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氏名 下沢シモザワ

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Academic year: 2021

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氏 名 下沢

シ モ ザ ワ

所 属 理工学研究科 生命科学専攻 学 位 の 種 類 博士(理学)

学 位 記 番 号 理工博 第

278

号 学位授与の日付 平成

30

9

30

日 課程・論文の別 学位規則第4条第1項該当

学 位 論 文 題 名 αシヌクレイン伝播の動物モデル(英文)

論 文 審 査 委 員 主査 教 授 長谷川 成人 委員 教 授 川原 裕之 委員 准教授 安藤 香奈絵 委員 教 授 久永 眞市

【論文の内容の要旨】

多くの神経変性疾患では、疾患を特徴づける異常タンパク質病変が認められ、神経病理学的確 定診断に用いられている。パーキンソン病(PD)やレビー小体型認知症(DLB)にはレビー小体、レビ ー突起と呼ばれる異常病理構造物の出現が認められ、その主要構成タンパク質としてαシヌクレイ ンが同定された。レビー小体の出現部位と神経脱落との関係は古くから指摘されていたが、より感 度の高いαシヌクレインの免疫染色により、αシヌクレインの蓄積病変の脳内分布や広がりと臨床 症状の間には強い相関が示されている。近年、この病変の広がりを説明する機序として、細胞内に 蓄積した異常タンパク質が細胞間を伝わるという考えが提唱され、これを裏付ける実験結果が

in

vitro

、培養細胞、さらには動物モデルで多数報告されるようになった。すなわち試験管内で作製し

たαシヌクレイン線維や患者剖検脳から調製した異常型αシヌクレインを、野生型マウスやトランス ジェニックマウスの脳内へ接種すると、内在性αシヌクレインが異常型に変化して病変が形成され て広がるプリオン様伝播が起こることが示されている。これらのマウスモデルは病気の進行機序や 治療法の開発に有用であると考えられるが、よりヒトに近い脳病変、症状や病態を再現するモデル として、霊長類のモデルが望まれている。

こうした背景から、本研究ではコモンマーモセットにおけるαシヌクレイン伝播のモデルの構築を 試みた。コモンマーモセットは小型の霊長類であり、繁殖効率が良いことから実験動物として広く使 用されている。マウスで限界がある高次脳機能などの研究を霊長類で行うことができるという点でも、

ヒトの疾患モデルとしての有用性が期待される動物である。そこでマーモセットにαシヌクレイン線 維の脳内接種を行い、PD/DLB にみられるような脳病理が観察されるか、病変はどの部位に出現 し、どう伝播するか、神経変性は誘導されるか、などについて検討した。

2頭の野生型マーモセット(26 月齢)の線条体(尾状核/被殻)に試験管内で作製したマウスαシ

(2)

ヌクレイン線維を接種した。接種から3ヶ月後に脳を固定し、免疫組織染色などにより、病変の形成、

広がりを観察した。その結果、リン酸化αシヌクレイン特異抗体陽性の病理が接種部位をはじめ、

様々な場所に認められ、脳の広範囲に広がっていることがわかった。リン酸化αシヌクレイン抗体 陽性の病理はユビキチン、p62 抗体にも陽性であり、βシート結合色素であるチオフラビン

S

やFSB でも染色された。マウスαシヌクレインを認せず、マーモセットαシヌクレインを認識する

LB509

抗 体を用いた染色により、マーモセットの内在性αシヌクレインが蓄積していることが判明した。以上 の結果から、人工的に作製したαシヌクレイン線維を野生型マーモセットの脳内に接種すると、3ヶ 月という短期間でレビー小体様のαシヌクレイン病変が形成され、広範に伝播することが示された。

病変は線条体に直接神経入力する皮質や扁桃体、視床などの脳領域に見られ、特にドーパミン 神経が線条体へ接続する中脳黒質では蓄積が顕著であった。このことからαシヌクレイン病変は 逆行性に伝播することが強く示唆された。また、中脳黒質におけるαシヌクレインの蓄積量が多い ほど、ドーパミン神経細胞マーカーである

TH

抗体陽性の神経細胞が減少する傾向が認められ、

αシヌクレインが凝集、蓄積することで神経細胞の機能低下や神経変性が誘導されることが示唆さ れた。各種細胞マーカーとの共染色を行なったところ、αシヌクレインの蓄積は神経細胞内がほと んどであった一方、一部のαシヌクレイン病変はミクログリアのマーカーとの共局在が観察された。

このことから、αシヌクレイン凝集体、あるいはそれに伴って変性した神経細胞がミクログリアによっ て貪食、除去される可能性が示唆された。神経変性疾患における細胞内異常タンパク質病変とミク ログリアの関係は未だ不明の部分が多いが、今回の実験から一つの可能性が示された。

本研究は小型霊長類の野生型マーモセットにαシヌクレイン線維の脳内接種を行い、PD/DLB

と同様のαシヌクレイン病変の再現、伝播を観察した初めての報告である。本マーモセットモデル

はαシヌクレインの伝播メカニズムの解明をはじめ、異常αシヌクレインを検出するPET プローブの

評価、さらには

PD

やその他のシヌクレイノパチーの進行を抑える根本治療薬の評価やバイオマー

カーの探索に有用と考えられる。

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