの利害関係者が各々 の利害を中心に企業に影響力を行使す る状況が、

果た して最良の企業経営に導 く結果 になるのか とい う疑問を生み出す ことにもなる。 くわえて、

特に第 2の問題意識 か ら、企業不祥事によって 負 の影響 を受 けるのは、第一義的利害関係者だ けではな く第二義的利害関係者 ではないか とい う疑問 も導かれ る。 もしかす ると、最近の企業 不祥事 を深 く検討す ることによ り、第二義的利 害関係者 の方が、企業不祥事の与 える規模 も深 刻度 も大 きい ことがわかるのか も しれない との 感触 をも持 っている。

この よ うに考 えると、従来の コーポ レー ト・

ガバナ ンスの枠組みで論 じてい ることが妥 当な

(3)

2

コーポ レー ト ・ガバナンス問題 に対するアプローチ と浸透

(出所)筆者作成。

のか とい う疑問がわいて くる。 これが第3の問 題意識 である。

1.4 コーポ レー ト・ガバナンスの基礎的な概念

私は、上記の よ うな3つの問題意識 を考 える と、従来の コーポ レー ト・ガバナ ンス論 には、

共通 した基礎的な概念 が欠 けているのではない か と考 えるに至った。 つま り、その概念が共有 されていないか らこそ、各学問領域では学際的 な研究が劇的に進む こともな く、各利害関係者 間では各々の利害による企業‑のアプ ローチが 行われ、個別課題 の多様化 で コーポ レー ト・ガ バナ ンス論の確立はお ろか、分散化お よび拡散 化が起 こっている。また、このよ うな状態では、

企業の本質 を捉 えることも、企業経営に役立た せ ることもできるはず がない。

そ こで、私は、市民社会 とい う概念 を用いて コーポ レー ト・ガバナ ンスを考 えることに着 目 した。その概念 を用いることで、図 2のように、

コーポ レー ト・ガバナ ンスの各領域 を周辺 に浸 透 させ、最終的に企業 と社会や企業経営 自体に 有効なコーポ レー ト・ガバナ ンスを確立す るこ

とができると考 えるのである。

本稿では、 このよ うな3つの問題意識 と道筋 を基 に して、まず、市民社会論 を経営学的に応 用 し、 コーポ レ一一ト・ガバナ ンス と市民社会の 関係 を明 らかに した論3を発展 させ 、 この研 究 か ら明 らかに された コーポ レー ト・ガバナ ンス 論 をよ り実効性 のあるもの とす るための、 コー ポ レー ト・ガバナ ンス政策論 (コーポ レー ト・

ガバナ ンス論、 コーポ レー ト・ガバナ ンス原則 論、経営法学を内包 した概念) とい う考え方 を 提示す ることに力 を入れ ることにす る。

2

コー ポ レー ト・ガバ ナ ンス の新 た な展 開

2. 1

コーポ レー ト ・ガバナンス と市民社会

私は、 これ まで、小島大徳 『市民社会 とコー ポ レー ト・ガバナ ンス』文最堂,2007年.の第

Ⅲ部 において、 コーポ レー ト・ガバナ ンス と市 民社会の関係 を論 じた。 この関係 な どについて は、そ こでの論 を参照 していただ くとして、 こ こでは結論だけを示す。それ は、企業 を中心 と した市民 との契約 関係 を中心に、市民が企業経 営に対 して関与す るアプ ローチ方法 (抵抗権お よび改革権 な ど) を保有 し実行す ることが可能

(4)

となる理論であ り、 これ を 「市民社会 による企 業の統治 に関す る理論 (市民統治)」と名 づ け ている。 この市民統治は、市民が企業に対 して、

間接的に 自由 と人権 を最大限に保障 し、企業活 動 による経済的受益 を受 けることを保障す るも のである。つま り、企業活動 を行 うことを許 し ているのは、 こ うした市民の企業 との契約があ るか らなのである。

