• 検索結果がありません。

学位論文内容の要旨

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "学位論文内容の要旨"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 農 学 ) 李    明 剛

学 位 論 文 題 名

   Study on the mechanisms of plant adaptation to phosphorus deficient conditions

‑with special reference to secretory response of plant roots to acquire phosphate

    

( リ ン 欠 乏 条 件 に 対 す る 植 物 の 適 応 機 構

― 特に り ン酸 を 獲得 する根の 分泌的応 答に関する 研究)

学位論文内容の要旨

    

植物の生育にとってりンは不可欠な要素のーつである。地球上にはりン欠乏土壌が広く 分布しており、農耕地の大部分の土壌がりン欠乏土壌である。土壌中に含有されるりンの形 態としては有機態リンと無機態リンがあり、そのうち有機態リンは全リンの約30ー8096を占 め、イノシトールリン酸塩、核酸、ヌクレオチド、リン脂質、レシチンなど植物に直接吸収 されない形態で存在する。一方、無機態リンはりン酸鉄、リン酸アルミウム、リン酸カルシ ウムなどの難溶性リン酸化合物として沈殿している。したがって、リン欠乏は食糧生産の重 要な制限要因になっている。窒素肥料と違ってりン酸肥料の原料であるりン鉱石資源の埋蔵 量には限りがあり、しかも人工的に合成できないので、全地球的なりン資源の枯渇問題が食 糧生産にとって無視できない問題になっている。一方、植物はりン欠乏を感知した場合、そ の根から酸性ホスファターゼや有機酸などを分泌し、土壌中の有機態リンの無機化や難溶性 の無機リン酸化合物の可溶化をもたらして植物のりン酸吸収を促進することが知られている が、その実態にっいてはまだ不明な点が多い。そこで本研究は、低リン耐性が高いルーピン と低いトマトに重点をおいて、酸性ホスファターーゼと有機酸などの分泌性機能物質の分泌特 性、性質と機能および低リン耐性に関与する体内のりン要求性との関係を明らかにすること を目的として実施した。得られた結果は次の通りである。

  1

.いろいろなりン酸濃度の水耕実験を行い、ルーピンとトマトの低リン耐性、低リン培地 条件での根からの酸性ホスファターゼ、フィ夕一ゼ及び有機酸などの分泌ならびに体内リン 要求性を比較検討した。その結果、軽度のりン欠乏条件で、ルーピンとトマトともにその根 から無機リン酸を獲得するための機能性物質―磁性ホスファターゼ、フアターゼ及び有機酸

802ー

(2)

の分泌が誘導された。低リン条件における根の酸性ホスファターゼと有機酸の分泌の誘導は ルーピンでトマトより約3倍高かった。それに対して、フィターゼ分泌の誘導はトマトでル ーピンより約2倍高かった。これらの機能性物質の分泌は植物のりン欠乏を軽減する重要な レスキュー機能であると考えられた。

    2

.,低リン条件で生育したルーピンとトマトの分泌物を含む培養液から

DEAE

―Sepharose

CL 6B column

イオン交換グロマトグラフィー、

Bio

ーGelP―200ゲルろ過、調製用電気泳動な どの方法によって分泌性酸性ホスファターゼを単一なバンドにまで精製した。精製したトマ トの分泌性酸性ホスファターゼは分子量およそ68 kDのサブュニットから構成された二量体 であり、等電点5.3であり、至適pH5.6であった。一方、ルーピンのそれは分子量およそ72

kD

のサブュニットから構成された二量体であり、等電点

4

8

であり、至適

pH 4.3

であった が、比活性をはじめとする大部分の酵素学的な性質には大差は見られなかったことから、ト マト根分泌物中の酸性ホスファターゼの活性がルーピンのそれより低いのは主にその分泌量 が少ないことによるものと考えられた。

    3

.リン濃度を異にする水耕実験を設定して体内リン含有率および外部培養液のりン濃 度とルーピンとトマトの生育との関係を解析した。その結果、リン欠乏症状が誘発される限 界外部リン濃度と内部リン含有率はトマトでルーピンよりかなり高く、正常な生育を維持す るためのりン要求性

i

まトマトでルーピンより約

3

倍高かった。このことから、リンに対する 高い要求性がトマトの低リン耐性が低い主要な支配要因であると考えられた。リン供給が低 い土壌条件ではトマト根の酸性ホスファターゼと有機酸の分泌能がルーピンより低いことも 低リン耐性が低い要因になると理解された。

    4

.根圏土壌を約0.5 mmに画分したRhizo―boxを用いて、殺菌及び非殺菌の低リン条件 で生育したルーピンの分泌性酸性ホスファターゼと有機酸の根圏における分布状況ならびに それらが根圏におけるりンの動態にもたらす影響を調べた。その結果、低リン条件でルーピ ンの根から分泌された酸性ホスファターゼと各種有機酸は根から2.5ー3 mmの根圏範囲に分布 しており、分泌性酸性ホスファターゼは土壌中の有機態リン化合物からかなりの量のりン酸 を放出し、分泌性有機酸は難溶性リン酸化合物からかなりの量のりン酸を溶出した。以上の 結果から、これらの分泌性機能物質は植物のりン吸収に大いに貢献していることが明らかと なった。

