博 士 ( 農 学 ) カ オ サ ロ ア フ サ ナ
学 位 論 文 題 名
Effects of Tannic Acid and Nondigestible Carbohydrate Sources on Absorption of Iron and Other Trace Minerals in Rats
(ラットの鉄およびその他微量必須元素の吸収における タ ン ニ ン 酸 と 非 吸 収 性 糖 類 の 影 響 )
学位論文内容の要旨
ポリフェノ ールは、 植物性の 食品や飲 料に多く 含まれる 化合物群で 、欠くことのできな いヒトの食 事成分で ある。近 年、その 有用な生 理作用が 多く見いだ されて、研究者の注目 を集めてい る物質で ある。こ れらの物 質は、多 くの健康 維持に重要 な作用を有する反面、
主要なポリ フェノー ル性物質 であるタ ンニン酸 は、有害 な活性を有 する。タンニン酸の持 つ最も重大 な問題点 は、食事 として大 量に摂取 した場合 に、鉄、特 に非ヘム鉄の吸収を低 下させるこ とであり 、この作 用は、タ ンニン酸 の持つ多 数のガロイ ル基が寄与している。
実際に、タ ンニン酸 を多く含 むお茶や コーヒー 、ワイン などは鉄吸 収を妨げるとする報告 がある。し かし、こ れまで、 鉄以外の 重要な微 量必須元 素(トレー スエレメント)に関し て、タンニ ン酸摂取 の影響に 関する知 見は無か った。ま た、鉄に関 しても、その欠乏症状 である貧血 指標(ヘ モグロビ ン濃度、 ヘマトク リット値 )への影響 は、詳細には調べられ ていない。
一方、難消 化性糖類 は、カル シウムな どのいく っかのミ ネラル吸収 を促進するとする報 告があり、 鉄吸収に 関しても 促進作用 が報告さ れている 。しかし、 これらの食事因子が、
タンニン酸 により障害された鉄吸収に対して、有効に働くかどうかは明らかではなかった。
本研究に おいては 、これら の点を明 らかにす べく、実 験動物であ るラットを使い、種々 の食餌条 件を設定 して実験 を行った 。まず、 鉄吸収に 関して、タ ンニン酸 の影響を見るた めの条件設定を行った。すなわち、鉄の食餌中のレベルを、5 mg/kg dietから35 mg/kg diet まで変動 させ、ラ ットにおける鉄の最小必要量(30 mg/kg diet)を求めた。次にその鉄レベ ルの食餌 を使用し て、タン ニン酸の 添加レベ ルを種々 に変化させ 、鉄吸収 、およぴそれ以 外の微量 必須元素 として、 亜鉛、銅 、マンガ ンを取り 挙げて、そ れらの吸 収率へのタンニ ン酸摂取 の影響を 見た。ま た、大腸 発酵がミ ネラル吸 収に影響を 及ぼすと する知見がある ため、タ ンニン酸 の大腸発 酵への影 響も見た 。一方、 難消化性糖 類に関し ては、既に鉄吸 収促進作 用が明ら かになっ ている難 消化性オ リゴ糖の 一種、フラ クトオリ ゴ糖と、その他 に、新しく大量調整法が確立したオリゴ糖である、difructose anhydride IIIおよび、大豆水
溶性繊維を用いて、タンニン酸により障害された鉄吸収に対する作用を検討した。
これら試験の結果、以下の3っの新しい知見を得た。
1、タ ンニ ン酸 の摂 取レ ベル に関 して 、そ の作用は用量依存性であり、食餌中1%(10g/ kgdiet)を超えると、鉄吸収を低下させるとともに、鉄欠乏性貧血の症状が惹起され、
血中ヘモグロビン濃度、ヘマトクリッ卜値が低下し、不飽和鉄結合能などが上昇した。
一方 、鉄 以外の微量必須元素、亜鉛、銅、マンガンの吸収は、タンニン酸摂取の影響 を受 けな かっ た。ま た、 タン ニン 酸の 摂取 は、 盲腸 内容 物のpHを 低下させ、短鎖脂 肪酸含量を増加させた。
2、 難 消化 性オ リゴ 糖であ る、difmctoseanhydridemの 摂取 は、 タン ニン 酸で 低下 した 鉄 吸収 と、 それ によ り誘発 され た鉄欠乏性貧血を改善した。しかし、フラク卜オリゴ糖 はこ れら の改 善作 用は見 られ なかった。さらに、この改善作用に大腸発酵が関与して いる こと を示 唆し た。便 中に 排せっされたタンニン酸は摂取したものの18%であり、
この こと もタ ンニ ン酸が 大腸 の微生物により分解され、このことが、鉄の栄養状態の 改善 にっ なが った ことを 示唆 して いる 。
3、 大豆 水溶 性繊 維は、食餌への7.5%(75g/kg diet)の添加により、タンニン酸により低 下し た鉄 吸収 を改 善し た。 ,
以上 、1% 以上 のタ ンニ ン酸 を含 む食 餌の 摂取 は、 ラッ トの非ヘム鉄の吸収を抑制し、
重 度の 鉄欠 乏性 貧血 を惹 起す ることが明らかにされ、この作用は、用量依存性であった。
ま た、difmctoseanhydddemは 、こ れらの タン ニン 酸に よる 悪影 響を 改善 させ るこ とを 明 ら かに した 。さ らに 、大 豆水 溶性繊維の摂取の同様退作用を持ち、これらは大腸発酵の亢 進 が関 与す るこ とを 示唆 する 結果 を得た 。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
