博 士 ( 農 学 ) サ ラ ン ヤ ーケ ウ プラ サ ート
学位論文題名
Nutritional and Biochemical Studies of Dietary Cyclodextrins
(シクロデキストリンの栄養生化学的研究)
学位論文内容の要旨
本 論 文 は5章 か ら な る 頁 数108の 英 文 論 文 で あ り 、 図10、表17、 引用 論文113を 含んでいる。
シク口デキストリンはa ‑1.4結合のグルコースから構成される環状オリゴ糖である。
市 販の シク 口デ キス トリ ンは6個、7個 、8個 のグ ルコ ース から 出来 てい て、 それ ぞ れa'、B‑、ア ̄シクロデキストリンと呼んで いる。これらのシクロデキストリンは天 然 には存在しない。デンプンから微生物由来 のシク口デキストリングルコシルトラン ス フウラーゼの作用で生成される。シクロデ キストリンの利用はその特異的な環状構 造を示し、シリンダーのよう な型をとり、外部は親水性であり、内部は疎水性である。
こ の特異的な構造のため、シク口デキストリ ンはホストとして作用し、例えば食品添 加 物などの低分子化合物をゲスト分子として 内部にとりこむ。内部に化合物をとりこ む性質は食品分野で探求され 、食品添加物としてシク口デキストリンは日本において、
抗 酸 化 剤 、 味 ・ 香 り の 保 持 、 苦 味 の 低 減 等 の 目 的 で 用 い ら れ て い る 。 しかし、シクロデキストリンの栄養学的生 理機能はほとんど研究されていない。近 年 バイオテクノ口ジーの発展によルシク口デ キストリンの工業的生産を可能にしたの で、栄養生化学的研究に適用 できることとなった。
本研究はa‑、ロ‐、ア・シ ク口デキストリンの 1.脂質代謝
2.肝、腎、小腸のメ夕口チオネイン遺伝子発現 3.数種の銅夕ンバク質の活性および遺伝子発現 の3項目について比較研究を行った。
1.肝、血清脂質に対するシク口デキスト リンの栄養学的効果
ウィスター 系雄ラットに基本食、5%a‑シク口デキストリン食、5%ロ‐シク口デキ ストリン食、5%ア‐シク口デキストリン 食を7日間自由摂取法により与えた。体重増 加量はロ・シ ク口デキストリン食の摂取によって低下した。a‑、あるいはB‑シク口デ キストリン食 の摂取は血清コレステ口ール低下させた。a ‑、あるいはロ‐シク口デキ
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ストリン食の摂取によって盲腸の組織重量、盲腸内 容物の量が増加した。盲腸内容物 の酢酸、プ口ピオン酸量が顕著に増加した。
とくに食事a‑シク口デキストリンが大腸において 低級脂肪酸を増加させた結果、血 清 コ レ ス テ 口 ー ル 低 下 作 用 を 有 す る こ と を は じ め て 明 ら か に し た 。
2. 数 種 の 臓 器 に お け る メ 夕 口 チ オ ネ インmRNAレベ ル は食 事シ ク口 デキ スト リン によって変動する。
ウィスター系雄ラットに基本食5%a‑シク口デキストリン食、5%ロ‐シク口デキス トリン食、5%ア‐シ ク口デキストリン食を7日間 自由摂取法により与えた。肝亜鉛量 はロ・シク口デキストリン食群において増加した。腎銅量はa‑シク口デキストリン食、
B‑シク口デキストリン食群において増加した。 血清銅含量はロ・シク口デキストリ ン食群において高かった。一方、血清亜鉛含量はァ・シク口デキストリン食群において 高かった。ロ ̄シク口デキストリン食、ア・シク口デキストリン食摂取は、肝メ夕口チ オ ネ イ ンmRNAレ ベ ル を 増 加 さ せ た 。 一 方 、 小 腸 の メ 夕 口 チ オ ネ イ ンmRNAレ ベル は 低 下 し た 。腎 臓メ 夕口 チオ ネイ ンmRNAレ ベル はa‑シ ク口 デキ スト リン 、B‑シク 口デキストリン、ア‐シク口デキス卜リン食摂取によって増加した。小腸のメ夕口チオ ネイン遺伝子発現は小腸の銅、亜鉛含量とは比例 しなかった。肝と腎のヌ夕口チオネ インmRNAレベ ルは ロ・ シク 口デ キス トリ ン食、ア・シク口デキストリン食群におい て 、 肝 と 腎 の 銅 含 量 と 相 関 が あ る こ と を は じ め て 明 ら か に し た 。
