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判決文にみる体罰発生の原因

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(1)平成4年度 学位論文. 判決文1 こみる体罰発生の原因. 兵庫教育大学大学院 学校教育専攻・教育経営コース. M91055E・金政克典.

(2) 目. 次. 序 章 研究の視点及び概略・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 1. 第1節研究の視点・・・・………‘・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・……・・. 1. 第2節研究の概略・・・・……・・……・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 3. 第1章 体罰概念の曖昧さ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 5. 第1節 体罰の定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…’・・・・・・・・・・・…. 5. 第2節一般的認識にみる体罰・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 8. 第3節 裁判の体罰抑制能力・・……・……・・・・・……・・・・・・・…. 11. 第2章教師及び児童・生徒にある問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・……・・. 第1節教師にある問題……・・・・・・…■■・・・・・・・・・・・・・・・……・・ 第2節 児童・生徒にある問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 第3章判決文の分析・・・・・・・・・・……・一・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 第1節 分析方法・・・・・・・・・・……・・・・・・……・・・・・・・・・・・・・・・… 第2節 分析過程・6・・・・・・・・・・・・・・・・……・・・・・・・・・・・・・・・・・・…6. 1、東京都私立芝学園中学校(殴打死亡)事件……・・……・・ 2、福岡県庄内村立庄内中学校(被疑生徒取調殴打)事件・・・…. 3、神奈川県私立第一商業高校(下手投げ傷害)事件……・… 4、鹿児島県川内市立寄田中学校(指示棒殴打)事件・・……・・ 5、新潟県新井市立斐太中学校(殴打)事件・・・・・・・・・・・・・・・…. 6、群馬県高崎市立長野小学校(教鞭殴打傷害)事件・・……・・. 15. 15 20 26 26 30 30 32 35. 37 39 41. 9、佐賀県立厳木高校(顔面殴打)事件……・・・・・・・・・・・・・…. 43 45 48. 10、山梨県私立山梨英和学院(体罰教師解雇)事件・・・・……・・. 52. 7、愛媛県私立松山学院(体罰教師解雇)事件・・・・・・・・・・・・・…. 8、神奈川県逗子市立久木中学校(殴打傷害)事件・・・・・・・・・….

(3) 57 61 64. 11、長野県須坂市立旭ヶ丘小学校(殴打傷害)事件・・・・・・・・・… 12、兵庫県伊丹市立東中学校(殴打傷害)事件・・・・・・・・・・・・・…. 13、鹿児島県天城町立天城中学校(殴打傷害)事件・・……・… 14、長崎県立宇久高校(殴打転倒傷害、謹慎処分、. 67 70 74 77 80 87 94 99. 任意退学処分)事件・・6… 15、岐阜県立論陽高校(殴打死亡)事件・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 16、神奈川県川崎市立甲田小学校(殴打死亡)事件・・・・……・・ 17、石川県小松市立甲野中学校(殴打死亡)事件・・・・・・・・・・・…. 18、静岡市立甲田中学校(殴打傷害)事件・・……・・・・・・・・・… 19、東京都立京橋高校定時制(殴打傷害)事件・・・・・・・・・・・・・…. 20、埼玉県入間市立豊岡中学校(殴打傷害)事件・・・・……・… 第3節 要因・誘因の組み合わせ整理・・・・……・・一・・・・・・・・・・・・・…. 第4節要因・誘因の整理・…・・・・……・・・・・・・・・・…■i・・・・・・…. 103. 要因の整理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 第1項. ユ03. 1、指導方法・・・・・・・・……・・・・・・……・・…・・…・・・… 103 2、自制心・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 一・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 105. 3、児童・生徒理解・…・…・…・…・…・………・・・… 106 4、誤解藍・・… 。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 108. 第2項誘因の整理・・……・・……・…・…・・…・・…・・・…109 1、反抗…・・…・・・・……・・・・……・…・・・・・・・・・・・… 109 2、ノレーノレ遵毫支。・・・・・・・・・・・・… 。・・・・・・・… 。・・・・・・・・・… 110. 3、ルーズ…………・・………………・…・…・… 111 4、虚言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…一・・・・・・・・・・・・・… 112. 5、いたずら……・…・…・…・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 113. 6、無礼・…・…・・……………・・…・・……・・……114.

(4) 7、いじめ……・…・・……・・……・一…・・……・… 114. 8、要望…………・…・・……………一…・・……115 9、悪賢さ・………・…・………・…・…・…・・・・・… 116. 10、聞き分け・………・…・………・……の・………116 11、成績不良・…・…・…・・◎・・…・………・・……・… 116 12、誤解・・。… 。… 。・・∵・・・・・… 。・・・・・… 。・。・・・・・・・… 。117. 結 章 体罰克服を求めて・・・・・・・…一・・・・…………・・・・・・・・・… 6… 118. 第1節 体罰発生の要因から・・……・……………・・・・……・・118 第1項指導方法・………・…・…・・・・……・……・・…・・118. 第2項自制心・……一・・・・・・・……・……・………6…120. 第3項児童・生徒理解……・……………・………・… 122 第4項誤解……・・・・……………・・…・…・…6・……123 第2節 体罰発生の誘因から・…・…・……・・…・一………・…124 第1項反抗・…・…・…・…・…・・……・……・・…・・・…124. 第2項ルール違反……・…………・・………一・・……126 第3項ルーズ・…s■一・・一■…・…・…・…・…■■■…・…・・・…128. 第4項虚言・・……・…・…・…・………・……………129 第5項いたずら・…・・……・・………………・・……・・130 第6項無礼・・……・…・・……・・・・……・…・・・・・・……ユ31. 第7項いじめ……・…・…・………・………・…・・・…132 第8項要望・成績不良・…・…・……・・……………・…134 第9項悪賢さ・聞き分け・誤解・……・・…・…・・……・…135. 第3節 まとめ・…・…・………・・…………・…・………・・136 参考文献・…・・・・・・……・e ・’・・・・・・・・・・・・・……・・・・・・・・・・・・・・・・・… 139 おわりに・一・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・……・・一・…■■・・・・・・・・… 143.

(5) 序章 研究の視点及び概略. 第1節 研究の視点 「殴って教育するのは素人、大喝して教えるのは三流、にらみをきか せて教えるのは二流、何もしないで教えることのできるのは一流」“, との諺があるが、現実問題としては殴って教育するの類の体罰が横行し、. 体罰による被害として怪我をも含む人権侵害が発生し、体罰は学校教育 において克服すべき大きな課題の一つとして存在する。. 体罰に関して、教師の非をとがめたりすることはやさしいが、そんな ことだけでは、どうにもならないくらい、問題の根は深い。 「体罰はい. いか、悪いかといえば悪いに決まっている。しかし体罰教師をただ“方 的に批判したからといって体罰がなくなるわけではありません。より巧 妙に、より潜在化するだけです。」(2〕のように、体罰教師を一方的に批 判するだけでは、その裏で大きな弊害がでてくると思える。. 第一には、問題となるような体罰さえしなければよいと教師が考える ようになり、体罰がより巧妙に、より潜在化することである。第二には、. 児童・生徒の指導から起こる煩わしさを避けるため、指導に対して教師 が逃げ腰になり、見て見ぬ振りを選ぶようになることである。. 保護者や市民、マスコミの運動は子どもたちの人権を守り、進展させ ていくうえで意義のあることだと思える。しかしながら、体罰発生の原 因を教師だけの問題として克服していこうとする傾向が強すぎるように 思える。. 教育現場で実際に悪戦苦闘している者にとっては、この傾向は体罰が どのような状況のなかで起こっているのかの認識が欠如していることか. 1一.

