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Riccardin C 誘導体の 抗菌活性と作用機構の解析

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博士論文

Riccardin C 誘導体の 抗菌活性と作用機構の解析

平成 28 年 3 月

岡山大学院医歯薬学総合研究科 社会環境生命科学専攻

衛生微生物化学教室 71424184

森田 大地

(2)
(3)

目次

略語 ···

0

01

本研究の要約 ··· 003

第1章 序論 §1 抗菌薬と薬剤耐性菌の出現 ··· 005

§2 主要な薬剤耐性菌とその治療 ··· 006

§3 細菌の抗菌薬耐性機構 ··· 010

§4 本研究の目的 ··· 011

第2章 材料と方法 §1 化合物ライブラリ ··· 013

§2 菌株と培養条件 ··· 013

§3 抗菌薬感受性試験 ··· 013

§4 survival assay ··· 013

§5 S. aureus N315からの耐性菌の分離 ··· 014

§6 塩基配列の決定 ··· 015

§7 FabIの立体構造及びドッキングシミュレーション ··· 015

§8 DNA gyrase supercoiling assay ··· 019

§9 タンパク質合成阻害活性測定 ··· 019

§10 細胞内原子濃度測定 ··· 019

§11 走査型電子顕微鏡観察 ··· 020

§12 透過型電子顕微鏡観察··· 020

§13 Efflux assay ··· 021

§14 Influx assay ··· 021

§15 溶血活性試験 ··· 021

§16 膜脂質抽出 ··· 022

§17 Liposomeの調製 ··· 022

§18 Liposome障害性試験 ··· 023

§19 V. parahaemolyticus TM312からの耐性株の分離 ··· 023

§20 Tn挿入によるランダムな遺伝子破壊 ··· 023

§21 次世代シーケンサーを用いた解析 ··· 024

§22 遺伝子クローニング ··· 024

(4)

第3章 結果

§1 各種MRSAに対するriccardin C及び類似構造体(hydroxy基3個)のMIC測定

··· 027

§2 各種MRSAに対するriccardin C及び類似構造体(hydroxy基2個及び 4個)の MIC測定 ··· 028

§3 各種 MRSA に対する riccardin C 及び類似構造体(環状構造変化)の MIC 測定 ··· 029

§4 各種 MRSA に対する riccardin C 及び類似構造体(開環状構造)の MIC 測定 ··· 030

§5 各種MRSAに対するriccardin C及び類似構造体(部分構造)のMIC測定 · 032 §6 Riccardin C類似構造体の各種S. aureusに対するMIC測定 ··· 033

§7 Riccardin C類似構造体の各種細菌に対するMIC測定 ··· 034

§8 RND型多剤排出ポンプを破壊した各種グラム陰性菌でのMIC測定 ··· 034

§9 Riccardin C類似構造体のS. aureus N315株に対するsurvival assay ··· 034

§10 S. aureus N315 株の riccardin C 類似構造体及び 29に対する耐性株の分離と 解析 ··· 038

§11 HDR株とTRR株の変異の同定 ··· 039

§12 V. parahaemolyticus TM312 株からの riccardin C 類似構造体耐性株の分離と 抗菌物質耐性 ··· 042

§13 RCR6株の次世代シーケンサーを用いた解析による変異の同定 ··· 044

§14 DNA gyrase supercoiling assay ··· 051

§15 タンパク質合成阻害活性測定 ··· 051

§16 走査型および透過型電子顕微鏡観察 ··· 053

§17 誘導結合プラズマ発光分光分析による細胞内Na, K濃度測定 ··· 056

§18 膜不透過性蛍光色素の流入及び流出 ··· 056

§19 羊赤血球に対する溶血活性 ··· 060

§20 S. aureus N315株からの膜脂質の抽出 ··· 061

§21 S. aureus N315株の膜脂質を用いたliposomeに対する障害性 ··· 061

第4章 考察 ··· 063

総括と展望 ··· 069

謝辞 ··· 071

参考文献 ··· 073

(5)

1 略語

ABC ATP-binding cassete

ATP adenosine triphosphate

CCCP carbonyl cyanide m-chlorophenylhydrazone

CFU colony forming unit

CRE carbapenem resistant enterobacteriaceae

EtBr ethidium bromide

DMSO dimethyl sulfoxide

DNA deoxyribonucleic acid

DTT dithiothreitol

HEPES 4-(hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid

hr hour

IPTG isopropyl -D-1-thiogalactopyranoside LUV large unilamellar vesicle

MIC minimum inhibitory concentration MDRA multidrug resistant Acinetobacter

MDRP multidrug resistant Pseudomonas aeruginosa

min minute

MLV multilamellar vesicle

mRNA messenger ribonucleic acid

MRSA methicillin resistant Staphylococcus aureus MSSA methicillin susceptible Staphylococcus aureus NAD nicotinamide adenine dinucleotide

O.D. optical density

PBP penicillin binding protein

PCR polymerase chain reaction

PI propidium iodide

PRSP penicillin resistant Streptococcus pneumoniae QRDR quinolone resistance-determining regions

RNA ribonucleic acid

RND resistance nodulation cell division

rpm revolution per minute

SUV small unilamellar vesicle

SDS sodium dodecyl sulfate

VISA vancomycin intermediate Staphylococcus aureus VRE vancomycin resistant enterococci

VRSA vancomycin resistant Staphylococcus aureus

(6)

2

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3 本研究の要約

近年、治療に用いられる複数の抗菌薬に耐性を示す多剤耐性菌が出現し、臨床現場で問題となってい る。そのため、新たな作用機構や構造を有する抗菌物質の探索は重要な課題と考えられる。そこで、私は 所有していた化合物ライブラリより耐性菌に対して抗菌活性を示す新規抗菌物質の探索を行い、これま で抗菌活性の報告されていなかったriccardin C が多剤耐性菌であるMRSAやVREを含むグラム陽性 菌に抗菌活性を持つことを見出した。Riccaridin Cはbis(bibenzyl)構造からなり、既存の抗菌薬と構造 的な類似性が低く、新たな作用点を持つことが期待された。抗菌薬開発において、新たな標的部位の発見 は重要な課題である。そこで、私はriccardin C類似構造体の持つ作用機構と標的を明らかにするために 研究を行った。

Riccardin Cの類似構造体の内、hydroxy基を有する化合物は抗菌活性を示し、MICの4倍の濃度で

殺菌的に作用した。またhydoroxy基の数や位置を変化させても抗菌活性に大きな変化は観察されなか ったが、hydroxy基がmethoxy基へと変化させた化合物では抗菌活性が見られなかった。このため、

抗菌活性にはhydroxy基が必要であると考えられた。またriccardin Cの部分構造体ではhydroxy diphenyl ether構造がriccardin C類似構造体より弱い抗菌活性を示し、MICの4倍の濃度で静菌的に 作用していた。

これらの化合物に対する耐性株の分離を試みた結果、hydroxy diphenyl ether 構造の耐性株が分離さ れた。この耐性株は riccardin C 類似構造体には耐性を示さず、既存の抗菌薬の中ではトリクロサンに耐 性を示した。トリクロサンは脂肪酸合成に関与するFabIを阻害することが知られ、耐性株ではFabIに変 異が生じていた。このため、部分構造体の作用機構は FabIの阻害であり、riccardin C類似構造体は異な る作用機構を持つことが示唆された。

Riccardin C類似構造体は、殺菌的な抗菌作用を有していた。また、riccardin C類似構造体を作用させる

と、細胞内部にmesosome様の構造が出現し、細胞内イオンや膜不透過性の蛍光色素の移動が観察された。

したがって、riccardin C類似構造体は膜障害を誘発し細胞内容物の流出や恒常性を乱すことで、グラム陽 性菌に対して殺菌的な抗菌作用を示すことが強く示唆された。

一方で、細菌から抽出された膜脂質から構築した liposome に対しては膜障害を生じず、膜脂質との相 互作用による膜障害の可能性は低く、その作用は膜脂質以外の細胞膜を構成する因子と相互作用するも のと考えられる。また多剤耐性菌を含むグラム陽性菌で幅広く抗菌活性が観察されたため、その標的因 子はグラム陽性菌で共通に保持されている因子であると考えられる。これまでに報告された膜障害を示 す抗菌物質の多くは膜脂質との相互作用によるものであり、riccardin C類似構造体の作用機構の解析は、

新たな抗菌薬開発の重要な知見となりうると考えられる。

(8)

4

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5 第1章 序論

§1 抗菌薬と薬剤耐性菌の出現

有史以前より感染症は、人類の死亡原因の大部分を占めてきた。感染症の記述は古代より存在し、また 病原体が確認される以前より、何らかの存在がヒトに侵入することで感染が生じると考えられ隔離や消 毒などの対策が行われていた。

