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抗耐性肺炎球菌活性を有する新規マクロライド誘導体に関

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Academic year: 2021

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博士 ( 生 命 科 学)    杉本 智洋

学 位 論 文 題 名

抗耐性肺炎球菌活性を有する新規マクロライド誘導体に関    する創薬研究

学位論文内容の要旨

  マクロライド系抗生物質は、肺炎の原因菌である肺炎球菌に対する抗菌カと安全性か 世界的に処方されている。しかし近年、マクロライド系抗生物質に対して耐性を獲得し た肺炎球菌の出現が医療上の問題となりつっある。このような背景の下、筆者は耐性肺 炎球菌にも抗菌作用を示す新規マクロライド誘導体の創薬研究に取り組み、リボソーム の空間情報を利用した分子設計を行うことで新規2‐フルオロケトライドおよび、新規 母核構造であるlla‑アザライド骨格の創出を行った。

1.新規6位置換2‐フルオロケトライドの創出

  テリスロマイシンとHmロrismortui由来のりボソーム50Sサブュニットとの共結晶 の空間情報の解析結果をもとに、テリスロマイシンの側鎖結合部分である2609番目の ウラシ ル残基(U2609)と のスタッ キングと752番目のアデニン塩基(A752)との水素 結合が両立するビアリール構造を組み込んだ2−フルオロケトライド誘導体を設計して 合 成を 行 っ た。 合 成し た2‐ フ ルオ ロ ケト ライド 誘導体は 耐性肺炎 球菌であ る S.pneumoniae 205株に対 してMICが0.008 Vg/mLと強カなmvitro抗菌カを示すこと が分かった。さらに耐性肺炎球菌によるマウス肺感染モデルにおいて、これらの誘導体 は12.5 mg/kgの投与量から肺内生菌数を用量依存的に減少させる良好なin vivo抗菌 カを有していることが分かった。

  次に筆者はりボソームU2609周辺との相互作用を狙ったデザインを別の置換位置で の検討に応用することを考え、さらなる研究を開始した。

2. lla‑アザライド責格の合成法確立

  リボソームのU2609周辺との相互作用を狙い、エリス口マイシン骨格の13位への 側鎖導入を計画したが、13位には反応性官能基がないため置換基導入による構造変換 は困難である。そこで筆者は13位への側鎖導入を実現する目的で「カッ卜アンドペ ースト」法を利用した新規母核lla‑アザライドの合成検討を行った。(9S)‑9‑ジヒドロエ リスロマイシンの9位、2′位および4″位水酸基をTES基で保護した11、12位ジオー ル体を原料に用いたところ、四酢酸鉛を用いた酸化開裂は円滑に進行した。そして、続 く2‐アミノエタノールを用いた還元的アミノ化反応、生じた2級アミンのN‑メチル化

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率77%で 得ら れた 。さ らに エステルの加水分 解 を行 った 後に、改良山口法によるマクロラクトン化を 行い、最後にシリル基の脱保護 を 行 う こと で、 ジオ ー ルか ら通 算6工程 、36%で 最 終物 であ るlla‑ア ザラ イド の合 成 を 達成 した 。得 ら れたlla‑アザ ライ ドは 感性 肺炎 球菌 であ るS.pneumoniae ATCC49619 株に対し てMICが4ltg/mLと抗菌活性を示すことが分かった。

3. lla‑アザライド母校の最適化

  次 に 、母 核構 造の 最 適化 を検 討し た。 エリ スロ マイ シンAにお ける 構造 活性 相関 情 報 か ら 良 好 な 抗 菌 活 性 が 期 待 で き る6位 メ 卜 キ シ 体 、9位 ア ミ ノ体 、9位 ケト ン体 お よ び3位 ケト ン体 を選 抜し て合 成を 実施 した 。合 成 した 母核 変換 体のin vitro抗菌 カ を 測 定 し た 結 果 、6位 メ ト キ シ 体 お よ び9位 ア ミ ノ 体 で は 感 性 肺 炎 球 菌 で あ る S.pneumoniae ATCC49619株 に 対 し てMICが2yg/mLと 抗 菌 活 性 を 示し たの に対 して 、 9位 お よ び3位 ケ ト ン 体 は 抗 菌 活 性 が大 きく 減弱 し たこ とか ら、 側鎖 を導 入す る母 核 と し て は 抗 菌 活 性 が 良 好 で 合 成 原 料 が 供 給 し や す い9位 水 酸 基 体を 用い るこ とと し た。