市民は企業に対 して、直接的に抵抗権 と改革 権 を有す ることになる。 これ によ り、現代 にお ける企業経営に対す る市民の参加 が正 当化 され ることになる。 これは、市民の改革権 が行使 さ れているか らである。 また、企業の社会的責任 や企業倫理の確立な どは、時代の要請 とい う漠 然 とした概念が、企業の意識改革 を生んでい る とい うよ りも、む しろ市民による改革権の表れ であるといえよ う。 しか し、 こ うした改革権が 行使 されて も、企業は複雑化 している社会 シス テムのなかで無力であることもある。そ こで登 場す るのが抵抗権 である。抵抗権 は、消費者不 買運動や労働組合 でのス トライキな どの諸活動 が当てはまる。

これ らの改革権 と抵抗権 を具体的に制度化 し ていかな くてはな らない し、近い将来、 この よ うな議論がわき起 こって くると考 えてい る。そ の一端が、近年制度化 されてい る。それは、ア メ リカにお ける内部告発者保護制度 である。そ して、 日本で も内部告発制度 を確立 させ よ うと す る気運が高まってい る4 5。

2. 2

コーポ レー ト ・ガバナンス政策論の誕生

さて、本稿で中心的に取 り上げているコーポ レー ト・ガバナ ンスは、企業不祥事‑の対処 と 企業競争力の強化 とを持 ち合わせ る企業経営 シ ステムの構築 を 目的 としている。経営学界だけ ではな く実務界で も、外部者 による監視 ・監督 や、内部者 による透 明性 ・効率化 な どを中心に 議論が行われてい る。 しか し、近年 の企業不祥 事は、 これ らのシステムによって発見 されたわ けで も、解決がな されたわけで もなかった。具

体的には、内部告発 によって不正が明るみに出 て、マスメデ ィアによって経営者 の辞任 が繰 り 返 されている。そ うす ると、このコーポ レー ト・

ガバナンスに関す る研究が盛んに議論 されて も、

その成果が生か されていないのではないか、 と の疑問が沸 き上が らなければな らない。 しか し、

どうい うわけか、 この事実 について皆が 口をつ ぐむ。そ こで私は、 この事実を認 めることか ら 研究 を行 わなけれ ばな らない とい うスタンスを とってきた。 そ して、その前提 となるのが、市 民社会 を前提 とした企業の存続 とい う研究方針 であった。

私がこれ ら研究をす るにつれて、今までのコー ポ レー ト・ガバナ ンスの研 究を真 に企業経営に 役立たせ 、企業 と市民が共存す る社会 システム を構築 し、 さらなる企業 と社会の発展 を 目指す には、新たに3つの研究課題 に取 り組 まねばな らない と痛感 した。その私が取 り組 まねばな ら ない研究課題 は、(1)経営法学、 (2)コーポ レー

ト・ガバナ ンス原則論 、(3)コーポ レー ト・ガ バナ ンス政策論 、である。厳密 に言 えば、 これ らの学問は未だ無いに等 しいのであるか ら、学 問分野の確立を 目指す とい うことになるであろ

う。

3

経営法学

3. 1

経営法学の概要

経営法学 とい う言葉は法学の世界で見受 け ら れ る。そ こでは、企業法や経済法な どといった、

企業活動 を行 う上で必要 とされ る法律 を扱 う分 野 とされてい る。 だが、私の言 う経営法学は全 く違 う。誤解 を恐れずにい うな らば、経営学 と 法学の融合である。

私は、常々不満 に思 うことがある。企業の存 立の基盤 となる法律が改正 されて も、経営学者 のそれ に対す る対応や反応 は どうであろ うか。

そ こにおいて、法改正に反対 とい う言葉が聞か れないばか りか、制度の説 明に終始す るだけな のである。近年は、 さまざまな企業不祥事が起

(5)

3

経営法学の概念図

(出所)筆者作成。

こ り、 「企業は悪」とい うイ メー ジがつ きま と う。その最 中で改正 された企業法制度 とい うの は、企業の経営活動 を縛 るものであることが多 い。現実にその よ うな改正がな されてい る。私 たちは、企業の存在理 由や発展過程 を研究 して いるのであるが、その歴史的な流れ を考慮す る ことな く、その場の雰 囲気で企業法制度が改革 され ることがある。 さま ざまな意見があること は承知 してい るが、敢 えて言 うな らば、 コーポ レー ト・ガバナ ンスの根底 にある経営者支配 を 助長す る改正が行われ ていることな どが問題 で あろ う。

