神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』第13号 2009年3月 147
■ 修士論文要旨
中国におけるコーポレート ガバナンス
ー コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス原則 と経 営者 教育 シス テ ムー
CorporateGovernanceinChina:
‑ PrinciplesofCorporateGovernanceandtheSystemofManager‑education一
神奈川大学大学院 経営学研究科 国際経営専攻 博士前期課程
■ = ゝ
日 京 哲
ⅩUANJ I NGZHE
■キーワー ド
コーポ レー ト・ガバナ ンス、 コ‑ポ レー ト・ガバナ ンス原則、企業独 自原則、経営者教育原則、経営 者教育 システム
1978年の改革 ・開放政策以前 におけ る中国の 企業は、Eg家 が無限責任 を負 うような工場制企業 であ り、経営 自主権 が行政に占有 され、非効率な 経営状況 に陥っていた。そのため、国営企業の積 極 性 を高 め ることを 目的に、1978年 の改革 ・開 放政策 を契機 に、企業 自主権 を拡大 し、利潤 も企 業に残すよ うな 「放権譲利」改革 が実施 されたの で ある。 さらに、1992年末の郡小平 「南巡講話」
を契機 に、公有制企業の株式会社化が加速度的に 進 め られ、本格的な 「近代的企業制度」の確立 が な されたのである。
この近代的企業制度の もとでは、主 に、株式所 有構造の改革 と企業経営機構の構築 といったコー ポ レー ト・ガバ ナ ンス問題に直面す ることとなっ た。具体的に、株式所有構造の改革では、投資家 による国有企業への投資環境 を整 えるような株式 制度 を形成 す ることで あった。 また、企業経営 機構の構築 では、「新三会 (株主総会、取締役会、
監査役会)」 を設置す ることと、「老三会 (企業
内党委員会、従業員代表大会、労働組合
)
」 によ るガバナ ンス機能 を新三会に移行す ることであっ た。こうした1990年代 におけるコーポ レー ト ガバ ナ ンス問題 を解決 す るために、 中国で は2000年 代に入 り、多 くの コーポ レ‑ ト・ガバナ ンス原則 が策定 されたのである。 また、諸原則 を企業 に浸 透 させ ることにより、健全 なコ‑ポ レー ト・ガバ ナ ンス構築 を図 ろ うとす る。 た とえば、2002年
1
月に政府機関である中国証券監督管理委員会 は、「中国上場会社 コーポ レー ト ガバ ナ ンス原則」を 公表 した。そ して、 この原則 を皮 切 りに広 ま りつ つ ある今 日における諸原則 は、大 きく、政府原則、
証券取引所原則、企業独 自原則 の
3
つ に分潰 され る。しか し、今 日において も収 まらない企業不祥事 をみ る限 り、政府原則や証券取引所原則 ももちろ ん、企業経営者 が自ら策定 した企業独 自原則 さえ、
企業経営 に反映 されて こなかったことが判明で き
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る。 そこで、中国における企業独 自原則の問題点 を整理す ると、主 に
、3
つ があげ られ る。1
つ 目は、 多 くの企業独 自原則 は、受動 的立場 に立 って策定 されたため、実効力のない形式 的な 原則 になって しまったのである。 そのため、経営 者 が主導 的立場 に立 って原則 を策定す る必要 があ る一方、企業独 自原則の遵守意識 を高 め る必要 が ある。2
つ 目は、企業 の遵守 能力 を上 回 るよ うな細 か い原則が多 く、企業経営への応用 には長 い時間が かか るのである。 そのため、企業独 自原則 を自社 の経営環境 に適合 す る最低 限の ものに絞 る必要 が ある一方 、企業独 自原則の遵守能力 を高 め る必要 がある。3つ 目は、企業独 自原則 を機械 的に適用す るの ではな く、常 に変化 させ 自社の経営実態 に合 わせ なが ら有効性 を構築す るよ うな企業経営者 の企業 独 自原則への適応能力 を高め る必要 がある。
つ まり、 こうした形式 的な企業独 自原則 は、単 に策定 され るに とどま らず、 その実効力 を発揮す ることが重要で ある。 そ して、 この実効力 を発揮 す るには、企業経営者の原則 に対す る遵守意識 と 遵守能力、および原則への適応能力 を高 め る必要 があ り、 これ らを目的 とす る経営者教育 システム が不可欠であるとされ る。
中国における経営者教育 システムの 目的は、企 業経営者 が諸原則 を遵守す る意識 と遵守す る能力、
そ して原 則 に適応す る能力 を高 め るこ とによ り、
健全 なコ‑ポ レー ト・ガバ ナ ンス構築 を図 ること で あ り、経営者教育原則 を中心に展 開 されてい る。
経営者 教育 原則 におい て、2005年12月に 中国証 券監督管理委員会 よ り策定 された 「上場会社経営 者教育原則」 が中心 とな り、教育対象 は、上場会 社 における取締役会会長 と執行役会会長、取締役 と監査役、独立取締役 と最高財務責任者 、および 取締 役秘書 となってい る。
こ うした経営者教育原則 を中心 とす る経営者教 育 システムと企業独 自原則 の実効力 との関係 を探 ると、 まず、企業経営者 は、政府原則 と証券取 引 所原則 とを参考 に、 自社の経営環境 に適合 す る企
業独 自原則 を策定す るのである。つ ぎに、企業経 営者 は、経営者教育 システムに参加 し、一定期 間 の教育 を受 け、原則の遵守意識 と遵守能力、およ び原則への適応能力 を高 めてい くのである。最終 的に、企業独 自原則 をめ ぐる諸問題 をク リア しつ つ、その実効力 を発揮す ることによ り、コーポ レー ト・ガバ ナ ンス構築 が可能 となると考 えられ る。
したがって、今 日における中国の コ‑ポ レー ト・
ガバ ナ ンスは、 コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 の 策定 と企業への浸透 、 そ して、経営者教育 システ ムの構築 が中心的役割 を果 たす と思 われ、 これが、
健全 なコーポ レー ト・ガバ ナ ンス構築 において土 台的役割 を果 たす と考 えられ る。