(6) らくるのではないかとさえ思える。要はバランスの問題であるが、教師 だけを一方的に批判するという方向での体罰の論じ方では、教育現場の 納得は得られず、 「多くの教師たちはマスコミや教育評論家・教育研究 者諸氏の無理解を嘆き、反感さえ抱いている」《3}となるだけである。. たしかに体罰のなかには、常識では考えられない教師の適格性の問題 とさえいえるものもある。しかしながら、そう多くの教師が適格性に欠 けている訳ではないにもかかわらず多くの被害をもたらせている体罰が 横行しているという現状がある。その現状を打破していこうと考えるな らば、体罰発生の原因をさまざまな角度から分析し、そのうえで体罰克 服をもとめて考察していく必要がある。そのことは日本の教育を大きく 前進させることにつながると考える。 〈引用文献及び註〉. (1)井上肇r少年救護の人間像』、川島書店、昭和58年、89頁。 (2)山岡俊介r公立学校は、だから塾に敗れた』、双葉社、平成4年、. 91頁。体罰を起こした教師を数多く取材して来た教育評論家の 宮川俊彦の言葉として掲載。. (3)関根均「「体罰」の背景と克服のための努力」、 r教育と子ども. の人権読本』 (読本シリーズ第76号)、教育開発研究所、平. 成3年、285頁。. 一2一.

(7) 第2節 研究の概略 多くの被害をもたらせている体罰を横行させている原因は複雑である が直接的に関係していることとして次の二つをとりあげる。. 1、体罰とは何か、どの程度から体罰になるのか等について「児童懲 戒権の限界について」で一応の定義はされているものの、体罰に対する 一般的認識も学説も、さらには裁判でもすっきりしてなく、つまるとこ ろ法による体罰抑制は、さほど期待できないのではないかということ、. 2、体罰事件には、教師にある問題が主であり、学校教育法11条違 反と一言で片づけてよいことと、児童・生徒にある問題との関係で一概 に教師ばかりを責められないこととがあり.、教師さえ反省すれば体罰は. 克服できるとかいうようなものではなく、双方の反省が必要だと思える が、どこを、どのように反省し、どういう方法をとればよいのかが掴め てないこと、である。. 1については、アンケート、判決文の分析等に基づいた幾多の研究が あるので、それらの幾つかを参考にし、第1章において「体罰概念の曖 昧さ」として、おさめるに止める。. 2については、教育現場に帰って児童・生徒と係わるなかで、体罰克 服に直接活用できるものであると思えるので、できるだけ詳しく追究す ることとする。. そのために、まず第2章において「教師及び児童・生徒にある問題」 として、判決文より他の文献で体罰発生に係わっての教師にある問題事 例、児童・生徒にある問題事例を収集し、そして、教師と児童・生徒の 何が体罰発生の原因となっているかを想定する。. さらに、第3章において「判決文の分析」として、体罰発生の原因究 明のためには当事者への聞き込み’等、幾つかある方法のなかより、体罰. 一3一.

(8) 事件が起こった時は双方お互いに感情的になっており冷静に言い分を主 張し合えないという事情に鑑み、事実関係が比較的冷静であると思える. 判決文を分析することによって第2章で想定した体罰発生の原因を参考 に、要因(要因とは、体罰発生において、体罰をした教師の「何故に、. 体罰をしてしまったか」の原因を体罰発生の要になるものと考え要因と した)と誘因(誘因とは、体罰発生において、何の理由も児童・生徒に ないという「通り魔的」なことは有り得なく、児童・生徒にも原因の一 端はないとはいえないと考え、体罰を誘発した原因という意味で誘因と. した)に分けて探り出す。ただし、第3章で判決文を分析していくなか で第2章で想定しきれなかった体罰発生の原因が出てきた場合は、その つど体罰発生の原因として追加していくものとする。 そのうえで結章において「体罰克服を求めて」として考察する。. 4一.

(9) 第1章 体罰概念の曖昧さ. 第1節 体罰の定義 体罰という言葉は現行法令上、学校教育法11条(=校長及び教員は、 教育上必要があると認めるときは、監督庁の定めるところにより、学生、 生徒及び児童に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えること. はできない)にのみ見い出すことができる。この学校教育法11条にい う「体罰を加えることができない」の体罰とはいったい何か、というこ とについての国民的コンセンサスがいまだ不十分であることも体罰悶題 に解決の兆しがみえない理由の一端であると考える。. 我が国の学校では、体罰の禁止はすでに明治12(1879)年の教 育令第46条に「凡学校二於テハ生徒二体罰一殴チ或ハ縛スルノif一一ヲ 加フルベカラズ」として登場以来、百年を越す歴史があるが、 「硬教育 が標ぼう(原文は漢字)された戦前の一時期、体罰はほとんど野放しに近い状. 態であった。」“〕そのうえ、戦前の解釈では、体罰はきわめて狭義にと らえられていた。教師が児童・生徒をなぐっても「身体二傷害ヲ来サザ ル程度二軽ク叩クガ如キハ夫ノ父兄が其ノ保護ノ下ニアル子弟二対シ懲. 戒ノ方法トシテ屡施用シ居レル事例」 (昭5・11・26福岡地裁久留 米支部)として身体に傷害をもたらさない程度に軽く叩くぐらいは体罰 の範疇に入らないとみなされ、またケガをさせて体罰の範疇から逃れら れざるを得ない場合でも「故意若クハ過失ノ責ムベキモノアル場合」で. なければ傷害罪にはならないとされていた(大5・9・18横浜地裁)。 それらのことも大いに関係し、体罰とはいったい何かの国民的コンセン サスを得ることがさらに困難になっているという現状につながっている. 一5一.

(10) と考える。. 体罰とは、字義のとおりにとらえれば「体に対する罰」となる。この. 定義を学校教育法11条にあてはめてみると「体に対する罰」はすべて 懲戒として使うことはできないとなる。例えば、子どもを立たせる、運 動場を一周させる、放課後居残りをさせるなどの罰も体罰とされ、子ど もの身体に教師の手がちょとでも触れると体罰と非難されかねないとい うことになる。 「いかなる罪を犯しても子どもには一切の罰を加えるべ. きでないということにすれば気は楽だが、その結果、学校は治外法権の 無法地帯となり、信賞必罰、因果応報という社会規範は体得されず、学 校から秩序や正義は消えうせ、いじめが横行しても授業が妨害されても、 教師は手をこまねくばかりとなる」(2〕恐れがある。このような悩みに対 して出されたのが、 「児童懲戒権の限界について」と題する法務庁法務. 調査意見二宮の回答(昭23・12・22)である。この回答によると、 学校教育法11条にいう「体罰」とは「懲戒の内容が身体的性質のもの である。 (1)身体に対する侵害を内容とする懲戒一なぐる・けるの類 がこれに該当することはいうまでもない。 (2)被記者に肉体的苦痛を 与えるような懲戒もまたこれに該当する。たとえば端座・直立等、特定 の姿勢を長時間にわたって保持させるような懲戒は体罰の一種と解せら れなければならない。」と定義づけられている。そしてその定義におけ る(2)の補足として、 「特定の場合が(2)の意味の「体罰」に該当 するかどうかは、機械的に判定することはできない。当該児童の年齢・ 健康・場所的および時間的環境等、種々の条件を考え合わせて肉体的苦 痛の有無を判定しなければならない。」等とつけ加えられている。さら に、同じく法務庁において発表された「生徒に対する体罰禁止に関する 教師の心得」 (昭24・8・2)にお』いて「用便に行かせなかったり食 一6 一一.