1684年にはレーウェンフックによって光学顕微鏡が発明され、微生物の存在が直接確認されるように なった。また19世紀以降、パスツールやコッホらの研究によって感染症が病原体によって生じることが 知られるようになった。一方で1796年、ジェンナーによって天然痘ワクチンが開発されて以降、いくつ かの感染症にはワクチンが予防に用いられてきた。

さらに1929年、フレミングによって初の抗生物質であるペニシリンが発見され、またエールリヒのサ ルバルサンやドーマクのサルファ薬などの合成抗菌薬も出現したことで、感染症の根本的な治療が可能 になった。その後、ストレプトマイシンやキノロンなどの新たな抗菌薬が開発され治療に用いられてき た。こうして抗菌薬による治療が行われる中で、耐性菌が出現するようになった。こうした耐性菌は異な る作用点をもつ抗菌薬に対しては感受性を保っていたため、新たな抗菌薬が利用され続け、細菌は抗菌 薬に対して耐性を積み重ねていった。その結果、治療に用いられる複数の抗菌薬に耐性を獲得した多剤 耐性菌が出現することとなった。

現在では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (Methicillin resistant Staphylococcus aureus :MRSA)や 多剤耐性緑膿菌 (Multidrug resistant Pseudomonas aeruginosa : MDRP)、バンコマイシン耐性腸球菌 (Vancomycin resistant enterococci : VRE)など様々な細菌において多剤耐性菌が出現し、こうした耐性 菌に感染すると治療方法が限られるために臨床現場での重大な問題となっている。また、耐性菌の拡大 にともない、耐性菌の選択圧にさらされやすい医療従事者や入院患者のみならず、市中の一般人におい ても常在菌として保菌される例が増えている。こうした多剤耐性菌は多くの場合、感染力が弱く健常人 では問題となることが少ない。しかし、現在では医療技術や公衆衛生の向上に伴い、高齢化や生活習慣病 の罹患率、そして先進的な手術などが増加し、その結果易感染者の増加がみられる。こうした易感染者は 感染力の弱い多剤耐性菌にも感染しうるために、耐性菌感染症は今後更に重要な問題となっていくもの と考えられる。

(10)

6

§2 主要な薬剤耐性菌とその治療

長年の抗菌薬の使用によって、現在ではあらゆる菌で様々な抗菌薬に対する耐性菌が出現している。

様々な耐性菌の中でも、ヒトへの感染性を有し、抗菌薬耐性が治療上問題になりうる菌は、特に公衆衛生 上の問題となっている。このため、WHOや国家、病院など様々な規模で耐性菌のサーベイランスを行い、

耐性菌を把握し、耐性菌の拡大に備えている。

日本では、感染症の発生を予防し蔓延を阻止するため、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に 関する法律(感染症法)が存在する。この法律で一~五類感染症及び、指定感染症、新感染症、新型インフ ルエンザ等感染症に指定された感染症は、発生の届出、患者の隔離や就業制限などを行うことが規定さ れている。注意を要するいくつかの耐性菌感染症は、この法律で指定され、流行が監視されている。

以下に示した 6 種の薬剤耐性菌は、感染症法において五類感染症に指定され、メチシリン耐性黄色ブ ドウ球菌 (MRSA), 多剤耐性緑膿菌 (MDRP), ペニシリン耐性肺炎球菌 (PRSP)は基幹定点報告*1が、バ ンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌 (VRSA), バンコマイシン耐性腸球菌 (VRE), 多剤耐性アシネトバク ター (MDRA) , カルバペネム耐性腸内細菌科細菌 (CRE)は全数報告*2を行うことが規定されている。

*1 感染症法に基づき、都道府県が指定した病床数300 以上の医療機関(全国約500ヶ所)で発生した、五 類感染症のうち厚生労働省令で定める患者の報告

*2 感染症法に基づき、全ての医師が発生を確認した、厚生労働省令で定める感染症の患者の報告

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA)

基幹定点報告の規定される五類感染症であり、その判定基準は、分離・同定による黄色ブドウ球菌の検 出、かつオキサシリンのMIC*3が4 g/mL以上、又はオキサシリンの感受性ディスク(KB)の阻止円*4

直径が10 mm以下とされている。

*3 minimum inhibitory concentration. 微生物の視認できる発育を阻止する抗微生物物質の最小濃度

*4菌液を塗布した培地上に薬剤含有ディスクを配置し、ディスク周辺の微生物の生育しなかった領域 基本的にMRSAは、MSSA*4がStaphylococcal cassette chromosome mec (SCCmec)と呼ばれる染色 体カセットを獲得したものであり、SCCmecに含まれる mecA 遺伝子の働きによって-ラクタム系抗菌 薬に耐性を獲得している。このため、mecA遺伝子の検出もMRSAの判定に頻繁に使用される。

*5S. aureusの中で、mecA遺伝子を有していない株

-ラクタム系抗菌薬は細胞壁合成を行うpenicillin binding protein (PBP)*6を阻害することで、抗菌活 性を示している。しかし、mecA遺伝子は、-ラクタム系抗菌薬と親和性の低いPBP2’をコードするため、

耐性を示すこととなる。また、SCCmecはmec遺伝子群、ccr 遺伝子群を持ち、両端に特徴的なdirect repeats / inverted repeatsからなり、ゲノム上のorfXの3’末端に挿入される(1)。SCCmecはこの他に 様々な薬剤耐性遺伝子を含むことがあり、-ラクタム系抗菌薬のみならず、その他の抗菌薬にも耐性を示 すこともある。

*6 細胞壁のペプチドグリカン合成に関与する酵素群であり、-ラクタム系抗菌薬の作用標的

MRSAの多くは-ラクタム系抗菌薬のみならずマクロライド系抗菌薬(2)、キノロン系抗菌薬(3)にも耐

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性を持つ例が多く報告されている。現在、わが国でMRSAに適応を有する抗菌薬は、グリコペプチド系 抗菌薬のバンコマイシンとテイコプラニン, アミノグリコシド系抗菌薬のアルベカシン, オキサゾリジ ノン系抗菌薬のリネゾリド, 環状リポペプチド系抗菌薬のダプトマイシンである。また、海外ではリファ ンピシン, テトラサイクリン系抗菌薬のドキシサイクリン, ミノサイクリン, リンコマイシン系抗菌薬の クリンダマイシン, サルファ薬のスルファメトキサゾール/トリメトプリム、ストレプトグラミン系抗菌 薬のキヌプリスチン/ダルフォプリスチンなどが用いられることもある。

バンコマイシン耐性腸球菌 (VRE)

全数報告の規定される五類感染症であり、その判定基準は、分離・同定による腸球菌の検出、かつバン コマイシンのMICが16 g/mL以上とされている。

バンコマイシンはペプチドグリカン前駆体の D-alanyl-D-alanine 末端に結合し、細胞壁合成を停止さ せることで抗菌活性を示す。VREではバンコマイシンの結合するD-alanyl-D-alanineが、VanA, VanB, VanDによってD-alanyl-D-lactateへ、 VanC, VanE, VanGによってD-alanyl-D-serineへ変換されるこ とでバンコマイシンに対する耐性を獲得している(4)。特に、VanA型とVanB型のVREの報告が多く、

特にVanA型は多くの場合、グリコペプチド系抗菌薬に強い耐性を示す。またvanA遺伝子やvanB遺伝 子はプラスミド上に存在し、S. aureusなどの他菌種に伝達しうるため注意が必要である。

VRE は、グリコペプチド系抗菌薬に耐性を持つだけでなく、-ラクタム系抗菌薬やアミノグリコシド 系抗菌薬に耐性を持つものも多く、オキサゾリジノン系抗菌薬のリネゾリドや、ストレプトグラミン系 抗菌薬のキヌプリスチン/ダルフォプリスチン、環状リポペプチド系抗菌薬のダプトマイシンは有効であ る。

バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌 (VRSA)

全数報告の規定される五類感染症であり、その判定基準は、分離・同定による黄色ブドウ球菌の検出、

かつバンコマイシンのMICが16 g/mL以上とされている。

VRSAはVREなどの持つバンコマイシン耐性遺伝子であるvanA遺伝子やvanB遺伝子をプラスミド で獲得し、バンコマイシン耐性を獲得している(5, 6)。また、vanA遺伝子やvanB遺伝子に依存せず、バ ンコマイシンの MIC が 8 g/mL 程度の耐性を獲得した vancomycin intermediate Staphylococcus aureus (VISA)*7(7, 8)や、菌集団全体に対するMICでは変化は見られないが、細胞集団の一部に106個 に 1 個 以 上 の VISA が 存 在 す る た め に 、 臨 床 上 で バ ン コ マ イ シ ン が 無 効 と な る heterogeneous vancomycin intermediate Staphylococcus aureus (hVISA)(7, 8)などの耐性菌も報告されている。