    5

.低リン条件で生育したトマトの根(約

1

キロ)の抽出物から、硫安沈殿、DEAE―

Sepharose CL 6B column

陰イオン交換グロマトグラフィー、BioーGelPー200ゲル濾過、FPLC と調製用電気泳動の5っのステップによって、リン欠乏によって誘導されたフィターゼを単 一なバンドにまで精製した。精製したフィターゼは分子量およそ82 kD、等電点5.3であり、

(3)

ダイズの種子から精製したフィターゼに比べて、

Glycine

Serine

、Alanine、Threonine の含有率が高かったが、Systemne、Leucineの含有率は低かった。この酵素はフィチンを始 め、ピロリン酸やATPなどに高い触媒効率を示した。

    6

.透析チューブを用いて、低リン条件で水耕培養をした16種植物の分泌性夕ンパク を集めてフィターゼの活性を調べるとともに、免疫的な手法を用いて分泌性フィターゼの同 定とその特性を検討した。その結果、低リン条件で水耕した16種の植物の根分泌物からフィ ターゼ活性が検出され、そのうちの7種植物の分泌物から分子量およそ30―35 kDのフィター ゼがフィターゼの抗体によって検出された。本研究によって初めて植物の根からフィターゼ が分泌されることが証明された。土壌中の有機態リンの約30ー50%がフィチン態であることか ら、分泌性フィターゼは植物のフィチン態リンの利用において重要な役割を果たしていると 考えられた。

    7

.本研究の結果から酸性ホスファターゼ、フィターゼ及び有機酸などの分泌能が高 く、土壌中のりンを有効に利用できる植物種及び品種の選抜と品種育成が土壌中のりンの効 率的利用やりンのりサイクル利用のために重要であることを指摘した。また、酸性ホスファ ターゼとフィターゼを含む新 酵素肥料 の開発を提案した。

(4)

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    但 野 利秋 副 査    教 授    本 間    守 副査   教授   波多野隆介

学 位 論 文 題 名

Study on the mechanisms of plant adaptation to phosphorus deficient conditions

‑with special reference to secretory response of plant roots to acquばephosphate     

    (リン 欠乏条件に対する植物の適応 機構

    ―特に りン酸を獲得する根の分泌的 応答に関する研究)

    本 論 文 は 、 図33、 表15、 引 用 文 献147を 含 む 総 頁 数157の 英 文 論 文 で あ り 、 別 に 参 考 論 文3編 が 添 え ら れ て い る 。

    植 物 の 生 育 に と っ て り ン は 不 可 欠 な 要 素 の ー つ で あ る 。 地 球 上 に は り ン 欠 乏 土 壌 が 広 く 分 布 し て お り 、 農 耕 地 の 大 部 分 の 土 壌 が り ン 欠 乏 土 壌 で あ る 。 一 方 、 植 物 は り ン 欠 乏 を 感 知 し た 場 合 、 そ の 根 か ら 酸 性 ホ ス フ ァ タ ー ゼ や 有 機 酸 な ど を 分 泌 し 、 土 壌 中 の 有 機 態 リ ン の 無 機 化 や 難 溶 性 の 無 機 リ ン 酸 化 合 物 の 可 溶 化 を も た ら し て 植 物 の り ン 酸 吸 収 を 促 進 す る こ と が 知 ら れ て い る が 、 そ の 実 態 に つ い て は ま だ 不 明 な 点 が 多 い 。 そ こ で 本 研 究 は 、 低 リ ン 耐 性 が 高 い ル ー ピ ン と 低 い ト マ ト に 重 点 を お い て 、 酸 性 ホ ス フ ァ タ ー ゼ と 有 機 酸 な ど の 分 泌 性 機 能 物 質 の 分 泌 特 性 、 性 質 及 び そ れ ら の 機 能 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し て 実 施 し た も の で あ る 。 得 ら れ た 結 果 の 概 要 は 次 の 通 り で あ る 。

  1. 軽 度 の り ン 欠 乏 条 件 で 、 ル ー ピ ン 、 ト マ ト と も に そ の 根 か ら 酸 性 ホ ス フ ァ ター ゼ、 フ ィ タ ー ゼ 及 び 有 機 酸 の 分 泌 が 誘 導 さ れ た 。 根 の 酸 性 ホ ス フ ァ タ ー ゼ と 有 機 酸 の 分 泌 の 誘 導 は ル ー ピ ン で ト マ ト よ り 約3倍 高 か っ た 。 そ れ に 対 し て 、 フ イ タ ー ゼ 分 泌 の 誘 導 は ト マ ト で ル ー ピ ン よ り 約2倍 高 か っ た 。 こ れ ら の 機 能 性 物 質 の 分 泌 は 植 物 の り ン 欠 乏 を 軽 減 す る 重 要 な レ ス キ ュ ー 機 能 で あ る と 考 え ら れ た 。

(5)