(11) 事時間が過ぎても教室に留め置くことは肉体的苦痛を伴うから体罰とな る。教室内に立たせることは体罰にならない限り懲戒権内として認めて よい。体罰にならない程度に、放課後残しても差支えない。」等とつけ 加えられている。. 以上、体罰とは前記「児童懲戒権の限界について」、 「生徒に対する. 体罰禁止に関する教師の心得」が示すところのものであるが、それだけ ではまだ釈然としない部分が多々ある。例えば、有形力の行使である殴 打したり、蹴ったりに類する、手、出席簿、指示棒等で頭や尻を叩く、. 胸や背中を押す、衣服や腕をつかんで引っ張る等は体罰になるのか、な らないのか等である。そのような曖昧さも次節でとらえる体罰に係わる 一般的認識の曖昧さにつながっていると思える。 〈引用文献〉. (1)下村哲夫「体罰とは何か」、r体罰を考える』、図書文化社、昭. 和61年、27頁。 (2)新堀通也「罪と罰」、前掲書r体罰を考える』、201頁。. 7一.

(12) 第2節 一般的認識にみる体罰. NHKr学校における体罰についての調査」アンケート(*調査対象 ・北海道・宮城・東京・千葉・愛知・大阪・広島・愛媛・福岡の公立中. 学校教師1000名 *実施時期・1985年12月)《Bの問「禁止さ れている体罰とはどのようなものだと思いますか。いくつでも○をして 下さい。」によると次のような結果が得られている。. 1、短時間の正座、立たせる. 200/.. 2、長時間の正座、立たせる. 590/0. 3、平手でたたく. 54%. 4、げんこつで殴る. 60% 69% 66% 73%. 5、棒などの物で殴る 6、足でける 7、身体に苦痛を与えることすべて. 短時閤の正座、立たせるを「児童懲戒権の限界について」によって、.. 禁止されている体罰であるのかどうか検討してみる。短時間の正座、立 たせるはそのこと自体で体罰(特別なことわりがない場合禁止されてい る体罰のことである。あえてことわり書きを入れているのは、前節と重 複するが、「体罰」という言葉には、字義そのまま「体に対する罰」と いう意味で使用されている場合と、「児童懲戒権の限界について」によ り定義されている体罰という意味で使用されている場合と、さらに児童 ・生徒の誇りを傷つけることを目的とする、あるいは結果としてそうな っている辱めの罰のような、「明文をもって禁止されていないが条理上 教師に授権されていない違法な懲戒」(2〕というべきものも含めて体罰と. して使用されている場合などの混乱状況があるためである)となるわけ ではなくて、 「当該児童の年齢・健康・場所的および時聞的環境等、種 一8一.

(13) 々の条件を考え合わせて肉体的苦痛の有無を判定」のように、肉体的苦 痛の有無が重要な判定基準となるのであるが、しかし個々の肉体的状況、 例えば身体に傷害があるとか、風邪をひいていて熱があるとかも係わっ て短時間であっても肉体的苦痛が大きい場合もあり、いちがいに体罰で あるとかないとか判定できないことであり、厳密に考えれば時間だけを もとにしては判定できないことである。しかし通常の状況であれば、体. 罰とはならないと考えられる。それを20%の者は体罰としているとい うことは、20%の者には「体に対する罰」はすべて体罰であるという 認識があることが窺われる。そのように他の項目においても体罰とは何 かということについての認識の不一致が指摘できる。 また、 「愛知県高教組調査」 (*調査対象・愛知県立高校の教職員、. 生徒およびその父母 *調査時期・1985年9月)(3〕の問「表Aのう ちあなたが体罰と思うものをあげて下さい。 (複数回答可)」によると 次のような結果が得られている。. 表A. 父母. 教職員. 生徒. 1、頭を強くなぐる (げんこつ). 63, 60/o 70, 80/o 43, 50/e. 2、頭を軽くたたく (教科書・出席簿等で). 6, 50/0. 27, 30/0. 19, 70/0. 3、顔をなぐる(ビンタ). 46, 70/0. 69, 40/0. 5 2, 8%. 4、バット・竹刀等でたたく. 91, 70/0. 82, 40/0. 78, 20/0. 5、足でける. 76, 4%. 75, 20/0. 65, 80/0. 6、廊下等に立たせる. 7, 30/0. 32, 20/0. 16, 60/e. 7、罰として正座. 9, 3%. 3 9, 9%. 21, 60/o. 8、罰として作業させる 一9一.

(14) (掃除等). 9、坊主頭にする(男子). 10、教員が髪を切る. 6, 60/0. 28, 20/o 19, 70/0. 37, 10/0. 56, 10/o 48, 20/0. 4 0, 3%. 54, 1% 46, oo/.. 11、罰として生徒の前で歌を 14, 10/o 41, 7% 21, 2%. うたわせる. 12、馬鹿・タワケ・アホウと 40, 6% 48, 2% 32, 40/.. ののしる 13、肉体的特徴を指摘して. 65, 1% 5 9, O% 4 7, 5%. ののしる. 14、授業中トイレに 行かせない 39, 9% 57, 1% 32, 8% バット・竹刀等でたたくは他の項目に比べて父母91,7%、教職員. 82,4%、生徒78,2%となっているように断然多く体罰とみなさ れている。このことは態様としてあまりにも非常識であるとの思いが表 れているからであろう。また一歩間違えぱ大きなケガにつながる恐れも あり体罰として排除すべきとの思いが表れているからであろう。しかし、. 父母8,3%、教職員17,6%、生徒21,8%は体罰ではないとみ なしており、他の項目とも合わせて何が体罰であるかについての認識の 不一致が指摘できる。 〈引用文献〉. (1)r体罰・いじめ』季刊教育法第64号臨時増刊号、エイデル研究. 所、昭和61年9月、151頁。 (2)坂本秀夫『教師の研究』、昭和60年、三一書房、112頁。 (3)前掲書r体罰・いじめ』、155頁。. 一10一.

(15) 第3節 裁判の体罰抑制能力 体罰裁判のほとんどは、直接児童・生徒を教師が殴ったり、蹴ったり の有形力を行使した結果の違法性を争われたものである。また体罰によ る被害も有形力行使に係わってのものが多い。したがって本節では、ま ず有形力行使についての学説、裁判における見解を概観し、そのうえで. 裁判に体罰(主に有形力行使の)抑制能力はどの程度期待でき得るのか を考察する。そのことは第1章の目的である体罰概念の曖昧さが体罰克 服に落としている影の一端に触れることであると考える。. 有形力行使は、ほぼ全面的に学校教育法11条により禁止されている とする学説として、「たとえば、殴打に至らない有形力の行使であって も、それが罰として科される限り体罰である。このように理解したほう が、体罰の定義に客観性と不変性が与えられるし、また教育法の理念に も適うものではないのだろうか」(1)、「身体に対する暴力はどんな弱い ものでも、それを体罰であるとしなければ体罰は限りなく無限定となる。. ただし軽く肩をたたくといったような励ます行為まで体罰とは言わない ことは言うまでもない」(2〕等がある。一定限度内の有形力行使は許され. てよい場合があるとする学説として「学校教育法の体罰禁止の規定があ る限り、学校で体罰を行ってはならないことは勿論であるが、他方では、 人間教育における体罰の役割を全く否定することはできないのである。 体罰は一方ではすばらしい教育効果をあげることもある」(3)、「一方で. 教師の懲戒権を認め、他方で体罰を禁止している法制の下、体罰を学校 における暴行と解し、暴行概念(したがって体罰概念)を先のように画. 定するなら、論理的には、体罰に至らないr事実上の懲戒』としての有 形力行使は、許されうる。そしておそらく教育的見地に立てば、その程 度の身体的懲戒を加えることは、必要でもあろう」《4)等がある。. 一11一.