3. 数 種 の 銅 夕 ン パ ク 質 の 遺 伝 子 発 現に 対す る食 事シ ク口 デキ スト リン に つい て ウ ィス ター 系雄 ラッ トに 基本 食5%a‑シク口デキストリン食、5%B‑シク口デキス トリン食、5%ア― シク□デキストリン食を7日間自由摂取法により与えた。ロ・シク口 デキ スト リン 食、 ア‐ シク 口デ キス トリン食の摂取は肝メ夕□チ オネインmRNAとヌ 夕口チオネインタンパク質を増加させた。ヌ夕 口チオネインの遺伝子発現とタンパク 質量との間に相関がみとめられた。B‑シク□デ キストリン、ア‐シク□デキストリン 摂取 によ り肝Cu、Zn‑ス ーパ ーオ キシ ドジ スム ター ゼmRNAを 増加 させた。しかし、
a‑シク口デキストリン食の摂取は肝Cu、Zn.ス ーバーオキシドジスムターゼ活性を増 加させた。Cu、Zn ̄スーバーオキシドジスムタ ーゼの遺伝子発現と活性の間に相関は なかった。
肝 セル 口プ ラス ミンmRNAはァ .シ ク口デキストリン食群におい て低下した。血清 セル口プラスミン活性はロ‐シク口デキストリン食において高かった。肝シトク口ムC オ キ シ ダー ゼmRNAレベ ルはB‑シ ク口 デキ スト リン 、ア .シ ク口 デキ スト リ ン食 摂 取により増加、または増加の傾向を示した。
これらのことから食事B‑シク口デキストリン とァ・シク□デキストリンが、銅夕ン パク 質で ある肝メ夕□チオネインと肝Cu、Zn‑スーパーオキシドジ スムターゼの遺伝 子発現の促進に関与していることをはじめて明 らかにした。
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学位論文審査の要旨 主査 教授 青 山頼孝 副査 教授 葛 西隆則 副査 助教授 原 博
学位論文題名
Nutritional and Biochemical Studies of Dietary Cyclodextrins
(シクロデキストリンの栄養生化学的研究)
本論 文は5章からなる頁数108の英文論文であり、図10、表17、引用論文113を含んでい る。
シク口デキストリンはa ‑1.4結合のグルコースから構成される環状オリゴ糖である。市販の シクロデキストリンは6個、7個、8個のグルコースから出来ていて、そゎぞれa‑、ロ・ヽア.
シク口デキストリンと呼んでいる。これらのシクロデキストリンは天然には存荏しない。デン プンから微生物由来のシクロデキスト1」ングルコシルトランスフウラーゼの作用で生成され る。シク口デキストリンの利用はその特異的な環状構造を示し、シリンダーのような型をとり、
外部は親水陸であり、内部は疎水性である。この特異的な構造のため、シク口デキストリンは ホストとして作用し、例えば食品添加物などの低分子化合物をゲスト分子として内部にとりこ む。内部に化合物をとりこむ性質は食品分野で探求され、食品添加物としてシクロデキスト1」 ンは日本において、抗酸化剤、味・香りの保持、苦味の低減等の目的で用いられている。
しかし、シクロデキストリンの栄養学的生理機能はほとんど研究されていない。近年バイオ テクノロジーの発展によルシクロデキストリンの工業的生産を可能にしたので、栄養生化学的 研究に適用できることとなった。
本研究はa‐、ロ.、ア.シクロデキストリンの 1.脂質代謝
2.肝、腎、小腸のメタロチオネイン遺伝子発現 3.数種の銅夕ンパク質の活性および遺伝子発現 について比較研究を行った。
1.肝、血清脂質に対するシク口デキストリンの栄養学的効果
ウィスター系雄ラットに基本食、5%a‑シク口デキストリン食、5%ロ‐シクロデキストリン 食、5%ア.シク口デキストリン食を7日間自由摂取法により与えた。体重増加量はロ・シク口デ キストリン食の摂取によって低下した。a‑、あるいはロ・シクロデキストリン食の摂取は血清 コレステロール低下させた。a−あるいはロ‐シク口デキストリン食の摂取によって盲腸の組 織重量、盲腸内容物の量が増加した。盲腸内容物の酢酸、プロピオン酸量が顕著に増加した。
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と くに 食事a‑シ クロ デ キス トリ ンが 大腸におい て低級脂肪酸を増加させた 結果、血清コレス テ口 ール低下作用を有すること をはじめて明らかにした。