経営学では、 コーポ レー ト・ガバナ ンスや企 業 システムに関 して、多 くの研究が蓄積 されて い る。今 までの よ うな企業経営に役立たせ ると い う観点や、社会科学 を発展 させ るとい う意味 での研究 も、 もちろん重要である。 しか し、企 業の存続や経営の守備範囲を規定 しているのが 企業法制度であるのだか ら、経営学者 は果敢に この間題 に立ち向かっていかなければな らない。

今 こそ、私たち経営学者 が、法の世界に踏み出 して、新たな企業 と社会 を形成 しよ うとす る時 期 に来てい るのではないだろ うか。

3.2経営法学の捉え方

ここで、1つの問題提起 を しよ う。複雑 に絡 み合 った企業経営において、企業法はなにも法 学の世界だけの ものではない。図3のよ うに、

経営学 と法学が重な り合 った部分が経営法学 と 呼ぶ分野である とす るべ きである。そ して、 こ の経営法学において、企業 目的観や企業運営論 などを基に して中心的な役割を果たすのが、コー ポ レー ト・ガバナ ンス論であるよ うに感 じてい る。最終的に最低限の企業経営のルールが法律 によって規定 され るとい う大陸法系の流れ を く む 日本においては、この図式を頭 に入れた上で、

コーポ レー ト・ガバナ ンスを語 ることも必要で あろ う。そ して、その上で経営学 を考 えるとい うロジックが、今後において求 め られてい くの である。

もちろん、 これは 日本 においての枠組み とし て理解す るべ きである。 なぜ な らば、アメ リカ やイギ リスにおいては、上場規則 な どの形で経 営学な どの視点が多 く採用 され活用 されてい る 事実が見受 け られ るか らである。 しか し、 この よ うな英米法の流れ を くむ国々 との国際比較 を 行い、 日本独 自の学問領域 を確 立 し、深化 させ てい く必要 もあろ う。

4 コーポ レー ト・ ガバナンス原則論

4. 1

コーポ レー ト・ガバナンス原則論の全体像

コーポ レー ト・ガバナ ンス原則論 の 目的は、

お もに企業側 の コーポ レー ト・ガバナ ンス構築 をいかにす るべ きかである。具体的には、大 き

(6)

4

コーポ レー ト・ガバナンス原則論の全体像

(出所)筆者作成。

く(1)原則 の体系化、(2)原則 の強制化、 (3)企業の 実践化、の3つに分類す ることができる。まず、

(1)では世界 中で400以上 も策定 され てい る原則 をひ とつずつ紐解 き、原則 の体系を明 らかにす ることで、最良の コーポ レー ト・ガバナ ンス構 造 を確立す ることに寄与す る。その際には、世 界標準原則なども重要な論点 として浮かび上がっ て くる ことにな る。 また、 (2)では原則 を用 い て各国 ・各地域の コーポ レー ト・ガバナ ンス問 顔‑のアプ ローチ体制 を作 り上げることに主眼 が置かれ る。今 日の原則 は、企業法制度だけで はな く上場規則 な どで も各企業に対 して強制力 を持 ち始 めてい る。 さらに、 (3)では原則 を用 いた企業経営の姿を明 らかにす る。それによ り、

真の コーポ レー ト・ガバナ ンス実践の形 を提示 す ることができよ う。

コー ポ レー ト ・ガバ ナ ンス原則論 は、(1)を 中心 として総論部分の研究が積み上がってきて いる。 これか らは、体系化 された原則 が利害関 係者 によ りいかに活用 され、 どのよ うに企業経 営に対 して影響 を与えてい るのかや、企業はい