4.耐性肺炎球苗に対する抗苗活性向 上のための側蛍導入検討

  U2609周 辺 に お け る り ボ ソ ー ム と の 相 互 作 用 を 狙 い13位 へ の 置換 基導 入を 計画 し た 。 置 換 基 導 入 に あ た り12位 、13位に 置換 基を 有 する 場合 のlla‑ア ザラ イド 合成 を 検 討 し た と こ ろ 、13位 にS配 置 の 置 換基 をも っセ コ酸 のマ クロ ラク 卜ン 化で は 、6位 が 水 酸 基 の 場 合 に は7員 環 ラ ク ト ン の 副 生 が 競 争 し 、6位 が メ トキ シ基 の場 合 には2 位 のエ ピメ リ化 が 進行 する こと が分 かった。条件検討の結果、2位のエピメリ化はトル エ ンか らア セト ニ トリ ルに 溶媒 を変 更す るこ とで 生成 比を 大き く改善できることを見 出 した 。こ の改 良 合成 法に 基づ く13位へ の置 換基 導入 によ り、 耐性肺炎球菌活性の向 上 を 試 み た 結 果 、S.pneumoniae 205株 に対 してMICが8pLg/mLま で向 上す る誘 導体 を 見 出し た。 しか し 、13位置 換体 では 耐性 菌へ の抗 菌カ がそ れほ ど向上できなかったこ とから、 その理由を溶液中コンホメーションによって解析した。 その結果、11a・アザラ イ ド で は マ ク ロ ラ ク 卜 ン 環 の 平 面 性 が 失 わ れ13位 側 鎖 がU2609方 向 に 向 い て い な い 可能 性が 示唆 さ れた 。一 方、3位 クラジノシル基はエ リス口マイシン型とコンホメー シ ョ ン が類 似し てい る こと が分 かっ た。 エリ スロ マイ シン 型母 核構 造に おい て3位 ク ラ ジノ シル 基の4″位 へ側 鎖を 導入 すると、クリンダマ イシンやクロラムフェニコール な どの 他の 抗菌 薬 の結 合サ イ卜 に側 鎖が 伸長 する こと でり ボソ ームとの親和性が増強 し 、耐 性肺 炎球菌に対する抗菌カが向上するという報告 があることから、lla‑アザライ ド の4 位に 同様 の側 鎖を 組み 込む こととした。合成し た誘導体のS.pneumoniae 205株 に 対 す るMICは0.25 yg/mLま で 改 善 して おり 、4″ 位側 鎖が 期待 通ル リボ ソー ムと 相 互 作用 して いる 可 能性 が示 唆さ れた 。こ れら の誘 導体 は「 カッ トアンドペースト」法 を 機軸 とす る骨格変換で耐性肺炎球菌に対する抗菌活性 を改善した初めての例であり、

本 法 が マ ク ロ ラ イ ド 系 抗 生 物 質 開 発 に お い て 有 用 な 方 法 で あ る こ と を 実 証 し た 。

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学位論文審査の要旨 主査 副査

副査 副査

教授 教授 准教授 准教授

橋本 松田 市川 穴田

学 位 論 文 題 名

俊 一     彰   聡 仁 洋

抗耐性肺炎球菌活性を有する新規マクロライド誘導体に関      する創薬研究

博士学位論文審査等の結果について(報告)