*7 S. aureusの中で、van遺伝子群に依存せず細胞壁の肥厚など多様な要因によってバンコマイシンの

効果が低下した株。臨床上、バンコマイシンが無効に近い耐性を持つ。

VRSAやVISA, hVISAは、MRSA を背景とすることが多く、治療に使用される抗菌薬はグリコペプ

チド系抗菌薬のバンコマイシンとテイコプラニン以外のMRSA治療薬が用いられる。

(12)

8 多剤耐性緑膿菌 (MDRP)

基幹定点報告の規定される五類感染症であり、その判定基準は、分離・同定による黄色ブドウ球菌の検 出、かつ、イミペネムのMIC値が16 g/mL以上又は、イミペネムの感受性ディスク(KB)の阻止円の直

径が13 mm以下、アミカシンのMIC値が32 g/mL以上又は、アミカシンの感受性ディスク(KB)の阻

止円の直径が14 mm以下、シプロフロキサシンのMIC値が4 g/mL以上又は、シプロフロキサシンの 感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が15 mm以下の3つの条件を全て満たした場合とされている。

P. aeruginosaは先天的に多様な耐性機構を有し、MDRPにおいても各抗菌薬への耐性機構には様々な

種類が存在する。特に強い耐性を与える機構は、-ラクタム系抗菌薬の場合、外膜porin*8の減少による 透過性の低下や外来性のmetallo--lactamase*9の獲得が知られる。アミノグリコシド系抗菌薬耐性では RND型多剤排出ポンプ*10のMexXY-OprMの発現上昇や、外因性のアミノグリコシド修飾酵素やリボソ ームメチル化酵素 RmtA の獲得が知られる。また、キノロン系抗菌薬でも RND 型多剤排出ポンプの

MexCD-OprJなどの発現上昇によって耐性を獲得するとともに、キノロン系抗菌薬の作用点であるDNA

gyraseやTopoisomerase IVに耐性を与えるQRDR変異*11も高頻度でみられる。

*8 外膜上に存在する膜貫通タンパク質。糖、アミノ酸などの分子量 600~700 程度以下の物質が通過 可能

*9 -lactamaseの中で、活性にZn2+を必要とし、その他の-lactamaseが分解できないカルバペネム系 抗菌薬を分解可能な酵素群

*10 内膜タンパク質、連結タンパク質、外膜タンパク質の3種類のタンパク質から構成される多剤排出ポ ンプ。構成上外膜を有さないグラム陽性菌には存在せず、グラム陰性菌の抗菌薬耐性に関与する

*11 キノロン系抗菌薬に耐性を示す微生物で観察される、作用部位のDNA gyraseやTopoisomerase IV で高頻度に観察されるアミノ酸変異が生じている領域

MDRP は、-ラクタム系抗菌薬やアミノグリコシド系抗菌薬、キノロン系抗菌薬に耐性をもち、その 他の抗菌薬にも耐性を持つことが多く、ほぼ全ての抗菌薬に耐性を示すことがある。MDRPの治療はそ のため、比較的感受性を示す抗菌薬を併用することで治療される。また、かつて抗菌薬として用いられて いたが、副作用の頻度が高く使用されなくなったポリペプチド系抗菌薬コリスチンは、単独でMRDP治 療が可能な抗菌薬であり、近年耐性菌感染症治療のために再承認された。

多剤耐性アシネトバクター (MDRA)

全数報告の規定される五類感染症であり、その判定基準は、分離・同定によるアシネトバクター属菌の 検出、かつ、イミペネムのMIC値が16 g/mL以上又は、イミペネムの感受性ディスク(KB)の阻止円の

直径が13 mm以下、アミカシンのMIC値が32 g/mL以上又は、アミカシンの感受性ディスク(KB)の

阻止円の直径が14 mm以下、シプロフロキサシンのMIC値が4 g/mL以上又は、シプロフロキサシン の感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が15 mm以下の3つの条件を全て満たした場合とされている。

MDRA の各抗菌薬への耐性はMDRP と同様に様々な耐性機構によってもたらされる。特に強い耐性 を与える機構は、-ラクタム系抗菌薬の場合、内因性のcarbapenemaseの発現上昇や、外来性のmetallo-

-lactamaseの獲得が知られる。アミノグリコシド系抗菌薬耐性では外因性のアミノグリコシド修飾酵素 やリボソームメチル化酵素ArmAの獲得が知られる。また、キノロン系抗菌薬ではRND型多剤排出ポ

ンプの AdeABC などの発現上昇によって耐性を獲得するとともに、キノロン系抗菌薬の作用点である

(13)

9

DNA gyraseやTopoisomerase IVに耐性を与えるQRDR変異も高頻度でみられる。

MDRA もMDRP 同様、ほぼ全ての抗菌薬に耐性を持つことがあるが、高容量カルバペネムやスルバ クタム/アンピシリンなどは有効性が見られる場合がある。また、MDRP同様ポリペプチド系抗菌薬コリ スチンは、単独でMRDP治療が可能である。これに加え、グリシルサイクリン系抗菌薬であるチゲサイ クリンもMDRAに適応を有している。

ペニシリン耐性肺炎球菌 (PRSP)

基幹定点報告の規定される五類感染症であり、その判定基準は、分離・同定による肺炎球菌の検出、か つペニシリンの MICが0.125 g/mL 以上、又はオキサシリンの感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が

19 mm以下とされている。

PRSP の-ラクタム系抗菌薬耐性は MRSA とは異なり、内因性のPBP の変異による親和性の低下が 原因である。またPRSPは高率でマクロライド耐性を有することが知られている。

PRSP は、MRSA と異なり-ラクタム系抗菌薬の中でもカルバペネムには感受性を示す例が多く、治 療に使用される。またMRSA治療に使用される抗菌薬に感受性を示すが、グリコペプチド系抗菌薬のバ ンコマイシンのみPRSPへの適応を有する。

カルバペネム耐性腸内細菌科細菌 (CRE)

全数報告の規定される五類感染症であり、その判定基準は、分離・同定による腸内細菌科細菌の検出、

かつ、メロペネムのMIC値が2 g/mL 以上であること、又はメロペネムの感受性ディスク(KB)の阻止 円の直径が22 mm以下、もしくはイミペネムのMIC値が2 g/mL以上、又はイミペネムの感受性ディ スク(KB)の阻止円の直径が22 mm以下、かつセフメタゾールのMIC値が64 g/mL以上、又はセフメ タゾールの感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が12 mm以下のいずれかを満たした場合である。

CRE は腸内細菌科という広範な細菌のうち、carbapenemase を獲得した細菌であり、Klebsiella pneumoniaeが最も多く、次いでEscherichia coliが多い。また、この耐性はプラスミドの獲得によって もたらされることが多く、CRE から他の腸内細菌科へと水平伝播し新たな CRE が発生する。CRE は

carbapenemase以外の耐性を持つことも多く、キノロン系抗菌薬やアミノグリコシド系抗菌薬に耐性を

持つことも多い。

CRE はMDRA 同様、ポリペプチド系抗菌薬コリスチンとグリシルサイクリン系抗菌薬であるチゲサ イクリンが有効である。

このように多剤耐性菌に利用可能な抗菌薬は非常に限られる。さらに、こうした抗菌薬にも耐性を獲 得した細菌の報告は小規模ながら散見される。耐性菌に有効な抗菌薬の多様は、将来的に利用可能な抗 菌薬の存在しない耐性菌を生み出す可能性があり、慎重な利用が必要となる。そのためこのような抗菌 薬の適応は、これまでの抗菌薬のように有効な菌種というだけでなく、既存の抗菌薬に耐性を獲得した 菌に対してのみという条件が設定されており、乱用を防ぐことを求められている。

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§3 細菌の抗菌薬耐性機構

抗菌薬は細菌の生存に必要な機構を阻害することで細菌を死滅させるが、耐性菌は様々な耐性機構に よって抗菌薬を無効化している。抗菌薬に対する耐性菌の登場以降、無効化された抗菌薬の改良や治療 に有効な抗菌薬を判別するため、抗菌薬に耐性を与える機構の解析は重要な課題であり、現在では様々 な耐性機構が明らかとなっている。

