博 士 ( 生 命 科 学 ) 武 村 直 紀
学位論 文題 名
Studies on synbiotic effect of fructo −oligosaccharides on anti ー obese probiotic bacterium
Lac め bacillus pla7zta ダ 銘 所 strainNO . 14inmiCe
(Lactobacillus plantarZt77l No. 14 株の抗肥満作用に対する フ ラクトオリゴ糖のシンバイオテイク効果に関する研究)
学位論文内容の要旨
肥満はメタボリックシンドロームを惹起する基盤であり、近年ではその増加が社会問題とな っている。最近の研究により、腸内細菌が肥満の発達に関与する重要な因子であることが示唆 されてきた。プロバイオティクスは宿主の健康に有益に作用する生菌製剤である。したがって 肥満の予防・改善に寄与するプロバイオティクスを開発できるかもしれない。食品由来乳酸菌 株LactobacZめrsp幽ロぬnヱmNo.14株(LP14)の凍結乾燥菌体を健康な被験者に継続的に摂取 させると、体脂肪率が低下することが報告されている。すなわち、LP14は肥満予防のための プロバイオティクスとなりうる。本研究は、食餌誘導陸肥満マウスを用いてLP14の抗肥満作 用を明らかにすることを第一の目的とした。
プロバイオティクスの効果を十分に得るためには、消化管にその菌数を多く維持し続ける必 要があると考えられる。そのためには、プロバイオティクスの生存や増殖に影響する胃酸や胆 汁酸などのス十レスを減少させる、あるいは定着を促すような状態を確立する必要がある。理 論的には、腸内環境は食餌により制御できる。そこで、消化管におけるLP14の増殖や定着に 食餌が及ばす影響を、動物実験と血疏mの培養実験で明らかにすることを、第二の目的とし た。難消化性オリゴ糖は腸の常在性乳酸菌の増殖を刺激するため、外因性の乳酸菌も管腔内で の増殖や定着が促されるかもしれない。そこで、マウス消化管におけるLP14の増殖や接着に イヌリン型フラクタンが及ばす影響を解析した。一方で、高脂肪食は胆汁酸の濃度を増加させ ることが報告されている。そこで、マウス消化管におけるLP14の生存に高脂肪食が影響する か、さらにイヌリン型フラクタンがそれを改善するかを解析した。
食匳萱幽旦満ヱウスにおけるLP14の抗月巴満作用a星
4週齢の雌陸C57BL/6マウスに、通常食(AIN―93G配合精製飼料)あるいはこれにラードを 添加した高脂肪食を摂取させると同時に、LP14凍結乾燥菌体(1Xl08 CFU/頭)あるいは同質 量の担体(デキストリン)を毎日経口投与して飼育した。通常食と比較して、高脂肪食は体重 を有意に増加させた。LP14は食餌摂取量およぴ体重変化に影響しなかった。通常食と比較して、
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高脂 肪食 は白 色脂 肪 組織 重量 を増 加 させ たが、LP14はそれを抑制 する傾向を示した。血清中の 総コ レス テロ ール 韜 よぴ レプ チン の 濃度 は、いずれも白色脂肪組 織重量と有意な正の相関を示 した 。通 常食 と比 較 して 、高 脂肪 食 は白 色脂肪細胞を肥大させた が、LP14はそれを抑制した。
以上 より 、LP14は 脂 肪細 胞で の脂 質 の蓄 積を抑制して白色脂肪組 織重量を減少させるため、肥 満を予防しうるプロバイオ ティクスであると考えられた 。
LP14の 作用 は未 解 明で ある が、 既 報の プロバイオティクスの抗 肥満機構、すなわち共役リノ ール 酸、 食餌 脂質 の 吸収 抑制 、白 色 脂肪 組織での脂質分解、白色 および褐色脂肪組織での脱共 役タンパク質の発現亢進に はよらなぃことを示した。た だし、LP14摂取群の白色脂 肪組織では、
脂質合成系酵素群のmRNA発 現が減少する傾向にあった。
マ ウス 逍iヒ箜 !三 並 堕るLP! 生堕 壇 殖主 董董 にイ ヌリ ン 型フ ラク タン が及t妾 主鬘 饗堕盤析 平 均 重 合 度 の 異 な る イ ヌ リ ン 型 フ ラ ク タ ン(FOS: 平 均 重 合 度3、INU:平 均重 合 度16)を 用 意 し た 。5週 齢 の 雌 陸ddYマ ウ ス に 通 常 食 、5%FOS添 加食 、あ るい は5%1NU添 加食 を与 え て2日 間飼 育し た。lXl08 CFU/頭でLP14を 経口 投与 し、 後 に排 出さ れる 糞中 の 工.plantarum 生 菌を 選 択培 地で 検出 した 。 