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博 士 ( 水 産 科 学 ) 山 家 秀 信

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Academic year: 2021

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博 士 ( 水 産 科 学 ) 山 家 秀 信

     学位論文題名

Releaser pheromones in the urine of Oncor ヶy 刀C カ勿SSpeCieS      サケ属魚類の尿中リリーサーフェロモン

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  魚類の繁殖に関連する化学物質としての性フウロモンは、内分泌に影響を与え る「プライマーフ工口モン」と行動を誘起する「リリーサーフ工口モン」に分け られて研究が進められてきた。これまでキンギョを中心としたコイ目等では、そ れらの同定がなされ、配偶者誘引と産卵の同調性における役割が明らかにされて きた。一方、サケ科魚類における性フ工口モンは、排卵したヌスの体腔液に存在 すると考えられてきたが、排卵メスから体腔液を得る場合、従来の採取方法では 尿と混合する可能性が指摘され、結論は得られていない。近年、排卵メス尿中に 含まれるホルモン様活性物質、特に性ステ口イドとF夕イプ―プ口スタグランジン (PGFs)がプ ライマーフ ェ口モンとして作用することが報告されてきたが、り りーサーフ工口モンに関しては、物質を同定した報告は乏しく、その由来、放出 時 期 、 生 態 的 役 割 に つ い て 未 だ 十 分 な 知 見 は 得 ら れ て い な い 。   本研究では主にサクラマスとニジマスを用い、サケ属のりりーサーフ工口モン に関して、(1)尿中フェ口モンの存在、(2)フェ口モンの受容と分泌に対する 性 ステ口イド の関与、(3)フェロモンの種特異性、(4)フェ口モンの化学的性 状 、(5)成熟 雌雄の腎臓 の変化、に ついて明ら かにするこ とを目的とした。

  繁殖期にオスの行動に影響を与える化学物質が尿中に存在するか否かをサクラ マスを用いた行動実験によって調べた。新たに開発したカテーテルにより採取し た成魚の尿とY字選択水路を用い、尿又はその画分で匂いづけされた水路に対す る河川型オスの移動頻度を記録した。その結果、排精している早熟オスは排卵ヌ ス尿に誘引され、一方、未成熟メス、未成熟オス、成熟オスの尿は、オスを誘引 しなかった。また、排精前のオスや未成熟オスは排卵ヌス尿に誘引されなかっ た。排卵ヌスの体腔液にもオスを誘引する効果は認められなかった。未熟オスは 成熟オス尿を忌避した。以上の結果から、成熟雌雄の尿は成熟オスの行動に影響 を与えるフ工口モン様物質を含むことが明らかになった。

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  メスが出すフ工口モン様物質の受容と分泌は性ステ口イド支配下にあることを 行動実験によって検証した。サクラマスとニジマスにおいて、ヌチルテストステ ロン(MT、10ppm)を3―4週間 経口投 与さ れた 未成熟魚は、排卵ヌス尿に誘引 された。MT処理二ジマスはニジマスの排卵メス体腔液に誘引されなかった。性 ステ口イドが性フェ口モンの感知に関与していることが示唆され、アンド口ゲン 処理された小型の未成熟魚は誘引物質の生物試験に使えることがわかった。さら に、MT処 理 さ れ た サ ク ラ マ ス 未成 熟 オス は、 工スト ラジ オー ル17B (E2、 10ppm)を6週間経口投与された未成熟スモルトの匂いを好むことがわかり、工 ス ト 口 ゲ ン が フ ェ ロ モ ン の 分 泌 に 関 与 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。   オス誘引物質に種特異性が存在するか否かを明らかにした。サクラマスとニジ マスにおいて、MTを3―4週間経口投与された両種未成熟魚は、同種の排卵ヌス 尿に誘引されることがわかった。また、サクラマス早熟オスと上記2種の尿の他、

アヌマス排卵ヌス尿を用いた実験においても同様に種特異性を示す結果が得られ た。したがって、少なくともサケ属の排卵ヌス尿中には明確な種特異性を示すり りーサーフェ口モンが存在することが示された。

  サクラマスにおいて、フェ口モン活性を確認した排卵ヌス尿に様々な処理を施 し、早熟オスとMT投与未成熟オスを用いた行動実験によってフウロモンの化学 的性状を検討した。熱安定性を調べるため、37℃で30分と60分、100℃で3分、

常温で24時間の処理を行ったところ、いずれも誘引活性は失われた。次に、限外 濾過膜とゲル濾過による分画から、オス誘引物質の分子量は約5000―6500である と推定された。分子量10000以下の画分のエーテル抽出によって、中性画分(ス テ口イドを含む)、酸性画分(PGFsを含む)、塩基性画分、工一テル不溶水層画 分を作成し実験に用いた結果、塩基性下抽出画分にオス誘引活性が認められた。

