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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 西 村 直 道

学 位 論 文 題 名

ラットコレステロール代謝に及ぼす食物繊維および タウリンの作用メカニズムに関する研究

学位論文内容の要旨

  高コレステロール(CHOL)血症は動脈硬化症や虚血性心疾患の発症と強く関係しているとし、われてい る 。 そ の た め 食 品 成 分 で 生 体内 に お けるCHOL量 を 調節 す る こと は 予 防医 学 的 に 重要 で あ る。

  本 研究では ラットCHOL代謝に 及ぼす食 物繊維お よびタウリンの作用とその作用機構を明らかにす ることを目的とした。食物繊維は消化吸収されずに作用を発現する成分として、タウリンは吸収された 後 に作用発 現する 成分とし て用い た。食物 繊維(特にビート食物繊維(BF))の作用はCHOLを与えな い ラッ卜を 用いて 血漿CHOL濃度 変動に 対する大 腸内発酵の関与について調べた。タウリンの作用は CHOLを 与 え たラ ッ ト を用 い てCHOL濃 度変 動 に つい てCHOL異 化(CHOL7a,‑水 酸 化 酵素(CYP7A1)) および胆汁酸排泄量の変動について調べた。

1.食物繊維によるCHOL代謝の変動

(1)食物繊維の種類と血漿CHOL低下作用

  ダイコ ン、キ ャベツ、 タマネギ 、モヤ シ、ビー トから抽出した粗食物繊維をCHOL非摂取のラット に与え 、盲腸内 の発酵 の違いと 血漿CHOL濃 度の変動 について比較検討した。その結果、程度の差は あるも のの各粗 食物繊 維が血漿CHOL低下作 用を有す ることが明らかとなった。特に,BFの作用は顕 著で発酵性に富んでおり,n.酪酸の産生量の多さは特徴的であった。また、盲腸内短鎖脂肪酸の生成量 の 増加 が血漿CHOL濃度の 低下に関 与して いること が示唆 された。 以上より 、食物 繊維の血 漿CHOL 低下作用に盲腸内発酵が関与している可能性が示唆された。

(2)食物繊維のCHOL低下作用に対する盲腸の必要性と発酵の関与

  盲腸・ 結腸同 時切除、 盲腸切除 および 結腸切除 を施したラットを作成し,BFのCHOL低下作用につ いて調べ、発酵部位である大腸の存在の必須性について比較検討した。その結果、大腸部位,とりわけ 盲腸の存在がBFの作用発現に必須であることが明らかとなった。

  大腸内における発酵がBFの作用発現に寄与しているかを明らかにするために抗生物質を投与したラ ットを用いて,腸内細菌叢に変化を生じている場合のBFの血漿CHOLに及ぼす作用について検討した。

そ の結 果、与 える抗 生物質の 違いによ りBFの作 用が異な り,BFの 大腸内に おける 発酵がBFの 作用 発現にかかわっている可能性が示唆された。

(3)食物繊維のCHOL低下作用を誘導する発酵産物の検索

  手術により作成した盲腸に投与可能ぬラットを用いて、血ガ VOおよび面ぬむりにおける腸内細菌によ る 食物 繊 維(BFお よびGG)の 発 酵 によ り 産 生 され た 生 成物 を 盲腸に 投与し ,血漿CHOL濃 度の変 動

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(2)

に っい て検討し た。そ の結果、BFおよびGGの発酵産 物の投 与はとも に血漿CHOL濃度を変 動させ な かった。しかし,投与量や投与方法の問題も生体における発酵を完全に再現したものでないため,発酵 産物が血漿CHOL濃度変動に対してかかわっていないとは言い切れなぃ。