2. 数 種 の 臓 器 に お け る メ 夕 口 チ オ ネ イ ンmRNAレ ベ ル は 食 事 シ ク ロ デ キ スト リ ンに よっ て 変 動する。
ウ ィス ター 系雄 ラッ ト に基 本食5%a‑シクロデ キストリン食、5%B‑シクロ デキストリン食、
5% ア.シク口デキストリン食を7日間自由摂取法により与え た。肝亜鉛量はロ・シク口 デキスト ル ン 食群 にお いて 増加 し た。 腎銅 量はa‑シ ク ロデ キス トリ ン 食、B‑シ クロ デキ ス トリ ン食群 に お いて 増加 した 。血 清 銅含 量はB‑シ ク口 デ キス トリ ン食 群 にお いて 高か った 。 一方 、血清 亜鉛 含量はァ‐シクロデキスト リン食群において高かった。ロ・シクロデキストリン食、ア‐シク 口 デ キ ス ト リ ン 食 摂 取 は 、 肝 メ 夕 口 チ オ ネ イ ンmRNAレベ ル を増 加さ せた 。一 方 、小 腸の メ 夕 口 チ オ ネ イ ンmRNAレ ベ ル は 低 下 し た 。 腎 臓 メ 夕 口 チ オ ネ イ ンmRNAレ ベ ル はa‑シ ク ロ デキ ストリン、ロ‐シク口デキ ストリン、ア‐シクロデキス トリン食摂取によって増加 した。小 腸 の メ夕 口チ オネ イン 遺 伝子 発現 は小 腸の銅、亜 鉛含量とは比例しなかった 。肝と腎のメタロ チ オ ネイ ンmRNAレ ベル は ロ・ シク 口デ キストリン 食、ア・シク口デキストリ ン食群において、
肝と 腎の銅含量と相関があるこ とをはじめて明らかにした。
3. 数 種 の 銅 夕 ン バ ク 質 の 遺 伝 子 発 現 に 対 す る 食 事 シ ク ロ デ キ ス ト リ ン に つ い て ウィスター系雄ラットに基本 食5%a‑シク口デキストリン 食、5%ロ・シクロデキストリン食、
5% ア.シクロデキストリン食 を7日間自由摂取法により与えた。ロ・シク ロデキストリン食、ア
・ シ ク口 デキ スト リン 食 の摂 取は 肝ヌ 夕 口チ オネ インmRNAと ヌタ ロチ オネ イン タ ンバク 質を 増 加 させ た。 メタ ロチ オ ネイ ンの 遺伝 子 発現 とタ ンパ ク質 量 との間に相関がみとめられ た。8
・ シ ク口 デキ ストリン、ア.シク ロデキストリン摂取により肝Cu、Zn‑スーパーオキシドジ スム タ ー ゼmRNA、 を 増 加 さ せ た 。 し か し 、a‑シ ク ロ デ キ ス ト リ ン 食 の 摂 取は 肝Cu、Zn‑ス ーパ ー オ キシ ドジ スム ター ゼ 活性 を増 加さ せ た。Cu、Zn‑スー パー オキシドジスムターゼの遺 伝子 発 現と活性の間に相関はなかっ た。
肝 セル 口プ ラス ミンmRNAは ァ. シク 口 デキ スト リン 食群 に おい て低 下し た。 血 清セル 口プ ラ ス ミ ン 活 性 はB‑シ ク ロ デ キ ス 卜 リ ン 食 に お いて 高か っ た。 肝シ トク 口ムCオ キシ ダ ーゼm RNAレ ベル は ロ‐ シク 口デ キス ト リン 、ア ―シ ク口 デ キス トリ ン食摂取により増加、また は増 加 の傾向を示した。
こ れら のこ とか ら食 事B‑シ クロ デキ ストリンとァ・シク口 デキストリンが、銅夕ンパク 質で あ る 肝メ タロ チオ ネイ ン と肝Cu、Zn‑スー パー オキ シ ドジ スム ターゼの遺伝子発現の促進 に関 与 していることをはじめて明ら かにした。
以 上 よ り 、 食 事 シ ク □ デ キ ス ト リ ン の 栄 養 学 的 な 寄 与 が 大 き い こ と を 明 ら か に し 、 と く に 、 肝 の 数 種 の 酵 素 夕 ン パ ク 質 の 遺 伝 子 発 現 に 関 与 す る と い う 新 知 見 を 得 た点 で、
国 内 外 で 高 い 評 価 を 得 て い る 。 よ っ て 審 査 員 一 同 は 、 サ ラ ン ヤ ー ・ ケ ウ プ ラ サ ー ト が 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 認 め た 。
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