(16) 一定限度内の有形力行使は許されてよい場合があるとする判決として、. 昭56・4・1東京高裁判決(「平手及び軽く握った右手の拳で同人の 頭部を数回軽くたたいたという軽度のものにすぎ」ず、 「いわば身体的. 説諭・訓戒・叱責として、口頭によるそれと同一視してよい程度の軽微 な身体的侵害にとどまっているものと認められる」したがって「正当な. 懲戒権の行使として許容された限度内の行為」である)や昭60・2・ 22浦和地裁判決(「規律に違反しながら素直に二二の態度を示さない. 原告Aに対し、強く注意を促す意味でボ・・重さ282グラムのボール 紙製の出席簿で、立っている同原告の頭を一回叩いたこと」は「口頭に よる注意に匹敵する行為であって、教師の懲戒権の許容限度内の適法行 為である」)等がある。どの限度まで許されるかについては前記、東京 高裁判決において「教育基本法、学校教育法その他の関係諸法令にうか がわれる基本的な教育原理と教育指針を念頭に置き、更に生徒の年齢、. 性別、性格、成育過程、身体的状況、非行等の内容、懲戒の主旨、有形 力行使の態様・程度、教育的効果、身体的侵害の大小・結果等を総合し て、社会通念に則り、結局は各事例ごとに相当性の有無を具体的・個別 的に判定するほかない」、すなわち、一律的な線引きは不可能とされて いる。. さて、裁判の体罰抑制能力についてであるが、大部分の裁判について、 教師は児童・生徒に対する有形力行二等について違法性を免れることが できていないにもかかわらず、体罰は後を絶たないという現状がある。. また、刑事裁判において有罪となった体罰は、昭30・5・16大阪高 裁判決を除いて、児童・生徒に傷害を負わせる程のものであり、「傷害 に至らない体罰は起訴猶予処分」(5)となったり、たとえ起訴されても無 罪とされている。すなわち、刑法の「謙抑性」(6)、「可罰的違法性」. 一12一.

(17) (7】、「教員の児童・生徒に対する優位性」(8〕等により、軽微な体罰は. 有罪になりにくくなっているという現状がある。さらに、民事裁判にお いて不法行為が成立するためには損害の発生がなければならない。すな わち、体罰であろうとも、損害が認定されないと不法行為責任は問えな い。軽微な体罰では一般的に裁判において認定される程の損害は発生し ないと考えられるから「民事責任」く9〕は問いにくいという現状がある。. それらの現状から考えると、裁判の体罰抑制能力には、体罰克服にと って、さほど期待はできないと思える。したがって、次章からにおいて は教師と児童・生徒にあるどのような問題が体罰発生の原因になってい るのかを探ることにより体罰克服を求めて本研究を進める。 〈引用文献及び註〉. (1)安部哲夫「教師による体罰と暴行罪の成否」、慶応義塾大学法学. 部編r慶応義塾創立125年記念論文集』、昭和58年10月、 182頁。 (2)菊田孝一「体罰禁止」、r教育法規読本』教職研修臨時増刊号. 第8号、教育開発研究所、昭和59年、192頁。 (3)沖原豊r体罰』、第一法規出版、昭和61年、223頁。 (4)森部英夫r教育法規の重要判例』、教育開発研究所、昭和60年、. 213頁。 (5) 例えば、昭和52年の仙台地検では「学校教育法が体罰を禁止 している以上、懲戒権を越えた事実は否定できない。しかし、体 罰の禁止は教師が生徒を指導する上での“注意事項”と解すべき ものである。程度の問題はあるが、体罰を加えれば即、刑事処分 にしなけらばならないというものではない」として起訴猶予処分. とした。 (r体罰・いじめ』季刊教育法第64号臨時増刊号、エ 一 13 一一.

(18) イデル研究所、昭和61年9月、169頁) (6) 刑事裁判の目的は、 「加害者に刑罰という身体的または経済的. 制裁を加えることにより、社会を犯罪から予防すること」(末川. 博r新版法学入門』、有斐閣1昭和57年、168頁)であるが、 刑事裁判は、強大な国家権力によって憲法で保障する個人の基本. 的人権を侵害することになるから「1人の無実の者が苦しむより 10人の有罪の者が逃れる方がよい」 (前掲書、52頁)のよう に謙抑でなければならないとされる。 (7) 犯罪が成立するためには、何らかの程度の違法があるという. だけでは十分ではなく、「処罰に値する程度の量と質をそなえ た違法」 (山火正則r学校事故と刑事責任」、 r学校事故の法制. と責任』、総合労働研究所、昭和52年、247頁)でなければ ならない。 (8) 「①教師は大人であり、教育の専門職であるのに対して、生徒. は子どもであり、理路整然と主張しきれない…. ②目撃した生. 徒が教師に不利になる事実を率直に証言することは一般に困難で あるために証人として申請することはむずかしい③逆に、教師に 有利な証言をする生徒を証人として申請することは比較的容易で ある」 (今橋盛勝編著r教育と体罰 水戸五二事件裁判記録』、. 三省堂、昭和60年、18頁)等の有利さが教師側にある。 (9) 「被害者に生じた損害を填補することによって、過去の害悪の. 結果を回復し、加害者・被害者間の負担の公平をはかるものであ って、行為者の被害者個人に対する責任を問うものである」(加. 藤一郎r不法行為く増補版〉』、有斐閣、昭和50年、3頁。. 14 一.

(19) 第2章 教師及び児童・生徒にある問題. 第1節 教師にある問題. 事例1(1). 北九州市小倉南区南若園町市立企救中学校(三原稔校長)の技術科男. 性教諭(28)が、テストを生徒に返却する際、授業に使う変圧器で点 数に合わせた強さの電気ショックを与えていたことがわかり、福岡県警. 小倉南署は18日、三原校長から事情を聴いた。. 生徒や父母によると、教諭が電気ショックを加えたのは7月9日の4. 時三目の授業中。2年1組の生徒(30人)にテストを返した後、生徒 に鉄の棒を持たせ、ほとんど全員に変圧器の端子に触れさせ電流を流し た。. 加える電圧はテストの点により変わり、百点に足りない分に合わせて. 80点の場合は20ボルト、60点では40ボルトとなっていた。ある 生徒は「70ボルトをかけられ2分間ぐらい両手がしびれていた」と話 している。. 一方、市教委によると、①教諭は生徒に流す前に自分に当てて安全性 を確認し、一一一一一L律20ボルトの弱い電流を流した②電気ショックを与えた. ことについては、テストを返す時、一人の生徒が「電気をまたするんや ろ」と言い出し、次々に生徒が腕をだしたため、瞬間的に端子に触れさ せた一と説明しているという。. 三原校長の話 指導の方法として間違っていた。保護者、生徒に不安 感を与え、謝罪したい。. 15 一.

(20) ※生徒の「電気をまたするんやろ」の発言があるように、前々からテス トの点が悪かったら電気ショックという、一般的に考えたら非常識とす ぐ分かる体罰をしていたことが問題としてある。冗談半分のようにもみ えるが、しかしながら考えようによっては、巧妙に体罰を平常使ってい たことが窺われる。このことの根底には、指導方法として体罰を認めて いるという教師の「指導方法」の問題がある。. 事例2(2〕. 千葉県立山武郡成東町立鳴浜小学校. 1983年(昭和58年2月28日より14日間)立って席を離れる 時、イスを机の下に入れるルールを破ったとして小学校4年の女の子が. 一人だけ14日間、机とイスをとりあげられ床に座って授業、給食をさ せられた。. ※確かに椅子を机の中にいれることは、習慣化させることが大事であり、. 何回も口をすっぱくしてしつけていかないと、身につかないことではあ るが、それにしても常識を逸した教師の児童に対する懲戒であり、この 事例からも「指導方法」として体罰を使っていることの問題が窺われる。. 事例3(3}. 熊本市の中学校で2年の男子生徒(14)が技術担当の男性教諭(2 9)に腹をけられて入院していたことが18日分かった。熊本北署は傷 害の疑いもあるとみて関係者から事情を聴いている。. 同市教委の調べによると、15日午後2時ごろ、掃除の時間中にこの 一16一.