原則の体系化

原 則 の 強 制

業の実践化

かに して原則 を用いた企業経営 を行 ってい くべ きか、 とい う研究の潮流に さしかかってい る。

4. 2

コーポ レー ト・ガバナ ンス原則論の捉え方

コーポ レー ト・ガバナ ンス原則論 は、既 に述 べた経営法学で確立 した基本的ルールにのっとっ て、企業経営 を 自由に行 う上での指針 となる原 則 である。だが、それだけではな く、世界 中の 原則が企業法や上場規則、機 関投資家原則 な ど に活用 され、直接的にも間接的に も影響 を与 え ている事実を考 えると、経営法学 とコーポ レー ト・ガバナ ンス原則論 は、全 く無 関係 であると い うことはな く、む しろ両者が影響 を与えなが らよ りよい企業経営 システムを生み出 してい く 関係 だ と考 え られ よ う。

ともあれ、 コーポ レー ト・ガバナ ンス原則 の 研究は、多 くの課題 を提示 し解決策‑導いて く れる。上述のような発展途上国のコーポ レー ト・

ガバナ ンス もその1つであるが、他 にもさまざ まな研究課題 を提示 して くれている。た とえば、

(7)

5

コーポ レー ト ・ガバナンス原則論の各論

(出所)筆者作成。

小 島愛[2006d]に よる と、近年 、医療 ・病 院経営 分野 に原則 が用い られ てい る とい う。 もはや原 則 も営利企業だけに適用 され るものではないの だ とい う驚 き とともに、私 は これ らの問題 をも 含 めた課題 に真筆 に向 き合 っていかなけれ ばな

らない と決意 してい る6。

4.3コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス原 則 の分 類 と コーポ レー ト ・ガバナ ンスの範囲

今後、具体的に コー ポ レー ト・ガバナ ンス原 則論 を企業経営 に役 立たせ てい くためには、 も う少 し深 い考察がい くつか必要である。 そのた めに、私 は現在 の ところ、 2つの課題 を解決す ることが必要であろ うと考 えてい る。第1に、

既存の コーポ レー ト・ガバナ ンス原則論 のなか で、今 まで論 じて きた よ うな全体的な研 究 とは 別 に、具体的な研究を行 うことである。第 2に、

コーポ レー ト ・ガバナ ンス原則論 とコー ポ レー ト・ガバナ ンス論 との関係 な ど、他 の学問領域 といかに関係す るか とい う研 究 を行 うこ とであ

る。

図6の よ うに、原則 は、国際機 関、機 関投資 家原則 、各国内原則 の3つ に分類す ることがで きる。 これ をよ り具体的に性格付 けるな らば、

国際機 関原則 は最広義の コーポ レー ト・ガバナ ンス、機 関投資家原則 は広義 の コーポ レー ト・

ガバナンス、各国内原則は狭義の コーポ レー ト・

ガバナ ンス とい うよ うになる。

4.4 コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス の体 系 とコー ポ レー ト ・ガバナ ンス原則論

図6をコーポ レー ト・ガバナ ンスの体系に当 てはめる と、図7の よ うに表す ことができる7。

図8は、世界の代表的な原則 を詳細 に検討 した 結果 として、 コーポ レー ト・ガバナ ンスの体系

として表 した ものである。

狭義 の コー ポ レー ト・ガバナ ンスは、企業経 営機構改革に焦点が集まる。そ して、広義のコー ポ レー ト・ガバナ ンスは、企業経営機構改革 、 利害 関係者 、情報 開示 ・透 明性 の3つの部 を指

(8)

図 6 コーポレー ト・ガバナンス原則の分類とコーポ レー ト・ガバナンスの範囲

原則の分類 コーポ レー ト ・ ガバナンスの範囲

(出所)筆者作成。

図 7 コーポ レー ト ・ガバナンスの体系

(出所)筆者作成。

す。また、最広義のコーポ レー ト・ガバナ ンス は、図

8

では表す ことができないが、図

8

の社 会 システム とコーポ レー ト・ガバナンスを論 じ た論文

8

によ り、複数の社会 システムにまたが るコーポ レー ト・ガバナンスを指す としている。

これは図

6

のコーポ レー ト・ガバナンス原則 の分類によるコーポ レー ト・ガバナ ンスの範囲

にも対応す ることになる。具体的には、世界標

準原則は、最広義のコーポ レー ト・ガバナ ンス

であ り、複数の社会 システムにまたがる内容を

包括 し、社会 システム共通のコーポ レー ト・ガ

バナ ンスを浸透 させ よ うとす る。 また、機関投

資家は、広義の コーポ レー ト・ガバナンスであ

り、企業経営機構改革、利害関係者、情報開示 ・

(9)