ファターゼを単一なバンドにまで精製した。精製したトマトの分泌性酸性ホスファターゼは 分子量およそ68 kDのサブュニットから構成された二量体であり、等電点5.3、至適pH 5.6 であった。ー方、ルーピンのそれは分子量およそ72 kDのサブュニットから構成された二量 体であり、等電点4.8、至適

pH4

3

であったが、比活性をはじめとする大部分の酵素学的な 性質には大差は見られなかったことから、トマト根分泌物中の酸性ホスファターゼの活性が ル ーピンのそ れより低 いのは主 にその分 泌量が少 ないことによるものと考えられた。

    3

.リン欠乏症状が誘発される限界外部リン濃度と内部リン含有率はトマトでルーピン よりかなり高く、正常な生育を維持するためのりン要求性はトマトでルーピンより約3倍高 かった。このことから、リンに対する高い要求性がトマトの低リン耐性が低い主要な支配要 因であり、リシ供給が低い土壌条件ではトマト根の酸性ホスファターゼと有機酸の分泌能が ル ー ピ ン よ り 低 い こ と も 低 リ ン 耐 性 が 低 い 要 因 に な る と 理 解 さ れ た 。

    4

.根圏土壌を約0.5 mmに画分したRhizo―boxを用いた研究の結果、低リン条件でルー ピンの根から分泌された酸性ホスファターゼと各種有機酸は根から2.5−3 mmの根圏範囲に分 布しており、分泌性酸性ホスファターゼ|ま土壌中の有機態リン化合物からかなりの量のりン 酸を放出し、分泌性有機酸は難溶性リン酸化合物からかなりの量のりン酸を溶出した。以上 の結果から、これらの分泌性機能物質は植物のりン吸収に大いに貢献していることが明らか となった。

    5

.低リン条件で生育したトマトの根の抽出物から、リン欠乏によって誘導されたフイ 夕一ゼを単一なバンドにまで精製した。精製したフアターゼは分子量およそ82 kD、等電点

5

3

で あ り 、 フ ィ チ ン を 始 め 、 ピ ロ リン 酸 やATPな ど に高 い 触媒 効 率 を示 し た。

    6

.透析チュープを用いて、低リン条件で水耕培養をした16種植物の分泌性夕ンパク を集めてフィターゼの活性を調べるとともに、免疫的な手法を用いて分泌性フィターゼの同 定とその特性を検討した。その結果、低リン条件で水耕した16種の植物の根分泌物からフィ ターゼ活性が検出され、そのうちの7種植物の分泌物から分子量およそ30‐35 kDのフィター ゼがフィターゼの抗体によって検出された。本研究によって初めて植物の根からフィターゼ が分泌されることが証明された。土壌中の有機態リンの約30−5096がフアチン態であることか ら、分泌性フィターゼは植物のフィチン態リンの利用において重要な役割を果たしていると 考えられた。

    7

.本研究の結果から酸性ホスファターゼ、フアターゼ及び有機酸などの分泌能が高 く、土壌中のりンを有効に利用できる植物種及び品種の選抜と品種育成が土壌中のりンの効 率的利用やりンのりサイクル利用のために重要であることを指摘した。また、酸性ホスファ ターゼとフィターゼを含む新 酵素肥料 の開発を提案した。

(6)

    

以上のように、本研究がりん欠乏条件で生育する場合に発現する根からの酸性ホスファ 夕一ゼ、フィターゼ及び有機酸の分泌時性、それらの諸性質ならびにりン酸吸収における役 割 を 解 明 し た も の で あ り 、 得 ら れ た 知 見 は 学 術 的 に 高 く 評 価 さ れ る 。

    

よって審査員一同は最終試験の結果と合わせて、本論文の提出者李明剛は博士(農学)

の学位を受けるのに十分な資格があるものと認定した。

参照

関連したドキュメント

ラットに 4~2000μmol/kg 及びサルに 8.3~100μmol/kg の Ca 13 CO 3 を経 口投与後,経時的に呼気を採取し,得られた呼気中Δ 13 C と Ca 13 CO 3

   この よう に調製 した中 空コア ーシェ ル粒 子を. 無酸素 条件下 の水 溶液中 におけ るL‑ リ シンの 脱ア ミノ‑N‑ 環 化反応 によ るL − ピペ コリン 酸合成 に適用 したと

   上記 のような観点から本論文では、p .マンナナーゼに注目し、マンナンを分解す る 微生 物を検索し、p .マンナナーゼとキシラナーゼを生産するが、セルラーゼを生 産 しな い細

精製した修飾酵素はりジルエンドペプチダーゼで分解して、HPLC

6 . Arthrobacter sp. H65‑7 株の無細胞抽出液からDFA III をイヌロビオース(1‑ 〇.p .D

   そこで 本研究 では、 1 .受精 嚢の構 造と精子の貯満漣鯉の観察、2 .精夾と精子塊の形態、および精夾反応 のメカ

そのグルコース輸送活性の性質は明らかにされていなかった。松尾氏は大腸菌での多量発現系を用

キイロショウジョウバエ(以下,ショウジョウバエ)のオス生殖器官・附属腺は,ヒトの精嚢や前立腺に相 当する器官である。附属腺細胞は 2