2.タウリンによるCHOL代謝の変動

(1)腸肝循環量変動時のタウリンの血清CHOL濃度変動

  胆汁酸腸肝循環量を変動させるためコレスチラミンおよび多量の胆汁酸をラットに与え,そのときの タ ウリン による肝 臓におけ るCYP7A1活性 の変化 を検討し た。そ の結果、腸肝循環量が変動しても肝 臓CHOL濃 度 が高 い 場合 、タウリ ン摂取 は肝臓CYP7A1活 性を上 昇させ, 胆汁酸 排泄を亢 進する こと に よ りCHOL低下 を 発 現 する こ と が明 ら か とな った6逆に 肝臓CHOL濃 度が低 い場合、 タウリン によ るCYP7A1の活 性 上 昇 は生 じ ず 、血 清CHOLは 低下 し な ぃと 推 察 され た 。 タウ リンによ り肝臓CHOL 異 化 が 亢 進 す る た め に は 肝 臓CHOL濃 度 が 一 定 以 上 で あ る こ と が 必 要 と 思 わ れ る 。 (2)CHOL吸収促進剤の違いによるタウリンの作用の違い

  食 餌 性 胆 汁 酸 の 有 無 に よ る タ ウ リン のCHOL低 下作 用 の 違い に つ いて CHOL異 化 にか か わ る CYP7A1の遺伝子 発現量と 糞中胆 汁酸排泄 量より 検討した 。その 結果、食餌性胆汁酸を与えない場合 CYP7A1 mRNAお よ び 胆 汁 酸 排 泄 がCHOL濃 度 の 変 動 に 関 わ っ て い た 。 一 方 ,CYP7A1 mRNAと 胆 汁 酸 排 泄の 問 に 相関 はみら れなかっ た。以 上よルタ ウリン のCHOL異化亢 進はCYP7A1遺 伝子の 転写 レ ベルで 誘導されることがわかった。タウリンの血清CHOL低下作用は糞中胆汁酸排泄亢進によるが、

CHOL異 化 だ け で な く 別 の 要 因 に よ る 胆 汁 酸 排 泄 亢 進 が 関 与 し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 (3)CHOL代謝に及ぼすタウリン用量依存性

  CHOL代 謝に か か わるパ ラメータ ーに対 するタウ リンの 用量依存 性につい て検討 じ、CHOL低 下作 用に対するタウリンの必要量について調べた。その結果、タウリンの用量依存的に肝臓タウリン濃度は 増 加 し , 血清VLDL+LDL‑CHOL濃 度 ,肝 臓CHOL濃 度は 減 少 した 。 糞 中胆 汁 酸 量 はタ ウ リ ンの 用 量 依 存的に 増加した が,肝臓 におけ るCYP7A1活性 は変動が みられ なかった。したがって、タウリンに よ る胆汁 酸排泄量 の増加はCHOL異化を 主要因 せず,小 腸からの 胆汁酸吸収に影響があると推察され た 。 ま た, 肝 臓 にお けるCHOL処 理のた めにタウ リンの需 要が高 まり,肝 臓CHOL濃度 の調節に 肝臓 に存在するタウリン量の維持が重要であることが判明した。

(4)胆汁酸吸収に及ばすタウリンの作用

  タウリン摂取時の各消化管内の胆汁酸量の変化、門脈中胆汁酸の変動より胆汁酸吸収に対する影響に ついて検討した。また、タウリンによる胆汁中胆汁酸組成の変動よる胆汁酸吸収への影響を調べた。そ の結果、タウリン摂取により盲腸以降の胆汁酸量が増加した。胆汁中にはケノデオキシコール酸量が増 加した。このため、タウリンによる糞中胆汁酸排泄量の増加は回腸における胆汁酸の能動輸送を抑制も しくは空腸、盲腸におけるケノデオキシコール酸の受動吸収から逃れた量が増加したためと推察された。

し か し , 門 脈 中 の 胆 汁 酸 濃 度 は そ れ を裏 付 け る結 果 で はな く , この 点 は 今後 の 課 題で あ る 。 (5)糖尿病性高CHOL血症に対するタウリンの作用

  遺 伝的2型 糖尿 病GKラッ ト を 用い て 糖 尿病 時 の高CHOL血 症に対し てタウ リンが正 常ラット と同 様 に作用 発現するかを検討した。その結果、CHOL摂取時にタウリンを投与することにより正常ラット 同 様 にCHOL低下 作 用を 引き起こ すこと が見出さ れた。イ ンスリ ン分泌異 常のGKラ ットでも タウリ ン摂取により糞中胆汁酸排泄量を増加させたことから、インスリンの影響を受けずにタウリンは肝臓で のCHOL異化を促進もしくは胆汁酸吸収を抑制するものと推測された。