細菌が抗菌薬に対する耐性を獲得するには、

(1) 突然変異による耐性系の過剰発現や標的部位の変異、減少

(2) Plasmidやphageなどによる外来の耐性遺伝子の獲得

の2通りの方法がある。

細菌の抗菌薬耐性機構としては、大きく分けて以下の5種類がある。

(1) 修飾酵素や分解酵素による抗菌薬の不活性化

例:-lactamase産生によるラクタム系抗菌薬の分解(9)

先天的に耐性遺伝子を有する菌も存在するが、主には plasmid などによる外 来遺伝子の獲得によって耐性化した菌が知られる。

(2) 作用部位における抗菌薬親和性の減少

例:DNA gyraseの変異によるニューキノロン系抗菌薬の親和性の低下 (10)

主 に 内 部 遺 伝 子 の 突 然 変 異 に よ っ て 耐 性 化 す る が 、16S rRNA methyltransferasesのplasmidによる獲得による耐性化した菌も存在する。

(3) 抗菌薬作用酵素の代替酵素の産生

例:ラクタム系抗菌薬に親和性の低いpenicillin binding protein 2’ (PBP2’)の産生(11) MRSAなどで見られるSCCmecによるPBP2’の獲得によって耐性化する。

(4) 外膜の透過性の減少(外膜の存在するグラム陰性菌のみ) 例:外膜ポーリンの減少(12)

P. aerugionosaの外膜ポーリンであるOprDが欠損することでカルバペネム に耐性化する。

(5) 抗菌薬の菌体外への能動的排出

例:テトラサイクリン排出ポンプによるテトラサイクリンの菌体外への能動的排出(13) 多剤排出ポンプによるキノロン系抗菌薬の菌体外への能動的排出(14)

主に突然変異によって、ゲノム上に存在する多剤排出ポンプが過剰発現する ことで耐性化する。一部の多剤排出ポンプはplasmid上にも存在する。

このような耐性機構は水平伝播によって様々な菌に共有され、多様な菌種で耐性菌が出現しうる。ま た、現在では複数の耐性機構を有し、種類の異なる抗菌薬にも耐性を示す多剤耐性菌が出現している。こ のため既存のあらゆる抗菌薬が無効な耐性菌が出現する可能性もあり、既存の抗菌薬とは異なる新たな 作用機構を有する抗菌薬の開発は重要な課題となっている。

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§4 本研究の目的

現在臨床現場では、通常使用される複数の抗菌薬に耐性を獲得した多剤耐性菌が出現し、利用できる 抗菌薬が限られるために問題となっている。また、こうした数少ない抗菌薬にも耐性を獲得した菌の報 告がなされるようになり、更なる耐性菌の出現が予想される。しかし、近年では新たな作用や構造を持っ た抗菌薬の開発速度は低下しており、新たな抗菌薬の開発は重要な課題と考えられる。

そこで私は、有機医薬品開発学教室の宮地弘幸教授らの合成した化合物ライブラリより、多剤耐性菌 に有効な新たな抗菌物質の探索を行った。その結果、抗菌活性の報告されていなかったriccardin C類似 構造体が、多剤耐性菌を含むグラム陽性菌に抗菌活性を持つことを見出した。

Riccardin類はbis(bibenzyl)構造を持つ化合物であり、ゼニゴケから抽出され発見された(15, 16)。ゼ ニゴケから発見されたbis(bibenzyl)構造の化合物は、その他にmarchantin類やplagiochin類などが存 在する。

Riccardin Cは抗真菌作用(15)、LXR receptorのアゴニスト(17, 18)、 glucosidase阻害作用(19)、

COX阻害作用(19)、HIV逆転者阻害作用(20)、抗腫瘍作用(21)などの作用を持つことが報告されている。

また、riccardin Dやmarchantin M, plagiochin Eなども抗腫瘍作用(21, 22)を持つことが報告されてい る。bis(bibenzyl)構造の2量体からなるpusilatin類もゼニゴケから発見され、DNA polymerase 阻害 作用(20)を持つことが報告されている。しかし、抗菌活性は報告されていなかった。

また、このriccardin C類似構造体はbis(bibenzyl)構造からなり、既存の抗菌薬と構造的な類似性が低 く、新たな作用点を持つことが期待された。抗菌薬開発において、新たな標的部位の発見は重要な課題で ある。そこで、私はriccardin C類似構造体の持つ作用機構と標的を明らかにするために研究を行った。

Riccardin C Riccardin D

Marchantin M Plagiochin E

(16)

12

(17)

13 第2章 材料と方法

§1 化合物ライブラリ

Riccardin Cは徳島文理大学薬学部天然物化学研究室の福山愛保教授より分与していただいた(18)。そ

の他の抗菌活性を確認した化合物は、有機医薬品開発学教室の宮地弘幸教授らによって合成された化合 物ライブラリより提供していただいた(23, 24)(図 1)。

§2 菌株と培養条件

本研究では表 1 の菌株を使用した。菌株の培養には、S. aureus では Nutrient 培地(NISSUI)、E.

faecalis と E. faecium では Brain Heart Infusion 培地(DIFCO Inc.)、それ以外には LB 培地(1.0 % polypeptone, 0.5 % yeast extract, 1 % NaCl, pH 7.0)を用いた。菌株の培養は、37℃で好気的に行った。

§3 抗菌薬感受性試験

微量液体希釈法に準じて最小生育阻止濃度(MIC)の測定を行った。培地には、Mueller-Hinton broth (DIFCO Inc.)を用いた。MH brothで中期対数増殖期 (O.D.650=0.7, 腸球菌では0.3)まで培養した菌液 を滅菌生理食塩水 (0.85 % NaCl)で希釈し、105 CFU/mLとなるように接種した。37℃で24時間静置培 養後、菌の生育が肉眼的に認められない最小の濃度をMICとした。

§4 survival assay

S. aureus N315 株を用いて、化合物存在下での生菌数をCFU/mLで評価した。枝付フラスコを用い

て100 mL N brothで中期対数増殖期 (O.D.650 = 0.7)まで培養した菌液を試験管に5 mLを分注し、各試

験管に 1/4, 1, 4×MICの各種化合物または化合物と等量の DMSOを加え培養した。経時的に各試験管

の菌液を、滅菌生理食塩水 (0.85 % NaCl)で適宜希釈し、N寒天培地を用いて37℃、24時間静置培養後 のコロニー数を計測した。

(18)

14 表1 使用した菌株

strain features ref

E. coli

TG1 wild type

KAM42 acrB, ydhE, tolC from TG1 (25)

P. aeruginosa

PAO1 laboratory strain, genome sequence completed PMX7 mexAB-oprM, mexCD-oprJ, mexEF-oprN, mexXY,

mexHI-opmD, pmpM, mexVW from PAO1 (26) V. parahaemolyticus

AQ3334 wild type, clinical isolate

TM312 vmeAB, vmeCD, vmeEF, vmeHI, vmeK, vmeLM,

vmeO, vmeQ, vmeRS, vmeWX, vmeUV, vmeYZ from AQ3334 (27) RCR6 6 resistant strain from TM312

S. aureus

N315 MRSA, genome sequence completed HDR 29 resistant strain from N315 TRR triclosan resistant strain from N315

OM481 MRSA, -lactamase (-), PBP2a expression (constitutive) OM584 MRSA, -lactamase (+), PBP2a expression (inducible)

209P MSSA, FDA standard strain

Mu50 VISA, genome sequence completed E. faecium

FN1 VRE (vanA)

E. faecalice

NCTC12201 VRE (vanA) B. subtilis

168 laboratory strain, genome sequence completed

§5 S. aureus N315からの耐性菌の分離

一晩培養したS. aures N315株の菌液100 Lを、MICの4倍の化合物 (7 : 8 g/mL, 29 : 32 g/mL, トリクロサン : 0.25 g/mL)を含むN寒天培地で37℃、24時間培養した。

出現したcolonyはN寒天培地でsingle colony isolationを行い、更に化合物添加N寒天培地でsingle

colony isolationを行い生育した株を耐性株とした。分離された29の耐性株はHDR株、トリクロサンの

耐性株はTRR株と名づけた。

(19)

15

§6 塩基配列の決定

S. aures N315株及びこれに由来する耐性株より染色体DNAを調製した。得られた染色体DNAを鋳

型として、SA0869 (fabI)をKOD -plus- neo DNA Polymerase (東洋紡)を用いてPCRを行った。

増幅条件は、1. 94℃で1 min, 2. 61℃で 2 min, 3. 68℃で 1 min, 4. 3を30回繰り返す, 5. 68℃で 3 minで行った。Primerは表2に示したseqfabI_fw, seqfabI_revを使用した。

塩基配列の決定は、株式会社ファスマック シーケンスサービスに依頼した。Primer は表 3-1 に示し たseqfabI_fw, seqfabI_middle, seqfabI_revを使用した。