(21) 男子生徒が歯痛のため担任の許可を取って廊下で休んでいたところ、掃 除の見回りをしていた男性教諭がいきなり左のわき腹を2回けった。. 生徒は校内で湿布などの手当を受け、授業を受けた後、午後5時ごろ 自転車で帰宅。「寒けがする」と寝込んだため、同市内の病院へ運んだ ところ、腹部に血がたまっており、そのまま入院した。意識はあるが、 18日現在も入院・中。. 学校によると、教諭はこの男子生徒をけった理由について「掃除をさ ぼっていると思った」と話している。という。. ※傷害を与えようと思ってしたわけではなく当たり所が悪く偶然、傷害 となったことであると思えるが、蹴るなどを日常的に「指導方法」とし て使っていたことの問題が窺われる。また、理由があって休んでいたこ とを、早とちりにより掃除をさぼっていると誤解して体罰をしてしまっ たという「誤解」の問題もある。. 事例4(4〕. 「私の通っていた中学校によく生徒をなぐったりする先生がいました。 その先生は、その日の気分によって授業の内容も大きく変わる先生でし た。たまたま機嫌の悪い日などすぐに机をけとばしたり、当てられてわ. からなかったりすると、rわからないだろう。ちゃんと聞いていなかっ たからだ。ザマーミロ』などと言われます…. これでは暴力です。」. ※あってはならないことだが、教師も感情のある人間であり、その日の 気分が生徒への対応に表れることは往々にしてよくあり得ることである。 ただし多くの教師は自制心によって自己の感情をコントロールし行動に. 一17一.

(22) まで移さないのだが、本事例の場合は極端である。授業がわからなかっ た生徒への対応もまずい。この事例からは、体罰に結びついていく原因 として「児童・生徒理解」と「自制心」の問題が指摘できる。. 事例5(5〕. 被害者 Xら 小5ら男子16名 相手方 Y 学級担任教師 男(47歳) 小学校5年の学級担任であるY教諭は、担任学級児童全員の体重測定 を行うため保健室前で待っていたところ、X1らが大きな声を立て騒ぎ ながらやって来たため、日頃からrXらの規律のない行動を改めさせな ければならない」と考えていたことから、たまたまXが脚の骨折のため. に使用していた松葉杖を取り上げ、これによりXらの頭を殴打し、Xら に「頭頂四割傷」の傷害を負わせた。 (処理). Y教諭は、Xらの日頃の規律のない態度を改めさせるために、本件行 為に及んだものであるが、Xの使用している松葉杖を用いてXらの頭を 殴打することは、教育者としてあるまじき行為である。. 法務局は、Y教諭に反省を求め厳しく説諭し、「説示」として処理し た。. ※松葉杖を使って「頭頂部割傷」の傷害を負わせるぐらいも殴打するこ とは、法務局の処置の文言にもあるように、常識を逸した行動である。. これも平常「指導方法」として殴打を教師が使っていることから起こっ たことであろうし、また、松葉杖を取り上げて、それを使ってまで殴打 することは、カッとしてとった行動であろうし、 「指導方法」、 「自制. 一18一.

(23) 心」に問題が窺える。. 以上、文献に表れている体罰にいたる原因になりそうな教師にある問 題を5事例みてきたことから「指導方法」、 「誤解」、 「児童・生徒理 解」、 「自制心」の問題を体罰発生に係わる原因として想定する。. 〈引用文献及び註〉. (1)毎日新聞 1992,7,19(日)「電気ショック体罰 北九州 市中学教諭 テスト点数に応じ」. (2)矢野直樹「医師からみた体罰事件」、 r体罰と子どもの入権』、. エイデル研究所、昭和59年、63頁。. (3)r月刊子ども』(第5号)、クレヨンハウス、平成3年、80頁。 「西日本夕刊3、18」の切り抜きとして掲載。 (4)坂本英夫r時代を見すえる平和と人権の教育』、国土社、昭和6 0年、160頁。 「かなり程度の低い場合…. 気分や」として. 掲載。. (5)法務省人権擁護局r体罰をなくそう〔第2版〕一人権侵犯事件か らみた体罰一』、平成3年、18頁。. 19 一.

(24) 第2節 児童・生徒にある問題. 事例1(1〕. 昭和57年度、新学期はじまって早々の始業式のとき、どこの学校で も行う新任教師の紹介の直後、ある大きな異変が起こりました。体育館. での集会は、この頃の例によって喧曝をきわめ「特に新3年になったツ ッパリグループは」ようやく自分達の天下が到来したと興奮し、白ハチ マキをして走りまわるといった状況でした。この状態には、新しく着任 した教師達も唖然として、ついに見かねた数名の教師は、このグループ. を制止し、反抗しかかった生徒を2・3年生全員の前で「ぶんなぐった」 のであります… 驚いたのは、もっぱら生徒の方で、グループの一部 は、わざわざ校外の公衆電話から、教育委員会や警察の少年係に「先生. が生徒をなぐった」と言って電話をしたというほどでした・…問題な のは、 「いけない」とか「やめろ」とか、非であると言ってそれでやめ ればよいのですが、 「やめなかったらどうなるか」という点であります。. どうもここらあたりになってきますと、いわゆる教育評論家(?)もあや ふやになってきます。たいがい「よく解るように、なぜいけないかを、. 根気よく説得して」などという語調に、ころっと変わってきて、前の是 は是、非は非の毅然とした態度などは、どこかにふつ飛んでしまいます。. ※なんとも騒然とした様子が想像できるが、実際の教育現場では、一歩 間違えば実際に起こりかねないことである。このようなことに類した行 為は多くの教師が経験されているのではなかろうかと思える。. 「ぶんなぐった教師に対して驚いたのはもっぱら生徒の方で、グルー プの一部は、わざわざ校外の公衆電話から、教育委員会や警察の少年係. 一20一.

(25) に「先生が生徒をなぐった」といって電話をした」に表れているように、. 生徒のほうではさほど悪いことをしているという自覚もなく、自分を目 立たせるための単なるパホーマンスのつもりであるのだろうし、また、. こんなことをしても教師達はどうすることもできないだろうという気持 ちも窺える。学校では何をしても許されるとでも思っているのだろうか とさえ思える。. この事件から指摘できる体罰を誘発した生徒にある問題として、少な くとも「ルール違反」、「反抗」をあげることができる。. 事例2(2⊃. 体罰は一般的に望ましいものではありません。しかし、いかなる場合 でもいけないというものではありません…. そこで、まず感情の体罰. はいけない… しかし、戒めの体罰というものはいつの世でもありま す。特に、今の時代は怒りの体罰というものがあるのです。これは教育 経験の深いプロの教育家がおっしゃったことを私はなるほどなと思って 聞いた内容であります。戒めの体罰は教育上の効果を考えて行う。怒り の体罰、これは実例を申しあげます。幾らでもあるんだ。 ホームルーム、学活一学活というのは反ノ’会、その時間に、いつも授. 業の邪魔をしてくる男の生徒が教室に入ってきたので女の先生が注意す ると、先生に向かってスリッパを投げてきて、かつ 師の顔を生徒の前 で平手でたたいた。生徒の前で、よその不良少年が入ってきて、 の先 生のほっぺたをたたいた。女先生は悔しがった。本当ならその時、教師 たる者は怒りをもってその暴力生徒を殴りつけなきゃいかぬ。これは、. 愛のむちじゃない、怒りのむちだ。その体罰は決して愛のむちであって はならない、怒りのむちでなければなりません。相手は無頼といえども. 一21一.