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(3)

(結諭)

  以上より食餌条件はそれぞれ異なるが,CHOL代謝に食物繊維やタウリンが大きく影響していること は明ら かであ る。食物 繊維の血 漿CHOL低下 作用に短鎖脂肪酸や二次胆汁酸などの大腸内発酵産物が 関与しているかについては今のところ不明であるが、少なくとも大腸の存在と腸内発酵が食物繊維の作 用発現 に重要 であるこ とは間違 いない と思われ る。また、タウリンのCHOL低下作用に胆汁酸排泄亢 進が重 要な要 因である ことが明 らかと なったが 、この亢進作用はCHOL異化亢進よりもむしろ胆汁酸 吸収の 抑制が 関与して いる可能 性が示 唆された 。また、肝臓中タウリン量の維持がタウリンのCHOL 低下作用に重要な影響を及ぼすことが明らかとなった。

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(4)

学位論文 審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授   原 教 授   浅 助 教 授  園 講 師   石

     博 野 行 蔵 山    慶 塚    敏

学 位 論 文 題 名

ラ ットコレ ステロ ール代謝 に及ぼ す食物繊維および タウリン の作用メ カニズムに関する研究

  本 論 文 は 、150頁 から な る 和論 文 で あり 、 図21と 表55を 含み 、 参考 論 文8編 が添 え ら れ ている。

    高 コ レス テ ロ ール(CHOL)血症 は 動脈 硬化 症や虚血 性心疾患 の発症と強 く関係し てい る と い わ れ て いる 。 その た め 食品 成 分で 生 体 内に お け るCHOL量 を 調節 す る こと は 予防 医 学的に重 要である 。本研究は ,ラット コレステ ロール(CHOL)代 謝に及ばす食物繊維、お よ びタウリ ンの作用 とその作用 機構を明 らかにす ることを 目的とし て行っている。ここで は 、 食 物繊 維 (特 に ビ ート 食 物繊 維(BF))は消 化吸収さ れずに作用 を発現す る成分と し て 、タウリ ンは吸収 された後に 作用発現 する成分 として用 いでいる 。食物繊維の作用は、

主 に 血 漿CHOL濃 度 変動 に 対す る 大 腸内 発 酵の 関 与 につ い て、 ま た タウ リ ン の作 用 は、

CHOL異 化(CHOL7a一 水 酸化 酵 素(CYP7A1) ) およ び 胆 汁酸 排 泄 量の 変 動に つ い て調 べ 、 以 下の結果 を得てい る。

1. 食物繊維 によるCHOL代 謝の変動

(1)食物繊 維の種類 と血漿CHOL低下 作用

  ダ イコ ン 、キ ャ ベ ツ、 タ マネ ギ 、 モヤ シ、ビー トから抽 出した粗食 物繊維をCHOL非摂 取 の ラ ット に 与え 、 盲 腸内 の 発酵 の 違 いと血漿CHOL濃度の変 動にっいて 比較検討 した。

そ の 結 果 、 程 度 の 差は あ るも の の 各粗 食 物繊 維 が 血漿CHOL低 下作 用 を 有す る こと を 明 ら か に し た 。 特 に ,BFの作 用 は 顕著 で 、盲 腸 内 短鎖 脂 肪 酸の 生 成量 の 増 加が 血 漿CHOL 濃 度の低下 に関与し ていること を示唆し た。

(2)食 物繊維のCHOL低下作用 に対する盲 腸の必要 性と発酵 の関与

  盲 腸一 結 腸同 時 切 除、 盲 腸切 除 お よび 結腸切除 を施した ラットを作 成し,BFのCHOL低 下 作用にっ いて調べ 、発酵部位 である大 腸の存在 の必須性 について 比較検討した。その結 果 、大腸部 位,とり わけ盲腸の 存在がBFの 作用発現 に必須で あること が明らかとなった。