表2 塩基配列の決定に使用したprimer primer name sequence (5’ to 3’)

seqfabI_fw CCCATTCGGAGGAGACATCA

seqfabI_middle TGTTCAAAGCGATGAAGAGG

seqfabI_rev AGTCAGACACCTGCCCTACA

§7 FabIの立体構造及びドッキングシミュレーション

Protein data bankに登録されているS. aureus FabIの結晶構造解析データ(PDB code : 4ALI(28))に 基づき、塩基配列より推定されたアミノ酸配列の立体構造をシミュレーションした。S. aureus N315の FabIを鋳型とし、HDR株、TRR株の遺伝子配列の結果から予想されるアミノ酸配列をシミュレーショ ンした。シミュレーションはSWISS-MODEL(http://swissmodel.expasy.org/)(29–32)を用いて、4ALI_A を鋳型として行った。シミュレーション結果の解析はUCSF chimera(33)を使用した。

また29及びトリクロサンのFabIに対するドッキングシミュレーションを行った。FabIは4ALI_Aを 用いて、29及びトリクロサンの構造データはZINC(http://zinc.docking.org/)(34, 35)より29については

ZINC01841247、トリクロサンについてはZINC00002216を利用した。ドッキングシミュレーションは

SwissDock(http://www.swissdock.ch)(36, 37)を 利 用 し た 。 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 結 果 の 解 析 は UCSF chimera(33)を使用した。

(20)

16

3 4

2 Riccardin C

5

6

9 10 11

8 7

12

17 16

13 グループ1

グループ2

グループ3

グループ4

14 15

1

図 1 Riccaridin C類似構造体及び部分構造体の構造式

(21)

17 図 1 Riccaridin C類似構造体及び部分構造体の構造式

26 28

25 24

20 21 18 19

27

29

34 35

30 31 32 33

23 22

グループ5

グループ6

(22)

18

Riccardin C類似構造体の確認された活性

MIC 色素移動 細胞内 DNA gyrase タンパク質 電子顕微鏡 溶血活性 liposome

Na, K 阻害 合成阻害 観察 障害

Riccardin C ○ ― ― ― ― ― ― ―

1 ○ ○ ― ― ― ― ― ―

2 ○ ○ ― ― ― ― ― ―

3 ○ ○ ― ― ― ― ― ―

4 × × ― ― ― ― × ―

5 ○ ○ ○ ― ― ― × ―

6 ○ ○ ○ ― ― ○ × ○

7 ○ ○ ― ○ ○ ○ ― ―

8 × ― ― ― ― ― ― ―

9 ○ ○ ― ― ― ― ― ―

10 ○ ― ― ― ― ― ― ―

11 ○ ○ ― ― ― ― ― ―

12 ○ ○ ― ― ― ― ― ―

13 × × ― ― ― ― ― ―

14 × × ― ― ― ― ― ―

15 ○ ○ ― ― ― ― ― ―

16 ○ ○ ― ― ― ― ― ―

17 ○ ― ― ― ― ― ― ―

18 ○ ○ ― ― ― ― ― ―

19 × ― ― ― ― ― ― ―

20 ○ ○ ― ― ― ― ― ―

21 ○ ― ― ― ― ― ― ―

22 ○ ― ― ― ― ― ― ―

23 ○ ― ― ― ― ― ― ―

24 ○ ― ― ― ― ― ― ―

25 ○ ― ― ― ― ― ― ―

26 ○ ― ― ― ― ― ― ―

27 ○ ― ― ― ― ― ― ―

28 ○ ○ ― ― ― ― ― ―

29 ○ × × × ― ― × ×

30 × ― ― ― ― ― ― ―

31 × ― ― ― ― ― ― ―

32 × ― ― ― ― ― ― ―

33 × ― ― ― ― ― ― ―

34 × ― ― ― ― ― ― ―

35 × ― ― ― ― ― ― ―

○:活性あり

×:活性無し

―:未確認

(23)

19

§8 DNA gyrase supercoiling assay

DNA gyrase阻害活性を確認するために、S. aureus Gyrase Supercoiling Assay Kits (Inspiralis)を使 用した。0.5 µgのrelaxed pBR322を1UのDNA gyraseとbuffer (35 mM Tris-HCl (pH 7.5), 24 mM KCl, 4 mM MgCl2, 2 mM DTT, 1.8 mM Spermidine, 1 mM ATP, 6.5 % (w/v) glycerol, 0.1 mg/ml BSA) 中、化合物の存在下で37℃、30 min間反応させた。反応サンプルを電気泳動し、relaxed型からsupercoil 型への変化を確認した。

§9 タンパク質合成阻害活性測定

Ribosomeによるタンパク質合成に対する阻害活性を確認するために、無細胞くんQuick (太陽日酸)を

使用した。96穴平底プレートに1穴あたり、反応溶液45 µLにpRSET/CFPを4 µL (終濃度5 µg/mL)、

化合物を1 µL加え37℃、1 hrで反応させ、CFPの蛍光を測定することで産生されたタンパク質量を測

定した。反応液はE.coliに由来し、pRSET/CFPはE.coli TOP10F'/pRSET/CFPから抽出・精製し田モ ノを使用した。

蛍光の測定にはFlex station 3 (MOLECULAR DEVICES)を使用し、励起波長452 nm, 蛍光波長505 nmで測定した。

§10 細胞内原子濃度測定

S. aureus N315株をN培地で前培養し、200 mL N培地に植菌後O.D.650 = 0.7まで37℃、好気的に 培養した。その菌液を、試験管に5 mL分注し任意の濃度の化合物を加え37℃で培養した。任意の時間 経過後、4℃、8 krpm, 10 minで遠心し、滅菌精製水で3回洗浄した。その後、秤量した1.5 mLチュー ブに移し、-80℃で凍結後、凍結乾燥機を用いて乾燥した。乾燥したチューブの重量と空のチューブと の重量差を、菌体の乾燥重量とした。

乾燥した菌体を1 mL 1 N HNO3で懸濁し、100℃の水浴で菌体が完全に分解するまで加熱した。分解

産物800 Lを4200 Lの滅菌精製水で希釈し測定試料とした。

イオン濃度測定は、岡山大学自然生命科学研究支援センター 分析計測・極低温部門 分析計測分野の 所有するICP発光分析装置(セイコーインスツルメンツ製VISTA-PRO)を使用した。

ICP発光分析装置の校正には、K標準液 (K 100)(和光)、Na標準液(Na 100) (和光)を滅菌精製水で希 釈し、0, 5, 10, 25 ppmの混合液を使用した。

(24)

20

§11 走査型電子顕微鏡観察

S. aureus N315株をN培地で前培養し、5 mL N培地に植菌後、O.D.650 = 0.7まで37℃、好気的に培 養した。その菌液を、1.5 mLチューブに1 mL分注し、7を8 g/mL (4×MIC)またはコントロールとし て溶媒のDMSOを0.8 v/v%となるように加え37℃で培養した。3時間経過後、4℃、15 krpm, 1 minで 遠心し沈殿を得た。

沈殿を1 mL固定液(2% glutaraldehyde, 2% formaldehyde)で懸濁し、25℃で一晩固定した。その後、

4℃、8 krpm, 5 minで遠心し、沈殿を1 mL 0.1 M phosphate buffered saline (pH 7.2)で2回洗浄した。

固定後のサンプルは50 % EtOH (20 min)で脱水後、4℃、8 krpm, 10 minで沈殿を得た。更に同様に 70 % EtOH (20 min), 90 % EtOH (一晩), 95 % EtOH (20 min), 99.5 % EtOH (20 min), t-butyl alcohol (30 min)×2回で段階的にEtOH濃度を上昇させ完全に脱水させた。最後に、20 L t-butyl alcoholで懸 濁、凍結し岡山大学医学部共同実験室で凍結乾燥を行った。

脱水されたサンプルを、四酸化オスミウムでコーティング後、岡山大学医学部共同実験室の走査型電子 顕微鏡 (HITACHI Scanning Electron Microscope Model S-4800) を用いて観察した。

§12 透過型電子顕微鏡観察

S. aureus N315株をN培地で前培養し、5 mL N培地に植菌後、O.D.650 = 0.7まで37℃、好気的に培 養した。その菌液を、1.5 mLチューブに1 mL分注し7を8 g/mL (4×MIC)またはコントロールとし て溶媒のDMSOを0.8 v/v%となるように加え37℃で培養した。3時間経過後、4℃、15 krpm, 1 minで 遠心し沈殿を得た。