図 8 社会システムとコーポ レー ト ・ガバナンス

(出所)筆者作成。

図 9 コーポ レー ト ・ガバナンス政策論の全体像

(出所)筆者作成。

(10)

図10 コーポ レー ト ・ガバナンス政策論 と各領域

(出所)筆者作成。

透明性 の3つ を構築 しよ うとす る。 さらに、各 国内原則 は、主 として企業経営機構改革に主眼 が置かれ、独立取締役規定の導入 な ど、個別的 な企業経営のルール を構築 しよ うとす るのであ る。

5

コー ポ レー ト・ガバ ナ ンス政 策 論

5. 1

コーポ レー ト・ガバナンス政策論の概要

今 日、盛んに論 じられてい るコーポ レー ト・

ガバナ ンス論 の他 に、本稿 では、経営法学お よ び コーポ レー ト・ガバナ ンス原則論 について述 べてきた。 これ をま とめ、 よ り上位概念 を含 め た形で論 じると、以下の通 りとなる。

(1)コーポ レー ト・ガバナ ンス論、(2)経営法 学、(3)コーポ レー ト・ガバナ ンス原則論 、の 3つ を含 めた もの を、 (4)コー ポ レー ト ・ガバ ナ ンス政策論 、 とい う。 また、(1)か ら(3)の全 てが重 な り合 う部分 を(5)コー ポ レー ト ・ガバ ナ ンス と市民社会 を表す。今 までの コーポ レー ト・ガバナ ンス論 は、必ず しも企業の実践 には 活用 されない。そのため、 この コーポ レー ト・

ガバナ ンス政策論 を深化 させ 、真 の意味で企業 経営にアプ ローチす ることができる体系を確 立 す る必要があると考 えてい る。

5. 2

コーポ レー ト・ガバナ ンス政策論内部関係

コーポ レー ト・ガバナ ンス政策論 は、今後ま す ます大規模化 し社会 に影響 を持つであろ う企 業が、その地位 を明確 に して市民社会 との調和 を図る方策 を探 ることに力点が置かれ る。そ し て、市民社会だけではな く、それ を基盤 とした 政府な ども企業に監視ができる体制 を構築 させ、

一方、企業 も今 まで以上に経営の 自由を確保 し つつ、セル フ ・ガバナ ンスをす ることができる コーポ レー ト・ガバナ ンス構築 に向きあ うツー ル を手に入れ ることができるであろ う。

図9は、既述のように、経営法学 とコーポ レー ト・ガバナ ンス原則論 、そ して コーポ レー ト・

ガバナ ンス論の関係 を示 し、 コーポ レー ト・ガ バナ ンス政策論の全体像 を明 らかに した もので ある。先に、経営法学 とコーポ レー ト・ガバナ ンス原則論 の関わ りについて若干ではあるが言 及 した よ うに、 この3者 は、それぞれお互いに

(11)

影響 し合 っている。 これ ら全体の関係 を明 らか に した とき、それぞれ の学問分野 を確立す るこ とができ、そ して、それ をコーポ レー ト・ガバ ナ ンス政策論 と呼ぶ土壌ができるもの と期待 し ている9.

5. 3

コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス政策論 の相互 関係 と課題

これか らの コーポ レー ト・ガバナ ンスは、図 10のよ うに考 えてい く必要がある。 しか し、本 稿 では、 コーポ レー ト ・ガバナ ンス政策のなか の中心的な課題 (コーポ レー ト・ガバナ ンス論、

経営法学、 コーポ レー ト・ガバナ ンス原則論) の3つについて、相互関係 を明 らかにす る必要 がある。

今後は、a.コーポ レー ト・ガバナンス論 とコー ポ レー ト・ガバナンス原則論

、b.