(26) 恥じるような行為をしてきたのだから、そんなのは学生じゃない… こういうことがあるんだ。一口に体罰はいけないなんていうような今の 学校教育法もおかしい…. こうした風潮の元凶の一つは、学校教育法第11条にある。 「生徒及 び児童に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはでき. ない」体罰条項とも言えるこの第11条には形影相伴うように、法務省 見解というよう奇妙な代物がついてまわる。この法務省見解こそ、戦後. 30余年をへて現在まで延々と教師たちを金縛りにし、無責任体制へ否 応なく押し流している根源なのである。(アンダーラインは筆者が記入). ※体罰条項に関してはともかくとして、アンダー一一ラインの部分について. 考えてみるに、この生徒の行為は単なるあまえからきているわがままで あり、このような行為にまで理屈をつけて、人権に絡めて、生徒の行動 を正当化できるものではないと考える。. この事件から体罰を誘発しやすい生徒にある問題として、少なくとも 教師に対する生徒の「無礼」の問題が指摘できる。. 事例3(3〕. 私の学校の2年生(男)のことだが、そいつは遅刻の常習者で、何回 注意されても、いっこうに改まらない。サボリの欠席もよくあり、その つど、担任が家へ電話をするが応答はない。服装や頭髪にも規則違反が 目立ち、持っている鞄も薄くてペラペラだ。両親ともに、学校の保護者 会や地区別懇談会にも顔は出さず、まるで学校を託児所と思っているよ うだ。. 担任も、なかば、あきらめていたが、先日の体力バッジテストのさい. 一22一.

(27) に、ついに一発、ビンタを喰わせてしまった。というのも、集合の時に も、その生徒はふざけていたし、テストのさいも自分の順番を守らず、. 列に割り込もうとしたところを、その担任が見つけ、つい、カッとなっ てやってしまったというわけだ。 翌日、珍しく父親(会社員)が学校へやってきて、 「親が大切に育て、. めったに手もふれない子に対して、よくも教師が殴ったな」と法律を盾 にネチネチとやられたのには往生した$。. 何回も「警察にいう」とか、 「教育委員会や新聞社に抗議する」など というので、 「どうぞご随意に」といってやろうかと思ったが、ここが がまんのしどころだと思って、グッとこらえたよ。まあ、そんな時には、. その生徒の悪い点や担任の良い点など、とやかくいわずに、とにかくあ やまるにこしたことはないね。しかし、くやしいよ。 (高校長・57歳). ※補足説明をするまでもなく、この事件からは体罰を誘発しやすい生徒 にある問題として、 「ルーズ」、 「ルール違反」を指摘することができ る。. 事例4(4〕. 中学・高校になると、教師に対する暴言はさらに激しくなってくる。 授業中の私語を注意されると、 「お前の授業がおもしろくないから、わ. しらしゃべるんじゃ」と反論し、煙草を吸ってはいけないと戒められる と、「おれが煙草をすった証拠を出せ」とわめき散らす。教師に対して、 「お前」「おれ」といってはばからない生徒。年輩の教師に「おじん、. いくら給料もらっているのか」とあざける生徒。学校の放送室に勝手に 入り込み、「○○先公、出てこい」と脅す非行グループ。最近の学校で 一一 23 一.

(28) は、教師を尊敬するどころか、教師を教師とも思わぬ生徒が全国的に増 えている。. ※この事例ほどひどくはないが類した生徒の言動は多くの教師が体験さ れたり、身の周りで見ておられることだと思える。この事例から指摘で きる体罰を誘発する生徒にある問題として、「無礼」、 「反抗」、「ル ール違反」を指摘することができる。. 事例5(5〕. 最近では教師に直接的にむけられる非行や問題行動が目立って多くな ってきた。悪質な授業妨害や、教師に対する陰湿ないやがらせ行為とい ったものまである。具体的にいうと、軽微なものでは無視する、悪態を つく、笑いものにする、バカにしたような態度をとる、といった行為。 また授業中さわぐ、騒音をたてる、授業中に教室をでていく、といった 授業妨害に類する行為。そして、過激で悪質な、いたずら電話や手紙、. 対教師暴力、教師にものを投げる、給食に異物を入れる、車にキズをつ ける、なかには教師を尾行したり脅迫する、といったような行為まであ る。. ※この事例からも、体罰を誘発する生徒にある問題として、少なくとも 「無礼」、 「ルール違反」を指摘することができる。. 以上、文献に表れている体罰を誘発する原因になりそうな児童・生徒 にある問題を5事例みてきたことから「無礼」、 「反抗」、 「ルール違 反」、 「ルーズ」の問題を体罰発生に係わる原因として想定する。. 一24一.

(29) 〈引用文献〉. (1)「北九州市立篠i崎中学校、生徒指導研究発表会研究紀要、198. 5年10月25日、昭和58度∼60年度北九州市教育委員会 研究委嘱」 (r体罰・いじめ』季刊教育法第64号臨時増刊号、. エイデル研究所、昭和61年9月、186頁) (2) 「衆議院法務委員会会議録一学校教育法11条、法務庁意見と日. 弁連提言一一一一1985年11月20日」の伊東(昌)委員の意見。 (前掲書r体罰・いじめ』、183頁) (3)杉田荘治r学校教育と体罰一日本と米・英の体罰判例一』、学苑. 社、昭和58年、1ユ頁。 (4)沖原豊r校内暴カー日本教育への提言一』、小学館、昭和58年、. 196頁。 (5)秦政春r公立中学校はこれでいいのか』、日本放送出版協会、平. 成4年、96頁。. 一25一.

(30) 第3章 判決文の分析. 第1節 分析方法. 1、判決文抽出 体罰事件の判決文のなかから、学校教育法11条但書にいう体罰発生 の原因を掴みたいので、裁判において体罰と裁定された体罰事件の判決 文であること、また現代の体罰発生の原因を掴みたいので、戦後の体罰 事件の判決文であること、そして体罰発生の原因を出来るだけくわしく 掴みたいので、体罰発生の原因が比較的くわしくおさめられている判決 文であること、という条件で20の¥ll決文を抽出した。. 2、要因・誘因の定義 要因とは、体罰発生において、体罰をした教師の「何故に、体罰をし てしまったか」の原因を体罰発生の要になるものであると考えて要因と した。誘因とは、体罰発生において、何の理由も児童・生徒にないとい う、 「通り魔的」なことは有り得なく、体罰をされた児童・生徒にも原. 因の一端はないとはいえないと考え、体罰を誘発した原因という意味で 誘因とした。. 3、要因・誘因析出の根拠 要因・誘因析出の根拠としては、判決文のなかで事実認定されたこと として扱われている文言、すなわち判決理由の文言を根拠とした。また、. どのような原因から発生した体罰であるかがよく分かるように、根拠と. 26 一.

(31) なる文言をできるだけくわしく引用した。. 4、要因・誘因析出の基準 要因・誘因の各項目の大枠については、第2章の教師にある問題及び 児童・生徒にある問題での何が体罰発生の原因となっているかの想定を 参考にして定めた。ただし、事件にはどれ一つ同じものはなく、それぞ. れの特殊性があるので各項目に分けるについては、第3章第2節の分析 過程の※印の箇所において補足説明をする。. 〈要因〉. =指導方法=. 指導方法として体罰を認めていることが窺われる場合。 =自制心=. カッとして、思わず手をだしてしまったということが、窺われる場合、 あるいは、一般的には、そこまではやらないだろうと窺われる場合。 =児童・生徒理解=. 一般的には、単なるいたずらと思われるようなことに誘発されて体罰 を使っていると窺われる場合、教師に対する要望とも言えるようなこと について、体罰を使っていると窺われる場合、教師と児童・生徒の関係 を教師自らの言動によって悪くしていることが窺われる場合。 =誤解=. よく理由を確かめれば懲戒の対象にはならないことについて、早とち りや思い込みにより真意や事実と違うようにとっていたと窺われる場合。. 一27一.

