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色素増感太陽電池用対極の新規作製手法に関する研 究開発

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Academic year: 2022

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色素増感太陽電池用対極の新規作製手法に関する研 究開発

著者 嶋田 一裕

著者別表示 SHIMADA Kazuhiro

雑誌名 博士論文要旨Abstract

学位授与番号 13301甲第1913号

学位名 博士(工学)

学位授与年月日 2020‑09‑28

URL http://hdl.handle.net/2297/00061384

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

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博士論文 要旨

色素増感太陽電池用対極の 新規作製手法に関する研究開発

Research and development of a new method of counter electrode for dye-sensitized solar cells

金沢大学自然科学研究科 物質化学専攻

学籍番号 1924022002

氏名 嶋田一裕

主任指導教員 當摩哲也 教授

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Abstract

In this study, the main focus was on the preparation method for the Counter Electrode (CE) of Dye-sensitized solar cells (DSCs). The main goals of this study were to improve the efficiency and reduce the cost of production. In the development of DSCs, the items to be developed include CE, dye synthesis, photoelectrode (titanium dioxide film), and electrolyte.

The efficiency and cost of DSCs are greatly affected by the CE. Thus far, no efficient and simple manufacturing method has been found for CEs. Therefore, CEs were the target of this study. The preparation of CEs can also contribute to the development of products that create new values other than power generation. The performance of DSCs was investigated using two materials and one method in the following experiments: Gold leaf CEs for DSCs, Platinum leaf CEs for DSCs, Platinum CEs for DSCs prepared by one-step dipping process.

概要

国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)の達成や日本国内にお ける電力需要の課題解決のために、再生可能エネルギーの利用が促進されている。

再生可能エネルギーの中でも、最も普及し今後も普及し続けるのが太陽電池であ る。太陽電池は多々の種類があるが、有機系太陽電池に分類される色素増感太陽 電池(Dye-sensitized solar cells : DSCs)は、その簡単な製造方法、低コスト、およ びカラーバリエーションによる高い意匠性を持っている。これらことから従来の シリコン系太陽電池とは異なる用途展開が期待できる。そこで、本研究では色素 増感太陽電池に着眼した。DSCsは1991年にグレッツェルらによって初めて報告 された。現在までに発見された最高性能の DSCs は、10%を超える発電効率を有 している。DSCs の光電極は、透明な導電性酸化物ガラス上にナノ結晶の酸化チ タン半導体膜を積層したものである。ヨウ化物/三ヨウ化物レドックス対を電解液 として使用し、三ヨウ化物は対極上でヨウ化物イオンに還元される。対極は、外

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部回路から電子を集めて酸化還元電解質に戻すという重要な役割を果たす。よっ て対極は、高い電子伝導性と電解質に対して高い触媒能力が必要である。これま でに、グラファイトやカーボンブラックなどの低コストの対極材料が研究で提案 されている。しかし、カーボン電極材料は低コストであるが、非常に壊れやすく、

機械的に不安定である。また、導電性高分子もDSCsの対極材料として使用する ことができる。しかし、導電性ポリマーを作製するためには、複雑な電解重合プ ロセスが必要となる。対極において、簡便な作製方法で高発電効率の2つを同時 に達成している例はない。

そこで本研究では、DSCsの対極の作製方法に着眼した。新たな対極を作製し、

高発電効率・製造コストの低減・高い意匠性を達成することを主な目的とした。

新たな対極の作製は、高意匠であるため発電以外の新しい価値を生み出す製品の 開発にも貢献できる。以下の3つの新たな対極作製を開発し、DSC sの対極とし ての性能やその性能発現を探究した。

・対極に金箔を用いた色素増感太陽電池

・対極に白金箔を用いた色素増感太陽電池

・ワンステップ浸漬法で作製した色素増感太陽電池用白金対極

これらの研究から得られた知見は、DSCsの効率を向上させるための設計指針とな るだけでなく、電極を用いた他のセルデバイスの性能やコストの向上にもつなが るものと期待される。

〇対極に金箔を用いた色素増感太陽電池

DSCs 用金箔対極を作製した。金箔は石川県の伝統産業品であり、その意匠性 は高い。また、金箔の厚さは100nm であり非常に薄い膜である。金箔対極の 作製は、接着剤を用い透明電極基板(FTO)に金箔を貼り付けるだけである。その

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ため、既存の手法とは異なり簡便であるため費用対効果が高い。金箔を対極とし て用いた DSCsの光電変換効率は 2.31%と高く、金箔及びスパッタ金膜を対極と して用いたDSCs(それぞれ0.02%及び1.96%)よりも高い値を示した(図1、表1)。

この性能向上の原因を、表面形状(走査型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡)、各種電 気化学分析(サイクリックボルタンメトリー、電気化学インピーダンス分光法)、

結晶分析(X線回折法)により調べた。

表面観察から金箔対極の表面には多くの穴を有しているため広い表面積をも つことが観察された(図2)。また、金板やスパッタリングした金膜で作製した電 極と比較して、金箔対極はコバルト系錯体電解質に対して高い触媒活性を有して いることが電気化学測定などから示された。さらに、金箔対極は、スパッタリン グされた金膜に比べて結晶性に優れているため、導電性が高いこともわかった。