また、限外濾過によって分画された分子量5000―10000の塩基性下エーテル抽出 画分も同様にオス誘引効果のあることが示された。塩基性下エーテル抽出画分を シリカゲルカートリッジによって分画したところ、極性の高いヌタノール溶出画 分にオス誘引活性は認められず、極性の低いエーテル溶性画分に誘引活性が認め られた。以上の結果から、サクラマスにおけるオス誘引フ工口モンは、高分子夕 ンパクや性ステ口イドとプ口スタグランジンを含むホルモナルフ工口モン様物質 ではなく、熱安定性が低く比較的極性の低い分子量約5000―6500のエーテル溶性 の塩基性物質であることが考えられた。

  RIA法によりPGF2aを定量した結果、未熟雌尿、成熟雄尿、未排卵雌尿、体腔 液よりも排卵ヌス尿(実験水路内の濃度は1.9 X10―14M)に多く含まれることが わかった。また、早熟オスとMT投与未成熟オスは、実験水路内で1.9X10―9Mの

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PGF2aに対 する 有意 な選 好性 を示 さな かっ たが 、遊 泳行 動が活 性化 され た。 従っ て過 去の 報告 と同 様、 サク ラマ スにお けるPGFsは繁 殖時 の行動活性の向上に関係 す る こ と が 示 唆 され た 。 し た が っ て 、オ スに 作用 する 排卵ヌ ス尿 中に はり りー サー フェ 口モ ンと して オス を誘 引する 物質 と、 オス 誘引 機能を持たないがオスの 行 動 を活 性化 する 物質 とい う機能 の異 なる2成 分が 存在 するこ とが 示唆 され た。

  サ クラ マス の性 フ工 口モ ン放 出に関 わる 腎臓 機能 の変 化を調べた。腎臓の体重 量比(KSI [kidney somatic index])と尿量比(生殖腺と内蔵除去体重で換算)を求め た 。 ま た 、 成 魚 とMTとE2を 投 与 し た 河川 型オ スの 腎臓 を採取 後、 細尿 管の 組織 観察 を行 った 。成 魚のKSIは 、雌 雄と も成 熟に 伴っ て高 くなり、尿量はKSIと同調 し成 熟に 伴っ て増 加し た。 腎臓 の細尿 管を 構成 する 上皮 細胞も、成熟雌雄は未熟 雌雄 に比 ベ有 意に 厚く なっ た。 排卵メ スの 細尿 管上 皮細 胞の厚い個体と薄い個体 が存 在す るこ とが 示さ れた 。こ の細胞 の変 化は 、オ ス誘 引フ工口モンの放出ある い は 分 泌 に 何 ら かの 関 係 が あ る こ と が示 唆さ れた 。MTとE2を 投与 した 河川 型オ スの 腎臓 細尿 管の 上皮 細胞 の厚 さも対 照魚 と比 べて 有意 に高い値を示したことか ら、 性ス テ口 イド によ る腎 臓の 肥厚化 が成 熟期 のケ ミカ ル・コミュニケーション に関わる腎機能の変化に関与することが示唆された。

  本 研究 の結 果か ら、 サケ 属魚 類は成 熟す ると 雌雄 の尿 量が増加し、その中に成 熟オ スの 繁殖 行動 と関 わる りり ーサー フ工 口モ ンが 存在 することが明らかになっ た。 また 、成 熟オ スを 誘引 する 排卵メ スの 尿中 にあ るり りーサーフ工口モンは、

種特 異性 を示 し、 高分 子夕 ンパ クやホ ルモ ン様 物質 とは 異なるェーテル溶性の誘 引 物 質と 、オ スの 行動 を活 性化さ せるPGFsとい う少 なく とも2成分 の存 在が 示唆 された。

(4)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 助教授 助教授

荒井 原 後藤 上田

克俊 彰彦          

     学位論文題名

Releaser pheromones in the urine of くフ銘corhync カus species      サケ属魚類の尿中リリーサーフェロモン

  魚 類 の 繁 殖 に 関 わ る 化 学 物 質 と し て の 性 フ 工 口 モ ン に は 、 内 分 泌 に 影 響 す る

「 プ ラ イ マ ー フ 工 口 モ ン 」 と 行 動 を 誘 起 す る 「 ル リ ー サ ー フ 工 口 モ ン 」 が あ る 。 こ れ ま で コ イ 日 数 種 に お い て 、 ホ ル モ ン 様 物 質 が 性 フ 工 口 モ ン の 役 割 を 果 た す こ と が 明 ら か に さ れ て き た 。 一 方 、 サ ケ 科 魚 類 の 性 フ 工 口 モ ン は 排 卵 ヌ ス の 体 腔 液 に 存 在 す る と 考 え ら れ て き た が 、 結 論 は 得 ら れ て い な い 。 近 年 、 排 卵 メ ス 尿 中 の 性 ス テ 口 イ ド やF型 ― プ 口 ス タ グ ラ ン ジ ン(PGFs)が プ ラ イ マ ー フ 工 口 モ ン と し て 作 用 す る と 報 告 さ れ た が 、 リ リ ー サ ー フ ウ ロ モ ン に つ い て は 物 質 を 同 定 し た 報 告 は 乏 し く 、 そ の 由 来 、 放 出 時 期 、 生 態 的 役 割 に 関 す る 知 見 は 殆 ど 得 ら れ て い な い 。 本 研 究 は 主 に サ ク ラ マ ス と ニ ジ マ ス を 用 い て 、 尿 中 フ ェ 口 モ ン の 存 在 、 フ ェ 口 モ ン の 受 容 と 分 泌 に 対 す る 性 ス テ 口 イ ド の 関 与 、 フ 工 口 モ ン の 種 特 異 性 、 フ 工 口 モ ン の 化 学 的 性 状 、 成 熟 雌 雄 の 腎 臓 の 変 化 に つ い て 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し 、 以 下 の 成 果 が 評 価 さ れ た 。