(32) 〈誘因〉 =反抗=. 教師の指導に、客観的にみて敢えて反抗している態度が窺われる場合。 =無礼=. 反抗というよりは、教師を馬鹿にしたりの礼儀作法をわきまえていな い問題と窺われる場合。 土ルール違反=. 遅刻が多い等のような、学校全体すなわち公の規律に関する場合。 =ルーズ=. 忘れ物が多い等のような、個人に関する場合。 「騨一,一聯一願ロー■一一一価一一■一一一一一一一一一一一一卿一一■鴨幽一,一一一一一一一一一圏一昌駒一一一一■鴨一伽一騨一一一一卿一一甲,塵一一嘱一一‘ 5. 1. 1. 巳. ロ. コ. 巳. 巳. ロ. ロ. 1 以上の各枠組みに入らないことについては、20の判決文を全部1 ロ. ロ. 1. 巳. ロ. ロ. 1分析してみないと分からないことであるが、説明の便宜上、この箇1. i所におさめておくこととする。 l I. i l l. l. l. =虚言=. 教師の質問に対して、嘘をついた場合。 塞いじめ=. 弱い者に対して一方的に攻撃を加えている場合。 =悪賢さ=. 自分の非をとがめられても、他人の責任にしたりしてずるく立ち回る 場合。. =聞き分け=. 教師の説諭に対して、反抗というほどではないが、素直さが窺えない 場合。. 一28一.

(33) =誤解=. よく理由を確かめれば、立腹せずにすむのに、早とちりや、思い込み により、真意や事実と違うようにとっていたと窺われる場合。 =要望=. 客観的にみて反抗や無礼と、とることではなく教師に対してこうして ほしいという望みと窺われる場合。 =いたずら=. 教師の児童・生徒に対する要求度合いが過度でなければ、単なるふざ けとして、懲戒というよりは一言の注意ですませておいてもよいのでは と窺われる場合。. =成績不良=. テストの成績が悪かった場合。. 5、要因・誘因順序 判決文から窺われる範囲の、体罰発生に至る原因の順序を要因順序と 誘因順序に分けて、票因の①②… 、誘因の①②…. 一29一. として記した。.

(34) 第2節 分析過程. 1、東京都私立芝学園中学校(殴打死亡)事件. 東京地裁 昭和33年5月28日判決 概要 学校事故・掌生処分判例集第3巻P,869・4の上ge 5行から7行. 保健、体育担当の中学校教員が、担任生徒を訓戒中に他組の生徒等が 覗いたり騒がしくしたことに憤慨し、一生徒を殴打して死亡させた。. 要因・誘因及び要因・誘因析出の根拠と補足説明. 1、要因及び要因析出の根拠と補足説明 ①自制心 前掲判例集P,869・4の上殺19行から下段21行. 担任生徒のうち、都会生活に不慣れな新任の被告人をやゆ(原文は漢字). し、或いは反抗するが如き言動を示し素直に被告人の指示に従わない者 があり、性来短気のため、右生徒に対し、穏やかに説諭することなく直. ちに殴打する等の挙動に出たこともあった… B組教室…. 被告人担任の中学3年. において、翌日から行われる学期末試験に関し、組内で. カンニングの如き不謹慎な行為を二度としないように訓戒中、生徒が早 く帰してくれと騒いだので反省のため黙祷させていたところ、すでに授. 業を終えた隣室三年C組生徒ら十数名が、右B組教室内の友人と共に帰 宅するため、東側窓ガラス戸附近に集まり、数回に亘り右ガラス戸を開 閉して室内を覗き友人を呼ぶなど騒がしくなり、被告人は右生徒に対し. て静止するよう再三注意していた折柄…. 三年C組の生徒糸井洋・・. ・が突如右ガラス戸を音高く開け放ったまま(原文は漢字)、他の生徒と共に. 一30一.

(35) 逃げ去ったのを目撃して憤激の余り追尾し北側階段上で…. 「他人の. 家の戸を黙ってあけて覗いていいのか。」と詰問すると共に手拳で同人 の顔面を五回位殴打して暴行を加え…. 死亡させたものである。. ※教師をやゆしたり、反抗するような態度は、生徒として無礼ではある が、殴打する等、教師としての自制心のなさが窺われる。 「生来短気の. ため…. 」という文言からも、もともと自制心に問題があることが窺. われる。. 2、誘因及び誘因析出の根拠と補足説明 ①無礼. 析出の根拠は要因析出の根拠と同文. ※突如、ガラス戸を音高く開け放ったまま逃げ去る等の教師をやゆした り、反抗のような態度は、生徒の教師に対する態度としては、ただのふ ざけとしてすまされることではなく無礼だと思える。. 一31一.

(36) 2、福岡県庄内村立庄内中学校(被疑生徒取調殴打)事件. 福岡地裁飯塚支部 昭和34年10月9日判決 概要 学校事故・学生処分判例集第3巻P,870の下段10行から17行. 町立中学校内で発生した盗難事件において疑いがいだかれていた三年 生の生徒の不遜な態度に対して、教師が殴打したりした。その後その生 徒は高校に進学したが、二年生の八月に精神分裂病で退学した…. 判. 決は、精神病と暴行との間に因果関係は認められないとしたが、暴行に より生徒は肉体的苦痛及び精神的苦痛を受けたとし(た。). 要因・誘因及び要因・誘因析出の根拠と補足説明. 1、要因及び要因析出の根拠と補足説明 ①自制心 前掲判倒集第:3巻のP,876の上段12行から下段22行. 被告吉田は…. 図工クラブの生徒約十二に対し図画の指導をし、図. 画クラブ員等は午後四時半頃までに解散したが、被告吉田は同日午後5 時頃同準備室の事務机の中に、かねて図画材料費として生徒から徴収し て保管していた現金並びに当日生徒から同様の目的で徴収した現金合計 九千円を入れた奉公袋を仕舞い机の錠前に施錠して後職員室に行き約三 十分経って五時半頃図工準備室に引返したしたところ、机の錠前が破壊 されて、現金を入れていた前記奉公袋がなくなっていることを発見した。 その直後右奉公袋は同室備付の抽斗から発見されたが、現金九千円の内 六千円(十円紙幣六百枚)は盗難にかかっていた。. 被告吉田は同日中に右事実を被告西に報告したが、翌日朝被告西の指 示により右盗難につき手がかりを得るため、生徒の登校をまって前日の. 一32一.

(37) クラブ活動に参加した生徒全員に、クラブ活動後の行動を紙面に書かせ てみたが手がかりは得られなかった。その後西被告の命により訓育主任 であった被告安藤が取調を応援することになり、同日二時限の授業時間 中であった午後十時過頃から、被告吉田、同安藤の両名が校長室で前日 クラブ活動に参加した生徒全員につき事情を聞いたところ、原告修一郎 を含めて大部分のものは、クラブ活動終了後直ちに帰宅した旨答えたの に対し、訴外木下某はクラブ活動終了後五時頃まで図工室で本を読んで いたこと、そこには原告修一郎も居合わせたことなどを申述べたため、. 両教官は右木下と原告修一郎を校長室に残し他の生徒はその場から退去 させた。引続き約一時間にわたって右木下と原告修一郎を取調べたとこ ろ、先ず右木下と原告修一郎はその場で言い争ったが、結局原告修一郎 は図画室で漫画本を読んでいたことを認めた。ところが下校した時刻に ついて右木下は五時頃であったと答えたが、原告修一郎は答えないので、 なお問いただしているうち、原告修一郎が「お前達は俺を疑っているの か」と言い不遜な態度を示したので、被告安藤が激昂して、椅子にかけ ていた修一郎の襟がみを掴んでたたせた上、素手で同人の顔面を二回に わたって殴打した。. 前掲判例集Ps 877の下段22行から24行. 被告安藤が修一郎の言動に激昴し、突さの場合感情的に殴打したもの であることは… これを認めることができる(。). ※激昂しての行動は、感情的な行動であるととられても客観的に考えて、 やむをえないと思える。. しかしながら、生徒修一郎の言動は教師としては、本気で叱るべきこ 一 33 一一.