これらの結果より、金箔は表面積が広く結晶性に優れるためコバルト系錯体電解 質に対して、有効に対極としての性能を発揮したと考えられる。

図1 各金対極を用いた色素増感太陽電池セルのI-V曲線

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表1 各金対極を用いた色素増感太陽電池セルの太陽電池特性

図2 金箔対極のSEM像

〇白金箔対極を用いた色素増感太陽電池

金箔が対極として有効に働くことを見出すことができたので、本研究では

DSCsに厚さ100nmの白金箔を対極として導入し、安価で高い性能を発揮するヨ

Jsc (mAcm-2)

Voc

(V) FF η

(%) 金箔対極 8.98 0.64 0.4 2.31 スパッタ金膜対極 7.52 0.62 0.42 1.96 金板対極 5.94 0.01 0.22 0.02

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ウ素電解質を用いた。白金箔の性能を白金板・スパッタリングした白金を対極と して用いた場合と比較した。光電変換効率の結果、白金箔を対極としたDSCsの 光電変換効率は4.78%であり、白金板及びスパッタリングした白金膜を対極とし た DSCsの光電変換効率(それぞれ 4.11%及び4.40%)に比べて高い値を示した(図

3、表2)。性能が発現した起因を探るため、表面形状(走査型電子顕微鏡、原子

間力顕微鏡)、各種電気化学分析(サイクリックボルタンメトリー及び電気化学 インピーダンス分光法)、結晶分析(X線回折法)をそれぞれ測定した。

他の対極とは異なり、白金箔は表面に幾つもの穴があり表面積が大きいことか ら、白金箔が活性対極としてより機能していた(図4)。インピーダンス測定より、

白金箔対極はシート抵抗(RS)では白金板対極と同等、電荷移動抵抗(RCT)はスパッ タリングした白金対極と同等であった。これらの結果から、白金箔はDSCs用対 極として有効であることが示さた。また、金箔と同等にその意匠性は高い。

図3 各白金対極を用いた色素増感太陽電池セルのI-V曲線

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8

Current Density (mA/cm2)

Voltage (V) 白金箔対極

白金板対極 スパッタ白金膜対極

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表2 各白金対極を用いた色素増感太陽電池セルの太陽電池特性

図4 白金箔対極のSEM像 Jsc

(mA cm−2)

Voc

(V) FF η

(%) 白金箔対極 9.47 0.74 0.68 4.78 白金板対極 8.57 0.73 0.65 4.11 スパッタ白金膜対極 9.02 0.75 0.65 4.40

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〇ワンステップ浸漬法で作製した色素増感太陽電池用白金対極

白金金属は、DSCs 用対極のための最も有望な材料の一つである。DSCs 用 白金対極を作製するために、シンプルで費用対効果の高いワンステップ浸漬 法を開発した。この白金対極は、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン

(MTS)と白金の懸濁液に FTO ガラス基板を浸漬することによって作製された。

MTS-1-Pt, MTS-10-Pt, スパッタリングした白金膜を DSCs の対極として使用

した場合の比較試験を行った。なお、MTS-1-Pt と MTS-10-Pt は、それぞれ 1 mL と 10 mL の MTS を用いて調製した試料を示している。MTS-1-Pt を用 いた DSC は 8.28%という高い光電変換効率を示し、これは MTS-10-Pt を 対極 として用いた DSCs(1.61%)よりも優れた値であった。また、MTS-1-Pt 対極を用いたDSCsは、スパッタリングした白金膜を用いたDSCsとほぼ同様 の発電効率(8.55%)を示した(図6、表3)。このように、本製法を用いるこ とで、DSCsの性能をさらに向上させることが可能となった。性能が向上した 原因について、表面形状(電界放出走査電子顕微鏡)、化学結合状態(X線光 電子分光法)、各種電気化学分析(サイクリックボルタンメトリー、電気化学 インピーダンス分光法)を測定し、検討した。

MTS-1-Pt対極は基板表面に数百 nm の白金クラスターを形成しており(図

5)、X 線光電子分光法の結果より白金金属と同等の電子状態であったため性 能を発揮した。一方、MTS-10-Ptは、MTSで保護された白金ナノ粒子となっ ており、電荷移動をMTSに阻害されていたために白金としての性能を発揮す ることができなかったと考えられる。各種電気化学分析より、MTS-1-Pt対極 とスッパタ白金膜対極はヨウ化物との触媒活性が同等であるため、同等の光 電変換効率が発電したと考えられる。

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図5 MTS-1 Pt 対極のFE-SEM像

図6 各白金対極を用いた色素増感太陽電池セルのI-V曲線

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表3 各白金対極を用いた色素増感太陽電池セルの太陽電池特性

Jsc (mAcm-2)

Voc

(V) FF η

(%)

MTS-1 Pt対極 17.0 0.76 0.64 8.28

MTS-10 Pt 対極 12.1 0.72 0.19 1.61

スパッタ白金膜対極 18.2 0.74 0.64 8.55

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