  ま た、 大 腸内 に お ける 発 酵がBFの作 用発 現に寄与 している かを明らか にするた めに抗

(5)

生物質を投与したラットを用いて,腸内細菌叢に変化を生じている場合のBF の血漿CHOL に及ばす作 用について検討した。その結果、BF の大腸内における発酵が BF の作用発現 にかかわっている可能性が示唆された。

(3) 食物繊維のCHOL 低下作用を誘導する発酵産物の検索

   手術により作成した盲腸に投与可能なラットを用いて、in vivo およびin vitro における 腸内細菌に よる食物繊 維(BF およ び GG) の 発酵により 産生された 生成物を盲 腸に投与 し,血漿 CHOL 濃 度の変動に ついて検討 した。その 結果、BF およ び GG の発酵産物の投 与はともに血漿CHOL 濃度を変動させなかった。

2. タウリンによる CHOL 代謝の変動

(1 )腸肝循環量変動時のタウリンの血清CHOL 濃度変動

   胆汁酸腸肝循環量を変動させるためコレスチラミンおよび多量の胆汁酸をラットに与え,

そのときのタウリンによる肝臓における CY P7Al 活性の変化を検討した。その結果、腸 肝 循環 量が変動 しても肝臓 CHOL 濃 度が高い場 合、タウリ ン摂取は肝 臓CYP7A1 活性を 上昇さ せ,胆汁酸 排泄を亢進することによりCHOL 低下を発現することが明らかとなっ た 。逆 に肝臓 CHOL 濃度 が低い場合 、タウリン による CYP7A1 の活 性上昇は生 じず、血 清 CHOL は低 下しないと 推察された 。タウリン により肝臓 CHOL 異化が亢進 するために は肝臓 CHOL 濃度が一定以上であることが必要と思われる。

(2)CHOL 代謝に及ぼすタウリン用量依存性

  CHOL 代謝にか かわるパラ メーターに対するタウリンの用量依存性について検討し、

CHOL 低下作用に対するタウリンの必要量にっいて調べた。その結果、タウリンの用量依 存 的に 肝臓タウ リン濃度は 増加し,血 清 VLDL+LDL −CHOL 濃度,肝臓 CHOL 濃度は減少 した。 糞中胆汁酸 量はタウリンの用量依存的に増加したが,肝臓における CYP7A1 活性 は変動 がみられな かった。したがって、タウリンによる胆汁酸排泄量の増加は CHOL 異 化を主要因せず,小腸からの胆汁酸吸収に影響があると推察された。また,肝臓における CHOL 処理の ためにタウ リンの需要 が高まり, 肝臓 CHOL 濃度の 調節に肝臓 に存在する タウリン量の維持が重要であることが判明した。

(3) 胆汁酸吸収に及ぼすタウリンの作用

   タウリン摂取時の各消化管内の胆汁酸量の変化、門脈中胆汁酸の変動より胆汁酸吸収に 対する影響について検討した。また、タウリンによる胆汁中胆汁酸組成の変動よる胆汁酸 吸収への影響を調べた。その結果、タウリン摂取により盲腸以降の胆汁酸量が増加した。

胆汁中にはケノデオキシコール酸量が増加した。このため、タウリンによる糞中胆汁酸排 泄量の増加は回腸における胆汁酸の能動輸送を抑制もしくは空腸、盲腸におけるケノデオ キシコール酸の受動吸収から逃れた量が増加したためと推察された。しかし,門脈中の胆 汁 酸 濃 度 は そ れ を 裏 付 け る 結 果 で は な く , こ の 点 は 今 後 の 課 題 で あ る 。

   本研究は,食物繊維による血漿 CHOL 低下に大腸の存在が必須であり,発酵が重要な要

因となっていることを明らかにし,タウリンのCHOL 低下作用に CHOL 異化よりむしろ腸肝

循環抑制が寄与していることを示唆した。食物繊維の作用発現における大腸の必須性およ

びタウリンの作用発現における腸肝循環抑制の寄与は新しい知見であり、高く評価できる。

(6)

   よって、審査員一同は、西村直道が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有

するものと認めた。

参照

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