(38) とであると思える。本気で叱ると激昂して叱るの区別は、その時代の社 会的雰囲気に係わることであり、一概にはっきりと区別することは難し いと思えるが、本件においては、激昂、椅子に掛けていた修一郎の襟が みを掴んで立たせた、素手で顔面を二回殴打した、の重なりにおいて、. 感情的な行為であることが窺われ、教師の自制心の問題であると考えら れる。. 2、誘因及び誘因析出の根拠と補足説明 ①虚言. 析出の根拠は要因析出の根拠と同文. ※原告修一郎は盗難事件のあった当日、クラブ活動終了後図画室に残っ て漫画本を読んでいたことを相当頑固に認めようとしなかった。. 生徒木下が五時頃まで一緒にいたといっているのに言い争いをしてま で認めようとせず、結局のところ言い争いのうえ図画室で漫画本を読ん でいたことは認めざるを得なくなった。ここにおいて原告修一郎の虚言 があったといえる。. ②反抗. 析出の根拠は要因析出の根拠と同文. ※原告修一郎に虚言があったうえ、さらに「お前達は俺を疑っているの か」といい、不遜な態度をとったことは、生徒の教師に対する態度とし て、反抗的だといえる。. 一34一.

(39) 3、神奈川県私立第一商業高校(下手投げ傷害)事件. 横浜地裁 昭和35年8月25日判決 概要 学校事故・学生処分判例集第3巻P,883・3の9行から13行. 高等学校の生徒が、書道の授業前に他の生徒と話していたところ書道 の教師に見つかり、いわゆる下手投のような形で床に投げられ、左腰部 を強く打ち入院した。しかし、治療にあたった医師の不手際もあってか、 患部が化膿し、一生不具者として(の)生活を余儀なくされた。. 要因・誘因及び要因・誘因析出の根拠と補足説明 1、要因及び要因析出の根拠と補足説明 ①児童・生徒理解 ②指導方法 前掲判例集P,883・5の下段19行からP,883・6行の上eS 4行. 西川が… 教室に赴いた際、生徒の柏木成夫が書道の教科書で原告 を打とうとしたのを現認したこと及び西川が右両名を黒板の前に呼出し てその理由を尋ねたところ、柏木は原告が柏木の教科書を取った旨述べ、. 原告はそれを争ったので、西川は、友達同志で亘いに罪をなすり合うの は良くない旨を告げ、先ず柏木を相撲の手を使って同教室の床板に倒し、. 続いて原告をもほぼ同様の方法で倒したところ、原告の体が宙に浮き左 腰部を下にして横に水平となるような状況で床板に落ち、原告が左腰部 を強く打った。. ※教師が教室に来る前に、いたずらで友達の教科書を違う場所に置いた り、それをみつけてまたいたずらで、その教科書で叩く格好をしたり等 i一 35 b一.

(40) は、ちょとした気分転換によくやることであり、一言注意すればすむこ とであり、ことさら事を荒立たせるようなことではないと思える。すな わち、児童・生徒に対する理解の幅の狭さが窺われる。また、体を宙に 浮かせそのまま落とす等、指導方法としての思慮の足りなさが窺われる。 したがって、まずは、児童・生徒理解、そして指導方法の問題とした。. 2、誘因及び誘因析出の根拠と補足説明 ①いたずら. 析出の根拠は要因析出の根拠と同文. ※教師が教室に入ってきて授業が始まるのに、まだ休み時間のいたずら を持ち越している等よくないのは当然である。しかしながら、一言の注 意ですませておいてもよいようなことであり、さほどせめるべきことで もないように思える。. 一36一.

(41) 4、鹿児島県川内市立寄田中学校(指示棒殴打)事件. 川内簡裁 昭和41年8月31日略式命令 概要 学校事故・学生処分判例集第3巻P,885の上段9行から10行. 中学校教諭が生徒らの頭部を二回ないし二十回程度、指示棒で殴打し た。. 要因・誘因及び要因・誘因析出の根拠と補足説明 1、要因及び要因析出の根拠と補足説明 ①指導方法 前掲判例集P,885の上殺18行から下段14行. 被告人は…. 第三学年B組を担任しているものであるが、自己が同. 学年A組及びB組生徒に対し実施した模擬テストの成績が悪かったので 同生徒を鞭燵激励して成績の向上を図ろうと考え…. 同校3年B組教. 室において同校三年生… の八名に対し、竹製指示棒で各人の頭部を 二回及至六回宛殴打して暴行を加え…. 同校二年教室に於て、同校三. 年… の十六名に対し竹製指示棒及び手の甲で各人の頭部及び頬を六 回及至二十回位殴打して暴行を加え… 組生徒…. 同校職員室に於いて同学年B. に対し同女の頭部を木製指示棒で二回殴打して暴行を加え. たものである。. ※指導方法として平常から体罰を積極的に用いてる様子が窺われ、被告 教師の指導方法には問題があるといえる。. 2、誘因及び誘因析出の根拠と補足説明 一一 37 一.

(42) ①成績不良. 析出の根拠は要因析出の根拠と同文. ※生徒側の非としての誘因というわけではなく、単なる、教師の体罰を 誘ったこととしての誘因という意味である。成績が教師の期待どおりで なかった、すなわち成績不良ということが誘因となった、ということで ある。. 一38一.

(43) 5、新潟県新井市立斐太中学校(殴打)事件. 高田簡裁 昭和44年5月12日略式命令 概要 学校事故・学生処分判例集第3巻P、886の9行. 中学校教師が、生徒の顔面を一回ないし五回程度殴打。. 要因・誘因及び要因・誘因析出の根拠と補足説明 1、要因及び要因析出の根拠と補足説明 ①児童・生徒理解 ②自制心 前掲判例集P,886の上殺16行から下殺8行. 被告人は… 同校三年生女生徒五十一名の身体検査を屋内運動場で 実施することにしたところ同運動場は男子生徒に覗見されるおそれがあ るところがら右女生徒全員がこれに反対し場所の変更方を同校教諭牧野 礼子を介して被告人に依頼したことに立腹し前記屋内運動場において右 生徒を代表して牧野礼子に頼みに行った小林順子、中島郁子、石川秀子、. 中島ヤリ子に対し「なんで他の先生に頼みに行ったんだ」等と怒鳴った すえ…. 平手で同女等の顔面を二回乃至五回位殴打しさらにこれを見. ていた他の生徒が非難したところ「文句があるのか、あるなら出て来い」 等と怒鳴り… 宮城弘美他三十一名に対し、それぞれ平手で同女等の 顔面を一回又は二回乃至五回位殴打して暴行したものである。. ※女生徒の行動は、恥ずかしさの余り当然出てくるものであり、それは 要望ともいえるものであり、また被告人に直接いわなかったのは、女性 教師のほうがこのような問題については、話しやすいし、また分かって. 一39一.

(44) もらいやすいからであることであって、何も担任としての自分がないが しろにされた等と取ることでもないと思える。そこに考えが至らず、カ ッとなってしたことであり、まずは、児童・生徒の理解不足が、そして 次ぎに自制心の欠如が窺われる。したがって要因①児童・生徒理解②自 制心として析出した。. 2、誘因及び誘因析出の根拠と補足説明 ①要望. 析出の根拠は要因析出の根拠と同文. ※覗見される恐れのある場所での身体検査については、当然でてくる要 望ともいえるものである。その場所の変更が難しいのであるなら、覗見 されないような方法を考え、それによって生徒の納得を得る回すればす むことである。また、直接男性の担任にいわず、女性教師にいったこと についても、この年頃の女生徒の行動としては、恥ずかしさもあること であり、そこのところまでは、責めるべきことではないと思える。従っ て、女生徒の非は問えず、要望として析出した。. 一 40 一一.

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