経営法学 とコー ポ レー ト・ガバナンス原則論、 C.コーポ レー ト・

ガバナ ンス論 と経営法学の3つの相互関係 を明 らかにす る研究に向か う必要がある。そ して、

これ らの3つが確立す ることによ り、数十年間 議論が行われてきた コーポ レー ト・ガバナ ンス の全体像が把握 され、 くわえて市民社会 と企業 の共生 を 目的 とした社会 システムが確立に向か

うもの と考 えている。

6

次なる課題 に向けて

6. 1

コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス と市民社会 の 今後の展開

本稿では、コーポ レー ト・ガバナンス論、コー ポ レー ト・ガバナ ンス原則論、経営法学の3つ か ら構成 され るコーポ レー ト・ガバナ ンス政策 論 の提示 と全体像 を明 らかに した。 もちろん今 後 は、 (2)の コー ポ レー ト ・ガバナ ンス政策論 お よびそれ を構成す る各学問を深化 させ る研究 を行 ってい く必要がある。 これが進んでい くこ とで、 コーポ レー ト・ガバナ ンス と市民社会 を 核 とした コーポ レー ト・ガバナ ンス政策論の確

立が行われてい くであろ うし、 この両者 は両輪 の関係 にあると考 えてい る。

忘れてな らないのは、 コーポ レー ト・ガバナ ンスは最終的に企業経営の実践 を示 し、役 に立 つ ものでな くてはな らない。 この課題 に、精力 的かつ積極的に研究者 も参加す る必要がある。

もちろん研究者 は、現実に企業経営 を執行す る ものではないため、そ こに重点 をおいた提言な どを行 う場面が少ない。 しか し、コーポ レー ト・

ガバナ ンス政策論の一領域 をなす経営法学な ど は、企業経営を形作 るシステムそのものである。

そ うであるか らこそ、研究者 は、客観的かつ論 理的に社会 と企業 を見つめ、人類 と企業の発展 に寄与できる役割 を担 うことができるのである。

6. 2

コーポ レー ト・ガバナンス論 の今後の展開

なお 、私 は、 コー ポ レー ト ・ガバナ ンスを

「所有 と経営が分離 してい る企業 において、経 営者が、企業不祥事‑の対処 と企業競争力の強 化 とを 目的 としなが ら、企業 に関わる利害関係 者の利害調整 を同時に達成 しよ うとす る企業構 造 を構築す ること10」 と定義 してきたが、 これ も主語 を経営者 に限定 してい る点にについて修 正を迫 られ る可能性がある。そ して、コーポ レー ト・ガバナ ンス と市民社会の概念が確立す るに つれて、最広義の コーポ レー ト・ガバナ ンスの 定義は、厳密 に行 ってい く必要があると考 えて いる。 なぜ な らば、市民社会 と多様 な社会 シス テ ム11が一体 となった コーポ レー ト・ガバナ ン スの構築 とい う面を考慮 に入れ る必要があるか

らである12。

最後になるが、本稿で提示 したコーポ レー ト・

ガバナ ンス政策論 とい う研究課題 が生 きて、そ して重要性 が認識 され るの も、今後の研究次第 であるとも感 じている。 これ らの課題 に関 して、

今後、数年にわたる研究を精力的に行 うことで、

よ り具体化 し新たな研究成果 として世に送 りた い と考 えている。

(12)

1私は、 コーポ レー ト・ガバナ ンスを 「所有 と経 営が分離 してい る企業 において、経営者 が、企業 不祥事への対処 と企業競争力の強化 とを 目的 とし なが ら、企業 に関わ る利害関係者 の利害調整 を同 時 に達成 しよ うとす る企 業構 造 を構 築す る こ と (小 島大徳[2004a]i頁)」とひ とまず 定義 してい る。

2小島大徳[2007b]

3小 島大徳[2007b],小 島大徳[2007C],小 島大徳 [2007d]なお、これ らについては、小島大徳[2007a] 第10章か ら第12章において コーポ レー ト・ガバナ