通常 食群と比較 して、フラクタン摂取群で はムplantar umの糞中 排 泄 が 増 加 し て おり 、と り わけINU摂取 群で 顕著 だっ た 。糖 質無 添加 のMRS培 地中 で は、FOS とINUは そ れ ぞ れ 同 程度 にLP14の 増 殖を 刺激 した 。一 方 で、 マウ スの 糞 の水 抽出 物を 培地 と し てLP14を 培 養 し た と こ ろ 、 フ ラ ク タ ン 摂 取群 より 調 製し た培 地でLP14は より 増殖 し、 と り わけINU摂取 群で 顕 著だ った 。た だ し、 イヌ リン 型フ ラ クタンは糞中 にはほとんど残存しな い と報 告 され てい る。 以上 よ り、 消化 管に おい て イヌ リン 型フ ラ クタ ンはLP14を直 接刺激し て 増殖 を 促す のみ でな く、 常 在細 菌に よっ て重 合 度に 依存 した 発 酵を 受け 、そ の産 物もLP14 の 増殖 促 進に 寄与 する と考 え た。
マウ ス の胃 より 常在 性乳 酸 菌五johnsomi (LJ)を 単離 し 、リファンピ シン耐陸を誘導した。
LP14と り フ ァ ン ピシ ン耐 性LJ( 各々ix i08 CFU/頭) を マウ スに 同時 投 与し 、そ れぞ れの 糞 中 排泄 を 比較 した 。リ ファ ン ピシ ン耐 陸菌 は投 与 後24時間 以降 一 定数 検出 され 続け たのに対 し て、L.p′anaHzmは 投与 後48時間 で 検出 限界 以下 とな っ た。また、組 織観察により、投与し たLJは 前 胃粘 膜表 面に 多く 接 着す るも のの 、LP14は胃 、小 腸、 盲 腸、 結腸 のい ずれ の粘膜表 面 にも 接 着せ ず、 内容 物に 局 在す るこ とが 確認 さ れた 。イ ヌリ ン 型フ ラク タン はLP14の接着 に 影響 し なか った 。以 上よ り 、LP14は マウ ス消 化 管に は接 着せ ず 、イ ヌリ ン型 フラ クタンは そ れを 促 さな いと 考え られ た 。
直8宣髄 食担 よO亙墨!Z型フラク$と埜 ヱウスの逍iヒ篁!‑おけるLP14堕生在!三盈壁:趨≧饗c 盤盤
6週齢 の雌 性C57BL,/6マ ウス に通 常 食あるいは高脂肪食を摂取 させた。飼育2日後にLP14、 ま た7日 後 に り フ ァ ン ピ シ ン 耐 陸LJを 、 単 独 (1Xl08 CFU願 ) あ る い はINU (10m鹹 ) と 同時に経口投与し、 選択培地を用いて各々の糞中排出を解析した。高脂肪食により工. plantarum の糞 中排 泄 は著 減し たが 、 リフ ァン ピシ ン耐 陸 菌は 変化 しな かっ た。INUは高脂肪食摂取時の 両 菌 の 糞 中 排 泄 を 増 加 さ せ た 。LP14あ る い はLJを コー ル酸 あ るい はデ オキ シコ ー ル酸 添加
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MRS培地で 培養したところ、各胆汁酸の濃度依存的にLP14の生菌率は低下したが、LJはほと んど変化しなかった。培地への【NUの添加は、LP14とLJの生存に影響しなかった。【NUある いは溶媒のみを経口投与した後の小腸および盲腸内容物中の胆汁酸と有機酸を分析した。通常 食群と比較して、高脂肪食群の小腸および盲腸の総胆汁酸濃度は有意に高く、またINUによる 影響はなかった。【NUは高脂肪食群の盲腸中の有機酸濃度を増加させたが、一次および二次胆 汁酸の濃度に影響しなかった。以上より、高脂肪食は胆汁酸濃度を増加させてLP14の生存の 低下させること、またINUはLP14の生存を回復させるが、それは毒性の強い二次胆汁酸の発 生が腸内pHの低下により減少したためではなぃことが予想された。
以上より、イヌリン型フラクタンを摂取すること、また高脂肪食を避けることが消化管によ り多 く のLP14を 維持 し、 ひい ては 抗肥 満作 用を発揮するために有効 であると考えた。
学 位 論 文 審 査 の要 旨
主 査 准 教 授 園 山 慶 副査 教授 有賀早苗
副査 教授 内藤 哲
副査 教授 横田 篤(農学院)
学位論文題名
Studies on synbiotic effect of fructo ―oligosaccharides on anti ―obese probiotic bacterium
Lac 加 bacillus planta ダ勿 0 観 strain No . 14 in mice
(Lactobacillus plantarum No. 14株 の 抗 肥 満 作 用 に 対 す る フ ラ ク ト オ リ ゴ 糖 の シ ン バ イ オ テ イ ク 効 果 に 関 す る 研 究 )