固 定 、 包 埋 、 薄 切 及び 染 色 は 、 岡 山 大 学 医学 部 共 同 実 験 室 に 依 頼し た 。 前 固 定 と し て 2.5 % glutaraldehyde, 2 hr、後固定として 1%四酸化オスミウムを使用し、洗浄には 1 mL 0.1M phosphate

buffered saline (pH 7.4)を使用した。その後、サンプルをアガロースで固め、EtOH脱水後、EtOHをプ

ロピレンオキサイドで置換しTAAB Low Viscosity Resinで包埋した。薄切はultra-microtome (Leica EM UC7)によって80 nmで行った。染色は酢酸ウランとReynolds lead citrateを使用した。

サンプルの観察は、岡山大学医学部共同実験室の透過型電子顕微鏡 (HITACHI Electron Microscope Model H-7650) を用いて行った。

(25)

21

§13 Efflux assay

S. aureus N315株をN培地で前培養し、10 mM K-lactateを含むN培地に植菌後、O.D.650 = 1.0ま で37℃、好気的に培養した。その菌液を、4℃、8 krpm, 5 minで遠心し沈殿を得た。沈殿をbuffer (200 mM HEPES-NaOH, 6 mM MgSO4, pH 7.0)で2回洗浄し、40 M EtBr, 20 M CCCPを加えたbuffer でO.D.650 = 0.3まで希釈し、37℃, 30 min incubationしethidiumを負荷した。その後、bufferで3回 洗浄し、O.D.650 = 0.4まで希釈したサンプルの蛍光を測定した。

蛍光は蛍光分光光度計 (HITACHI F2000) を使用し、励起波長530 nm, 蛍光波長600 nmで測定し た。

§14 Influx assay

S. aureus N315株をN培地で前培養し、10 mM K-lactateを含むN培地に植菌後、O.D.650 = 1.0ま

で37℃、好気的に培養した。その菌液を、4℃、8 krpm, 5 minで遠心し沈殿を得た。沈殿をN培地で3

回洗浄し、O.D.650 = 0.3まで希釈したサンプルを使用した。蛍光測定の開始の1分後に10 g/mLとな るようにethidium bromideまたはpropidium iodideを加え、蛍光の安定後サンプルを添加した。

蛍光は蛍光分光光度計 (HITACHI F2000) を使用し、励起波長530 nm, 蛍光波長600 nmで測定し た。

§15 溶血活性試験

赤血球は、羊赤血球(日本生物材料センター)を使用した。1 mL羊赤血球を4℃, 2.5 krpm, 5 minで遠 心し、沈殿をbuffer (10 mM Tris-HCl, 0.9 % NaCl, pH 7.4)で4回洗浄した。得られた沈殿をbufferに 希釈し、1 %とした。500 L 1 %羊赤血球と500 L buffer, 10 Lサンプル溶液を1.5 mLチューブで穏 やかに混合し、37℃, 1 hr incubationした。その後、4℃, 2.5 krpm, 5 minで遠心し、得られた上清につ

いて540 nmの吸光度を測定した。

得られた結果は、界面活性剤の1 v/v% Triton X-100による完全溶血を100 %とした相対比で示した。

(26)

22

§16 膜脂質抽出

脂質の抽出はBligh & Dyer法(38)に基づき行った。

S. aureus N315株をN培地で前培養し、1 L BHI培地に植菌後、O.D.650 =1.0まで37℃、好気的に培 養した。その菌液を、4℃、7 krpmで10 min遠心し、Tris-HCl (pH 3.0)で2回洗浄した。その後、秤量

した200 mLマイヤーに沈殿を移し、空のマイヤーとの重量差を、菌体の湿重量とした。

沈殿を10 mL Tris-HCl (pH 3.0)で10 min以上懸濁した。更に、30 mL CHCl3:MeOH (1:2)を加え10 min以上攪拌し、白濁した1層の混合液を得た。次に、10 mL CHCl3を加え10 min以上攪拌し、その 後10 mL Tris-HCl (pH 3.0)を加え10 min以上攪拌した。

得られた混合液を4℃、8 krpmで10 min遠心し、上層の水層、界面の沈殿層、下層の有機層に分離 した。水層、沈殿層の混入を避け、下層の有機層をあらかじめ秤量したナスフラスコに分取し、evaporator によって溶媒を除き、脂質を得た。乾燥後のナスフラスコと空のナスフラスコの重量差を、抽出された脂 質重量とした。脂質重量を菌体の湿重量で除したものを百分率で示したものを抽出率とした。

得られた脂質を再度、3 mL 程度のCHCl3で溶解し、小試験管に移し、窒素ガスを用いて再度乾燥さ せた。脂質は、小試験管中の気体を窒素ガスで置換し、-20℃で保存した。

§17 Liposomeの調製

乾燥脂質を 5 mL の buffer (20 mM Tris–HCl, 150 mM NaCl, 20 mM CaCl2, pH 7.4, 1 mM mercaptoethanol)と、適量の1N NaOHで溶解したcalceinを100 mMとなるよう加え、懸濁した。更 に、ソニケーターで壁面の脂質を剥離し、vortex で 10 min 以上よく攪拌し、白濁させることで MLV (multi-lamellar vesicle)を得た。白濁が生じない場合、水浴で適宜加温しながらvortexを行った (vortex 法) 。

得られたMLV 1 mLを4 mL bufferで希釈し50 mL ファルコンチューブに移し、チップソニケータ ーで超音波処理を白濁が乳白色になるまで数回行い、SUV (small unilamellar vesicles)を得た。得られ たSUVを、1.5 mLチューブに1 mLずつに分け、液体窒素と37℃の水浴で5回凍結融解を繰り返し、

LUV (large unilamellar vesicle)を得た(freeze and thawing法)。

得られた LUVを Amicon Ultra-4-30K 遠心式限外ろ過フィルターユニット(Merck millipore)を使用 し、スウィングローターで4℃, 4 krpmで30 min遠心しbufferを除き、5 mL bufferで洗浄後、200 mL で沈殿を懸濁し、calceinをbufferより除外したcalcein内包LUVを得た。

(27)

23

§18 Liposome障害性試験

上記の方法で得た、calcein内包LUV 10 Lを1990 L buffer (20 mM Tris–HCl, 150 mM NaCl, 20 mM CaCl2, pH 7.4, 1 mM mercaptoethanol)で希釈した。LUVの損傷はcalceinの自己消光を利用 し、蛍光の上昇によって内包された calcein の流出を測定した。蛍光は、蛍光分光光度計 (HITACHI F2000) を使用し、励起波長490 nm, 蛍光波長520 nmで測定した。

§19 V. parahaemolyticus TM312からの耐性株の分離

V. parahaemolyticus TM312株を5 mL LB培地に植菌後、O.D.650 = 0.7まで37℃、好気的に培養し、

1 g/mL となるよう6を加えた。その後、一晩培養し、同様にO.D.650 = 0.7まで37℃、好気的に培養 し、2 g/mL となるよう6を加えた。このように順次、6の濃度を2倍ずつ上昇させ最終的に128 g/mL 6まで生育する株を得た。128 g/mL 6に生育した株をRCR6株とした(図 2)。

§20 Tn挿入によるランダムな遺伝子破壊

V. parahaemolyticus TM312を親株とし6を1/4×MICから2倍ずつ段階的に濃度を上昇させた継代 培養によって得られた耐性株RCR6株とE. coli BW22701/pRL27で接合伝達を行うことで、pRL27の TnをRCR6株のゲノム上にランダムに挿入し遺伝子破壊を行った(図 3)。

RCR6株はLB培地、BW22701/pRL27はLB培地に50 g/mL カナマイシンを加え前培養し、同様 の培地でO.D.650 = 0.4まで37℃、好気的に培養した。BW22701/pRL27の菌液5 mLを8 krpm, 5 min, 4℃で遠心し、沈殿を RCR6 株の菌液 800 L で懸濁することにより混和した。この菌液を mixed cellulose ester membrane filter/pore size 0.2 m (ADVANTEC)上に、吸引ろ過によって集菌しLB寒天

培地上で37℃、一晩培養した。その後フィルターを3 mL LB培地に浸し37℃, 1 hr、好気的に培養し

た。この菌液1 mLを10倍濃縮し、100 g/mL カナマイシンと100 g/mL アンピシリンを加えたLB 寒天培地で37℃、一晩培養した。

出現したコロニーは、100 g/mL カナマイシンと100 g/mL アンピシリンを加えたLB寒天培地と1

g/mL ノボビオシンを加えたLB 寒天培地でレプリカを行い、ノボビオシン感受性株を 100 g/mL カ ナマイシンと100 g/mL アンピシリンを加えたLB寒天培地から選択した。

