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学 位 論 文 内 容 の 要 旨

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Academic year: 2021

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学 位 論 文 内 容 の 要 旨

松下 孝直

(主 査) 朝日大学歯学部教授 堀田 正人

(副 査) 朝日大学歯学部教授 吉田 隆一

(副 査) 朝日大学歯学部教授 田沼 順一

根尖性歯周炎におけるエピジェネティクスな変化を背景とした炎症性組織の動向

論文内容の要旨

【緒言】

最近になり口腔細菌を含む微生物の感染に起因する炎症性疾患においてもエピジェネティクスな変 化としてのDNAのメチル化を示唆する報告がいくつかなされている.口腔領域の前癌病変や悪性腫瘍の 報告は多くみられるが, 他の口腔疾患におけるエピジェネティクス関連の論文はほとんどみられな い. 根尖性歯周炎に分類される歯根嚢胞などは, マラッセの上皮遺残や線維性結合組織が炎症性サイ トカインの作用により反応性に増生するもっとも多くみられる炎症性疾患の一つである.この疾患は, 根管内の細菌が排除されずに残っているために生じるものであることが明らかにされているものの, 発症機転ならびに炎症組織の動態が未だに不明な点が多く,これが予後や治療方針にも影響し,治療 の困難さを左右している可能性が高い. すなわち,難治性症例について,エピジェネティクスな変化 を検証することは, 予後や治療方針の決定にも大いに貢献できるものであると考えられる.

そこで本研究では難治性の慢性根尖性歯周炎のうち歯根嚢胞, 歯根肉芽腫, 慢性化膿性根尖性歯周 炎(根尖性周囲膿瘍)の症例について,慢性炎症の特徴である肉芽組織やマラッセ上皮遺残の増生に 関する発症メカニズムの一端の解明を試みた.

【材料および方法】

標本作製:病巣は,抜歯時に根尖に付着してきたもの,あるいは,歯根端切除によって採取したも

100

例(朝日大学歯学部 倫理委員会承認番号

27077

号)で,採取後

10%中性ホルマリンにて 2

間固定し,通法によってパラフィン包埋し,約

5μm

の連続切片を作製した.その後,病型分類のた めに

HE

染色および免疫染色に供した.この分類は,病理組織学的分類に従って,歯根嚢胞, 歯根肉 芽腫, 慢性化膿性根尖性歯周炎(根尖性周囲膿瘍)の

3

型とした.

免疫染色法:根管内細菌の病巣への侵襲性を見るために,抗根管内細菌抗体を用いた蛍光抗体直接 法を採用した.抗根管内細菌抗体作製には,

15

名の急性根尖性歯周炎患者の根管内に挿入した綿棒を,

brain heart infusion broth

を容れた

2

つのフラスコに投入し,一方のフラスコは好気的に,他方のフ ラスコは嫌気ジャーを用いて嫌気的に,それぞれ

1

週間培養した.培養した細菌は,生理食塩水(生 食)で洗浄しながら,2,000 回転/分で

3

回遠心後,沈渣を採取し,好気的および嫌気的に培養した沈 渣を等量混合し,その

1mg/ml

の割合の生食混濁液とした.そして,この生食混濁液に等量の

Fruend’s

incomplete adjuvant

を混和・乳化し,adjuvant細菌抗原とした.adjuvant抗原は,その

1ml

1

(2)

週間ごとに計

4

回家兎の後肢大腿筋に注射し,最終注射より一週間後に,寒天ゲル内沈降反応によって,

抗細菌抗体が産生されているのを確認した後,無麻酔下で頸動脈より全採血し,試験管に分注した.分 注した血液は

1

日静置してから,ピペットによって血清を採取した.採取した血清は,

affinity chromatography

によってタンパク分画させ,IgG分画を採取した.そして,これに

FITC

を通法によ って

conjugate

した後,PBSにて透析して未標識の

FITC

を除去した.さらに,これを

DEAE

セルロ ースに通過させ,最大濃度の分画を蛍光抗体液として使用した.このようにして作製した蛍光抗体液は,

使用に際して,切片に滴下,

6

時間反応させ,光学顕微鏡にて観察した.また,

CD68, CD3, CD79α,

IL-1α, IL-1αR, TNF-α, TNF-αR, bFGF, bFGFR, PDGF, PDGFR, TGF-β, TGF-βR, Ki-67, p16

を一次抗体として用い,これらの検出のための免疫染色は,すべてストレプトアビジン・ビオチン コンプレックス法によって行った.脱パラフィンした切片に,0.05%過酸化水素水を含むメタノールを

20

分間反応させ,内因性ペルオキシダーゼ活性を阻止させた.次に,

0.1%トリプシン溶液で 37℃, 30

分間,あるいは,10mmol/Tris, 1mmol/EDTA

121℃,2

30

秒間,抗原賦活を行い,その後,1%

ウシ血清アルブミンで

20

分間ブロッキングを行った.そこに,それぞれの一次抗体を常温で

3

時間反 応させ,LSAB2kitを用いてペルオキシダーゼを標識し,0.03%過酸化水素水を含むジアミノベンチジ ンを発色基質として

3

分間発色させ,最後に,ヘマトキシリン染色によって核対比染色を行った.

【結果】

100 例の根尖性歯周炎の症例に関して,病巣の組織構造, その増殖性およびエピジェネティクスな変 化における検索を免疫組織学的に行った結果, 以下の結論を得た.

1.各疾患の HE 染色による病理組織的分類における根尖性歯周炎である歯根肉芽腫(40 例),慢性化膿性 根尖性歯周炎(慢性根尖周囲膿瘍)(15 例),歯根嚢胞(45 例)の各病巣の基本的な構成要素は,ほ とんどが幼若から成熟した肉芽組織であった.

2.蛍光抗体法による根管内細菌の侵襲の有無と程度を観察した結果,その侵襲を見たのは,慢性化膿性 根尖性歯周炎が 3 例,歯根嚢胞が 1 例で,歯根肉芽腫では認められなかった.

3.免疫担当細胞の検索では,CD68 陽性のマクロファージの浸潤が最も多く,リンパ球は少なかった.

4.炎症性サイトカインの IL-1αおよび TNF-α陽性反応は,マクロファージを中心に多くの反応が炎症 性細胞に見られ,これらのレセプターは主に線維芽細胞と血管内皮細胞に認められた.

5.細胞増殖因子の bFGF,PDGF,TGF-βはマクロファージ,線維芽細胞,血管内皮細胞に発現し,これら のレセプターは線維芽細胞と血管内皮細胞に多く見られた.

6.細胞周期に関連する Ki-67 は,病巣の線維芽細胞や一部の炎症細胞の核が陽性像を示したが, 腫瘍性 増殖とはみなせず, 炎症性・反応性増殖すなわち,増生であるとみなすことができた.

【考察および結論】

根尖性歯周炎の病巣は,細菌の侵襲が常時反復しているものではないが,わずかに免疫応答が生じ,

主な構成細胞の線維芽細胞と血管内皮細胞がマクロファージとの間でサイトカインネットワークを形 成し,これにエピジェネティクスな変化が加わることで, 根尖性歯周炎にある肉芽組織の形成と増生と に繋がることが示唆された.

参照

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