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体罰発生の誘因から

ドキュメント内 判決文にみる体罰発生の原因 (ページ 128-142)

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第2節  体罰発生の誘因から

第1項 反抗

 体罰発生の誘因として、教師への反抗的言動が係わっている事件が2

0件中7件あった。判決文分析16、19の2件については、教師の非

が認められるが他の5件については、責められるべき非は生徒のみ、あ るいは、ほとんど生徒にあるといえる。

 判決文分析16は養護学級において教師の指示に児童が従わなかった

ことから起こった事件であるが、養護学級児童においては、普通学級児 童以上にその日の気分によって児童の学習への取り組みが難しい状態に 陥ることもあるのはやむをえなく、また要求度合いを十分みきわめて無 理のない指導を根気よく続けていかないと効果もあがらなく、そのため に養護学級が設けられているのであり、指示に従わないことは、従えな いことではないのだろうか、すなわち無理な要求をしているのではない

だろうか等に思いをめぐらすべきである。第3章第2節の分析過程にも

あるようにこの教師は平常も殴打等を使っており、その配慮が足りない と思える。したがって教師の非だけの問題から起こった事件といっても

過言ではない。そして、判決文分析19については、生徒会長としてや

る気を出している生徒に公正なる教師としての当然の務めである協力、

援助をしないばかりか、かえって足を引っ張るような言動をとり、その ことによって、教師自らが生徒の反抗的態度を増長させたことが窺われ、

以前から生徒に問題があろうとも指導者としての教師の非は認めざるを

得ない。

 しかし、他の5件については、十分生徒が反省すべきことである。例 えば、判決文分析9の自分のやりたいことをとめられると常々反発して、

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教師の注意を素直に聞き入れないや、判決文分析14の生徒のルーズさ

に対して教師が注意すると冷笑して素直に聞き入れない態度を示したり、

冷ややかな返答をする等である。

 児童・生徒の反抗を誘発する教師の言動として、 「(1)権威による

強制・圧迫(2)自由の束縛・干渉(3)叱 責(4)無理解(5)意見

の相違(6)先生の生活態度・授業態度」(1〕等があげられているが、判

決文分析9、14に照らしてみても、さしてあてはまるとは思えないし、

それに完壁な教師がいるわけでもなく、よくよく重箱の隅をつつくよう に検討してみればどの教師だって、どれかは当てはまらざるをえないこ とである。もちろん多くの教師のなかには、極端な場合もあり、上記の ことに関して十分批判を受けざるをえない者もあるだろうが、それはい たとしても、ごく一部であることなのに、保護者や市民、マスコミの運 動では多くの教師がそうであるような前提のもとで、児童・生徒の反抗 的言動があれば、教師だけの反省に解決を求めるという風潮が強すぎる のではないだろうか、そのことには危惧を感じる。

 教師が反省すべきことは真摯に反省し、児童・生徒に反省を求めるべ きことには、十分反省を求めていくという雰囲気を作り出していくこと が現代の学校教育において最も必要なことだと思う。そのことは、体罰 克服にとっても大切なことである。

〈引用文献〉

(1)岸田元美r教師と子どもの人間関係』、教育開発研究所、昭和6    3年、277頁。

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第2項 ルール違反

 体罰発生の誘因として、ルール違反が係わっている事件が20件中6

件あった。

 判決文分析8、13の2件については、十分責められるべき非が教師

にあるが、他の4件については厳しすぎるルールであるから、違反者が 出てもやむえないことであるとも思えないし、生徒の非を求めて当然な ことである。 (判決文分析15の事件は公立高校の研修旅行中、携帯禁 止のヘヤードライヤーを持参していた生徒に対する担任教師の有形力行 使による体罰で死にまで至らせた事件であり、有形力行使による体罰で 不幸にも死にまで至らせたことについては、どんなに言い訳しようたも、

申し開きできないことであり、このこと一つとりあげても、体罰克服の 重要性を感じさせられる。その体罰克服のためには教師はどこを反省す べきか、児童・生徒はどこを反省すべきかを探ることが本研究の目的で あるので、児童・生徒の非は非として取り上げて論ずることは了解願い

たいと思います).