  1) 申 請 者 に よ っ て 新 た に 開 発 さ れ た 採 尿 専 用 カ テー テ ル の先 端 部 の構 造 は 「挿 入 し や す く 抜 け に く い 」 形 状 に な っ て お り 、 チ ュ ー ブ の 外 径 、 供 試 魚 の 尿 道 径 と マ ッ チ さ せ た 結 果 、 そ の 安 定 性 は 極 め て 優 れ 、 数 日 間 の 連 続 採 尿 を 可 能 に し た 。   2) 排 精 し て い る 早 熟 オ ス は 排 卵 ヌ ス 尿 に 誘 引 さ れる が 、 排卵 メ ス の体 腔 液 はオ ス を 誘 引 し な い こ と を 明 ら か に し た 。 ま た 、 未 熟 オ ス は 成 熟 オ ス 尿 を 忌 避 す る と い う 全 く 新 し い 知 見 を 得 た 。

  3) サ ク ラ マ ス と ニ ジ マ ス に お い て 、 メ チ ル テ ス ト ス テ 口 ン(MT) を 経 口 投 与 し た 未 成 熟 魚 は 、 排 卵 ヌ ス尿 に 誘 引さ れ 、 サ クラ マ ス と同 様 二 ジマ ス に おし ゝ て も 排 卵 ヌ ス 体 腔 液 に 誘 引 さ れ な い こ と を 示 し た 。 性 ス テ 口 イ ド が 性 フ ェ 口 モ ン の 受

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容を制御することを示唆し、MT投与された未成熟魚は誘引物質の生物試験に使 えることを示した。さらに、MT投与されたサクラマス河川型未成熟オスは、工 ストラジオール178を経口投与した未成熟スモルトの匂いを好むことから、エス ト口ゲンがオス誘引物質の分泌に関与することを示唆した。これらの結果から、

非繁殖期であってもステ口イドを投与すればフ工口モンの実験が可能であること を示した。

  4)オス誘引物質に種特異性が存在するか否かを明らかにした。サクラマスとニ ジマスの非繁殖期において、MTを経口投与した両種未成熟魚は、同種の排卵ヌ ス尿に誘引されることを示した。また、サクラマス繁殖期に早熟オスと上記2種の 尿の他、アヌマス排卵メス尿を用いた実験においても同様に種特異性を示すこと から、少なくとも実験に用いたサケ属の排卵メス尿中には明確な種特異性を持つ りりーサーフ工口モンが存在することを実証した。

  5)早熟オスとMT投与した未成熟オスを用いた行動実験によってサクラマス排 卵ヌス尿中のりりーサーフェ口モンの化学的性状を検討した。その結果、オス誘 引フェ口モンは高分子夕ンバクや性ステ口イドとプロスタグランジンを含むホル モン様物質とは異なり、熱安定性が低く比較的極性の低い分子量約5000―6500の ェーテル溶性の塩基性物質であると推定した。RIA法による定量の結果、PGF2 は、未熟雌尿、成熟雄尿、未排卵雌尿、体腔液よりも排卵メス尿に多く含むこと が明らかになった。一方早熟オスとMT投与未成熟オスは、実験水路内のPGF2 に対し選好性を示さなかったが遊泳活性の向上を示した。従って排卵メス尿中 フ工口モンには、本研究で見出された分子量数千の誘引物質とオスの行動を活性 化させるPGFsという2成分が含まれることを示唆した。

  6)サクラマスのフェ□モン放出に関わる腎臓の変化を調ぺた。成魚の腎臓の体 重量比と尿量比(生殖腺と内蔵除去体重で換算)は同調し成熟雌雄で増加するこ と、腎臓の細尿管を構成する上皮細胞が成熟雌雄では未熟雌雄に比べ厚くなるこ とを明らかにした。排卵メスの細尿管上皮細胞には厚い個体と薄い個体が存在す ることを示し、オス誘引フ工口モンの放出あるいは分泌に何らかの関係があるこ とが 示唆した。MTとエストラジオール17pを投与した河川型未成熟オスの腎臓 細尿管の上皮細胞の厚さも対照魚と比ぺて有意に高い値を示すことから、性ステ 口イドによる腎臓の肥厚化が成熟期のケミカル・コミュニケーションに関わる腎 機能の変化に関与することを示唆した。

  申請者による以上の成果はサケ科魚類の繁殖行動に関わる性フ工口モンの解明 に大きく寄与するものであり、審査員一同は本研究が博士(水産科学)の学位を授 与される資格のあるものと判定した。

参照

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