選択したコロニーはLB寒天培地と、100 g/mL カナマイシンと 100 g/mL アンピシリンを加えた LB寒天培地で交互に2回single colony isolationを行い、ノボビオシン感受性を保った株を保存した。

(28)

24

§21 次世代シーケンサーを用いた解析

V. parahaemolyticus TM312 株及びこれに由来する耐性株より PureLink Genomic DNA Mini Kit

(Invitrogen) を用いて染色体DNAを調製した。次世代シーケンサーを用いた解析は、山口大学の大学研

究推進機構総合科学実験センター遺伝子実験施設・医学系研究科に依頼しIon Torrent PGMによって解 析した。

§22 遺伝子クローニング

V. parahaemolyticus TM312株及びこれに由来する耐性株より染色体DNAを調製した。得られた染 色体DNAを鋳型として、VPA0097~VPA0098をGo taq DNA Polymerase (Promega)を用いてPCRを 行った。Vector plasmidにはpSTV28を使用した(図4)。

増幅条件は、1. 94℃で1 min, 2. 50℃で 3 min, 3. 72℃で 1 min, 4. 3を35回繰り返す, 5. 72℃で 3 minで行った。Primerは表3に示したVPA0097_fw, VPA0098_revを使用した。

PCR 産物と pSTV28 を Bam HI で切断し、pSTV28 は self-ligation を防ぐため shrimp alkaline

phosphatase (Promega) を用いて消化部位の脱リン酸化処理を行った。PCR 産物の断片とpSTV28 の

断片を、Ligation-Convenience Kit (ニッポン・ジーン) を用いて、ligationし、plasmidを構築した。得 られたplasmidをE. coli KAM32のコンピテント細胞に導入し、10 g/mL chloramphenicolと50 g/mL

X-galと1 mM IPTGを加えたLB寒天培地に生育する白色のコロニーを形成する株を得た。

上記のplasmid導入株からplasmidを抽出し、V. parahaemolyticus TM312株にelectroporation法 によって導入し、10 g/mL chloramphenicolを加えたLB寒天培地に生育する株を得た。

表3 Plasmidの構築に使用したprimer primer name sequence (5’ to 3’)

VPA0097_fw CATTTTATGGATCCAAGATCGAAAAG

VPA0098_rev TACACGGATCCCCGGAACTT

__:plasmidに挿入するためにBam HIの認識配列に改変した。

(29)

25

図2 ノボビオシンとriccardin C類似構造体6に対する耐性関連遺伝子の探索

6S : 6感受性、6R : 6耐性, NvS : ノボビオシン感受性, NvR : ノボビオシン耐性, KmR : カナマイシン耐性

図3 pRL27の構成

KmR : aminoglycoside O-phosphotransferase遺伝子。カナマイシンに耐性を与える。

tnp : transposase遺伝子。oriR6KとKmRをゲノムに挿入する。

6

液体継代培養 KmR株 NvS

Conjugation RCR6株

Colony replication

(30)

図4 Plasmid構築

CmR : Chloramphenicol acetyltransferase遺伝子。クロラムフェニコールに耐性を与える。

lacZ : -galactosidase遺伝子。X-galを分解し、青色のコロニーを形成

26

(31)

27 第3章 結果

§1 各種MRSAに対するriccardin C及び類似構造体(グループ1)のMIC測定

化合物ライブラリよりMRSAであるN315株に対してスクリーニングを行った結果、riccardin C が 抗菌活性を有していた。そこで、riccardin C 構造体の類似構造体がMRSA に対して抗菌活性を持つの かを調べた (表 4) 。

Riccardin Cは大環状bis(bibenzyl)構造に3つのhydroxy基が存在する。Riccardin Cのhydroxy基

の1つがfluoro基へと変換された1ではいずれのMRSAでも抗菌活性が上昇し、OM481株では8倍ま

で上昇していた。またhydroxy基の位置が異なる2, 3ではRiccardin Cとほぼ同程度のMICであった。

しかしhydroxy基がmethoxy基となった4ではMICが大幅に上昇し、抗菌活性が見られなくなった。

Hydroxy基のfluoro基へ置換された1で抗菌活性が上昇し、hydroxy基の位置が異なる2, 3では変化 が見られなかったため、hydroxy基の数の減少が抗菌活性を強めた可能性が考えられた。一方で、hydroxy

基がmethoxy基へと変換された4では抗菌活性が見られなくなったため、biphenyl部分のhydroxy基

は抗菌活性に必須の要素であることが示唆された。

表 4 各種MRSAに対するriccardin C及び類似時構造体(グループ1)のMIC MIC (g/mL)

S. aureus

N315 OM481 OM584

Riccardin C 4 8 8

1 1 1 2

2 4 8 4

3 4 4 4

4 >128 >128 >128

1

3 4

Riccardin C 2

(32)

28

§2 各種MRSAに対するriccardin C及び類似構造体(グループ2, 3)のMIC測定

Riccardin Cのhydroxy 基の位置の変更は抗菌活性に影響は見られず、fluoro 基への変化は抗菌活性

を上昇させた。次に、Riccardin Cの2置換誘導体であるグループ 2の5~8と4置換誘導体であるグル ープ 3の9~11のMIC測定を行った (表 5) 。

1と類似性が最も高い7は、1と同様に抗菌活性が4~8倍に上昇し、hydroxy基の除かれた位置が異 なる5, 6でも2~4倍に上昇していた。一方で7のhydroxy基がmethoxy基へと変化した8では4と同 様に抗菌活性が見られなかった。また、グループ3ではhydroxy基が増加した9, 10や、hydroxy基を 減少させずにfluoro基を追加した11ではMICに変化は見られなかった。

Hydroxy基が2個となった5~7ではいずれもriccardin Cより抗菌活性が上昇していたため、hydroxy 基の減少は抗菌活性を上昇させる可能性が考えられた。また、グループ 1 でもっとも抗菌活性が高かっ た1と類似性が高い7も同様に強い抗菌活性を示したことから、この部位のhydroxy基は抗菌活性を低 下させている可能性が示唆された。

表 5 各種MRSAに対するriccardin C及び類似時構造体(グループ2, 3)のMIC MIC (g/mL)

S. aureus

N315 OM481 OM584

Riccardin C 4 8 8

5 2 2 2

6 2 2 2

7 1 1 1

8 >128 >128 >128

9 8 8 8

10 8 16 8

11 4 8 8

5

6

9 10

8

Riccardin C 7

11

(33)

29

§3 各種MRSAに対するriccardin C及び類似構造体(グループ4)のMIC測定

Riccardin Cの抗菌活性にhydroxy基の数が影響する可能性が示唆された。次に、Riccardin Cの環状

構造が抗菌活性に影響しているかMIC測定を行った (表 6) 。

環状構造のdiphenyl ether部分がbiphenyl構造へと変換された12~14では抗菌活性に大きな変化が 生じた。強い抗菌活性の観察されていた7の類似体である13では、methoxy基へと変換された14と同 様に抗菌活性が見られなくなった。また環状構造は13と同様でhydroxy基が4個の12では弱い抗菌活 性がみられた。一方でbiphenyl構造に対する結合が左側のベンゼン環でパラ位からメタ位に変化した15 ではもっとも強い抗菌活性が見られた。

環状構造のether結合が右側のベンゼン環でメタ位からパラ位置へと変化した16ではMICに大きな 変化は見られなかった。biphenyl部分がdiphenyl ether構造へと変化した17では抗菌活性が見られな かった。

このためriccardin C類似構造体の抗菌活性には、hydroxy基の影響に加え、環の構造も強く影響して いることが示唆された。

表 6 各種MRSAに対するriccardin C及び類似時構造体(グループ4)のMIC MIC (g/mL)

S. aureus

N315 OM481 OM584

Riccardin C 4 8 8

12 32 32 32

13 >128 >128 >128

14 >128 >128 >128

15 0.5 0.5 0.5

16 4 4 4

17 >128 >128 >128

12

16 17

13 14

15 Riccardin C

(34)

30

§4 各種MRSAに対するriccardin C及び類似構造体(グループ5)のMIC測定

Riccardin Cの抗菌活性に環の構造が影響する可能性が示唆された。そこで、環状構造を形成していな

いグループ 5で抗菌活性を確認するためMIC測定を行った (表 7) 。

Riccardin Cの環状構造のbiphenyl部分が結合していない18ではMICに大きな変化は観察されず、

環状構造同様 hydroxy 基が methoxy 基へと変化した 19 では抗菌活性が見られなかった。また 7 の diphenyl部分が結合していない20とriccardin Cのdiphenyl部分が結合していない21でも環状構造と 比較してもMICはほぼ同程度であった。