  マク口ライド系抗生物質は、肺炎の原因菌である肺炎球菌に対する抗菌カと安全性か 世界的に処方されているが、近年、マク口ライド系抗生物質に対して耐性を獲得した肺 炎球菌の出現が医療上の問題となりつっある。今回著者は、耐性肺炎球菌に抗菌作用を 示す新規マク口ライド誘導体の研究に取り組み、リボソームの空間情報を利用した分子 設計による新規2‐フルオ口ケトライドおよび新規母核構造であるlla‑アザライド骨格 の創出に関する検討を行った。

  著者はまず、テリス口マイシンとH marismortui由来のりボソ ーム50Sサブュニッ トとの共結晶の空間情報の解析結果をもとに、テリス口マイシンの側鎖芳香環結合部分 である2609番目のウラシル塩基(U2609)とのスタッキングと752番目のアデニン塩基 (A752)との水素結合が両立するビア リール構造を組み込んだ2‐フルオロケトライド 誘導体を設計して合成を行った。その結果、耐性肺炎球菌であるS pneumoniae 205株 に対してMICが0.008 yg/mLと強カな 細vff′D抗菌カを示し、さらに耐性肺炎球菌に よるマウス肺感染モデルにおいて、12.5mg/kgの投与量から肺内生菌数を用量依存的に 減少させる良好な加vfvD抗菌カを有 する誘導体を得た。次に筆者はりポソームU2609 周辺との相互作用を狙ったデザインを別の置換位置での検討に応用することを目指し、

「カットアンドペースト」法を利用 した新規母核11a‐アザライドの合成検討を行っ た。(9め‐9―ジヒドロェリス口マイシンの9位、2′位および4″位水酸基をTES基で保 護した11、12位ジオール体に対する四酢酸鉛を用いた酸化開裂は円滑に進行し、続く 2・アミノェタノールを用いた還元的アミノ化反応、生じた2級アミンの〃‐メチル化を 連続して行うことでセコ酸前駆体が収率77%で得られた。さらにェステルの加水分解 を行った後に、改良山口法によるマクロラクトン化を行い、最後にシリル基の脱保護を 行うことで、ジオールから通算6工程、収率36%で最終物である11a・アザライドの合 成を達成した。得られたlla‐アザライドは感性肺炎球菌であるSp門P甜mD門ぬPATCC49619 株に対してMICが4斗〆mLと抗菌活性を示すことが分かった。