Effects of Tannic Acid and Nondigestible Carbohydrate Sources on Absorption of Iron and Other Trace Minerals in Rats ( ラ ッ ト の 鉄 お よ び そ の 他 微 量 必 須 元 素 の 吸 収 に お け る タ ン ニ ン 酸 と 非 吸 収 性 糖 類 の 影 響 )
本論文は 、115頁からなる英文論文であり、図21と表17を含み、参考論文2編が添えら れている。
ポリフェノールは、植物性の食品や飲料に多く含まれる化合物群で、欠くことのできな いヒトの食事成分である。近年、その有用な生理作用が多く見いだされて、研究者の注目 を集めている物質である。これらの物質は、多くの健康維持に重要な作用を有する反面、
主要なポリフェノール性物質であるタンニン酸は、有害な活性を有する。夕ンニン酸の持 つ最も重大な問題点は、食事として大量に摂取した場合に、鉄、特に非ヘム鉄の吸収を低 下させることであり、実際に、タンニン酸を多く含むお茶やコーヒー、ワインなどは鉄吸 収を妨げるとする報告がある。しかし、これまで、鉄以外の重要な微量必須元素(トレー スエレメント)に関して、タンニン酸摂取の影響に関する知見は無かった。また、鉄に関 しても、その欠乏症状である貧血指標(ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値)への影響 は、詳細には調べられていない。一方、難消化性糖類は、カルシウムなどのいくっかのミ ネラル吸収を促進するとする報告があり、鉄吸収に関しても促進作用が報告されている。
しかし、これらの食事因子が、タンニン酸により障害された鉄吸収に対して、有効に働く かどうかは明らかではなかった。
本研究においては、これらの点を明らかにすべく、実験動物であるラットを使い、種々 の食餌条件を設定して実験を行って実験を行っている。まず、鉄吸収に関して、タンニン 酸の影響を見るための条件設定を行っている。すなわち、鉄の食餌中のレベルを、5 mg/kg dietから35 mg/kg dietまで変動させ、ラットにおける鉄の最小必要量(30 mg/kg diet)を 求めた。次にその鉄レベルの食餌を使用して、タンニン酸の添加レベルを種々に変化させ、
博 蔵
潤 敏
行
野 端
塚
原 浅
川 石
授 授
授 師
教 教
教 講
査 査
査 査
主 副
副 副
鉄 吸収 、お よび それ 以外の 微量必須元素として、亜鉛、銅、マンガンを取り挙げて、それ ら の吸 収率 への タン ニン酸 摂取の影響を見ている。また、大腸発酵がミネラル吸収に影響 を 及ぼ すと する 知見 がある ため、タンニン酸の大腸発酵への影響も見ている。一方、難消 化性糖類に関しては、既に鉄吸収促進作用が明らかになっている難消化性オリゴ糖の一種、
フラクトオリゴ糖と、その他に、新しく大量調整法が確立したオリゴ糖である、difructose anhydride IIIおよび、大豆水溶性繊維を用いて、タンニン酸により障害された鉄吸収に対 する作用を検討している。
これら試験の結果、以下の3つの新しい知見を得ている。
1、タンニン酸の摂取レベルに関して、その作用は用量依存性であり、食餌中1%(10g/kg diet)を超えると、鉄吸収を低下させるとともに、鉄欠乏性貧血の症状が惹起され、血 中 ヘモ グロビン濃度、ヘマトクリット値が低下し、不飽和鉄結合能などが上昇した。
一 方、 鉄以 外の 微量 必須 元素 、亜鉛 、銅 、マ ンガ ンの 吸収 は、 タンニン酸摂取の影 響 を受 けなかった。、また、タンニン酸の摂取は、盲腸内容物のpHを低下させ、短鎖 脂肪酸含量を増加させた。
2、難消化性オリゴ糖である、difructose anhydride川の摂取は、タンニン酸で低下した鉄 吸 収と 、そ れに より 誘発 され た鉄 欠乏性 貧血 を改 善し た。 しか し、フラクトオリゴ 糖 はこ れら の改 善作 用は 見ら れな かった 。さ らに 、こ の改 善作 用に大腸発酵が関与 し て い る こ と を 示 唆 し た 。 便 中 に 排 せ っさ れた タンニ ン酸 は摂 取し たも のの18% で あり 、こ のこ とも タン ニン 酸が 大腸の 微生 物に より 分解 され 、このことが、鉄の 栄養状態の改善にっながったことを示唆している。
3、 大豆 水溶 性繊維は、食餌への7.5%(75g/kg diet)の添加により、タンニン酸により低 下し た鉄 吸収 を改 善し た。
以 上、1%以 上の タン ニン 酸を 含む 食餌 の摂 取は 、ラットの非ヘム鉄の吸収を抑制し、
重度 の鉄 欠乏 性貧 血を 惹起することが明らかにされ、この作用は、用量依存性であった。
また、difructose anhydride IIIは、これらのタンニン酸による悪影響を改善させることを明 らか にし た。 さら に、 大豆水溶性繊維の摂取の同様退作用を持ち、これらは大腸発酵の亢 進が 関与 する こと を示 唆する結果を得ている。これらの結果は、全て新規の知見であり、
また、栄養学に大いに貢献できるものである。
よっ て、 審査 員一 同は 、カオ サロ アフ サナ が博 士( 農学 )の 学位 を受 ける のに十分な 資 格を 有す るも のと 認め た。