Riccardin Cのdiphenyl ether部分がbiphenyl構造へと変換した13のC-C結合を切断した22では MICが>128g/mLから128 g/mLへと僅かに低下したが抗菌活性は非常に低かった。しかし、carboxy 基が追加された23ではMICが8 g/mLと大きく低下した。また22のbiphenyl部分の結合位置が異な る24, 26では22と異なりriccardin Cと同程度の抗菌活性が見られた。また24, 26にcarboxy基が追

加された25, 27では23とは異なり抗菌活性に大きな変化は見られなかった。

Riccardin Cのether結合を切断した28でもriccardin Cと同程度の抗菌活性が見られた。Ether結 合の存在する18や21に加え、28でも抗菌活性が見られたことから、開環構造においてriccardin Cの 環状構造のどの部分がつながっていないかは抗菌活性に影響を与えないものと考えられた。また、22~

27の結果からdiphenyl ether部分の構造は抗菌活性に重要な可能性が示唆された。

これらの結果からriccardin C類似構造体の抗菌活性は開環状構造でも活性を示し、hydroxy基が重要 である一方で、微妙な構造の違いや carboxy 基の導入などによって多様な影響を受けることが示唆され た。

表 7 各種MRSAに対するriccardin C及び類似時構造体(グループ5)のMIC MIC (g/mL)

S. aureus

N315 OM481 OM584

Riccardin C 4 8 8

18 4 4 4

19 >128 >128 >128

20 2 1 2

21 4 8 8

22 128 128 128

23 8 8 8

24 8 4 4

25 4 4 8

26 8 8 4

27 4 4 4

28 2 2 2

(35)

31 化合物26 Riccardin C

21

19 20 18

化合物33

25 26 27 28

22

23

24

(36)

32

§5 各種MRSAに対するriccardin C及び類似構造体(グループ6)のMIC測定

Riccardin Cは開環状構造であっても抗菌活性を示した。次に、Riccardin Cの部分構造体が抗菌活性

を有するかMIC測定を行った (表 8) 。

Riccardin Cのdiphenyl ether部分の部分構造体29では抗菌活性が観察された。しかし29のベンゼ ン環がピリジン環へと変化した30では抗菌活性が見られなかった。また29, 30のhydroxy基の位置が

変化した31~33でも抗菌活性は見られなかった。

またriccardin Cのbibenzyl部分である34やbiphenyl部分である35でも抗菌活性は見られなかっ た。

部分構造体で抗菌活性が見られたのはdiphenyl ether部分である29のみであり、hydroxy基の位置 やベンゼン環がともに重要であることが示唆された。またbibenzyl部分である34やdiphenyl部分であ る35は抗菌活性が見られなかったが、開環状構造ではこれらの部分を有する化合物(18, 22~28)も抗菌活 性が見られた。このためriccardin C類似構造体の抗菌活性にはベンゼン環の数が影響している可能性が 示唆された。

表 8 各種MRSAに対するriccardin C及び類似時構造体(グループ6)のMIC MIC (g/mL)

S. aureus

N315 OM481 OM584

Riccardin C 4 8 8

29 8 8 8

30 >128 >128 >128

31 >128 >128 >128

32 >128 >128 >128

33 >128 >128 >128

34 >128 >128 >128

35 >128 >128 >128

31

34 35

32 33

Riccardin C

29 30

(37)

33

§6 Riccardin C類似構造体の各種S. aureusに対するMIC測定

Riccardin C類似構造体の中にMRSAに対して抗菌活性を示す化合物が存在した。次に臨床分離され

た多剤耐性のMRSAであるOM481やOM584、MSSAである209P、VISAであるMu50など様々なS.

aureusに対しても抗菌活性が見られるか確認した (表 9) 。

N315株で抗菌活性が見られたriccardin C類似構造体である5~7はいずれの株でも同程度の抗菌活 性を示した。また部分構造体(29, 34, 35)でもN315株と同様の抗菌活性が見られた。

この結果から、riccardin C 類似構造体は今回使用したMRSAやVISA の持つ耐性機構の影響を受け ずに抗菌活性を示すことができると考えられた。

表 9 各種Staphylococcus aureusに対するriccardin C類似構造体及びriccardin C部分構造体のMIC MIC (g/mL)

MSSA MRSA VISA

209P N315 OM481 OM584 Mu50

Riccardin C 4 4 8 8 8

5 0.5 2 2 2 2

6 2 2 2 2 2

7 1 1 1 1 2

29 8 8 8 8 8

34 >128 >128 >128 >128 >128 35 >128 >128 >128 >128 >128

29 34 35

5

6 7

Riccardin C

(38)

34

§7 Riccardin C類似構造体の各種細菌に対するMIC測定

Riccardin C及びriccardin C 類似構造体(5~9, 11)と部分構造体(29, 34, 35)を、グラム陽性菌である MRSA の N315, VRE の FN1, NCTC12201, B. subtilis 168 やグラム陰性菌である E. coli TG1, P.

aeruginosa PAO1, V. parahaemolyticus AQ3334に対してMIC測定を行った (表 10) 。

グラム陽性菌に対してはriccardin C類似構造体(5~9, 11)ではいずれもMRSAと同様の結果を示した。

しかしグラム陰性菌では、陽性菌では抗菌活性が見られた5~7, 9, 11のいずれも抗菌活性が見られた化 合物は存在しなかった。

また部分構造体(29, 34, 35)ではMRSAで抗菌活性が見られた29は、その他のグラム陽性菌や陰性菌 のいずれでも抗菌活性が見られなかったため、S. aureusに対する選択性が存在するか、その他の菌が何 らかの耐性機構を持つ可能性が考えられた。

§8 RND型多剤排出ポンプを破壊した各種グラム陰性菌でのMIC測定

Riccardin Cおよびriccardin C類似構造体はグラム陽性菌には抗菌活性を示したが、グラム陰性菌で

は抗菌活性が見られなかった (表 10)。グラム陰性菌では、グラム陽性菌には存在しないRND型多剤排 出ポンプが抗菌物質耐性に大きく関与している。そこで、RND型多剤排出ポンプを破壊したグラム陰性 菌に対してriccardin C類似構造体が抗菌活性を示すかどうかを確かめた(表11)。

そ の 結 果 、E. coli KAM42 や P. aeruginosa PMX7 で は 抗 菌 活 性 は 見 ら れ な か っ た が 、V.

parahaemolyticus TM312ではriccardin C類似構造体が抗菌活性を示すようになった。この結果から、

少なくともV. parahaemolyticusではriccardin C類似構造体の耐性にRND型多剤排出ポンプが関与し ていると考えられた。KAM42やPMX7で抗菌活性が見られなかった理由として、破壊されていないRND 型多剤排出ポンプや未知の RND 型多剤排出ポンプが存在する可能性や、ターゲットが存在しない可能 性、外膜透過性などその他の耐性因子が関与している可能性などが考えられた。

§9 Riccardin C類似構造体のS. aureus N315株に対するsurvival assay

抗菌活性の見られたriccardin C類似構造体である5~7、部分構造体の29の抗菌作用を調べるた め、N315株に対してsurvival assayを行った (図 5) 。部分構造体である29ではCFUの減少は認め られなかったが、1~4×MICの範囲ではCFUの増加が抑制され静菌的な作用を示すことが確認され た。一方、riccardin C類似構造体 (5~7)ではいずれも4×MICの化合物が添加されることで菌数の急激 な減少が観察され、殺菌的な作用を示した。

観察された抗菌作用が、部分構造体29とriccadin C類似構造体5~7で大きく異なっていたため、こ れらは異なる作用機構を有する可能性が考えられた。

(39)

表 10 各種細菌に対するriccardin C類似構造体及びriccardin C部分構造体のMIC MIC (g/mL)

S. aureus E. faecium E. faecalis B. subtilis E. coli P. aeruginosa V. parahaemolyticus

N315 FN1 NCTC12201 168 TG1 PAO1 AQ3334

Riccardin C 4 4 4 4 >128 >128 >128

5 2 4 2 2 >128 >128 >128

6 2 2 2 4 >128 >128 >128

7 1 2 4 4 >128 >128 >128

8 >128 >128 >128 >128 >128 >128 >128

9 8 16 8 8 >128 >128 >128

11 4 16 8 4 >128 >128 >128

29 8 >128 >128 >128 >128 >128 >128

34 >128 >128 >128 >128 >128 >128 >128

35 >128 >128 >128 >128 >128 >128 >128

R1 R2 R3 R4 R5 Riccardin C H OH OH OH H

5 H OH H OH H

6 H OH OH H H

7 H H OH OH H

8 H H OMe OMe H

9 H OH OH OH OH

11 F OH OH OH H

29

35

34

35

参照

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