近年、肥満の増加が社会問題となっているが、最近の研究により、腸内細菌が肥満の 発達に関与する重要な因子であることが示唆されてきた。プロバイオティクスは宿主の 健康に有益に作用する生菌製剤であるので、肥満の予防・改善に寄与するかもしれない。
本論文は、乳酸菌株Lactobacillus p幽ロぬnfmNo.14株(LP14)の抗肥満作用を記載 し、本菌株が抗肥満プロバイオティクスであることを示すとともに、食餌条件が消化管 におけるプロバイオティクスの動態に及ばす影響を明らかにすることを目的として、主 として動物実験により解析したものである。
まず、 雌性C57BL/6マウスに高脂肪食を摂取させることにより食餌誘導性肥満モデ ルを作 成し、LP14凍 結乾燥 菌体(lx108CFU/頭)あ るいは 担体(デ キストリ ン)を 毎日経 口投与し た。LP14は食餌摂取量およぴ体重変化に影響しなかったが、高脂肪食 による白色脂肪組織重量の増加を抑制する傾向を示した。また高脂肪食は白色脂肪細胞 を肥大 させたが 、LP14はそれを抑制した。さらに血清中の総コレステロールおよびレ プチンの濃度は、いずれも白色脂肪組織重量と有意な正の相関を示した。これらの結果 より、LP14は白色脂 肪細胞の肥大を抑制することにより肥満を予防するプロバイオテ イクスと成りうることが示唆された。
次に、 腸内細菌 叢を修 飾する食品成分のひとっである難消化性オリゴ糖がLP14の消 化管内動態に及ばす影響を解析した。マウスに基本飼料あるいはイヌリン型フラクタン を添加 した飼料 を与えて2日 間飼育し た後、LP14(1X108CFU/頭)を経口投与し、排 出され る糞中のLP14生菌を選択培地で検出した。基本食群と比較して、フラクタン摂 取 群 で はLP14の 糞 中 排 泄が 増 加 して い た 。一 方 、 マウ ス の 胃 より 常 在 性乳 酸 菌 ヱふcめぬ五ぬs丿ぬ丑s伽丘(LJ)を単離してLP14と同時にマウスに投与し、それぞれの 糞中排 泄を比較 した結果 、LJは投与後24時間以降一定数検出され続けたのに対して、
LP14は投与 後48時間で 検出限 界以下と なった 。また、 組織観 察により 、投与したLJ
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は前胃粘膜表面に多く接着するものの、LP14は胃 、小腸、盲腸、結腸のいずれの粘膜 表面にも接着せず、内容物に局在することが確認された。イヌリン型フラクタンはLP14 の接着に影響しなかった。以上より、イヌリン型 フラクタンは管腔におけるLP14の増 殖を 促進 する が、 消化 管粘 膜へ の接 着を 促進するわけではないことが示唆された。
さらに、胆汁酸はプロバイオティクスの生存・増殖に対するストレスになることが知 られているので、胆汁酸分泌を刺激する高脂肪食 がLP14の消化管内動態に及ばす影響 を解析した。マウスに基本食あるいは高脂肪食を 摂取させ、LP14あるいはLJを経口投 与し、選択培地を用いて各々の糞中排出を解析し た。高脂肪食によりLP14の糞中排泄 は著減したが、LJは変化しなかった。イヌリン型 フラクタンは高脂肪食摂取時の両菌 の糞中排泄を増加させた。LP14およぴLJを胆汁酸(コール酸およびデオキシコール酸)
添加培地で培養したところ、各胆汁酸の濃度依存 的にLP14の生菌率は低下したが、LJ はほとんど変化しなかった。培地へのイヌリン型 フラクタンの添加は、LP14とLJの生 存に影響しなかった。小腸およぴ盲腸内容物中の胆汁酸を分析した結果、基本食群と比 較して高脂肪食群の小腸およぴ盲腸の総胆汁酸濃度は有意に高く、イヌリン型フラクタ ンはこれに影響しなかった。イヌリン型フラクタンは高脂肪食群の盲腸内の一次および 二次胆汁酸の濃度に影響しなかった。以上より、 高脂肪食は胆汁酸濃度を増加させて LP14の生 存の 低下 させ るこ と、 また イヌ リン型フラクタンはLP14の生存を回復させ る が 、 そ れは 毒性 の強 い 二次 胆汁 酸の 発生 を抑 制し たた めで はな ぃと 推察 した 。 これを要するに、著者は、体脂肪蓄積を抑制するプロバイオティクスを見出し、その 消化管内動態に対する食餌の影響に関する新知見を得たものであり、肥満予防のための 新たな方策確立へ貢献するところ大なるものがあ る。
よって著者は、北海道大学博士(生命科学)の学位を授与される資格あるものと認め る。
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