ンス と市民社会の関係 を体系立てて論 じている

4小島大徳[2007d]

5コーポ レー ト・ガバナ ンス と市民社会の関係 な どについては、小 島大徳[2007a]を参照 していた だきたい。

6原則 を研 究す る と、多 くの コーポ レー ト・ガバ ナ ンスの未解決問題 は解決に向か うことができる。

繰 り返 しになるが、原則の研究は、コーポ レー ト・

ガバナ ンスの基礎 的研究に役立つのである。 そ し て、そ こで得 られ た知見は、全世界にお ける企業 の コーポ レー ト・ガバナ ンス構築 に必ず役立つの である。 なお、 コーポ レー ト・ガバナ ンス原則論 の確立過程 (コーポ レー ト・ガバナ ンス原則論 が 基礎研究か ら総論 、そ して各論 に向か う過程) に ついては、小島大徳[2006e]を参照の こと。

7図7は、私が コーポ レー ト・ガバナ ンスの構築 といった場合 に、おおむね企業経営機構改革、利 害関係者、そ してその両者 を繋 ぐ情報開示 ・透 明 性 とい う範囲内に収 まるとい うものを示 した もの である。 これ については、小島大徳[2004a]135頁 を参照のこと。

8小島大徳[2007b]

9この中心的な位置 を占めるのが、コーポ レー ト・

ガバナ ンス と市民社会である。 この市民社会の合 意や支持 があって こその企業経営である し、 もし その視点が今 まで欠 けていた とす るな らば (私は その視点 を欠いていた部分が企業不祥事である と 考 えてい るが)、今一度 、企業経営 の基本 を真剣 に見つめ直す必要がある。

10小島大徳[2004a]i頁

11コーポ レー ト・ガバナ ンス と社会 システムにつ いては、最広義の コーポ レー ト・ガバナ ンスを中 心に実施 され てい くべ きである。 なぜ な らば、概 念 を確立す ることも急がねばな らない とい う視点 をもっ とも重視 しなけれ ばな らない と考 えてい る か らである。

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図 1 コーポ レー ト ・ガバナンス問題 に対するアプローチ ( 出所)筆者 作成。 1. 2 コ‑ポ レー ト ・ガバナンス と企業不祥事 一第 2 の問題意識 ‑ それ とは別 に、私は以前か ら、 どうして も気 になる事柄があった。それ は、企業不祥事 は、 コーポ レー ト・ガバナ ンス機能か ら発見 され る わけで もない し、収束す るわけで もないのでは ないか とい う疑問である。た とえば、企業不祥 事の端緒の側面をみ ると、従業員 な どか らの内 部告発が多数 を占めている。 ま
図 2 コーポ レー ト ・ガバナンス問題 に対するアプローチ と浸透 ( 出所)筆者作成。 のか とい う疑問がわいて くる。 これが第 3 の問 題意識 である。 1
図 3 経営法学の概念図 ( 出所)筆者作成。 こ り、 「 企業は悪 」 とい うイ メー ジがつ きま と う。その最 中で改正 された企業法制度 とい うの は、企業の経営活動 を縛 るものであることが多 い。現実にその よ うな改正がな されてい る。私 たちは、企業の存在理 由や発展過程 を研究 して いるのであるが、その歴史的な流れ を考慮す る ことな く、その場の雰 囲気で企業法制度が改革 され ることがある。 さま ざまな意見があること は承知 してい るが、敢 えて言 うな らば、 コー
図 4 コーポ レー ト・ ガバナンス原則論の全体像 ( 出所)筆者作成。 く( 1 ) 原則 の体系化 、( 2) 原則 の強制化 、 ( 3) 企業の 実践化、の 3 つに分類す ることができる。まず、 ( 1 ) では世界 中で400 以上 も策定 され てい る原則 をひ とつずつ紐解 き、原則 の体系を明 らかにす ることで、最良の コーポ レー ト・ガバナ ンス構 造 を確立す ることに寄与す る。その際には、世 界標準原則なども重要な論点 として浮かび上がっ て くる ことにな る。 また 、
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