 判決文分析8は、中学校の生徒が急に腹部の調子がおかしくなり、た またま近くにあった教職員専用便所を使用したことが発端となった事件 であるが、多くの生徒が生活している学校においては緊急の場合もあり、

教職員専用便所を生徒が使用することもたまには起こりうることであろ うし、懲戒対象の選択についての教師の判断にゆとりのなさが感じられ 児童・生徒理解の問題であり、教師の非が大である。また判決文分析1 3は、たまたま前日の掃除時間中に友人とふざけていて教師に注意され ていたが、今回のは納得性のある理由により掃除時間に遅れてしまった のに、担任の早とちりにより殴打等を加えられたという事件であり、こ れも教師のゆとりのなさを感じさせられる。上記2件には、現代の学校       一 126 一

教育のもつ硬直性が如実に表れており懲戒権行使についてよほど冷静な 判断力が教師にないと、ヒステリックな有形力行使が横行する恐れがあ

り、体罰克服にとって教師の努力の必要性を感じさせられる。

 しかし、他の4件、例えば判決文分析18の学校の規則を守らない、

掃除を真面目にやらないや判決文分析20の集団で他校におしかける等

は、何回も教師から注意を受けていたにも係わらずやっていたことであ ろうし、生徒のほうから教師の殴打等を誘い込んでいるような面も窺わ れ、いくら諭してみてもどうにもならないところでの究極の選択として 有形力行使があったことであろうし、生徒の非をいくら責めても責めす ぎることにはならないと思える。生徒にも自分に非があれば非として認 める素直さを持っていくことは体罰克服にとって大切なことである。

 その素直さが児童・生徒に失われつつあるところに現代の教育状況の むずかしさの一端がある。そのことは、人権問題とからめて無責任にも ちかく、煽り立てるマスコミの責任も大である。要は社会全体に、個人 のわがままか、真に入権問題としてとりあげる必要であることかを、冷 静に見抜く目が求められる。

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第3項 ルーズ

 体罰発生の誘因として、児童・生徒のルーズさが係わっている事件が

20件中5件あった。

 5件のうちの1件である、判決文分析17については、生徒の母親が

病気で入院している状況があり、そのため落ちつかず学習に身がはいら ず、基本的生活習慣も身につかず、遅刻や忘れ物が多く、学習意欲が乏

しい等、誰にでも起こりうることであり、それらのことを生徒個人の非 として求めていくことは、酷である。

 しかし、他の4件について、例えば、判決文分析9の「家庭科被服の

学習に必要な針糸布等の学習道具を担当教師の度重なる注意にもかかわ らず学校に持参せず、右教師が教材用の布を個人的に原告に買い与え、

実技の作品として提出するよう指示したにかかわらず、その指示は履行 されず、被告甲が生徒の夏休み課題とした読書感想文の提出については、

期日徒過し、被告甲からの度重なる指示が必要であったし、2学期中間 テストの成績を父母に閲覧させその保護者の閲覧結果を教師に回答する 文書を提出するようとの被告甲の指示も原告は学級で只一人履行しない」

や判決文分析14の授業態度が悪く、宿題を忘れたり、授業中窓にもた

れかかったり、私語を発したりのようなことには、もっと生徒個人の責 任を求めていく必要がある。

 生徒を擁護するための理屈をいうとすれば、教師の授業が悪いとか、

学校教育の過密化の問題とか、いくらでもあげられる、そして真実の一 端であることも納得できるが、そんなことだけで終始してしまう傾向が いきすぎることには危惧を感ずる。そのことは単なるあまえの精神を助 長しているだけにすぎなく、何事もただ責任転嫁するだけの人間に育て ていくことになるのではないだろうかとさえ思える。

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第4項 虚言

 体罰発生の誘因として、生徒の虚言が係わっている事件が20件中5

件あった。

 5件のうち2件については、生徒が虚言を使ったことにある程度納得

できる事情が窺え、責められるべきは教師の非が大であると思える。判 決文分析8の生徒が緊急でやむえなく職員便所を使ったことに対しての 事情を述べていることについて、それが認められないような硬直した教

師の雰囲気のなかでの虚言や判決文分析17の遅刻や忘れ物をしたら殴

るといっておいて、その後、遅刻や忘れ物を問い質したら、嘘の弁解を

した等、いくら教育熱心だといっても、教師に常識の欠けた面が窺え、

生徒の虚言ばかりを責められないと思える。

 このようなことからも、懲戒を加えるにあたっての、教師のゆとりを 持った配慮の大切さを感じさせられる。安易に有形力を使っていくこと の恐さが出ている事件だと思える。

 しかし、他の3件については、生徒の非を大いに求めていくべきこと だと思う。たとえば、判決文分析2の盗難:事件取調においての虚言とか、

判決文分析18の学校で危険だからと禁じられている催眠術遊びを転校

して間がなく、そのうえ身体傷害ということもあり、いじめの対象にさ

れている生徒にしたことについての虚言とか、判決文分析20の回し蹴

りをして、後頭部を壁に強打させ、さらに場所をかえ顔面を両手でかば い立ちすくむ生徒の顔面を両腕越しに数回足蹴りにし、意識不明にさせ たことについて教師に何回問いっめられても、相当頑強に嘘をつき続け、

証人も出てきてしかたなしに自分がしたと認めた等、嘘としても悪質で ある。自分の行為について卑怯であるとかの価値観を持つことの大切さ を指摘できる。

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ドキュメント内 判決文にみる体罰発生の原因 (ページ 128-142)

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