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  次 に 著 者 は 、 母 核 構 造 の 最 適 化 を 検 討 し た 。 エ リ ス 口 マ イ シ ンAに お け る 構 造 活 性 相 関 情 報 か ら 良 好 な 抗 菌 活 性 が 期 待 で き る6位 メ ト キ シ 体 、9位 ア ミ ノ 体 、9位 ケ ト ン 体 お よ び3位 ケ ト ン 体 を 選 抜 し て 合 成 を 行 い 、 そ れ ら 誘 導 体 に つ い て のin vitro抗 菌 カ を 測 定 し た 結 果 、6位 メ ト キ シ 体 お よ び9位 ア ミ ノ 体 で は 感 性 肺 炎 球 菌 で あ るS pneumoniae AIC49619株 に 対 し てMIC2yg/mLと 抗 菌 活 性 を 示 し た の に 対 し て 、9 位 お よ び3位 ケ ト ン 体 は 抗 菌 活 性 が 大 き く 減 弱 し た こ と か ら 、 側 鎖 を 導 入 す る 母 核 と し て は 9位 水 酸 基 体 ま た は 9位 ア ミ ノ 体 が 適 切 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。   さ ら に 著 者 は 、 耐 性 肺 炎 球 菌 に 対 す る 抗 菌 活 性 向 上 を 目 的 と し て13位 へ の 置 換 基 導 入 検 討 を 行 っ た 。 置 換 基 導 入 に あ た り12位 、13位 に 置 換 基 を 有 す る 場 合 のlla‑ア ザ ラ イ ド 合 成 を 検 討 し た と こ ろ 、13位 にS配 置 の 置 換 基 を も つ セ コ 酸 の マ ク ロ ラ ク ト ン 化 で は 、6位 が 水 酸 基 の 場 合 に は7員 環 ラ ク ト ン の 副 生 が 競 争 し 、6位 が メ ト キ シ 基 の 場 合 に は2位 の ェ ピ メ リ 化 が 進 行 す る こ と が 分 か っ た 。 条 件 検 討 の 結 果 、2位 の エ ピ メ リ 化 は 溶 媒 を ト ル エ ン か ら ア セ ト ニ ト リ ル に 替 え る こ と で 生 成 比 を 大 き く 改 善 で き る こ と を 見 出 し た 。 本 法 に よ っ て 合 成 し た13位 に 種 々 の 置 換 基 を も つ 誘 導 体 に つ い て 耐 性 肺 炎 球 菌 に 対 す る 抗 菌 活 性 を 検 討 し た と こ ろ 、 耐 性 肺 炎 球 菌S pneumoniae 205株 に 対 す るMIC8Ug/mLを 示 す 誘 導 体 を 見 出 し た 。 次 に13位 置 換 体 の 溶 液 中 コ ン ホ メ ー シ ヨ ン を 解 析 し た 結 果 、11a‐ ア ザ ラ イ ド で は マ ク 口 ラ ク ト ン 環 の 平 面 性 が 失 わ れ13位 側 鎖 がU2609方 向 に 向 い て い な い 可 能 性 が あ り 、 そ れ が 耐 性 菌 に 対 す る 抗 菌 力 改 善 が 中 程 度 に と ど ま っ て い る 原 因 だ と 推 測 し た 。 一 方 、3位 ク ラ ジ ノ シ ル 基 は11a| ア ザ ラ イ ド と エ リ ス 口 マ イ シ ン で コ ン ホ メ ー シ ョ ン が 類 似 し て い る こ と か ら 、 エ リ ス 口 マ イ シ ン 型 母 核 構 造 で 有 効 な 側 鎖 を3位 ク ラ ジ ノ シ ル 基 に 導 入 す る こ と で 、 耐 性 肺 炎 球 菌 に 対 す る 抗 菌 カ が 向 上 す る と 推 測 し て 、lla・ ア ザ ラ イ ド の4″ 位 に 同 様 の 側 鎖 を 組 み 込 ん だ 結果 、 Spe mDfe205株 に 対 す るMIC025い 〆mLま で 改 善 し た 誘 導 体 を 得 た 。 こ れ ら の 誘 導 体 は 「 カ ッ ト ア ン ド ペ ー ス ト 」 法 を 機 軸 と す る 骨 格 変 換 で 耐 性 肺 炎 球 菌 に 対 す る 抗 菌 活 性 を 改 善 し た 初 め て の 例 で あ り 、 本 法 が マ ク 口 ラ イ ド 系 抗 生 物 質 開 発 に お い て 有 用 な 方 法 で あ る こ と を 実 証 し た 。

  以 上 、 著 者 は り ボ ソ ー ム の 空 間 情 報 を 利 用 し た 分 子 設 計 に よ る 新 規2− フ ル オ ロ ケ ト ラ イ ド お よ び 新 規 母 核 構 造 で あ る11a‐ ア ザ ラ イ ド 骨 格 の 創 出 に 関 す る 検 討 を 行 っ た 。 本 研 究 で 得 ら れ た 知 見 は 、 耐 性 肺 炎 球 菌 に 対 し て 有 効 な 新 規 マ ク 口 ラ イ ド 系 抗 生 物 質 の 創 薬 に つ な が る 有 意 義 な 結 果 で あ る と い え る 。

  従 っ て 、 審 査 委 員 会 は 杉 本 智 洋 氏 の 論 文 が 博 士 ( 生 命 科 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 に 値 す る も の と 認 め た 。

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参照

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